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INTERVIEW:田村淳一、田村知世子

「よそ者」だから気づける 地域の魅力とポテンシャル

2016年、遠野市は総務省の「地域おこし協力隊制度」を活用した、独自の「遠野ローカルベンチャー事業」を立ち上げた。これは、地方での起業に意欲を持つ人を地域おこし協力隊として採用し、地元企業や生産者と連携しながら、遠野の地域資源を活用した起業を市が後押しするもの。2016年度は9名を採用(2017年度は6名。現在15名)。メンバーは3年以内の起業を目指し、遠野に暮らしながらその準備を進めている。

この事業の運営を市が委託しているのが株式会社NextCommons(ネクスト・コモンズ)。同社の設立当初から関わる田村淳一さんは現在、現場の中心的な役割として、他のメンバーや地域の関係者等とコミュニケーションを図りながら活動を展開している。前職であるリクルート時代は、新規事業の立ち上げや不動産分野のコンサルティングなど大きな案件に関わり、充実した会社員生活を送っていた淳一さんだったが、いつも心には「地域で何かがしたい」との思いがあったという。


「人口3000人ほどの小さな村で生まれ育ったこともあり、いずれは地方で、その地域に役立つ仕事がしたいとずっと思っていました」。その気持ちがさらに強くなったのは、震災復興のために東北各地を訪れるようになってから。そんな時に出会ったのが、NextCommonsの代表・林篤志さんだった。地域と人の交流から新たな価値観と産業を生み出したいという、林さんの考え方に共感。そして湧き上がってきたのが、「大企業では自分でなくても仕事は回る。もっと自分の存在感を発揮する仕事がしたい」という思い。7年間勤めた会社を退社し、同社初の実践フィールドとなる「NextCommonsLab遠野」に参画するため、2016年、妻の知世子さんとともに遠野に移住。メンバーのサポートや、事業に関わる不動産関係の調整、行政や地元企業とのコーディネートなど、さまざまな側面からプロジェクトを支えている。

今、夫婦ふたりが暮らすのは築70年の古い民家。「里山に住むのは初めて。景色も星も、水もきれい。ゆっくり穏やかな時間が流れていて、日々の暮らし方も丁寧になってきた気がします」と知世子さん。淳一さんも、「この場所だから『遠野物語』が生まれたんだなと思わせる空気感が残っている。そこに住む自分たちも物語の一部になってしまうような、不思議なおもしろさがありますね」と、遠野での暮らしを楽しんでいる様子だ。また食べることを大切にしているふたりにとって、内陸と沿岸を結ぶ中継地である遠野の恵まれた食材も魅力のひとつ。


「魚介も野菜もどれも新鮮。春になったら家の前を耕し、野菜やハーブを植えようと思ってるんです」と知世子さんは楽しそうに話す。暮らしの場であると同時に、淳一さんにとってはビジネスのフィールドでもある遠野。約1年過ごしてみて、まちにどんな印象を持ったのだろうか。「古くから宿場町として多くの人が行き来してきた街だからなのか、外からの人も自然に受け入れてくれる土壌があります。今回のプロジェクトでは、突然複数の『よそ者』が入ってきたわけだから地元の皆さんは驚いたと思いますが、プロジェクトの拠点となるCommonsCafe(コモンズ・カフェ)も完成し、徐々にこの取り組みが認知されつつあります」。

それぞれの分野のプロフェッショナルが地域に入り活動することで、地元の人も刺激され、新たな挑戦も生まれつつあるという。「自然や農産物などの地域資源を活用するだけでなく、人と人との交流をとおし地域全体を活性化していくのも、このプロジェクトが目指すもの。おもしろい人がいる、おもしろいことができるまちという前例をたくさん作りたいですね」。地元の人にとっても、移住する人にとっても、より魅力あるまちづくりをサポートしていきたいと考えている。

田村淳一さん/田村知世子さん
淳一さんは1987年生まれ、和歌山県出身。リクルート勤務を経て、2016年から遠野に移り住み、地元企業や生産者と連携しながら、遠野の地域資源を活用した起業創出に取り組んでいる。リクルート時代に職場結婚した妻の知世子さんは福岡県出身。現在はCommonsCafeで接客等の仕事を手伝っている。

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