「アメコミビブリオバトル」に参加してみた2
以前参加させていただいたオンライン・アメコミビブリオバトルがめちゃくちゃ面白いイベントだったので、今回対面開催でのイベントにも参加させていただいた。
ビブリオバトルとは各々が五分間で好きな本を紹介し、観戦者がどの本が一番読みたくなったかを投票してチャンプ本を決めるというイベント。前回初めて参加させていただいたイベントはオンライン開催だったが、今回は実際にバトラーの生の声を聞けるとのことだったので「こんなの行くしかない!」と(観戦なのに)大興奮でイベントに向かった。
ところが最寄りの霞ヶ関駅の出口を完全に間違えて十分近い大遅刻。イベント運営の方本当にすいません…そんなカスみたいなミスをしながらも何とか到着すると、ルール説明の後すぐにバトルが始まった。
今回バトラーとして登壇されたのは4人。1人目の方が紹介されていた「マイクロノーツ」だけは名前だけ聞いたことがあるものの、他の三つに関しては完全に初見のコミック。普段マーベルばっかり読んでいる身からすると、普段読まないコミックの話を聞けるのは貴重な機会だし、こういう話を聞くと久々にインディーズ作品が読んでみたくなる。競技としてはもちろんのこと、お互いがアメコミについての知識を深めたり、思わぬ作品に出会うきっかけになったりするのもビブリオバトルの魅力だな〜と感じた。
それにしても今回の発表者様方も一目で「凄まじいオタクだ…」とわかる方々で、堂々と推し作品を掲げてプレゼンする様はまさに歴戦のオタクの姿。特に4番目に発表された女性の方が、思いっきりチップ・ズダースキー期のインベーダーズのTシャツを着ていて、内心「おおっ!」と感動した。後々「どこで買ったか聞けばよかった〜!」と勝手に後悔している。その方の「ストレイ・ドッグス」という作品の紹介がこれまた素晴らしく、見事今回のチャンプ本に選ばれていました。
その後のトークショーでは各々が事前にアンケートで答えたテーマで自由にアメコミの話をするという時間があったのだが、好きなアメコミの話から始まり、いわゆる「キャラ追い」や「ライター追い」といったアメコミの読み方の魅力、キャラのカタカナ表記の揺れに対する話など、本当にさまざまなベクトルで共感できる話を聞くことができた。”Annihilus”を「アニヒラス」と読むか「アナイアラス」と読むかといった話など、日本のアメコミファンだからこそ盛り上がれる話題が本当に楽しい。
学生時代、周りにアメコミを読んでいる友人はほとんどいなかったので、クラスの友人がアニメの話で盛り上がったりしてるのを内心羨ましがっていたけれど、もしかしたらアメコミファンにとってのそんな瞬間が楽しめる場はここなのかもしれない。様々な種類のオタクがいる中で知識マウントや派閥といったものもなく、10人程度で和気藹々とアメコミの話をするという夢のような体験ができて、このトークだけでも十分参加した甲斐があるような気がする。
初参加ながらその後の懇親会にも参加させていただき、玄人ファンからのアツい話もたくさん聞けて、本当に充実したイベントだった。
実際に対面でアメコミファンと話すことができて、何より感じたのは「自分はまだまだだったんだ」という思い。別にアメコミの読み方なんて自由だし、人と比べるものではない。それでも10年近くアメコミを読んできて、かつ周りに同志がいなかった自分は「自分は日本の中では相当アメコミに詳しいに違いない」と勝手に思っていた。
しかし現実はそう甘くはない。ビブリオバトルに参加されていた方々のほぼ全員が自分より遥かに読者歴の長い猛者であり、呼んでいる作品の量や幅はもちろん、読み込みの深さまで圧倒的に自分を上回っている。すごいと思ったのはもちろんだけど、少しの悔しさを感じたのも事実だった。トークの場でも、聞いたことがないようなコミックの話題が上がるたびに「アメコミは自分が思っていたより遥かに広い海だった」と気付かされる。ここ数年は何となく自分の読みたいジャンルを漁って全てを知った気になっていたけれど、コミックはもっともっと広い世界だった。改めてアメコミの深み、そしてコミックを読み始めた時のワクワク感を思い出すことができ、自分が見失っていたものに改めて気づかせてくれたような気がした。
それと同時に、もっと新しい世界への扉も開けたような気がする。懇親会の場で色々な方のお話を伺っていて、一番衝撃だったのは同人誌の存在だ。同人誌といえばアニメイベントで売ってるエッチな二次創作のことだと思っていたけれど、実際は様々なジャンルで解説本が出ており、ビブリオバトルの参加者の方々もアメコミの解説同人誌を出しているらしい。今回はそんな参加者の1人が無料で配っていた過去作の数冊と、購入させていただいたアメコミビブリオバトルの合同同人誌を読ませていただいたけれど、この文章が本当に読み応えがあるものだった。Twitterやnoteの分量に慣れていた自分にとって、小冊子を丸々使ってアメコミの解説をするという熱量はまさに圧巻。本当に楽しく読むことができた。そうなるとやっぱり自分でも出してみたくなりますよね…出してみたいな同人誌。そんなにすごいものが書けるとは思えないけれど、文字数やフォーマットに縛られずに好きなだけ好きなアメコミのことを書いてみたい。それが誰かに読んでもらえるのなら尚更嬉しい。また一つオタ活の新しい目標ができたようで、これからの人生が少し楽しみになった。
アメコミファンでも、普段から周りでコミックの話ができるという人はあまり多くないはず。思いっきりアメコミの話を聞いて、思いっきりアメコミのことを話す。そんなイベントがアメコミビブリオバトルだと思う。自分もまだ歴が浅いので、ぜひ一緒に楽しめる方が増えて欲しい。