惜しくも10選から漏れた1~3月のアルバム
どうも。
3月は長くて5週ありましたけど、29日にようやく5週目終わりまして、ようやく1〜3月のアルバムの配信が終わりました。
というわけで、3ヶ月に1度も恒例、アルバム10選、今回もやりますけど、今回はもうリリース・ラッシュで大変でした。10枚はもうすでに選んでいるんですけど、それ以外に話題作がかなり漏れまして。
そこで今回、惜しくも入らなかった方から紹介していきたいと思います。これも毎回やって履いて、いつもは10枚なんですけど、今回は
このように12枚、紹介したいと思います。サプライズも結構あるかと思います。他の人だったら入れてるようなものも含まれているかとも思いますので。
では、まずはこちらから
まずはアリアナ・グランデの「Eternal Sunshine」、ケイシー・カスグレイヴスの「Deeper Well」から。
「え〜、ヒットもしてるのに入らないのかよ〜」と思っているかたもいらっしゃるかとも思います。僕も予想の時点では入るかとも思ってたんですけどねえ。アリアナの方は彼女にしてはブランクが空いた3年半ぶりのアルバム。彼女、アルバムはいつも安定していて、今回も曲そのものはいいし、ライトなソウル調でうまくまとまっているとは思います。最初は僕も印象良かったんです。ただ、ちょっと無難に作りすぎて耳に強烈に残る曲が少なかったんですよねえ。作品として破綻がない分、逆にアピールも足らなかったかな。
ケイシーの方は得意のカントリー、フォーク路線で、これはこの3月に突如浮上したカントリー、しかも女子カントリーブームでも有利かとも思われました。これもいいんです。正統派な感じで。ただ、あまりにも普通に作りすぎちゃってこれもインパクトに残らなかったんですよね。見直すかもしれないんですけど、年末までに強烈に思い出す曲があるかどうかですよね。
続いてはブリタニー・ハワードの「What Now」、そしてEmpress Ofの「For Your Considerarions」。
ブリタニーはあのアラバマ・シェイクスのヴォーカルの人です。10年代の終わりに「Jamie」という、オルタナティヴR&Bの傑作ソロ・アルバムを出したんですけど、アラバマ・シェイクスに戻らず、引き続きソロです。今回のアルバムではアラバマでのロック路線を生かしつつも、R&B、さらにはエレクトロ・ディーヴァ路線にも果敢に挑戦し、爆発力のあるヴォーカルとともにモダン・ディーヴァを目指した感じですね。1曲1曲はかなり完成度高いんですけど、なんか曲の繋がりが悪く、「この曲の次に何でこれ?」みたいなのが多少ありました。ただ、それでも良いアルバムだと思ったんですけど、これがなぜか売れてなくてですね。今回、レーベルをテイラー・スウィフトやノア・カーン手掛けてる大手のリパブリックに移籍したんですけど、冷遇されちゃったかなあ。確かにプロモーション、あんまり見なかったんです。
エンプレス・オブはロサンゼルスの中米ラテン系の子孫ですね。2010年代の半ばからいて、当時から期待はされつつも、女子のエレクトロ・ポップはちょっとライバルが多すぎるからか、果たしてレーベルの押しが弱いからなのか、年齢的に遅咲きだからなのか、なんか今まで目立たずに来てたんですね。ただ、今作に関してはすごく曲がよく書けてて、フィーチャリングに迎えたリナサワヤマやMUNAのフィーチャリングの曲がかなりのキラー・チューンな感じでよかったり、アーティストとしての成長を強く感じさせました。
続いてはともに70代の大ベテラン。一つは元ソニック・ユースのキム・ゴードンの「The Collective」、そしてもう1枚がジューダス・プリーストの「Invicible Shield」。キムはヒップホップのトラップのビートをソニック・ユースから彼女の中で脈々と続くノイズ・ロックを媒介にして過激に表現したアルバムで「本当にこれが70歳の女性!?」と驚かせていましたね。僕もびっくりしたんですけど、惜しむらくは曲が途中から同じになるんですよね。ただ、インパクトだけでいいなら10選に入ったかもしれません。
プリーストの方は、これまたメタルという、年齢的にかなり負荷のかかりやすい音楽性にもかかわらず、御年75歳のメタル・ゴッド、ロブ様ことロブ・ハルフォードの高音のキレが驚くことに70代になってから戻ってきてるのも驚くし、一番良い時のプリーストを彷彿させる小気味良いロックンロールが聴けるんですよね。世界的にも驚かれて、ヨーロッパ全土ではトップ10入ってましたけど、それも納得です。
