さらば、我が愛しの「おすみ」
亀山と天理とをつなぐ「名阪国道」。新名神などなかったその昔、学生時代はバイクで下宿のある南河内から実家のあった愛知県東部までの間を、帰省の度によく走りました。名神に比べ距離が短いことも良かったですが、安価に移動できる。現在でもそうですが、名阪国道は一般国道であり、通行無料なのです。
先日も奈良に所要があり向かっていました。名阪伊賀上野ドライブインはお気に入りの休憩ポイント。私の中のダントツ一位の銘店「おすみ」があるからです。ドライブインなんですけど、「おすみ」は居酒屋というかホルモン焼き屋。駐車場が広い事もあって、トラックドライバーもよく見かけます。昼間からしこたまお飲みで、しっかり酔いを覚まして行かれるんでしょうが、運ちゃんたちの憩いの場のようです。
伊賀上野ドライブインの一番端に位置する「おすみ」は、独特の存在感を醸し出しています。イチゲンさんお断り的な、お客を選びそうな雰囲気。敷居が高いといっても巷でいうそれと違って、西部劇で出てくるうらぶれたバーのような「やさぐれ感」があります。初めて入ったのはいつだったか覚えていませんが、勇気を振り絞って入ってみました。「いらっしゃい!」とピッチの高くよく通る威勢の良い声が響きました。大将とおぼしき人、「若いの」とおぼしき人、「おすみ」さんとおぼしき人、アルバイトのご婦人とおぼしき人、そして飲食店なのに洋物の小型犬が床を歩いています。まあ、みなさん「濃い」キャラの方々ばかり。極めつけは入店して眼に飛び込んでくる巨大な(高さ1mくらい?)天狗のお面。頭がクラクラします。
ここのイチオシは「ホルモン焼き定食」。「焼き鳥定食」も「ハラミ定食」も美味でしたが、「ホルモン焼き定食」に帰ってきます。どんぶりに入った「めし」にアサリの味噌汁、プラコップに入ったお冷の上の小鉢には漬物が載っていて、気取ったところがなくて、いとをかし。
コロナもだいぶ収束したようだし二年ぶりに「おすみ」に行こうと勇んで参りましたが、閉店というか伊賀上野ドライブイン自体が取り壊しのお知らせ。がっかりしたのは私だけでなく、「おすみ」の「ホルモン焼き定食」食べたさに、お菓子など我慢して腹をすかしてきた人も多かったはず。無残な取り壊し跡を見て、茫然と立ち尽くしっちゃった人、多かったでしょうね。
どこかでお店を出してほしいと願いますが、どっかのコンサルの浅知恵で、おしゃれな内装にしたり、もしくはヤサグレ感を狙って昭和のちょいワル風などにしないでほしい。いつもと変わらぬ自由で気ままで、SNSとも無縁な「おすみ」でいてくれることを願うばかりです。