第66回グラミー賞ノミネート見どころ。女性ロックに画期的な年にも!個人的にはSZA推し
どうも。
発表されましたね。
はい。来年の2月4日に授賞式がありますグラミー賞。ノミネートの発表が10日に行われました。これについて語っていきたいと思います。
僕は以前から言ってますけど、グラミーに関してはあまり良い物言いをするタイプでは決してありません。20代の一番血気盛んだった90sの頃にオルタナとヒップホップ、無視された苦い思い出があるので。その頃にも思ってたし近年も思ってたんですけど、このアワード、選考基準というのがいまひとつわからなかったんですよ。どういう基準で誰が選んでいるのか。しかもそれが一般の音楽ファンの認知とそうとう違う。そういうものを信用しろと言われても出来なかったんですよね。
それが今年はだいぶ様相が変わってます。ひとつは、メディアの事前予想が今年、かなり増えたこと。そして、もうひとつがアーティストの側が自分がどの部門にノミネートの申告を行ったかを事前公表するようになったこと。多分これ、グラミー側が促したことだと思うんですけど、こういう努力によって、少なくともSNSをまめにチェックするような人にはグラミーが何を選びそうなのか分かりやすくなった。これは確実にあったように思います。
その結果、ノミネートの結果が、完全に納得の行くものではないにせよ、不自然さはだいぶ消えたものになりました。去年のノミネートも評判のよいヒット作がズラリと並んだノミネートになっていましたが、それは今年も続いていると思います。
ではまず、今年もっともノミネートを受けた人から見てみましょう。
最多ノミネートとなったのはSZAで9部門。
それから
フィービー・ブリッジャーズが7部門。そのうち6つをboygenius名義でされてます。
そして大穴だったのがヴィクトリア・モネ。彼女も7部門。あまり一般知名度こそありませんが、R&Bでかなり評判のよいアルバム出してて、僕も6月から8月の10枚に選んでましたね。
これに続いて、オリヴィア・ロドリゴ、テイラー・スウィフト、ビリー・アイリッシュ、マイリー・サイラス、ジョン・バティスティが6部門、ラナ・デル・レイが5部門のノミネートとなっております。
では、グラミーの主要四部門、見ていきましょうか。
最優秀アルバム
The Age Of Pleasure/Janelle Monáe
Did You Know That There's A Tunnel Under Ocean Blvd/Lana Del Rey
Endless Summer Vacation/Miley Cyrus
Guts/Olivia Rodrigo
Midnights/Taylor Swift
The Record/Boygenius
SOS/SZA
World Music Radio/Jon Batiste
最優秀レコード
Anti-Hero/Taylor Swift
Flowers/Miley Cyrus
Kill Bill/SZA
Not Strong Enough/Boygenius
On My Mama/Victoria Monét
Vampire/Olivia Rodrigo
What Was I Made For/Billie Eilish
Worship/Jon Batiste
最優秀ソング
A&W/Lana Del Rey
Anti-Hero/Taylor Swift
Butterfly/Jon Batiste
Dance The Night/Dua Lipa
Flowers/Miley Cyrus
Kill Bill/SZA
Vampire/Olivia Rodrigo
What Was I Made For/Billie Eilish
新人賞
グレイシー・エイブラムス
フレッド・アゲイン
アイス・スパイス
ジェリーロール
ココ・ジョーンズ
ノア・カーン
ヴィクトリア・モネ
ザ・ウォー&トリーティ
はい。ここでもSZA、オリヴィア、テイラー、マイリーが3部門。ボーイジーニアスとラナとビリーが2部門と、7大女性アーティストが一つの章を巡って争うという、近年、希にない展開となっています。
これに関して言えば、2023年の音楽シーン見たら、当然といえば当然の結果です。実際、勢いあったわけだし、音楽ファンで威勢のいいのもそういう層だったのも英語とかポルトガル語でもそうだったし、フェスで盛り上がる人たともそうでした。彼女たちが現在の音楽シーンを最も盛り上げるカリスマだから、、結果的にこうなってしまうのは僕も大いに同意します。
ただ、ここまで強い名前が女性で揃うと、票割れ現象が間違いなく起こりますね、これ。考えてもみてください。去年、ビヨンセがケンドリック・ラマー、リゾ、メアリーJブライジ、さらにはソウル・ミュージックということでアデルとかぶってしまい、それで他にライバルが被らなかったハリー・スタイルズに最優秀アルバムで負けてしまった。そう考えると
SZAが有利だと思うんですよねえ。R&Bや黒人女性ってとこで票が割れにくいでしょ、今年。
逆にこれ、テイラーにはかなり不利です。だって、フォロワーと目されているオリヴィアがいて、フォークロックがベースになってるボーイジーニアスもサウンド被るじゃないですか。ここが結構3つ巴だと思うんですよね。
あと、今年はアルバムが出なかった分、楽曲に特化できるビリーも手強いと思います。ただでさえグラミーとの相性、抜群に良いですからね。
ただ、気になる点を言っておくとジョン・バティスティとヴィクトリア・モネですね。
ジョン・バティスティ、ヴィクトリア・モネ、そしてこの人も5部門ノミネートされていますココ・ジョーンズ、この辺りがですね、上の女性陣に比べてヒットしてるとは全くもって言い難いにもかかわらず多くのノミネートを獲得した。ここ気になるんですよね。
去年のグラミーでのビヨンセの敗因分析の記事で、「現在のグラミーには、アダルト受けするタイプのR&Bを支持する強い固定層が存在する」ということを書いたんですけど、そこの固まった組織票、これが気になるところではあります。ここの層がSZAに入れてくれればいいんですけど、ここで無駄に票を分散させないか。
これ、なんでこんな書き方をするのかというと、ヴィクトリアがアルバム60位で「まあ低いけど批評媒体で話題になったから」という感じで、バティスティは104位で批評評価はいまひとつ、ココに関してはシングルが1度62位に入った以外はチャート実績ほぼゼロ。さすがにこの実績では受賞には抵抗あるんですよね。
去年、サマラ・ジョイというジャズの女性シンガーが新人賞受賞した時に彼女も商業実績何もなかったのに「歌がうまいからいいじゃないか」の理屈で押し切られたところがあるのですが、グラミー賞、歌唱コンテストではありません。1年を通じ、音楽作品を通じて、何をしたかが問われる賞です。無理やりノミネートして無理やり買って、売り出しに利用する感じに見えてしまっては意味がないですからね。あんまり言いたくないけど、バティスティが2年前に唐突に最優秀アルバム受賞してそう見えかねないポジションにいるだけにですね。しかも、会員母体での多さを生かして、そういうプロモーションに利用されるのではアワード自体の意味がないですからね。もし今度のグラミーでそういう独善的な結果が出たならば、この固定支持層、解体させるべきだと思います。
あと、今年意外だったのは
今年、アメリカでチャートを独占したカントリー3人男、左からモーガン・ウォレン、ルーク・コームズ、ザック・ブライアンが主要部門のノミネートを逃したことですね。とりわけ一番売れたウォレンはゼロ・ノミネートです!
