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アメリカに「アリーナ・ロック」が蘇りそうな気配 その実態は?

どうも。

昨日がイギリスをやったので、今回はアメリカでのロック、やってみたいと思います。

イギリスに比べると、アメリカでのロックの人気の盛り上がり、まだまだですけど、前も話しましたけど、オリヴィア・ロドリゴがチャートの1位独占したりしてるうちに、だいぶ風向き、変わってきたように僕も思ってます。

 その象徴として、

アメリカの若い子の人気のバロメーターになってる、MTVのヴィデオ・ミュージック・アワードで、今年、本当にこれ、何年ぶりなんだろうな、ロックが久方ぶりに目立ったんです。フー・ファイターズが功労賞でパフォーマンスしただけじゃなく、ロックに転向したマシンガン・ケリーもエラく受けてましたしね。このときオリヴィアもパフォーマンスしてますけど、なんかこれ見てても「ロック、戻ってきてる?」という気になるんですよね。

 そして、アメリカのを見てて思うんですけど、

「アリーナ・ロックの華やかさ、求めてきてない?」

そう思えるできごとが、ちょっと続けてでてきているので、そのことについて話すことにしましょう。

まずは、これですよね。

こないだの全米チャートで、「シングルのトップ20に3曲、ロックバンドが入ったよ」という話をしましたよね?あれ、アメリカのチャート的にはものすごい画期的なことだと思っていて。ツイッターのフォロワーさんいわく「twenty one pilotsとルーカス・グレアムとDNCE以来5年ぶり」と教えてくれたのですが、今回のコールドプレイ、グラス・アニマルズ、そしてマネスキンという組み合わせの方が、より本格的なバンドっぽい感じ、しますよね?そうして考えると、もっと久しぶりの感があります。

 そして、マネスキン、とうとうアメリカでもシングル、トップ20、きましたよ!!

この「Beggin'」、Spotifyのグローバル・チャートで1位になってたのに、アメリカではなかなかチャートにあがってこず、その間に他の国ではチャート落ちてたんでどうかなと思っていたんですけど、さすがにカニエ・ウェストやドレイクの初登場で入ってた曲が一斉に落ちると、さすがに代わりに上がってきて、それで先週、19位を記録したわけです。

 この曲、ストリームだけじゃなく、今やビルボードのロック・チャートでも1位になったし、アメリカのラジオでも曲がかかりはじめてるんですよ。なので結構、チャート的にはこれで下がりにくくなったし、まだ上がってくるんじゃないかなと思ってます。

 実際、

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アメリカのロック雑誌、「AP(Alternative Press)」の最新号の表紙にもなってますしね。この雑誌、以前にニュー・メタルやエモを推しててキッズに部数稼いでいた雑誌で、長いこと存在を忘れてたんですけど、そこでこうやって表紙にも選ばれているわけなので、シーンの中で迎えようとする感じにアメリカでもなってるということなんだと思います。

そんな矢先に

マネスキン、まさに今日ですよ。ニュー・シングル「Mamma Mia」、出してきましたよ!これがまた、エラくかっこいいんですよ!曲調そのものは「I Wanna Be Your Slave」の第2弾的な感じではあるんですけど、ポストパンクとヒップホップをうまい具合にハードロック的に昇華させるのがうまいし、そうした音楽的なとこだけじゃなく、彼らのファン層になってる「年上の女性」を狙ったダミアーノの淫らなセクシー・キャラクターの演じっぷりも巧みですしね。本当によく計算されてますよ、この人たち。

ただ、このマネスキンって、イタリアから突然変異のように出てきたじゃないですか。だから、「シーン組もうにもなかなか難しくて、孤立するのかな・・」と思っていたのです

が!

ちょっと、ここにきて、チャートで気になる動きが出てきてるんですよね。

まず、そのひとつが

このターンスタイルっていう、アメリカはボルチモアのハードコア・パンク、というか、90sのグランジとかメロコアとかで始めた時の、メジャー・レーベルでのオルタナのタイプのバンドですね。このバンドが、ピッチフォークみたいな、「いかにもインディロック推奨」っぽいメディアから意外に大絶賛されただけでなく、ビルボードのアルバム・チャートで30位に入ったんです!

 これ、びっくりしましたね。だって、この前のアルバムまで、評判はいいものの200位に入ってなかったバンドがいきなり30位ですよ。これはなにか「動いたな」という感じが僕はしましたね。

 それからさらに

このスピリットボックスという、カナダの女性フロントのメタルコアのバンド、これがなんと、ビルボードのアルバム・チャートで初登場13位になったんですよ!これもびっくりしましたね。だって、これまで音源、ちょこちょこ出していたとはいえ、これがファースト・アルバムなのに、いきなりそんな高い順位なわけですから、「えっ、なにがあったの??」という感じですよ。

この人たちですね、これなんか聞くとすごくエヴェネッセンスっぽく思われる人もいらっしゃるかと思われますが、激しいとこはこのヴォーカルの人がデス声で叫んだりかなり激し目になります。僕はそれ以上に、エレクトロの部分がメタルの人のなんちゃってではなく、かなり本格的な完成度の高さなのが気になりました。デス声の曲が僕が推すにはちょっと・・なところは正直ありはするんですけど、完成度はすごく高いですよ、このバンド。

 こういうことが、マネスキンがシングル・チャートあがっているあいだにアルバム・チャートで同時に起こったんですよね。こんな動き、アメリカだと本当にいつ以来のことだろうと思って、ちょっと気になってます。

