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日本のアーティストたちにとっての、音楽配信サブスクへの克服すべき3つの障壁
どうも。
今日は、このブログで何ヶ月に一回か話している気がします、「日本の音楽界のサブスク普及の遅れ」の問題、これをまた書こうかと思います。
そのことに関しては前回
6月にこういう話を書いたばかりです。このとき僕は、「アーティストがサブスクを解禁しようがしまいが自由だが、しないという自由を選択した場合、日本の音楽界にどういう影響が及ぶのか」ということを書きました。
まあ、「選ばない自由」は認めつつも、それはもう、今のこの時代に音楽界にとってプラス面はほとんどないよ、ということを延々書いたコラムだったんですけど(笑)、つい最近ですね
【賛否】川本真琴「サブスク考えた人は地獄に堕ちて」収益減嘆きネット議論https://t.co/06YQcSIm1N
— イザ!編集部 (@iza_edit) September 20, 2022
川本がツイッターでデジタル音楽配信サービスのサブスクリプション(定額聴き放題)の急拡大による収益減に言及。「文化破壊でしかない」「画期的で罪はない」などさまざまな議論を呼んだ。
こういうことがあったんですよね。この元ツイートは、今は削除されてるんですが、僕もRTして発言してます。まあ、「地獄に堕ちてほしい」の部分に関しては、サブスクの果たした「正の部分」をあまりに無視した、敢えて言ってしまいますけど、きわめて早計で全体を見ないで行った発言だったと思います。
ただ、彼女がこのように思う背景というものもあるとは思ったので、僕なりに考えて見ました。
ポイントは3つあります。まず
①言語が1国しか話されていない国はもともとサブスクは不利だ
これは間違いなく、あります。
少し前にSpotifyのマンスリー・リスナーの話をしましたが、今、これ、一番多いアーティストだと、エド・シーランで、その数、実に7900万人います。
もう、それだけの数、全世界にいれば、料率がどんなに低かろうが、間違い無サブスクでも億万長者のはずですよね。
まあ、今現在、世界のチャートに入っているようなヒット・アーティストだと、だいたい2000〜3000万人のフォロワーがいるものです。
あと、ロックのフェスでヘッドライナーを取るクラスなら、だいたい1000万人台ですね。「本国以外でも人気があれば」が前提にはなりますけどね。
が!
これが日本だとどうなるか。海外拠点ではない、日本から出たアーティストで一番マンスリー・フォロワーが多いアーティスト、今は藤井風で600万人台です。彼、今、バイラルでちょっとした国際ヒット出てますからね。その次がYOASOBIで500万人台。ヒゲダン、ADOで400万人台、ONE OK ROCKやKING GNU、米津で300万人台、宇多田ヒカル、星野源で200万人台です。彼らでさえこれくらいですから、やっぱり英語圏のアーティストとは、国内で人気マックスのアーティストでも到底かなわないところは正直なところあります。
でも、これは日本だけの現象ではありません。フランスとか、イタリアとか、ドイツとか、公用語になってる国が少ない地域で国内でしか人気がないと、だいたいこういう結果にはなってしまうんですよね。
でも、今名前あげた人だと、海外アーティストと比べてもフォロワー数、ひけとらないので、サブスクでも全然やっていけるレベルのはずです。
ただ、日本の場合、どんなに実績と人気があってもフォロワーが100万人こえないことがめずらしくないんですよね。スピッツ、ミスチル、林檎で100万人台、ユーミンが荒井時代と合計でやっと100万人台、サザンだと100万割って90万人台、BZで70万人台、ラルク、浜崎あゆみで50万人台とかですね。
もう、それ以下の知名度、人気になるとフォロワー50万人行かないんですよね。50万人台いかないとなると、これ、たとえば海外だと、ヒット曲のなかった通ウケのカルト・アーティストとか、インディのほんの一部だけでウケてるアーティストとか、そのレベルでしかないんですよね。そうなると、さすがに難しいといえば難しくはあります。
では、どうすればいいか。一番いいの
世界に目を向け、国際的なヒットを出す!
もう、これが一番です。
たとえば今、レゲトン流行ってますよね、全世界的に。あれはスペイン語だから公用語の国が多いのも幸いしてますけど、人気アーティスト、だいたい3000〜7000万人のフォロワーいるんですよ。これはさすがに強いですよね。それこそ、日本のトップ・レベルの人気アーティストの10倍以上です。
Kポップ。これも国際進出、すごいですけど、BTSで4000万人、ブラックピンクで3000万人。TWICE1000万人台、TXTで700万人台、セブチやストレイ・キッズで600万人台です。このあたりだと、全米アルバム・チャートのトップ10出してますけど、これくらいにはなるんですよね。
これ、日本だとどうか。
藤井風が今、tik tokでこの曲でバズってあたったのでリスナー数600万人まで増えましたけど、そういうことがあれば日本人アーティストでもリスナー稼げます。
あと、シティ・ポップブームが存在するのは本当でして、松原みきの「真夜中のドア」はSpotifyで1億5千回以上ストリームされてまして、これ1曲だけで彼女、マンスリーリスナーが200万人います。実質、国際的にも一発屋なんですけどね。
ただ、言い換えると、シティポップ・ブームだけだと到達してもせいぜいその程度の人数でしかないわけですけどね。まあ、それでも日本の中では相当立派ですけどね。
②日本国内でのストリーム数は、国民の熱意でまだまだかなり上げられる!
