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改訂版2010年代ベストアルバム. 50~41位

どうも。

改訂版2010年代ベストアルバム、続けていきましょう。ここからは10枚ずつの紹介。さらに言えば、ランクの横に()をつけましたが、これは前回、2019年に選んだ際の順位となります。

今回は50位から41位。このようになっております。

はい。どれもかなりの力作ですけど、50位から見ていきましょう。


50(26).The Suburbs/Arcade Fire (2010)

50位はアーケイド・ファイア。2010年のサード・アルバム「The Suburbs」ですね。このアルバムが出てすぐか直前かでマジソン・スクエア・ガーデンの単独成功させて、このアルバムで2011年2月にグラミー賞の最優秀アルバム受賞したんですよね。あの時は、「2010年代はアーケイド・ファイアの時代になる」と思い込んでたら・・・この順位です。もう、僕もこれに関してはガッカリですよ。その次の2013年の「Reflektor」でLCDサウンドシステムのジェイムス・マーフィーのプロデュース、さらには「サタディ・ナイト・ライヴ」のシーズン初めのパフォーマンスで特大ブレイク・・・と思いきや評価が微妙で、ローリング・ストーン誌にはフロントマン、ウィン・バトラーの傲慢なわがまま舞台裏大暴露記事をすっぱ抜かれます。似た話は何度か聞いてたので驚かなくはあったものの、それもかなりのダメージになり。2017年には不似合いなポップ路線の「Everything Now」がこれまでの絶賛当たり前が嘘のように酷評の嵐。その後も主要メンバーの脱退が相次ぎ、昨年2022年に復活を期した「WE」発表も本調子には程遠く、ついにはウィンがファンの女性へのレイプ疑惑で訴えられ、バンドナンバー2のレジーンとは離婚した状態でバンド継続・・と苦しい状況。2019年の年代ベストの際もだいぶ厳しくしたつもりで26位まで下げたつもりだったんですが、もう、ここがギリギリ正念場ですね。これ以上下げられないよう、起死回生の奮起が欲しいところです。

49(55).DS2/Future (2015)

49位はフューチャー。彼の2015年の出世作となりました「DS2」。アメリカだとトラップは昔気質のコアなヒップホップ・ファンにも厳しい意見が少なくなく、大手のサイトの批評で「フューチャーが諸悪の根源」と書かれたのも見たことあります。ただ、「真似をするやつ」はいくら責めてもよいとは思うんですけど、オリジネーターに関してそれをやるのはフェアじゃないです。それだけ特徴的で魅力的だからされたと思うので。「プルルルッ!」「ハナッ、ハナッ、ハナッ!(言葉テキトーですけど、こういうリズム、笑)」みたいなフロー、あまりに聞きすぎると大概で嫌になる(最近もうさすがにあまり聞かない)んですが、まあ、それが始まる頃はそこまで嫌じゃなかったものです。 僕自身も2020年くらいにはトラップ、ものすごく飽きてしまって聞かなくなってましたけど、今、このアルバム聴き返すと、あの、そのうち猫も杓子もやりだすようになる「ボーン、ボーン」って重低音がそこまで密閉感があるわけじゃなく、エレクトロっぽく軽やかなんですよね。ミーゴスなんて3人がかりでフューチャー一人の真似してたようにさえ思うんですけど、手本が回されれば回されるほど、作られていくものが劣化して行っていたのかな、と言う印象ですね。まあ、ギョーカイがブームをあまりにも引っ張りすぎたということでもあると思うんですけど、それで功績に傷がつくことはないでしょう。あと、ブームが下火となっていく中で、彼がこの先どうするかも気になりますね。

48(-).Chief/Eric Church (2011)