まあ、人種差別発言にコロナ規則無視のウォレンが嫌われてるのはわかるんですけど(笑)、ロックとも結びつきの強いザックは下馬評では主要部門のノミネートで健闘するだろうと見られていただけに意外な結果となりました。
これに関しては少々やり過ぎかなとも思いますけどね。例年、主要部門にカントリー、最低1枠はあったから。これは逆に多様性を減らす結果になってる気がしますけどね。しかもウォレン以外は言動に問題ないにもかかわらず。
あと僕的にはミツキのゼロ・ノミネートは残念ですけどね。期限ギリギリのリリースでMy Love Mine All Mineの盛り上がりが対象期間にかからなかったのが響きましたね。
あと、メラニー・マルチネス、マネスキンもですね。この辺りはねえ、やっぱV系が批評ウケが悪いのと同じように、奇抜な見かけな人はアワード関係では損する伝統をそのまま受け継いでる感じはしますね。
ロック部門で女性の台頭
あと、今回のノミネートでよかったのはロック部門ですね。これも諸々見てみましょうか。
Best Rock Song
Angry/Rolling Stones
Ballad Of A Homeschooled Girl/Olivia Rodrigo
Emotion Sickness/Queens Of The Stone Age
Not Strong Enough/SZA
Rescued/Foo Fighters
Best Rock Album
But Here We Are/Foo Fighters
In Times New Roman/Queens Of The Stone Age
72 Seasons/Metallica
Starcatcher/Greta Van Fleet
This Is Why/Paramore
Best Alternative Music Performance
Belinda Says/Alvvays
Body Paint/Arctic Monkeys
Cool About It/Boygenius
A&W/Lana Del Rey
This Is Why/Paramore
Best Alternative Album
The Car/Arctic Monkeys
Cracker Island/Gorillaz
Did You Know That There's A Tunnel Under Ocean Blvd/Lana Del Rey
I Inside The Old Year Dying/PJ Harvey
The Record/Boygenius
ここに女性がたくさんなんですよ!
ボーイジニアス、ラナ・デル・レイ、パラモア、オールウェイズ、PJハーヴェイ、そしてオリヴィアですよ!!
この部門にここまで女性がノミネートされたの、間違いなく初めてですよ。
特に何がいいかって、まず一つは
ラナ・デル・レイがついにオルタナティヴ認定されたことですね!
彼女、デビューの時はインディ・メディアが先行して押してたのに、大きくブレイクしすぎたがためにポップ扱いになってたんですよね。ギターをフィーチャーする音楽でもないからそう思われてたんでしょう。
そこをこれ、今回彼女がいみじくも語っているんですが、「ノミネートは申請を自分からしてされるもの」だということに今年初めて気がついたんですって。それでおそらく、彼女の方からオルタナティヴを指定したのだと思われます。
このノミネートでリスナーの方が、最近とみに増えている彼女みたいなタイプの女性アーティストをロック系のアーティストと認知しやすくなった。これはすごく大きいです。
それから
オリヴィアもついにロック認定された!
これも大きいです。
これまでビルボードのロック系のチャートは気を利かせて彼女の曲を取り込んだりしてたんですけど、アメリカのロック野郎の偏見が強くてロック系のラジオでかけてもらえないなど妨害行為が多かったんですよ。これでグラミーという権威がロック認定を下したことで、ラジオ局もこれ、対応せざるをえなくなってきたと思います。
僕、今回これ、大きかったのは
ボーイジーニアスがアルバムのリリース2ヶ月前にローリング・ストーンでやった「スーパーグループ・キャンペーン」。これが効いたところは絶対あると思います。あのとき、年配の男性を中心にすごい嫌がらせ投稿、ものすごくたくさん見たんですよ。そこを推しきっての展開だったし、ふたを開ければグラミー7部門ノミネートですよ!今年を象徴する出来事だったと思います。
ただ、ロックに関してはノミネートだけで十分かな。主要の受賞に関してはSZAがとって欲しいです。R&Bを人種や従来のイメージを越えた次のフェーズへもたらした意義は大きいし、彼女なかったらNewJeansとかピンク・パンサレスもなかったろうし。テイラーの独占を止める意味でも必要でしょう(笑)。
今回は例年より楽しめそうです。