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チャーリーのいないローリング・ストーンズなんて...

「ストーンズ伝説」チャーリーは殴っていなかった
2021/9/4 10:00
岡田 敏一
何だかモヤモヤする。8月24日、80歳で亡くなった英バンド、ローリング・ストーンズのドラム奏者、チャーリー・ワッツさんのことだ。

半世紀以上にわたり、ロック界の最前線を疾走し続けてきたストーンズを、時に余裕を見せながらも切れ味鋭いビートで寡黙に支えてきただけあって、世界中のロックファンが哀悼の意を表明。各国の主要メディアも長尺の追悼記事で彼の功績をたたえた。

そんななか、国内外で気になる逸話が紹介されていた。チャーリーさんがバンドの看板スター、ミック・ジャガーさんとけんかをし、彼を殴ったという話だ。

ファンの間では良く知られた〝武勇伝〟なのだが、8月24日付英紙ガーディアン(電子版)がわざわざ<恐らくは出所の怪しい話>と断って紹介するなど、実は真偽のほどは定かではない。

もう少し詳しく説明すると、この騒動、1984年、オランダのアムステルダムのホテルで起きたとされる。

ちょうど、バンドが苦境に立たされた時期だった。キース・リチャーズさん(ギター奏者)は長年苦しんだ違法薬物と手を切ったが、ミックさんと音楽性をめぐり対立。おまけにミックさんはソロ活動をやりたいと言い出し、バンド内の状況はさらに悪化した。

そこで、メンバー間の融和を図るため、アムステルダムでミーティングを開くことに。ミックさんとキースさんの仲は相変わらず険悪だったが、2人でちゃんと話そうということになった。キースさんはミックさんにジャケットを貸した。自分が結婚式の時に着た大切なものだった。

結局、2人は飲んだくれて、午前5時頃、ホテルに戻ったが、酔っぱらったミックさんは「こんな時間にやめておけ」というキースさんの忠告に反し、チャーリーさんの部屋に電話し「俺のドラマーはどこだ!」と尋ねた。ちょっとしたいたずらのつもりだった。

電話に出たチャーリーさんはキレた。ベッドから起き上がり、ひげをそり、オーダーメードのスーツに着替え、2人がいる部屋に乗り込んだ。そしてジャガーさんの襟(えり)をつかみ、顔を殴ってこう言い放った。「俺のことを二度と〝俺のドラマー〟と呼ぶな! お前は俺のシンガーだ!」

この逸話、米在住の元ミュージシャンで作家のマイク・エジソンさんがチャーリーさんについて書いた1冊「ドラマーへの哀れみ チャーリー・ワッツが重要な理由」(2019年)が紹介した他、さまざまな〝バージョン違い〟が存在する。

中でも有名なのが、エジソンさんの著書も引用しているキースさんの自伝「ライフ」(2010年)での描写だ。

それによると、ミックさんがチャーリーさんに電話してから20分後、誰かがドアをノックした。キースさんがドアを開けると、スーツとネクタイ姿で完璧にドレスアップしたチャーリーさんが、オーデコロンの匂いを漂わせながら乗り込んできた。

チャーリーさんはキースさんの横を通り過ぎ、ミックさんに「二度と〝俺のドラマー〟と呼ぶな!」と言い放ち、右フックを食らわせた。殴られたジャガーさんは(テーブル上の)スモークサーモンが乗った大皿の上に倒れ、勢いあまって、開いた窓から下の運河に落ちそうになったので、キースさんはミックさんを助けた。ミックさんが、キースさんが結婚式の時に着たジャケットをまだ着ていたからだった…。

ちなみに、米老舗雑誌「ニューヨーク」の運営会社が手掛ける文化・ファッション系ニュースサイト、ヴァルチャー(8月24日付)は<この逸話は、チャーリーさんがミックさんを殴り、「俺のことを二度と〝俺のドラマー〟と呼ぶな! お前は俺のシンガーだ!」と言い放って終わったとの説が有力である>と明言するなど、欧米のロックファンの間では、話を盛っている可能性が指摘されてきた。

実際、欧米では、チャーリーさんの訃報とともに、この逸話に関し、当のチャーリーさんが殴ったことを否定するインタビューの動画がネット上で拡散した。チャーリーさんが1994年、米CBSテレビの看板報道番組「60ミニッツ」に出演した際の模様だ。

チャーリーさんが、自分を含む各メンバーの役割について説明したあと、インタビュアーが「ある記事を読んだ。真偽のほどは定かではないが、ミックが君を『バンドの(専属)ドラマー』と言い、それで君が彼の部屋に乗り込んでいって…」とまで質問したところで、質問の続きをさえぎるように「違う、違う」と強く否定。

「ミックは(当時)僕をよくいらだたせたんだ。彼は僕のことを『俺のドラマー』と言ったんだ。だから、ある時、『お前は俺のシンガーだ』と言い返したんだよ」と答えた。

インタビュアーが「ある意味、正しい見方ですね」と返すと「そう。どっちも正しい。違うかい? だからあの時はちょっと怒っただけさ」と笑った。このインタビューのやりとりにもチャーリーさんの温厚な人柄が表れていて安心したのだった。

未だにチャーリーロスが続いている俺です。

不良とみなされているあのバンドで唯一の紳士であり、またその独特な重いドラミングで世界のロック好きを虜にしたという。これが神でなくてなんなのだ?

元々癌の闘病ということもあり今回のツアーには不参加を表明していたのでまさかね、とは思っていましたが、ここまで早いとは思っていませんでした。

久しぶりにストーンズ聴きまくっている昨今です。自分にとっては学生時代に買った一本のテープが入り口でした。このアルバム。

確か初来日直後のアルバムでしっかりロックしているし聴き易さでハマりましたね。ここから過去に遡って聴いてます。

ストーンズのツボはキースのリズムギターとチャーリーの安定感があってなおかつ重いドラムだったんだけど...もうライブで聞くことは叶わなくなったのはすごく悲しい。

チャーリー・ワッツという素晴らしいドラマーに哀悼の意を捧げつつ。


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