乱獲(SDGs14.4 その3)
もともとは地域の漁師を束ねていた網元が、魚も漁師も海も個別にローカルルールをしいて管理していた時代。よくも悪くも網元による海の支配は、少なくとも魚という資金源がなくならないよう持続可能に調整されてきていました。その網元制度を壊してまで手にした日本の漁業法は何を作ったのでしょうか?
新たな漁業法によって、「漁業権」や「漁業協同組合」など新たな言葉は生まれたものの、大きな意味では旧来からある「磯は地付き、沖は入会(いりあい)」のルールは変わりませんでした。そして海は日本人にとってあまりにも身近すぎる存在だったため、海の自然の力に頼りっぱなしというところも変わりはしなかったのです。
でも変わったものがありました。それは、海も魚も売り方も管理されてきたことです。海は国のモノとされ、漁業権を持つ人しか魚を取引することが許されない世界になったのです。そのおかげで、地元地元の血みどろの争いや網元にしいたげられる網子などは減りました。その代わり効率的に魚を大量に取って、大量に販売するというスタンスが生まれたのです。
そして時が経ち、現在では生の魚を全国でどこでも食べることができるようになりました。海の民である日本人の魚を見る目はどんどん肥えていき、大量にとれる魚も選別しないと売れない状況になっていきました。ちょっと形が悪いとか既定の発泡スチロールに入らないとかグロテスクすぎるとか、規格外とされている魚については破棄されはじめたのです。破棄されると言ってもカモメのえさになったり、肥料になるものもあるのですが、そのまま土に埋められるケースも多くあります。せっかく釣った魚なのにこのように捨てられる魚のことを未利用魚と言います。この未利用魚は、獲ってきた魚の約3割~4割と言われています。十分食べられるし、おいしいのにです。フードロスはこの残り6割の魚から生まれている問題なのです。そして更なる問題が出てきました。それが海の魚の世界的流行です。
1970年代から、増え続ける世界人口の中、食糧解決策として無限に思える海の生物は非常に魅力に感じてきました。さらに寿司などの日本食が注目され始め、世界中の国々が魚を取り始めてきたのでした。
図)水産庁 令和2年度 水産白書
https://www.jfa.maff.go.jp/j/kikaku/wpaper/r02_h/trend/1/t1_4_1.html
2019年の世界の漁獲量は2億1371万トン、1960年には3500万トンとするなら、約6倍にもなるのです。2050年には魚の量は8億9500万トンにも減ってしまうことになるのです。(※1)そして安い賃金で大量にとられた魚は日本にも入ってきました。安い魚が日本に入ってくることによって、日本の漁師が獲る魚もその価格競争に巻き込まれていきました。自然に任せた天然の魚に頼っている日本の漁法では、獲れるときには一斉に取れるので、値段が下がっていく一方。さらに日本人の魚離れも影響して、バケツ一杯のイワシでも100円にも満たない状況では、漁師はさらに大量に魚を獲らなければ生活できなくなるという悪循環におちいっていきました。日本の最も豊富で頼りになるはずの魚という資源がなくなる。資源の枯渇、縛られる管理社会。こうして世界の水産業をおそう悪条件が揃ってきたのです。
※1、GLOBAL SITIZEN 12 Plastic Pollution Facts That Show Why We Need To Do More
エレンマッカーサー財団の報告によるもので、2050年にはプラスチックが9億3700万トン、魚総重量が8億9500万トンという数字があらわされた。
https://www.globalcitizen.org/en/content/effects-of-plastic-pollution-facts-you-should-know/