yume no hanashi
目を開けるとそこには、ふたりのこどもがいました。
聞くに彼らは、「あらた」「あさひ」という名を授かっていると言います。ですが周囲に彼らの両親の姿は見当たりませんでした。それをうっすらと二人に問うと、「親など初めからいなかった」と答えるのです。そうであれば彼らは何から産まれたのか、私は探究心が尽きませんでした。
はじめに彼らは私を「入浴」させました。薄いTシャツのあらたとあさひの身体はやわく陽に透けて、まるで陶器づくりの人形のようでした。ふたりの姿形はよく似ていて、違うところといえば目の色だけでしょうか。あさひは名前の通り陽を浴びた朝露のような色をしていて、あらたは深海を思わせる深い青の眼をしていました。ですが、二人に目立った違いはありません。
私たちはどこか古びた銭湯のような浴槽から出て、あらたとあさひの体を拭きました。ふたりとも、浴槽のなかでも着ていたのでしょう。白いワイシャツが肌に張り付いて、どこか神秘的なまでに美しく思えました。どこからか用意されたタオルでふたりを拭いていると、どちらかが楽しそうな声をあげます。
「おねえちゃん、楽しいことをしよう、僕たちしか知らないこと」
気付くと私は湯をはられた浴槽にごぼごぼと沈められていました。あさひが笑います。あらたが沈めます。まるでこうなることを予見していたかのような、それは見事な息の合い方でした。
あらたに呼吸を許されて、私はどうして、と彼らを見つめました。すると彼らはつくられたような顔をしながら、同じようにして笑うのです。
「たのしいから」
と。
人を水責めして一体何が楽しいというのでしょう。私が彼らに一体何をしたというのでしょう。それでも、水の中の私は苦しいとは微塵も思わず、ただただ彼らのなすがまま、溺れていました。
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