続いてはUKロックの3枚、ヤードアクトの「Wheres My Utopia」、スプリンツの「Letter To Self」、そしてアイドルズの「Tangk」。
ヤードアクトはブラーとストーンズの理想的継承者というと、ファンキーなロックンロールをヒップホップのフィルター通して神経症的にヒリヒリした感覚でやってるのがかっこいいですね。軸がぶれてないだけに今後も楽しみです。
スプリンツはアイルランドの女性フロントのバンドで、これがデビュー・アルバムになります。今年の1月の初っ端のリリースだったこともあって結構話題になりました。そんな彼らなんですが、甘さ控えめ徹底ビターなグランジ型直情ロックで人気ですね。この手のバンドでは確かに上質です。もう少し曲がわかりやすくなって、掴める曲が出て来れば今後もかなり楽しみです。
アイドルズはもう、2018年以降のUKロックを引っ張る存在というか、
ある意味、リーダーになってもらわないといけないタイプのバンドです。ステージ上でのロックンロール、正統派パンクバンドとしてのライブ・パフォーマンスは圧倒的だし、孤高のリーダーとして君臨できるタイプです。ただ、ここのところ本人たちがクールで知的な方向性を求める傾向が強いんですよね。これもレディオヘッドを手掛けたナイジェル・ゴドリッチのプロデュースで、ブレイク当初のユーモアとぶっきらぼうさで暴れるタイプから、冷静で抑えめな感じでエレクトロの要素なんかも取り入れたりなんかもして、そこが従来のファンの間でだいぶ割れてるところなんですよね。この方向性が取れるバンドであるとは昔から僕もわかってはいます。そこも素晴らしいとは思うんですけど、でも、なんかスカッとは割り切れないですよね。
では残り3枚。これは実は選考の時点で10選に入りそうになったものたちです。
まず最初はスクールボーイQの「Blue Lips」。彼はケンドリック・ラマーの盟友として知られ、もともと良作出してる人でした。前作が正直いまひとつでそこから作品出てなかったのでどうしたかなと思ったらこれで復活ですね。新鮮味こそないですが、もういかにもなオールド・ソウル・トラックがメインのオルタナティブ・ヒップホップ。そこにトラップ以降のビート感覚混ぜてそれを先に進めようとする試みも感じます。こういう作品がメインストリームで増えてチャートにもっと多様性が出れば良いんですけどね。
続いてはエルボー。つい先日、全英チャートで1位になったばかりの「Audio Vertigo」。フロントマンのガイ・ガーヴィー、ときおりBBCでも番組持つくらいイギリスのロック界ではお馴染みの人なんですが、「イギリス人特有」のニュアンスが強すぎて少し入りにくいところが正直ありました。しかし、今回のアルバムは「アダルトなクラシック・ロック進化系」のイメージがすごくわかりやすく出て、つかみやすいです。そういうものとしてなら、彼らと世代そのものも近いはずの今のコールドプレイやザ・ナショナル、ウォー・オン・ドラッグスよりも僕は好みですね。こないだの金曜に話題になった某アルバムがきにいらなかったりしたら、これをいれる予定でした(笑)。
で、最後の最後まで入れようか迷ったアルバムがこれでした。アメリカの女性シンガーソングライターのソロなのかバンドなのか、ブライト・アイズと同じパターンと考えていただければ早いんですけど、アリンダ・セガーラのHurray For The Riff Raffの「The Past Is Still Alive」。これが惜しくも11位の立ち位置でした。あまり一般に知られている人ではないですが、僕は彼女のこと前から気に入ってて、2017年のアルバム、年間トップ10に入れてるんですよ。そのときはもっとルー・リードみたいなインディ・ギターロックっぽかったんですけど、今回はカラッとストレートなカントリーなインディ・ロック。ズバリ、3月に突如いろんな人たちが取り組んだカントリーに関しては彼女のこのアルバムはトップクラスに良かったです。もともとキャリアの始めもこっちよりなんですよね。で、それでいて血筋はラテン系で、たまにそっちも強調するという、かなり特殊で面白い人でもあります。なのに、ずっと売れないんですよ。覚えにくくて仕方のないアーティスト名のせいだと前から思ってるんですけどね(笑)。本名に改名したらいいのにと、よく思ってます。
では、10選は、日本で言うところの火曜か水曜にでも。