48位はエリック・チャーチの「Chief」。通常、カントリーにも必要とあらば気をつかっているんですけど、男性カントリーに関しては10年代、動きはあったんですけどジャンルを超えた影響が感じられなかったので前回は選びませんでした。しかし、20年代に入り如実に影響を感じ始めたので影響力を感じ始めているところです。2023年、全米チャートをモーガン・ウォレン、ルーク・コームズ、ザック・ブライアンのカントリー三人男が席巻しました。カントリー・メタルのジェリーロールやハーディーの存在もいます。いずれもロック色がかなり濃厚なものなんですけど、この現象は10年代のBroカントリーの時代からありました。もうサウンド的には70ねんだいどころか90~00年代のポスト・グランジ系のサウンドなんですけど、これが今のカントリーの主流です。アーティストに関しては玉石混淆でお勧めできるのはむしろ少ないんですけど先に上げたアーティストたちがこぞって影響にあげるのがエリック・チャーチとこのアルバムなんですよね。これはわかります。ロック志向のカントリーとしてはこれが一番音質がレス・プロデュースでソリッドでオルタナ・カントリーとか70sや90sのハートランド・ロックの質感に近いですから。それを象徴するのが名曲、その名も「Springsteen 」の存在ですね。ブルース・スプリングスティーンを聴いて育った青春期の追憶の曲ですけど、ボスのDNAはこうしたところにも継承されてることを示しています。

47(-).Cigarette After Sex/Cigarette After Sex (2017)

47位はシガレット・アフター・セックスのデビュー作。これはむしろ、現在のカルト・ヒット・アルバムですね。ロック絶不調の2017年に出て一部の耳の早い人の間で話題はなったもののチャート上位には行かず。ただし、いろんな国で注目されたのでワールドツアーはやってて、僕もサンパウロで単独公演見てます。次作でブレイクの期待かけたら売れず、そのまま忘れ去られたかと・・・思いきや、昨年ごろからtik tok人気で盛り上がり5年かけてビルボードのアルバム・チャートにランクイン。収録曲も「Apocalypse」で10億、「K」で5億ストリームなど、1億ストリーム超連発の大ヒット・アルバムと化してました。もう、このナルシズム全開のバンド名から、60sのファッション・モードへの偏愛と80sから90sのゴス、ドリームポップ、シューゲーザーと、過去への憧憬を拗らせた美大、専門学校生の美意識大爆発みたいな作品ですけど、このわかりやすさこどが同時に今のシューゲーザー・リバイバルを支えてる原動力になっているのは間違いないと思います。なんかノリが渋谷系っぽくもあるんですけど、おしゃれ音楽のある種の王道的でもありますよね。


46(-).Vibras/J Balvin (2018)

46位はJバルヴィン。前回の時にはレゲトンがまさかその後にこんなに全盛を迎えるとは思ってもいなかったので、その前段階を再検証。その結果、最も評価すべきアルバムがこれだったという結論に達しました。2018年に全米シングルチャートで16週1位になったルイス・フォンシの「Despacito 」がレゲトンの世界人気に火をつけたと言われますが、そのときに同じくグローバル・ヒットしていた「Mi Gente」収録のこれがアルバムとしては影響力が大きかったようです。Jバルヴィンはコロンビアきってのイケメン・レゲトン・スター。10s前半にはレゲトン界ではすでにトップスターでしたけど、このアルバムはラテンパワー大集結で、その後の多くのアーティストのブレイクスルーを予感させる内容なんですよね。プエルトリコのレゲトンの先輩のWisin&Yandelに、メキシコの女性ロッカーのカルラ・モリソン、ブラジルのアニッタ、さらにはスペインからブレイク直前のロザリアですよ!彼のなかですでにラテン・ユナイトの気持ちが強かった現れだと思いますね。翌年に彼はバッド・バニーと共演アルバム「Oasis」を発表。ラテン・トラップ路線だったバッド・バニーが南米、レゲトン回帰してさらに大きくなる起爆剤として機能した気がします。


45(31).I Love You Honeybear/Father John Misty (2015)

