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マーベルで振り返る僕の2024年下半期

前回に引き続き2024年の振り返りです。

七月:デーモン・ウォーズ

世界で活躍する日本人作家、桃桃子さんがマーベルで手がけたシリーズの待望の続編。本来完結したのは2023年の五月でした。

…いや読むのおせーよ!!!!!!!

普通のコミックはリーフが出たあとしばらくしてTPBが出るけど、このコミックはなんか大判の豪華版みたいなのが先に出版されまして…でそれを買い逃しちゃったせいで、やたら後に出版された普通のTPBを待つしかなかったという事情なのです…

「マーベルのキャラを妖怪としてデザインし直す」という試みは前作「デーモン・デイズ」以上に冒険していて、猫又になったブラックパンサーや蜘蛛そのものになったスパイダーマンなど、より人外デザインが増えたのも楽しかった。前作は主人公マリコが人間の世界で本当の自分を見つける物語だったけど、今作はさらに妖怪の世界にダイブしてマリコのルーツに迫っていくような話だったので、よりズブズブと桃桃子ワールドに沈んでいく感じが最高に楽しかった。

一応綺麗にまとまっているものの、もっとマリコがみたいから続編やってほしいな…それかマルチバースのなんやかんやでマリコが正史世界にきたりしないかな…「あなたがこの世界の蜘蛛助?ずいぶんよく喋るけど…」みたいなことを聞いてきょとんとするスパイダーマンとか見てみたいな。

八月:ロクソン・プレゼンツ:ソー

振り返り記事で2回目のソーの話題です。

マーベル・ユニバースの悪徳企業「ロクソン」がソーの著作権を買収し、資本主義マシマシの宣伝まみれでミームばかりのソーのコミックを出したら…という、去年出たマーベルのアメコミの中でも一番イカれてるであろう作品。「ソーは人々が語り継いだ神話から生まれた存在」という設定を使って「じゃあ地球でソーの物語を書き換えてしまえばソー本人にも影響が出るはず!」とまさかの方向に舵取りをして生まれたのがこのコミックです。普段何食べてたらこんな話思いつくんだ…

この作品はあくまで「作中世界でロクソンが出版したソーのコミック」という設定で、とにかくありとあらゆるところにロクソン製品の広告が紛れ込み、とにかくウケを狙ってミーム化させることでより拡散させるためにわざとアホなストーリーを作るという、現代の資本主義の暗い部分を突きまくっている構成。作中でロクソン社長ダリオ・アガーが「真剣なブランドはバカにされ、自虐ネタに走るブランドは簡単に消費者の頭に入り込む」と言っているように、このコミックのアホさこそが敵の真の戦略で、ミーム化して広がれば広がるほどソーが弱体化してしまう…という、一筋縄ではいかない凶悪な敵を描き出していた。

このコミックの真に恐ろしいところは、この理屈が現実世界のマーベルにも適用されているんじゃないかと思わされるところ。ロクソン版ソーの立ち振る舞いは、最初は真面目だったのに途中からギャグに振り切ったことでヒットした実写映画のソーにそっくり。ディズニーランドにてアレルギーの死亡事故が起きた際、故人がディズニープラスを利用していたため規約によって訴えられなかったという事件の後、パーク内のデッドプールがそのことをネタにしたという動画のコメントには、先ほどのダリオ・アガーのセリフが貼り付けられたりしていた。とにかく「バズり」が重要視されるこの時代、面白いからと拡散することの危険性と、いかに我々が資本主義の手のひらで踊らされているか、ソーというキャラの設定を上手く使いながら消費者に警鐘を鳴らす非常によくできたコミックだった。

九月:マーベル・アンリミテッド加入&Reach for the Stars

去年の出来事で一番重大なのがこれ。マーベルの定額読み放題サービス「マーベル・アンリミテッド」にやっと加入しました。

元々紙派だったけど、デジタル限定の面白そうなコミックがたくさん出てきたので我慢できなくなってついに電子書籍に移行。これまで月に50000円弱アメコミに使っていたのが、マーベル・アンリミテッドでは年間7000円ちょいで済むので、もうこれはお財布的に大革命でした。

何より一番大きいのは、アメコミが一気に身近になったこと。これまでは紙のコミックで読んでいたから家にいる時しか読めないし、当然読むためにはコミックを買いに行かなければならないから「購入」という心理的ハードルがあったけど、マーベル・アンリミテッドはどちらの問題点も綺麗に解決してくれた。通勤中にコミックを読めるし、値段のことを気にせずに読みまくれるというのは本当にストレスフリーで楽しいアメコミ体験だ。

