星空の下【あなたへの詩】vol.5
彼の歌声が素晴らしいことも。
とても美味しそうに食事をすることも。
小さなハプニングが起こっても、楽しくて仕方無かった。
全てが幸せで、一瞬でも目を離したくなかった。
彼が寝ている間、私は殆ど眠らなかった。
彼の寝顔をずっと見ていたかった。
安心しきった寝顔。
とても綺麗だった。
彼の感触を刻み込みたくて、髪に触れ、頬を撫でた。
夢なら、このまま一生覚めないで・・・。
幻想ならば、一生このまま幻想の世界で暮らすから・・・と。
彼は優しかった。
真っ直ぐな人だった。
素直だった。
彼は私を愛してくれた。
優しくキスをして、
優しく抱きしめてくれた。
毎日が幸福で、全てが輝いていた。
ずっと、続くと思っていた。信じていたかった。
でも、彼には心に決めた女性が居た。
やはり叶うはずのない恋・・・・。
ひと時だけの戯れの恋・・・・。
幸せだった時間だけを胸に、また心の中で想っていくだけ。
叶わない恋だったのだと。
素敵な夢を見ていたのだと・・・。
幻想は消えてしまったのだと・・・。
彼を想うと涙が止まらない。
切なくて、悲しくて、身を切り裂かれているようで・・・。
本当の自分を見失った。
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