ロラパルーザ・ブラジル2019 総括
どうも。
行ってきましたよ。
ロラパルーザ・ブラジル2019。今年で8年連続になりましたけどね。今年もすごく楽しく、かつ、すごくためになるものでした。
もうサンパウロでは町をあげての超有名イベントで、今年も3日で24万人も集まってましたね。
だいたい、いつもこういうイメージですけどね。
例年、紹介の仕方はいろいろなんですけど、今年は1日あたりの長文のレポートはやめて、手短に要点だけを付く形にしたいと思います。
<各日のベスト・アクト>
もう、いきなり、核心からついちゃいましょう。今年の各日のベスト・アクトはこんな感じでしたね。
<初日>The 1975、セイント・ヴィンセント
<2日目>キングス・オブ・レオン
<3日目>ケンドリック・ラマー
この4つは、かなり良かったと思います。中でもベスト1選ぶなら
THE 1975かな、やっぱ!
何が良いって、去年のアルバムの絶好調ぶりをそのまま反映させたライブでしたからね。以前の彼らって、「曲は素晴らしいんだけど、まだライブは弱いな」ってのが本音としてあったんですけど、今回のライブでは、1曲1曲どんな形で見せたら良いのかのコンセプトが全曲にわたってハッキリしてましたね。とりわけ新作からの曲はほとんどがすでにMVがある、もしくは今後制作されそうな人気曲ばかりで、見事にイメージを再現してましたね。モニターに映し出される、CG、そしてネット検索で登場しそうな映像資料の数々が「ネット社会のまさに今の瞬間」を映し出しているようで、ライブ空間を、従来の遮断されたものでなく、外に開かれた開放的なものにしていたところにはすごく新しさを感じましたね。
あと、とうとうというかマティの歌声がかなり芯の強い感じになりましたね。ひ弱さが消えました。あと、彼らの場合、マティとドラムのジョージ・ダニエルの双頭バンドの印象が強かったんですけど、今回のライブではギタリストのアダム・ハンが多くの曲でキーボードを担当したり、サポート・メンバーのサックス、そしてキーボード兼サイドギター兼バック・ヴォーカルの2人がだいぶ目立つようになってきましたね。彼らがどう曲を組み立てているのかがすごくわかりやすくなってきたし、バンド内部の有機性がかなりハッキリするようになってきましたね。
あと、セイント・ヴィセントもさすがでしたね。今回のツアーでは、とうとう彼女のみがステージに立つようになりましたが、黒のボンテージにショート・ボブ、そして女性の体の形をかたどった彼女なりのオリジナル・ギターモデル。この姿で、エレクトロのグルーヴと、モニターに映し出されるCGアートとともに、フリーキーなギター・ソロの数々と、「未来のロックンロール」として表現仕切っていたのが良かったですね。今のロックの見せ方としては、これ、最新モード、しかも女性がやってるところにすごく意義を感じましたね。
この2つが、もう「今現在」のライブ表現としてあまりに上出来だったんですよね。そこに比べると、この日のヘッドライナーだったアークティック・モンキーズは見せ方の工夫がなかったですね。披露する曲の完成度そのものは高いんですけど、もともとライブそのものは丁寧さやダイナミズムには欠けるタイプではあったし、今回はそれに加えて、内容は素晴らしい中身ながらファンのウケが良くない新作をなかなかうまくセットリストに組み込むのに苦労していた。そこのところの微妙な計算とケミストリーがいまひとつだった気がします。
本人たちも、それがなんとなく歯車が合ってないことをわかっていたんでしょうかね。アークティックの今回のツアー、このロラパルーザの後、コロンビアのフェスに出演したので終わっちゃったんですよね。ワールド・ツアー開始から1年経たず、さらに言っちゃえば日本に来ずに終わるという(泣)。いくら日本が他の国より反応できないことが多い国であっても、アークティックに関して言えば、デビュー・アルバムが出る前にプレゼンのライブで来日したり、セカンド・アルバムの時点でサマーソニックのヘッドライナーやったりと、初期から熱心だったわけで。なんか寂しいですけどね。
