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秋、草臥れた1週間の記録


10月28日 金曜日

大学2年生の頃から通い始めた医療脱毛、6回コースの最終回の日を迎えた。

病院は大学の近くにある。もう半年以上行っていない大学の最寄駅に到着すると、同じ大学の後輩とみられる学生達が大勢乗り込んできた。
君たち、若いね。私もそうやって通ってたんだよ。教科書重いだろうに、お疲れさん。

私は自分が大学に通っていた頃を思い出すと悲しくなる。別に悲しいことがあったわけじゃないけど。キャンパスに通っていたのはたった1年だけで、その後は3年の冬頃自発的にキャリアセンターに行くこともあったから、大学といえば冬のイメージがある。
空きコマ、食堂のラーメン、六法全書、S棟、小テスト、駅からの長い坂、教授の研究室で食べたアイス、図書館の会議部屋、自販機のカフェオレ
ウイルスの存在なんてまだ誰も知らなかった。


病院で施術が終わり帰ろうとしたところ、いつも使っているバスが30分後まで来ないことに気づいたため、別のバスで帰ることにした。
このバスは高校時代の3年間使っていたバスで、3年半前に大学に入学してから利用することはほぼなくなっていた。

あの頃、いじめられていたわけでもなければ勉強が思うようにいかないことに悩んでいたわけでもなかったけど(思うようにはいかなかったけれど、悩んではいない)、何となく「人生嫌だなぁ」と思っていた。
閉塞感だった。登校すると真っ暗な北向きの正門が待ち構え、教室と廊下が窓一つないコンクリートで隔たれていた母校はいつも息苦しかった。


帰ってお風呂に入って本を読んだ。
この人のいる時代に生まれて良かった。死ぬなら私よりも必ず後にして。私が一生この人の新作を楽しめますように。
明日はバイトなので早く寝る。




10月29日 土曜日

朝起きてバイトに行った。お昼に帰ってくると祖母がうちの庭の花に水やりをしていた。
スマートフォンの操作が分からないから私に教えてもらいにきたとのことだ。

祖母は最近、運転免許の更新の際に必要な試験に合格するべく勉強を頑張っている。
朝起きて一度目の勉強、お昼ご飯を食べて少し休憩したら二度目の勉強、夜寝る前最後に復習をするらしい。
私と母は「ガリ勉かよ」と爆笑したが、祖母は「試験に落ちたら車に乗れない、車に乗れなければどこにも行けないんだから!」と真剣だった。
世の中の高齢者はここまで必死に勉強するものなのだろうか。
就職してからもテスト勉強をする夢をよくみたという祖母は、勉強がそこまで苦ではないようだ。
「じゃ、あたし勉強しなきゃいけないから帰るわ!」と言って颯爽と帰っていった。


午後からは猫の病院に行く予定、だった。
母が猫を抱いて、私が車を運転する計画だった。家の玄関を出てから病院に到着するまでの手順と動線の確認に時間をかけすぎたのがいけなかった。いざ猫を探すと物置のハンガーラックの下、1番奥に隠れて出てこなくなってしまった。スムーズに猫を連れて行こうとするばかりに私たちが慌ただしく準備をし、鞄を持ち、マスクまでつけて準備万端になっているのを見て猫は不穏な空気を感じ取ったのだろう。
こうなってしまうともう連れ出すことはできない。色々試したが結局出てこないのでもう今日はやめようとなった。
諦めて母が部屋着に着替えたのを見た瞬間、猫はあっさりと出てきた。何なんだよ、おまえ。

夜ショッキングな出来事があって、見ようと思っていた映画が見られなかった。25時に近づいていたので寝る。




10月30日 日曜日

朝からバイトに行った。休日だから混んでいた。今のバイト先はエアコンの温度設定がバグっているので馬鹿みたいに寒かった。頭痛がした。帰りに買い物をして帰ろうと思っていたが、なんか疲れたので真っ直ぐ帰ることにした。

家に帰ってからすぐにお風呂に入った。冷房で全身が冷え切っていた。お風呂から出たら夕食を食べて、映画を見ようと思ったけれどなぜかすごく疲れていたので10時に寝た。




10月31日 月曜日

朝、歯医者に行った。先週親知らずを抜いてひと針だけ縫ったので、糸をとってもらいに行った。
帰ってきたら先日Amazonで購入したヘアアイロンが届いていた。夏頃からずっと欲しかったものの、2万円もするので躊躇していた。ところがつい最近例のマイナポイントで思いがけない収入があったのでそのポイントで購入した。

わーい



午後から久しぶりに会った大学の友人とテニスをした。私は普段運動しないので、久々に動いてものすごく疲れた。15分ほどラリーをして、その倍の30分休憩する、というのを3セットほど行った。私が休憩している間も友人はずっとサーブの練習をしていた。