月に何冊と新刊が出るマーベル・コミックスはよほどの人気作品じゃないとTPBの再販をしてくれないから、これまでは泣く泣く読むのを諦めていた作品もあったけど、基本何でも読めるマーベル・アンリミテッドのおかげで「いつか読みたいから再販してくんないかな…」と思っていた作品群もついに読むことができました。本当にこれは大革命。

あと九月の思い出といえば、東京ディズニーランドに初めてマーベルの要素が入り込まれたキャッスルプロジェクション「Reach for the Stars」が始まった。

これまで国内でディズニーにずっと冷遇されていたマーベルがやっとパークに加わるということで、自分も開始直後に見に行った。ティザー画像にいるアイアンマンとキャプテン・マーベルが出てくるだけかな?と思っていたら、とにかくいろんなキャラがいっぱい出てきてかなりびっくりした。正直映像自体はキャラ紹介ビデオ的な感じで設定もめちゃくちゃなんだけど、日本のディズニーがしっかりマーベルを前に出してくれるようになったという感動で結局最後は泣いちゃった。ここまでくるのに本当に長かった…

十月:アルティメット・ユニバース本格始動

十月はこれと言って大きなイベントはなかったけれど、先月マーベル・アンリミテッドに入ったことでバンバン準新作が読めるようになり、特に楽しみにしていたアルティメット・ユニバースのタイトルを読み漁ってました。

アルティメット・ユニバース超面白いです。「打倒メイカーのためにヒーローたちを復活させる」という本筋を追いかけていくアルティメッツとスパイダーマンは、両者やんわりと繋がりを見せながらもそれぞれ別の方向で世界と闘っていく様子が壮大だし、X-MENとブラックパンサーは本筋からは距離を置きながらも、従来の設定に縛られない新たな自由な世界観で作者が描きたい物語を描いていく感じ。やはりしがらみがないというのはそれだけ物語の可能性に深みを生み出すんだなあと再確認させられる。

僕のお気に入りはアルティメットX-MEN。前述のデーモン・ウォーズと同じく桃桃子さんが描く独特な世界観も好きだし、元ネタとはほぼ別物というくらい既存キャラにぶっ飛んだ魔改造を施して出してくるから、とにかく先が見えないワクワク感がすごい。すでに新シリーズのアルティメット・ウルヴァリンも発表されているし、そろそろ全体を巻き込んだクロスオーバーとかもしてきそうで楽しみが尽きないシリーズゆえに、今後もしばらく楽しみが続きそう。

十一月:ロサンゼルス旅行

十一月はまた今年度分の長期休暇でロサンゼルスに旅行に行ってきました。ディズニー好きの友人と二人でアナハイムのディズニーランド・リゾートに行き、念願のアベンジャーズ・キャンパスにやっと行くことができた。

もうこれは本当に、ただひたすら楽しかった!アベンジャーズ・キャンパス内はランダムにキャラが徘徊していて、三日間で15人以上のキャラと写真撮れました。ディズニーランドのキャラって正直大人のコスプレ程度にしか考えてなかったけど、いざ本場を目の当たりにすると動き方からセリフまで「本物だ!」と思わされるクオリティで本当に感動した。これがプロの技術か…!

ミズ・マーベルみたいなMCUでは割と新しめなキャラもいた。このカマラ朝イチで写真撮ったらそれ以降すれ違うたびに手振ってくれてファンサマシマシ。

アナハイムのパークには「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:ミッション・ブレイクアウト!」というフリーフォール型のアトラクションと、「ウェブ・スリンガーズ:スパイダーマン・アドベンチャー」というシューティング型のアトラクションがある。どちらも超楽しいし、それぞれ元になっている映画が自分の高校時代ドンピシャなこともあって、いろんな思い出も蘇ってきて最終日はボロボロ泣いてしまった。特にガーディアンズの方は絶叫系ということでビビり散らかしてたけど、爆音で音楽は流れるわ周りのお客さんのテンションは高いわ、叫んで歌って超楽しい最高の体験だった。「一回行ったから…」と言わず、来年も再来年もまた行きたいと思うパークでした。

アトラクションの前でダンスのパフォーマンスをやってたガモーラとスター・ロード。日本だと恥ずかしくてできないけど、アメリカだと周りがバンバン踊るからすごい楽しかった。

三日間ディズニーを満喫した後、最終日は軽くロサンゼルス観光。正直僕も友人もディズニーで燃え尽きていたので「観光は行きたいとこ回ってぶらぶらすればいいか」くらいのテンションだった。

本当に当日の朝その場で予定を決めて、とりあえずホテルに近いからと、ロサンゼルスでも有名なコミックショップの「ゴールデン・アップル・コミックス」に向かう。

お店に着くと何やら店前に長蛇の列が…「もう開店時間はすぎてるよな…?」と不思議に思い、並んでいる人に何かあるのか聞いてみると「ジェド・マッケイのサイン会をやってるよ」とのこと。

ふーん、サイン会で並んでるのね…

…ジェド・マッケイ!?!?!?!?!?!?