 あと、ついでにいうと、アイアン・メイデンの、僕もすごく褒めた「Senjutsu」ってアルバム、あれもですね、アメリカにおけるメイデンのアルバムの自己最高位(3位)を更新なんですよ。「なんかこれ、偶然じゃないよね」と思ってしまうんですよね。

 これ、「なんで起こってるのか」、僕なりに考えてみたんですけど

①ピッチフォーク推奨の地味なインディバンドへの飽き
②トラップ、エモ・ラップ独占への飽き
③ボウイの死、「ホヘミアン・ラプソディ」のヒットでの、往年のアリーナロックへの憧れ

 こういうのが重なったのではないのかな、と思います。

2000sの後半にエモ人気が失墜して以降、アメリカでもピッチフォーク推奨のインディバンドの時代になるかと思われたものですが、どうやらそれはアメリカ人には地味すぎた。というか、僕から言わせると、アメリカのインディ・バンドって、イギリスのスター・バンドよりもはるかに地味ですからね。ちょっとあの感じで音楽界の中心にいくのは難しかったと思います。しかもピッチの趣味なんて、とりわけ地味ですからね。

 で、案の定、若いキッズの人気を10年代の最初ならEDM、10年代後半のSpotifyの時代にはトラップやエモ・ラップに完全にお株を奪われた感じになっていたんですけど、それも似たようなものが粗製乱造されるようになってきてさすがに飽きてきた。

 その一方で、2016年にはデヴィッド・ボウイの死が社会現象的な話題になり、18年には「ボヘミアン・ラプソディ」の映画のヒットでクイーンの再評価が起きた。こういうことを経て、若い人のあいだでさえも、往年のアリーナロックを意識するようなことができていた。こういう状況があったのではないかと思うんですよね。

こういう状況下の中、たしかにマネスキンが台頭する条件は整っていたと思うんですよね。あのユーロヴィジョンの決勝のパフォーマンスで「ああ、探していたバンドはここにいたのか!」と思った人は絶対少なくなかったでしょうから。

 ただ、それが見つかったところで、それがやっとイタリアのバンドだったわけでしょ?それくらい、英語圏の近場にはいなかった。だから今は、「なんとなく華やかで、ラウドなロックらしいロックを聴かせてくれるもの」になんとなく軍配をあげようとしはじめているのではないかな」という気はします。

 ただ、「アリーナ・ロック」という場合に、同時に

保守的

というイメージがこれまでつきがちだった。これもまた事実だったと思います。

 実際、これ何回も話してますけど、90年代の終わりのリンプ・ビズキットとかKORNを筆頭としたニュー・メタルのブーム。あれなんかも、すごくミソジニーの強いマッチョなロックのイメージがものすごく強かった。それがウッドストック99での、ひとつのフェスで何10ものレイプ疑惑が浮上するようなロック史上最悪に近い惨事まで起こってしまった。アメリカがなかなかアリーナ・ロックに戻って行けなかったのは、あのトラウマもあったような気がするんですよね。

 だいたい、カート・コベインがグランジで打倒したタイプのメタルも、やっぱりホワイト・スプレマシー(白人優越)の強い感じの、ホワイトスネイクのミュージック・ヴィデオで顕著な成金主義的な派手さで、女はただ傍でセクシーに振る舞えばいいだけみたいな世界だったわけじゃないですか。そういう意味で「華やかさはあるものの、そこに戻るのはあまりにも古くさすぎる」ものではあったんですよね。

しかし!

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これのどこがマッチョでしょう(笑)。ダミアーノはストレートですけど、でも限りなくゲイっぽくふるまって、しかもステージ上では性を超えた恋愛の自由を高らかに訴えてますよね。しかも2番目に目立つメンバーは女性ですよ。

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 このスピリットボックスに至ってはフロントが女性ですよね。このコートニー・ラプランテという女性ですが、インタビューなんかを読んでてもかなりフェミニスト的な感じで、これまでのシンフォニック・メタルの女性メンバーにありがちな、「楽器としての機能性」に徹した感じでは全然なさそうです。

 あと、現状で「ホワイト・スプレマシー的でミソジニーなマッチョなロッカー」で最近台頭した人というのを僕は知りません。そういう人、でてきたら、今はメディアの方が真っ先に報じますからね。カントリー・シンガーでさえ、そういう側面を報じて批判しますからね。ロックでそれにひっかかるのって、皮肉にもさっき言ったニュー・メタルがやっぱ多くて。リンプの舎弟バンドのステインドってバンドのヴォーカルだったアーロン・ルイスなんかは筋金入りの極右で、南郡の奴隷売買の英雄の彫像撤去で怒りの曲歌ったりするカントリー・シンガーになってます。そういうのが、最近の若目のロックやってる人には今のところ見受けられないですね。

 だから、

アリーナ・ロックを変えていけばいいだけの話です!


 女性にもゲイにも非白人にもプレイヤーとして入っていける余地のあるアリーナ・ロック。そうなっていけばいいと思います。これが実現すれば、カート・コベインが抱えていた欲求不満もかなり解消されることになると思います。もう30年経ってるんだから、今こそトライすべきなのかもしれません。

ということで締めですけど、そういう「いつか、こんな風なアリーナロックになればいいな」という例でいきましょう。実はこれも先週、今週のビルボードのシングル・チャートで40位代にランクインしている、これ実はちょっと前の曲なんですけどね。今、注目浴びてあがってきてます、こちらで。ウィル・スミスの娘のウィロウとその彼氏のプロジェクトの曲です。



 










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