マガジンのカバー画像

動画で考える

50
「動画で考える」とは、動画を撮影することを通して目の前の日常空間を観察し、それを手掛かりにものごとを考え、表現する、その手法のことです。
運営しているクリエイター

#コンセプチュアル・アート

1-1.「動画で考える」について

「動画で考える」とは、動画を撮影することを通して目の前の日常空間を観察し、それを手掛かりにものごとを考え、表現する、その手法のことです。 『動画で考える』を読む これまであなたが見てきた動画の常識を忘れよう。動画はほんとうは、控えめで小さな声でささやく人たちのための道具だ。 人気のユーチューバーたちは、そのフォロワーを飽きさせないように、しゃべり続け、何かに挑戦したり、主張したり、歌ったり踊ったりする。とにかく目立ったもんの勝ち、といったスタイルが常識になっている。でも

4-1.”自撮り”では撮れない自分を撮る

『動画で考える』4.自分を撮る ビデオカメラを三脚に固定して、自分自身を撮影してみよう。 もしあなたが三脚を持っているなら、そこにビデオカメラを固定し録画ボタンを押し、その前に立ってみよう。その時にあなたはどんな「自分」になろうとするだろうか。普段通りの自分というより、「カメラの前の自分」とでもいうものを、いつも見ているテレビやYouTubeの番組を参考にして、作るのだろうか。 誰に頼まれたのでもなく、あなたがある日思い立って自分自身を撮影しようとする時、誰かがセリフを用

13-2.定点観測

『動画で考える』13.動画の中の時間 10分同じ一点を見つめ続け、動画で記録してみよう。家の近所を散歩したり、電車に乗って遠出したり、家の中にいても、あっちへ行ったりこっちに来たり、少しも腰を据えて落ち着くことがないあなたほど、一箇所にとどまって、じっと動画を撮影してみよう。あなたが動き回らないだけでなく、ビデオカメラも、左右や上下に振り回さず、手持ちでぐらぐらさせることもなく、しっかり三脚に固定して動画を撮影しよう。 普通だったら、動画を撮影しようと思ったら、撮影したい

13-3.遅れてやってくるもの

『動画で考える』13.動画の中の時間 イベントやパーティーが終わった頃を見計らって会場を訪れよう。人びとが集まる場所を、ちょうど良いタイミングを外して訪れてみよう。町内会のお祭りやパーティー会場のような場所、あるいはコンサートやイベントの会場のような場所を、人びとが徐々に増え始めて、最高に盛り上がって、参加者を熱狂させるようなプログラムがおおかた片づいて、人びとが三々五々帰りはじめた頃を見計らって、その場所を訪れてみよう。 その場所は少しずつ片付けられて、会場の関係者が慌

14-1.リアリティとは

『動画で考える』14.動画が作るリアリティ 品質の異なる2台のモニターを並べて、同じ動画を再生してみよう。「リアルな動画」ってどんな動画だろう?最新のビデオカメラで撮影されて、最新の高精細なモニターに写し出された動画は、確かに「リアル」であるように思える。 いま自分が見ている動画が「リアル」かどうかは、その動画だけを見ていても判断できない。少し前に買ったビデオカメラで撮影して、古いモニターで再生した動画でも、それなりに「リアル」に見えるし、自分が必要としている動画の品質は

14-2.キズのある動画

『動画で考える』14.動画が作るリアリティ あなたが動画を鑑賞している環境について意識してみよう。フィルムを媒体として記録・再生された動画の画面上には、「キズ」が映り込むことがある。フィルムが映写機にかけられ、何度も再生を重ねるうちに、フィルムの表面には細かな擦り傷や画面上に縦に走る線状のキズが物理的に発生し、時間と共にそれは量を増し、画面はさらに劣化していく。 もっともデジタルの時代になってからは、すべての過程においてデジタル化が進んで、フィルム自体使用されることが希に

14-3.記号のリアリティ

『動画で考える』14.動画が作るリアリティ 財布の中にある「お金」を目の前に並べて、それを動画で撮影してみよう。あなたの財布からお金を取り出して机の上に並べてみる。10円・20円、100円・200円、1,000円・2,000円、10,000円・20,000円・・・これを使って買い物もできるし、食事もできる、紙幣は何枚かの硬貨と交換できるし、銀行に預ければその金額は通帳に記帳された数字になる。お金とはそういうものだ。 お金を動画で撮影してみよう。ポケットから小銭をつかんで取