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動画で考える

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「動画で考える」とは、動画を撮影することを通して目の前の日常空間を観察し、それを手掛かりにものごとを考え、表現する、その手法のことです。
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#音空間

9-1.空間の音を撮る

『動画で考える』9.音を撮る 誰もいない大きな部屋で、その空間の音を撮影してみよう。 誰もいない教室や会議室のようなところで、動画を撮影してみよう。 そのような場所で一人で立ってみると、誰の話し声も聞こえてこないし、動き回る足音や机や椅子を動かす音もしない、窓も閉まっているので屋外の音も聞こえてこない、あなたはそこで「静かだな」という印象を持つに違いない。 しかしそのような場所で撮影した動画を再生してみると、予想外に様々な「音」が収録されていることに気が付くだろう。それ

9-2.音と映像のずれ

『動画で考える』9.音を撮る 2箇所の異なる場所で収録した映像と音を組み合わせて視聴してみよう。2箇所のまったく異なる場所で撮影された動画の、音声だけを分離させて互いに付け替えてみる。 それぞれの場所が似通った住宅地や公園だった場合は、動画の視聴者はその付け替えにまったく気が付かないだろう。動画が収録するのは、完全に固有な場所であり、その場所を構成する固有のディテールの集合体なので、正確に分析すれば判別可能かも知れないが、私たちは動画をそういった精緻なレベルで視聴している

9-3.「音楽」を撮る

『動画で考える』9.音を撮る あなたは「音楽」を記録した動画を観ているのか、「音楽」を聞いているだけなのかある動画に「音楽」が付いていて、画面を見ながら「音楽」を聴くという体験。そこで感動したあなたは動画に感動したのか、「音楽」に感動したのか。 動画がなくても、そもそも、その「音楽」が気に入って感動したのかも知れない。それは目を閉じて耳を澄ませばわかることだ。あるいは「音楽」を付けずに、撮影時に収録した動画と音声のみをもう一度視聴してみる。それでも感動するのか、何か味気な

9-4.「声」のきめ

『動画で考える』9.音を撮る 「声」が伝える多様な情報を意識してみようあなたはさまざまな種類の「声」を知っている。あなたの気持ちを落ち着けてくれる声、いらだたせるような声、そしてはげます声。親密な声、よそよそしい声。明るい声、暗い声。声の性質を表現する言葉は無数にあって、それは一人一人の人物・そのキャラクターとも結びついて、人の数だけパターンがあるように思える。声を聞けばその人だとわかる、その人のことを思い出せる。 「声」と文字を使い分けること。文字は抽象的・論理的な思考