これもたしかだと思います。
そう思えるのは、たとえばブラジルの話をしましょう。ブラジルの言語はポルトガル語で、あと話してる国といえばポルトガルとか、アフリカの小さめな国とかで、人口にするとかなり少ない。実質、ブラジルが圧倒的に話者人口の多い言葉です。
ということもあり、スペイン語の音楽と比べると、世界に行き渡りにくいのはたしかです。南米の視点だと、まだレゲトン・ブームに置いていかれてる感は否めません。
が!
それでもブラジルの人気アーティストは、国内消費だけで500〜1000万人のリスナーがザラ!
この事実も見逃してはならないと思います。
たとえば、ブラジルのカントリー、セルタネージャっていうんですけど、これの人気デュオのジョルジュ&マテウス、1国しか消費されてないのに900万人フォロワーいますからね。再生回数が1億超えた曲も2曲あります。
https://www.youtube.com/watch?v=2hr7Uqu6G80
あと、日本のアーティストがSpotifyですごく弱い、「活動の終わった過去のアーティスト」でも、「ブラジルのザ・スミス」ことレジアオン・ウルバーナは、国内消費だけで300万人リスナーがいますからね。日本で同じ時期に人気あったのがBOOWYなんですけど、マンスリーリスナー数は30万人くらい。その差、10倍です。
カエターノ・ヴェローゾもだいたいレジオアンと同じくらいの人数で、エリス・レジーナ180万人、ミルトン・ナシメント150万人くらいと、過去の、基本的に1国消費のアーティストでも頑張ってます。日本だと100万超えませんからね、ビッグネームが。
この差はなにか。人口もあります。ブラジルの方が1・8倍位人口多いので。でも、やっぱり、サブスクやってる人数の差なんですよね。6月に書いたコラムの時に日本でのサブスク普及率は30数パーゼントと書きましたが、ブラジルって90%くらいなんですよ。もうCDはほとんど誰も買ってません。「選択肢」じゃ無く、「メインの音楽ソース」なんです。
仮に日本がブラジルと同じようなサブスクの利用になれば、それだけで全体のストリーム数は間違いなく押し上げられるはずなんです。リスナーの参加率と繰り返して聞く熱意次第でまだまだいくらでも変わりようがあるはずなんですよね。
③レコード会社による手数料搾取はないか?
あと、気になってるのは、これですよね。日本のアーティストは本来受け取るべき報酬をサブスクからきちんと得ているのか。
これはつまりこういうことです。通常のストリームで稼いだ金から、レコード会社がさらに搾取してアーティストに手渡していないか、ということです。
ストリームから得られる金もたしかに厳しいのはたしかではあります。Spotifyだと、1000ドル(約14万円)かせぐのに30万ストリームが必要ですから。日本でマンスリー・リスナーが50万人以内アーティストだと、1000万回聞かれた曲を持っててせいぜい1曲か2曲ですから、それだと、そんなに大きな金にはなりません。
これだけでもかなり少ないのですが、今日、更に気になるツイートを読んだんですよね。
ミュージシャンのサブスク収益性の問題は、サブスクの仕組みの問題ではなく、アーティスト印税の料率の問題なのでは。
— 水口瑛介 | Artifact Law Office (@eisukewater) September 23, 2022
レコード会社を相手に、料率が不公正だとして交渉すべき話なのではないかと思う。
サブスク配信なのに、CDと全く同じ1-3%のアーティスト印税で分配しているレコード会社が未だにあるけど、さすがに合理性ないのでは。
— 水口瑛介 | Artifact Law Office (@eisukewater) September 23, 2022
サブスク配信に限れば、今や30-70%という高い料率でアーティスト印税を支払ってくれるレコード会社も存在する。
— 水口瑛介 | Artifact Law Office (@eisukewater) September 23, 2022
安定的なファンがいるアーティストは、そういう会社に移ったり独立したりしてから、新作を出していく選択肢もあるのでは。
これ、びっくりしたんですけど、もし、これが本当なら、サブスクで1〜3%しかアーティストに金が入ってこないんだとしたら、そりゃアーティストの生活は無理ですね。
だって、全額もらってたってかなり少なめの報酬をそこからさらに30から100で割るわけでしょ?そんなの雀の涙に決まってるじゃないですか。
おかしいと思ったんですよね。なんで今やもう、欧米圏からはそんなに聞こえてこなくなっているサブスクでのアーティストの報酬問題が、日本でこんなにグズグズと尾を引きまくっているのか。日本のレコード会社のサブスクでの報酬取り分が国際基準に満ているものなのか。これは知られるべき必要があると思います。
でも、このシステム、儲かる人にはすごく儲かるシステムではあるんだなと思いましたね。だって、たとえばアークティック・モンキーズなんて、Spotifyで1億回再生超えた曲が23曲あるんですよね。1億回再生だと、仮に全額もらえるとして、4500万円くらいなんですよね。と考えると・・・・ですよね。彼ら、10億再生超えてる曲もあるので・・・。しかも、他のストリーミング・サービスの金も当然入ってくるわけだし・・・。そう考えると、レコード会社は仲介としていくらもらっているのか気になるところですよね。