2日目、3日目はともにヘッドライナーがベストでしたね。キングス・オブ・レオンは改めて見直しましたね。今回、ウケの悪かったヘッドライナー候補に変わって急遽代理を頼まれての出演だったんですよ。しかも、ツアーも特に行ってなかった「オフ」の状態。そんな中で、安定感抜群の客の集中力も極めて高かった充実のライブを届けてくれたのには驚きました。貫禄ですね。あのバンドの場合、ケイレブのソウルフルな歌いっぷりが優れているのはすぐに分かることかと思うんですけど、2013年のツアーからマシュー・フォロウィルのギタリストとしての腕が急速に上がって、ライブアクトとしてはかなりの域に達してるんですよ。2010年代だけでサンパウロに4回来てるほどブラジルでは人気のKOLですけど、アルバムでの評判とは裏腹に、ライブはかなり良くなってます。日本の人たちにも知って欲しいです。
あとケンドリックもさすがですね。僕は「DAMN」そのものは、1st、2ndアルバムほどジャスト・フィットではありません。やっぱ、もうちょっとジャズっぽいというか、バンド・アプローチのサウンドで彼は聞きたいというのがあるので。でも、そんなこと関係なしに、やっぱりラッパーとして優れてましたね。弛緩する瞬間が全くないんですよ。フローのブレが全くないし、「よく腹筋続くよな」、と思わせるすごく長いフローもある。リズムのつけ方、感情表現もいろんなタイプに適応させるのが可能だし。やっぱり、自分の人生で見たラッパーの中では実力ナンバーワンな気がしましたね。
<敢闘賞もの>
ブリング・ミー・ザ・ホライズン、グレタ・ヴァン・フリート
上の4つに近いライブをやったといえば、この2つですかね。
BMTHは愛おしいライブでした。ヴォーカルのオリー・サイクスは奥さんがブラジル人なんですよね。そういうこともあって、MCが ポルトガル語。彼、ものすごい努力家なんだなと思いましたね。
あと、メタルコアとエレクトロの振り切り方が両極端なのも面白かったですね。こんなことやったバンド、見たことないですけど、それをやって軸がぶれないところがすごいです。あと、バンドNo.2のキーボードのジョーダン・フィッシュ、彼の存在感が大きいですね。たとえているならThe XXにおけるジェイミーXXのようというか、彼のキーボードやパーカッションの存在が完全にバンドの現在をコントロールしてますね。あと、曲間で踊るクネクネした踊りもいい感じです。
あと、グレタ・ヴァン・フリートですが、言いたいことある人は多いんでしょうけど、僕はそういう意見はどうでもいいです。このバンド、ツェッペリンに似ていようがいまいが、今年23歳と19歳のバンドとは思えないくらいに、根本的に演奏、かなりうまいですよ。バンドの基礎体力値、かなり高いです。だから、その年齢で3日目のトリ前だったというのに、安心して見て入られましたからね。見た人の感想も「カランバ!」「カラーリオ!」と、「すごいもの見たなあ」を意味するポルトガル語を、終演後のトイレでたくさん聞きましたもん。彼らに対して「あんなオリジナリティのないパクリバンド」なんて言ったところで誰も聞く耳持ちませんよ。「ツェッペリンの影響のある、今どき珍しく骨のある凄腕の若手」の印象が崩れることはないでしょうからね。文句をつけるだけ無駄。芽を摘まずに若い可能性を育てていく方が大事だと思いますよ。
<ワースト>
そんなの言うまでもなく、彼ですよ(笑)。ポスト・マローン。
ポスティですけど、いやあ、予想以上にひどかったですね。彼、売れっ子なもんだから、かなりの人が集まってたんですよ。4万人くらいは彼のために集まったんじゃないかな。その観衆を前に、カラオケ!しかも彼、肩書きはラッパーじゃないですか。ラップなんてないですよ。ただ、マイクに向かって、歌、ガナり立ててるだけですからね。いくらなんでも、これはないですよ。
