私の新たな挑戦①
コロナ禍の中、リモート作業で制作したテルミン四重奏ビデオをYouTubeにて公開しました。
https://youtu.be/t-m4mZ5iAE4
世界の一流奏者とのテルミン四重奏です。テルミンはピッチ(音の高さ)を己の感覚と動作で制御し形づくりますから、基準ピッチはもとより、僅かな曲げ方のニュアンスまで人によって違うはずです。しかし現状ではピッチ情報を単純化して、どれも同じ形の四角い「量産品」にしてしまっています。私の耳で聞いて、ピッチがただ正確なだけでなく、「音楽」を奏でられることを基準にメンバーを選びました。
残念ながらメンバーは、ピッチの曲げ方によっては音楽が美しくも、味気なくなることについて、理解に至っていませんでした。技術はあるのでしょうが、テルミン演奏におけるピッチの僅かな曲線の美を実感しておらず、その可能性に気がついていません。今後に期待しています。
私は脳卒中後遺症で右半身が麻痺していて満足の行く水準では弾けませんので、2006年の録音音源を流用して、四重奏アレンジとして構成しました。自分で録音したので、録音当時のマザーデータを保管しています。
それぞれ違うバックグラウンドを持つ奏者であり、どんな四重奏になるか、蓋を開けてみるまでわかりませんでした。それぞれ異なる演奏技術と演奏を下支えするロジックですが、テルミン演奏の美を求めるという点は共通しています。テルミン演奏の古典にして至高である、クララ・ロックモアさん亡き後は、フリーミュージックや実験音楽と称した滅茶苦茶がテルミン音楽だと思われていたでしょうか? クララさんもテルミン博士もがっかりされていたのかも。テルミンに向けられる興奮も期待もコロナの嵐と共に去って、状況が一旦リセットされました。発明から100年の時を経て、他の楽器と同様、ようやくこういう音楽を奏でられるようになりました。
日本での演奏技量の底上げは四半世紀を越える取り組みを通じ、十分にできました。これからは弟子であるとか、同じ演奏法であるとかにこだわらず、音楽の美を求める人たちと奏でられたらと考えています。弾き方によっては美しい音楽を奏でられる可能性がテルミンにはあることを、未来に伝えたいです。
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