映画「パワー・オブ・ザ・ドッグ」感想 「より現実的なブロークバック・マウンテン」はオスカーのジンクスを破れるか?
どうも。
今日は映画評行きましょう。これです!
現在、ネットフリックスで世界的に配信されています、「パワー・オブ・ザ・ドッグ」・これのレヴュー、行きましょう。
これ、現時点で来年3月のオスカーの作品賞の最有力候補とも目されているくらい評判の映画です。
はたしてどんな映画なんでしょうか。
あらすじにいきましょう。
舞台は1925年のカリフォルニア。大きな馬の群れを率いるカウボーイの兄弟フィル(ベネディクト・カンバーバッチ)とジョージ(ジェシー・プレモンズ)の兄弟は
未亡人のローズ(キルステン・ダンスト)が経営する宿屋に宿泊します。ローズはどこかトラウマを抱えた影のある女性なんですが、
やさしいジョージは彼女に気をつかい、やがて再婚します。
ローズには、すごくやせて、なよっとしたタイプの息子ピーター(コディ・スミット・マクフィー)がいましたが
給仕役で出てきたピーターを、マッチョなフィルは仲間たちの前でからかい、ピーターにはじをかかせます。
それから時は流れ、ピーターは大学に行き、ローズはアル中に陥る不安定な状態となります。
その間もピーターはローズの宿を訪れるのですが
ある日、「ブランコ」なる彼自身の心の師匠を誇りに語り続けるフィルがなにやらあやしげなことをしているのを見たピーターは
自分の心の中でなにかが芽生えるのを少しずつ抑えきれなくなっていきます。
そんな二人はやがて、一緒に馬に乗って行動をともにするようにもなり・・・。
・・・と、ここまでにしておきましょう。
これはですね
1967年に出た同名小説の映画化作品です。これを
ニュージーランドの孤高の女性映画監督ジェーン・カンピオンが監督しています。
彼女の名前聞くの、すごく久しぶりですがうれしいものです。彼女と言えば
1993年の傑作映画「ピアノ・レッスン」でオスカーにノミネートされた人です。あのときはホリー・ハンターが主演女優賞、まだ子供だったアナ・パキンが助演女優賞を受賞して話題になったものですが、それ以来のオスカー参戦になります。
この映画なんですけど
素晴らしいです!
これ主題的には
「ブロークバック・マウンテン」思い出すんですけど、これでの
こういう展開より、無理がなくて自然なんですよね。
20世紀前半という時代設定もあるんですが、
あくまでフィルとピーターの時の経過と共に進む微妙な心境変化。これに忠実に淡々ながら、すごくきめ細やかにリアルに描いているんですよね。
このあたりがやたらと「愛の深さ」を強調した「ブロークバック」の演出と違うところですが、そういうものがなくても「もしかしたらこいつ・・」という気持ちは見てて十分に伝わります。
これ、男性誌を読んでるピーターのシーンなんですが、こういう思わせぶりなカットがすごく効果的なんですよね。
これに関しては
コーディ・スミット・マクフィーのユニセクシャルな、美しい演技が光りますね。その当時からしたらすごく「女みてえだな」と揶揄された、今の世の中に生きていれば確実にゲイ認定されたタイプの男性をすごくリアルに演じきっていますね。
彼、10年前に「ぼくのエリ」でクロエ・グレース・モレッツと主役組んだあの少年ですけど、あの映画でも彼、やせっぽちで喧嘩の弱い内気すぎる少年を演じてましたけど、あれがそのまま大人になった感じですね。彼の好演のおかげで、この映画が作品のポテンシャル以上に生きてる気がします。
あと、カンバーバッチ、今回すごくいいですね。彼の場合、これまでどちらかというと知的イメージの強い役柄だったんですけど、今回大胆に、かなりのマッチョ野郎をリアルに演じてます。
コーディ、カンバーバッチ、この二人が今現在のオスカーの前哨戦でそれぞれ助演、主演で最大勢力なんですが、これ、勝たなかったら、僕、怒りますね(笑)。それくらい、この二人のケミストリー、見ものです。
あと
キルステンの復活がうれしい!
10代、20代の頃から圧倒的な実力がありながら、スポットライトやハリウッド・ライフに苦悩するタイプだからなのか、この10年、表舞台から去ってたイメージがあったんですけど、「苦悩する繊細な女性像」を脇でしっかりアピールしています。彼女も助演女優賞争いで今、2、3番手につけてる感じです。
この映画、映画レビューの総合ランキングやオスカーの前哨戦で、今、かなりリードしている状況なので、オスカーの作品賞が有力視されています。僕自身の本音で言わせてもらっても、ここ数年のオスカーの作品賞の中だったら2016年度の「ムーンライト」以来の出来だと思ってます。
が!
果たしてオスカーの作品賞、波乱なしでとれるかな?
この不安が、この映画に少しあるのもたしかです。
2006年のオスカーでゲイ・カウボーイ映画の「ブロークバック・マウンテン」は「クラッシュ」にまさかの大逆転負け。
2019年にネットフリックス映画の「Roma」も「グリーンブック」に敗れる波乱がありました。
「ゲイ映画」「ネットフリックス」。オスカーで弱い要素を、この「パワー・オブ・ザ・ドッグ」は持っているんですよね。
この2点を果たして克服できるか。すべてはここにかかってる気がします。
ただ、この映画、本当におすすめです。ぜひネットフリックスでごらんください!
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