ジェド・マッケイ。今やアベンジャーズとX-MENというマーベルの二台看板両方の作家を務めている、とんでもない売れっ子ライターである。僕は上述の二つはまだ読めていないものの、彼が担当していたブラックキャットとムーンナイトの大ファンで、今マーベルで活動しているライターの中では5本の指に入るくらい好きな作家だ。

そのジェド・マッケイが本当に来ているのか…?店員さんに「買い物?サイン会?」と聞かれて勢いよく「両方です!」と答えて、状況が分からず横で見ていた友達の了解も得ずに列に並び始めてしまった。

どうしよう何も知らなかったからサインをもらうコミックを持ってきてない。お店に何か売ってないかな。というか全然心の準備ができてないし何を話していいかも分からないし、配信待ちゆえにまだムーンナイトを最新号まで追えていないぞ…と勝手に列で葛藤し、ぽかんとしている友人にマッケイ作品の良さをベラベラ喋っていたら、前に並んでいた40代くらいの女性が声をかけてくれた。

二十代の息子がコミックファンで、彼のためにサインをもらいにきたという彼女と近くのご飯屋さんや選挙の話など色々なことを聞いていたら、どうも先日まで近くでコンベンションをやっていたらしく、現地のコミックイベントの様子を教えてくれたりした。僕は引っ込み思案で知らない人と話すことなんてほとんどないけど、こういう場所で縁ができるとすごく温かい気持ちになる。やっぱり人との交流はいいなーと、これまでの緊張がかなりほぐれていった。

いざ店頭に入るとゴールデン・アップル限定カバーのブラックキャットのコミックが売っていたので即購入。実際にジェド・マッケイに対面すると、かなり大柄だけどニコニコと優しそうに笑う方だ。日本から来たこと、サイン会のことは知らず偶然タイミングがあったこと、今は持っていないけどメリー・ジェーン&ブラックキャットが大好きなこと…とにかく思いつく限りのことをカスのような英語で頑張って話だけど、とにかくニコニコして全部聞いてくれた。自分たちの前にも相当の人が並んでいたはずで、ずっと立ちっぱなしだしかなり疲れるだろうに、嫌な顔ひとつせずに話してくれる姿から優しさが伝わる。

交流が終わった後しばらく店内をぶらぶらしていたらどうやら列が途切れたようで、ちょうどムーンナイトの限定カバーを買ったところだったからもう一度サインをもらっていいか聞いたら快くサービスしてくれた。この頃はムーンナイトが死亡し、謎の黒い偽物ムーンナイトが新たに登場していた時期。「偽物ムーンナイトの正体、全然知らないキャラでびっくりしました」と伝えると「シュラウドっていう昔からいるキャラだよ、マキシミリアン・コーネリッジっていう世界一かっこいい本名だったから出したんだ」と冗談混じりに語ってくれた。本当はもっといろんなことを話したかったけど、もう頭が真っ白なのと英語が全く出てこないとで、とにかくありがとうと伝えて離れた。最後ジェドが店を出る際はわざわざ店内の僕を見つけて肩ポンして挨拶してくれて、最後の最後まで本当に温かい人だった。間違いなく今年、いやここ5年間で一番嬉しかった思い出。ありがとうジェド・マッケイ、アベンジャーズもX-MENも読みます。

マッケイ作品でも僕が一番好きな「メリー・ジェーン&ブラックキャット:ビヨンド」の紹介を書いた記事。ていうか絶対面白いので実物を読んでください!

あとは映画「アイアンマン2」に登場したドーナツ屋さんを見に行った。「あの上でトニーがドーナツ食べてたなー」と思いながら、なかなかお腹に来る重さのドーナツを食べてロサンゼルス観光終了。一生思い出に残るであろう最高の旅行でした。

十二月:東京コミコン&マーベル・ライバルズ

十二月といえば東京コミコン!今年も大好きなアーティストさんがいっぱい参加するということで、僕もだいぶ前からかなり楽しみにしていた。

まず向かったのはミヤザワタケシさんのブース。だいぶ前に読んだのにミヤザワさんの作品だということに全然気づいていなかった「シークレット・インベージョン:ランナウェイズ/ヤング・アベンジャーズ」にサインとリマークをもらった。ヤング・アベンジャーズで一番好きなのは本当はパトリオットなんだけど、素顔は髪ないしマスクは顔全部覆うし…と結局スタチュアを描いてもらうことにした。