友人はもともとテニスをやっていたわけではないのでサーブがなかなか入らなかった。私はソフトテニスをほんの少しだけやっていた(といってももう7年ほど前のことだが)ので、休憩しながら「こうしたら?」とめちゃくちゃで適当なアドバイスをしていた。途中から面白くなってきて、「ボールの位置が低いよ、もっと全力で上に投げて」と言ってみたら友人はサーカスかよというくらい高く投げていた。その姿はもはやテニスではなかったので爆笑した。楽しかった。


家に帰ってから自分の部屋で休憩していたが疲れすぎて寝てしまった。こんなに疲れて動けなくなったのはいつぶりだろう。化粧を落としていないから寝てはいけない、と思いつつも起き上がる気力がなかった。24時過ぎに意識を取り戻したのでなんとかお風呂に入った。そして再び寝た。




11月1日 水曜日

筋肉痛。雨。バイトに行かなければならない。項垂れながら支度した。昨日届いたヘアアイロンの素晴らしさによる感動と、バイト先に着くまでの電車で座れたことで疲れが少しだけ取れた。

バイト先に高校時代の同級生が来た。向こうは気づいていなかったけど、私は学生証ですぐに気づいた。懐かしいな。


バイト終わりに友人へのプレゼントを購入しようと思っていたが、そんな気分ではないので気になっていたパン屋に行った。パンはどれも高かった。パンってこんなに高かったか?メロンパンとアイスティーを注文して席に座った。

カフェでひとりで座っていると、就活時代を思い出した。私はいつも面接の前、早めに会場の最寄り駅に到着して近くのカフェで時間を潰していた。茅場町のドトール、梅田のサンマルク、お茶の水のスープストックには何度も行った。「もしこの会社に入ることになったら、このカフェに昼食を食べに来たりするのかな」などと考えていた。当時は入った店で何かを食べることはできなかった。

結局、私は最終面接までオンラインで行われた会社に入ることにした。もしいつかあのカフェを訪れることがあれば、なんか泣いちゃうかもな。


帰ってからお風呂に入った。その後の記憶はあまりない。最近無性に疲れる。お腹が空いていても何かを食べようという気にならない。もう疲れた。帰りたい。家にいるのに。




11月2日 水曜日

先日のテニスの疲れがまだ残っていて、目が覚めてもベッドから降りる気にならなかった。

昼過ぎにやっと下に降りていって、朝食兼昼食をとった。今日は夜、友人とご飯を食べにいくので着替えてメイクをする。
正直言って私はメイクが嫌いだ。

昔の方がまだ、自分の見た目に気をつかうことに興味があった。髪の毛を巻いたりするのが好きだったし、月に五万円は洋服に使っていた。いつからか髪を染めなくなり、服屋に行っても何を買えばいいかわからなくなった。


友人との約束は18時過ぎだったが、彼女へのプレゼントを購入するために15時半頃駅ビルに到着した。無事プレゼントを購入したら17時半になっていた。少し疲れたので、カフェオレを買ってソファで時間を潰すことにした。疲れた時は何かジュースを買って飲みな、と昔から母親に言われている。私は普段お茶しか飲まない。


友人と海鮮のレストランに行った。去年私たちはレストランで5品ほど注文して食べ切ったのに、今年は3品でお腹いっぱいになってしまった。
その後夜までやっているアイス屋さんに行った。途中の道のりでホストの人たちに声をかけられまくって怖かった。ビビりすぎて走ったせいでアイスの上に乗っていたブラウニーを落とした。そしてそれをホストに見られた。
田舎者の私たちは22歳で初めてブイヤベースを食べたし、夜に繁華街の路地には入ってはいけないことを学んだ。



家に帰って友人からもらったお菓子を食べながらぼーっとした。友人に会って話したり街に出かけるのは楽しいだが、その時間が長ければ長いほど普段の静かな生活に戻るための心を落ち着かせる時間を長く要する。もともと暗い人間なのだ。周りの友人達が明るいところに引っ張ってくれているだけで。

ラジオを聴きながら寝た。

11月3日 木曜日

朝からバイトに行った。
年中休日状態の私は祝日だということを忘れていた。電車もバイト先もものすごい人の量でイライラしながら笑顔で乗り切った。結局他人からの好意以外の感情に打ち勝つものは笑顔しかないと、この4年間で学んだ。
それでもイライラしてしまうものはどうしようもない。お前ら全員帰れよ。もう嫌だ、誰もいない部屋で本読みたい。

帰りに白菜とえのきとお団子を買って帰った。
家に帰ったら爆睡して夜の9時過ぎに起きた。最近こんなことばっかしてるな。
夕方に帰ってきて夜まで爆睡し、一度起きてから本格的に寝る、というルーティンは高校生の頃よくやっていた。懐かしい。

ネットで買った本が2冊届いていたので1時間だけ読んで寝た。

今週はすごく疲れた。気温の変化のせいなのか、もうすぐ人生の夏休みが終わってしまうという漠然とした不安からくるものなのか、自分でもわからなかった。

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