やっぱりブラジルのオーディエンスでも面食らった人、多かったみたいですね。「ステージに楽器がないってどういうこと」って書いてるツイッターも結構見ましたし、カラオケに徹するなら、歌かラップか、どっちかがせめてうまい必要があるんですけど、それは下手くそだは。ついには、ブラジル人のロックファンが一番嫌うタイプの、ダンス系のアーティストをステージに上げて共演までやっちゃたんですよね。
僕、たまらず3曲で退場しましたけど、後で聞いた話、途中での民族大移動、ハンパなかったらしいです。それでも、「今、世界で流行ってるから」みたいな感じで、王様が裸ということに気づかずに魅了されてる人、多かったみたいですけど、こんなの「裸の王様」以外の何物でもないですよ。自信持って言いきれますよ。20年前にすごくそっくりな存在がいたから。フレッド・ダーストっていう(笑)。すごくハナにつく感じのパーティ白人野郎ね。あの時も、文句つけたら「時代についていけない負け惜しみ」みたいに反論する人いましたけど、今、誰が彼の音楽をまともに評価してます?それと同じことです。もっと言えば、ダーストの方が音楽的にまだマシです。
トラップをやりたいのであれば、もっと本物を連れて来ればいいじゃないですか。ミーゴスでも、トラヴィス・スコットでも、フューチャーでもいるわけで。これだと、ロック・フェスどころか、トラップに対しての冒涜でもありますよ。音源だと、なんとなくの聞きやすさである程度の緩和がなされるものですけど、これは生で見ると想像以上にキツいですね。
<会場の雰囲気>
会場は、もう3日とも全然雰囲気違いましたね。初日はすごく暑かったんですけど、2日目に大雨。しかも「雷が落ちる」って噂が流れたんで、午後2時20分から4時40分の間、客締め出して、さらに会場内に入れなくなったんですよ!
しかも待たされてる間、大雨降ってるし、雨合羽着てるだけで、満足な説明のないままただ待たされて。その間、アーティストによっては中止。スノウ・パトロールみたいなバンドまでセットリスト、半分かなんかにされてね。まあ、再開しただけマシではあったんですけどね。
で、3日目は雨の後の寒冷前線の影響で涼しかったんですけど、家路につくバスの中で突然大雨が降り出して、ビショぬれになったり。気候的にはかなり恵まれてなかったですね。
あと
やっぱり今年は極右大統領が就任したので、それに対してのアンチが多かったですね。やっぱ、ロックフェスなんで、どうしても左っぽいリスナーの方が圧倒的です。
この動画はポーチュガル・ザ・マンの登場前に、先住民が権利主張してるところです。彼らの生活区画が、人種差別者のボウソナロっていう、最悪のバカ大統領によって脅かされてるんですけど、それを受けて観客が「おいボウソナロ、クソでも喰らえ(これ、直訳して全くこの意味です)」という歌を大合唱しました。これ、今年のリオのカーニバルで流行った歌なんですけど、いたるところで3日間ずっと耳にしましたね。次のアーティストの出番待ちの時とか、曲の間とか、帰る時とか。これだらけでしたね(笑)。
<おまけ>
最後にこれでシメましょうかね。これは僕がツイッターで上げた写真でウケが良かったものです。
初日の昼最初のアクトだったバンド、The Fever 333のステージでのこと。彼ら、日本のテレビ出演した際にかなり熱いパフォーマンスを披露して話題になったようですが、ブラジルでもそれは同じでした。メンバー、いろんなとこ駆け回ってたんですけど
ギターの人、何を血迷ったか、こんな高いところまで上がってしまいました。実は、この高さでもギターの音は鳴ってですね。ジャーンと弾いた時に人々が気が付いて、「あっ!」と指差したらそこにいたという(笑)。みんな大爆笑して写真撮ってましたね。