45位はファーザー・ジョン・ミスティの出世作ですね、「I Love You, Honeybear 」。2010年代はじめにインディ・フォークというブームがありましたね。一般ブレイクで思い出すのはマムフォード&サンズだったりルーミニアーズだったりするんですけど、ことクオリティ、さらに今後長くリスペクトされることになるであろう可能性で考えると僕はファーザー・ジョン・ミスティだと思います。サウンド・プロダクションの高度な緻密さと複雑さで言えば彼が以前にドラマーとして所属したフリート・フォクシーズが上だと思うんですけど、その分、彼にはフリート・フォクシーズがどう頑張っても書けないタイムレスなメロディが書けるというか、天性なものを強く感じます。歌声とメロディの組み合わせがすごくジャクソン・ブラウンみたいな感じでありつつ、時に懺悔調でさえある回想的で小説を紡ぐようなストーリーテリングの手法はジェイムス・テイラー的でもあり。半世紀近く前に世に登場したアメリカの優れたSSWのレガシーの現在なりの正統継承者というか。その意味で彼には長い目で期待できます。今回、USインディ勢には辛い僕のこのランキングではあるんですが、前回より多少落ちたものの踏みとどまったのはそういう才能ゆえですね。

44(83).That's The Spirit/Bring Me The Horizon (2015)

44位はブリング・ミー・ザ・ホライズン。2015年のワールドワイドでのブレイク作となった「That's The Spirit 」。僕の理解の中では2019年の時も今回も、10年代でラウドロックと言えばBMTHとゴースト、この認識は変わってません。ただ、前回はゴーストをトップ50入りさせてたところ、今回はBMTHの方を評価しました。なぜか。やっぱり、シーンのリーダーとしての自覚の強さですよね。この一つ前のアルバムでの「Can You Feel My Heart」で掴んだ感覚をアルバム全編で発展させたこのアルバムから、2017年にチェスター・ベニントンを失うことになるリンキン・パークと入れ替わるように、メロディとハードさとエレクトロによる実験性の高次元での調和を目指してたところがありますよね。そこにプラスして最近では、「Post Human」シリーズでの自分たちが気に入ったアーティストたちとの積極的なコラボとか、今年日本でキュレーションしたフェスとか見ても、やっぱこの世代のこのてのロックのリーダー格ですよね。ここ最近、バッド・オーメンズとかスリープ・トーケンとかメタルコア新世代も色々出てきてかなり大きくなりそうな状況出来てもいるから、その勢力の筆頭格になりそうな予感があります。ただ、それだけにバンドを変えた張本人、キーボードのジョーダン・フィッシュの脱退が本当に痛いんですが、それでもなんとかやってくれると信じてます。


43(81).James Blake/James Blake (2011)

43位はジェイムス・ブレイク。彼に関して言うとですね、ネット越しに日本での受け方を見るに「他の国よりもだいぶ過大評価かな」と感じることが少なくないです。なんか、アーティスト・オブ・ザ・デケイドに選んだようなメディアもあったでしょ?いや、いくら声の操りとかライブで驚かせたと言っても、「本国イギリスでさえ1位取れてなくてフェスのヘッドライナーばんばんとるとか、そういう人でもないのに、その評価はないんじゃない?」と思ってました。前回のランキングで81位とやたら低い評価なのは、そういう反発があったからだと思います。で、今から思うに、ちょっとそれは辛すぎたかなと思いまして、見直してみました。せめて50位には入れるべきでしたね。やっぱ、その才能が高く評価されてビヨンセやBon Iverとのコラボにつながったわけでもありますし、この時代を代表するプロデューサーにもなったかと思います。ただなあ、このアルバムが出る前に「Limit to Your Love」と、その前にインスト寄りのちょっと実験的なシングルありましたよね?あの2つを聞いてて、「これはめちゃくちゃすごいぞ!」と思って、その両面で期待してたら、「Limit〜」ほどよくない曲が続いて、僕が思ってた以上に歌うんで、ちょっと拍子抜けしたというか。その後もいいちゃいいんですけど、僕が最初に期待したような方向には行くこともなく、最近はなんかプロデュースでこなれぎたのか自身のアーティストとしてのオーラもなんか落ちてる気もするし。これだけ言ってるのにランク高めなのは潜在能力評価してるこそ。もうひと化けできそうな気もするんですけどねえ。


