ヒーカップ唱法
前作の朝ドラは10年に一本の秀作でした。その後は「いつも」の、朝の時計代わりの退屈な朝ドラに戻ってしまいました。もう観るのやめようと思って見ているのは「嫌い」の中に「好き」があるからではありません。単なる習慣です。
よくできたドラマはどこを切ってもよくできています。脚本、演出のみならずテーマ音楽も然り。今回のは特筆するところは何もないのですが、歌う人のある歌唱法が気になって仕方ありません。
歌のフレーズ終わりをキュッと上げる歌唱法を「ヒーカップ」と呼ぶそうです。古くはロカビリーの歌手や山本リンダ、松田聖子などがそうでした。最近、偶然ラジオで石川ひとみの「まちぶせ」を耳にしました。歌詞の内容と音楽的にも高まるところで一発だけ「ヒーカップ」のアクセントをいれていますが、実に効果的。現在の朝ドラ主題歌の人に教えてあげたい。彼は「ヒーカップ」の効果を知っていて、何度もそのカードを切ってしまい、作為的。こうなるとしらけてしまう。
先述の山本リンダにしても松田聖子も作為であることに変わりないのですが、「天然」と思わせる要素が備わる見せ方(きかせ方)をしています。その塩梅は担当ディレクターの巧妙な戦術か、歌手の天才によりますが、今回の歌手にはそれがない。