星空の下【あなたへの詩】vol.3
でも、奇跡があるとするなら・・・。
自分が綺麗だったなら。自分に自信があったなら・・・。
彼に見合う女性だったなら・・・。
美しくなるように、努力した。
彼への気持ちを抑えきれず、何かに向けるしかなかった。
王子は遠征に行くことが多く。
いつの間にか、彼の居ない時が、耐えられなくなっていた。
指折り数え、彼の帰りを待っていた。
彼の存在は、かけがえの無い物となっていた。
彼が宮殿に居る時は、常に彼を追い続けていた。
彼の足音、窓ガラス越しの彼の影、彼の話し声・笑い声、煙草をふかす時間も。
想いは果てしなく募り、押さえ込んで閉めていた心の扉が『ギギー』と音を立て始めた。
ある日、彼と賭けをする事になった。
「私が勝ったら、踊りに行きたいわ。」と言うと。
彼が、「貴女と行けるなら、負けてもいいな。」と口にした。
耳を疑った。
冗談だわ、と。
相手にしてもらえる筈ないわ、と。
彼に仕事を頼まれた。
「お掛けになってお待ちください。」と、言うと。
「美人の後ろに座れるなんて。」と、彼が口にした。
自分に自信の無い私は、暫くの間、彼の言葉が理解できなかった。
意味を把握した瞬間、恥しくて「そんなことありません。」と言った。
「美人だよ。もてるでしょう?好きな人いないの?」と聞いてきた。
私は、彼が私の気持ちに気が付いているのだと思った。
「居ますよ・・・。でも、好きなんて言えません。」
「素直になった方がいいよ。」と彼は言った。
私は素直になっていいの?
この恋は、叶わないと・・・。何ヶ月も、ただひたすら隠してきた。
いいの?私が想いを募らせているのは貴方なのよ・・・。
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