42(17).Blackstar/David Bowie (2016)

42位はデヴィッド・ボウイ。これは41位との連続ストーリーで読んでいただきたいです。2016年1月9日はそれはそれは辛い1日でした。ボウイの死去。それをその日の朝起きてパソコン開けて最初に目に入った単語がそれ。一瞬、目を疑って見返すと、もうそこからは悲劇悲劇。その日、普通に仕事ありましたけど、よく最後までもったなと思ったものでした。だって、その2日前に、出たばかりのこのアルバム、聴いたばかりだったんですよ。その最速レビューも前のブログで書いてます。その時に思ったのは、「もうイノベーターとしての選択はしないのかと思ってたら、自分の音楽の原点であるジャズに戻って新しい自分の音楽を追求したか」と解釈し、その新しい門出を祝福したい。そんな気持ちでした。そしたらそれが別れのアルバムだったとは夢にも思わなかったものです。この劇的な人生の幕切れも図らずも演出効果が出てしまい、あの死の反響はこの20年くらいだと並ぶ人いないんじゃないかというくらい大きく、このアルバムも本当に大絶賛されました。僕も、どこが良いかはさっきも言ったようにわかってたつもりだし、このアルバムのことを悪く言おうという気もなく、本作のことはいつも褒めていたつもりでした。


41(53).The Next Day/David Bowie (2013)

続いて41位もデヴィッド・ボウイです。先ほどからの続きです。ただ、あの死に際して久々にボウイを聴いたような人がですね、「死に際して数10年ぶりの傑作を出した」なんて言い方を、プロのジャーナリストの方でもしたのを見たんですよ。その時に「おい、嘘だろ!」と軽く憤っていたのも確かだったんですよ。確かにボウイ、スランプ長い時期ありましたよ。ただ、僕の中ではそれは、99年に「hours」ってアルバムを作った際に「世界を売った男」とか「ハンキー・ドリー」の、時期でいうとプレ・グラム期の作風に立ち返ったのを聞いて、すごくグッときたんですよね。で、その後の2002年に「Heathen」がそれを推し進めた路線で。僕、その時、意を決して彼がモービーとジョイントでやったツアー、ニューヨークまで見に行ってですね、もう、立ち姿のあまりのかっこよさに電流に打たれたみたいなショックまで受けてたんですよね。あの背筋のまっすぐさから、ディープな声でジョークを言って自分で笑う時の優雅なセクシーさ、そして当時55でしたけど、年齢を重ねたことで生まれる歌の枯れた深み。「これはもっと評価されるべきだ!」ってすごく思って。ただ、その時もその後2年くらいで体調の問題もあって雲隠れしてしまって、2013年、あの時、8年か9年待ったのかな、このアルバムで復活して、あの時も本当に嬉しくて。で、路線そのものも「hours」以降全然変わってないんですよ。なのにメディア、手のひら返して大絶賛して。「なんで、せめてHeathenの時にこの騒ぎにならなかったんだ!」と憤慨しましたもん。それがあった上で「Blackstar」で遅れて手のひら返しする人もいて。本音言うとですね、ジャズの新機軸も素晴らしいんですけど、このアルバムで聞かれる「Valentine Day」「The Stars (Are Out Tonight)」「Where Are We Now」といった円熟のクラシック・ボウイの方が、僅差ではありますが、やっぱり僕は好きだし、もう7年経ってるから本音言っていいよねと思い、告白しておきます。


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