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スキャナー内の星空と東京の思い出

うちにはスキャナーがあった。
しかもEpsonのハイエンドスキャナーだ。
過去形なのでもうないのだけど、元々は現像したネガをスキャンするために購入したものだった。

モノクロは自分で現像することがあるので、それをスキャンするためにも必要だったのだ。

最初はかなり悪戦苦闘して、スキャンのプロセスを身につけ、自分でデータ化していたのだが、やはりどこまで行ってもラボのクオリティと手軽さにには敵わず手放してしまった。

気を抜くと埃やチリが入り込み、写真にうつってしまうのでスキャンを行う前に入念にブロアーを使用する。

それでもものぐさな自分は撮り絵を確認したいが故にとりあえずスキャンすることが多々ある。
なんとなく持ち歩いていたコンパクトカメラに入っていたネガなら尚更だ。

そんな写真には埃チリが入りまくり、小さな点となって現れてくる。

「なんか宇宙っぽい」

友人が写真を見てそう言った。

自家スキャンをやっている人からすると一番避けたい事態なのだが、言われるとその点たちが空に浮かぶ星っぽくも見えなくない。

埃やチリも見方によっては星空となるか。

東京で出会った何気ない日常に、雑なスキャンが星空を少々。

代わりに鎮座された我が家の観葉植物たちを見て手放したスキャナーの行方とその中の宇宙のことを考えるのであった。









K

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The Naked Writer
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