ミヤザワタケシさんの新旧絵柄が並べられて非常に満足。次はコミッションも頼みたいな。

次に向かうのは「デーモン・ウォーズ」や「アルティメットX-MEN」を担当している桃桃子さん。ちょっと遅れて並んだらとんでもない大行列ができていて、結局桃子さんブースでのリマークは逃してしまった…悔しい…でもとにかくいろんなコミックにサインしてもらえたので目標は達成。アホみたいに緊張してたのでカチカチになりながら「アルティメットX-MENいつも楽しみにしてます!」とひたすら伝えてた気がする。

アルティメットX-MENで登場した完全新規キャラ、メイストームが初登場したカバーにサインをもらえたのが超嬉しい。辛い家庭環境を持ちながらも友人には常に明るくて親切なメイ、今一番推してるキャラかも。可愛さと怖さが両立しているからこそ、それぞれをより際立たせている桃桃子作品大好きです。

実は今年は桃桃子さんブースとは別に、アメコミの邦訳本を出版しているShoPro Booksのブースでも桃桃子さんのイベントを開催していて、ブースで邦訳版「デーモン・ウォーズ」を買うと各日先着30人限定で桃桃子さんにリマークを描いてもらう企画を行なっていた。普通にイベント開催時刻に到着していたので間に合わないかと思ったけど、そこそこ早歩きで向かったら何と14番目でリマーク参加券ゲット。めちゃくちゃ嬉しくてスタッフさんに超笑顔でありがとうございますって言ったら笑われた。

本当は主人公のマリコにしようと思ってたんだけど、前に並んでいた人が2人連続でマリコを頼んでいたので急遽変更。前作「デーモン・デイズ」巻末の短編に登場したエレクトラを描いてもらった。相変わらずビビり散らかして何を言ったか全く覚えてないけど、一緒に写真まで撮ってくださってすごく温かいファンサービスをしてくれました。

そして今年の東京コミコンで一番楽しみにしていたのがスウィーニー・ブーさんに会うこと。マーベルで直接仕事はしていないけど、マーベルとIDWの合作である「マーベル・アクション:キャプテン・マーベル」の絵が素敵で前々からファンだったアーティストだ。今回唯一事前に連絡してコミッションを依頼していたので、とにかく楽しみで仕方がなかった。

「マーベル・アクション:キャプテン・マーベル」に出てくる大量の猫ちゃんが超可愛かったので、猫繋がりでブラックキャットをオーダー。「せっかくカラーでお願いしてるのに色少ないキャラ頼んだの勿体無いかな…」と思っていたけど、スーツや白髪をインクの濃淡で綺麗に描いていて、改めてフェリシアでよかったなと感動。薄く残る下書き後や修正後、色の濃淡で筆使いを感じると、やっぱり生の絵は違うなと思う。高い買い物ではあるけど、本当に嬉しい。

そしてもう一つ十二月に起きたことで、現在進行形で僕を狂わせているのが対戦ゲーム「マーベル・ライバルズ」のサービス開始だ。

このゲームとにかく作り込みがすごくて、コミックの話をうまくゲームの背景に組み込んでいるのがキャラ同士の掛け合いやステージの装飾からわかる。「デーモン・デイズ」の世界からそのままやってきたサイや、「ソー&ロキ:ブラッド・ブラザーズ」の設定を引き継いでソー側とロキ側で闘うアスガルドのステージ、僕の大好きなドニー・ケイツ担当期の衣装をスキンとして使えるソーとドクター・ストレンジ…などなど、オタクのツボをオラオララッシュしてくるマーベル愛に溢れた作品になっている。

オンラインゲームとしてもかなり人気なようで「マーベル知らないけどゲームは好き」という友人が結構大勢遊んでいるのも嬉しい。中にはこれをきっかけに映画を見始めた友達もいるし、普通に知り合いの口からスクイレル・ガールの名前が飛び出すことが衝撃すぎる。マーベルのオタクをやっていると日本で話の合う人を見つけるのはかなり難しいけど、元々の友人とこんな形でマーベルのキャラを見て盛り上がれるとは思ってなかったので、これまでにない興奮を味合わせてくれたと思う。

マーベルのメディアミックス展開といえば今までは実写化ばかり注目されていたけど、マーベルのオタクもコアなゲーマーも喜ばせている「マーベル・ライバルズ」に新たな可能性を感じた。この調子でゲーム業界もバンバン盛り上げていって欲しいな。

以上、僕の2024年の総振替でした。今年はテーマパーク、映画、ドラマ、アニメ、ゲームと、例年以上にメディアミックス展開が盛り上がっていた気がするし、より多くの人にマーベルに触れてもらうことができたんじゃないかと思う。自分の中でもマーベル・アンリミテッドに加入してほぼ無限のライブラリーからコミックを読めるようになったことで、またオタクとして一歩先に来たなという感じ。イベントにもバンバン参加して今後一生忘れないような出来事もあったので、非常に充実した一年でした。来年もこの調子で充実したアメコミライフを過ごしていきたいと思います。

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