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グローバル・ベストアルバム・プレイリスト(7)韓国の50枚

どうも。

では、グローバル・ベストアルバム・プレイリスト、第7弾、いきましょう。

これは人によっては嬉しい人いるんじゃないかと思いますが、韓国です。もちろんKポップ多めではありますが、その前の歴史からも拾った50枚になっています。

こんな感じです。

김민기/キム・ミンギ (1971)
Now/キム・ジョンミ (1973)
멀고먼길/ハン・デス (1974)
신중현과 엽전들/シン・ジュンヒョン&ヤップス・ジャンズ (1974)
제2집/サヌリム (1978)
한동안 뜸했넜지/サランクァ・ピョンファ (1978)
제7집/サヌリム (1981)
눈물로 보이는 그대 / 들꽃/チョー・ヨンピル (1985)
들국화/トゥル・グックア (1985)
푸른돛/シインクア・チョンジャン(1986)

韓国にも日本で言うところのGSに当たる存在はあるんですけど、やっぱ層の薄さと技術的なもの考えると、やはり紹介の最初は70sのフォークからがいいと思います。

韓国の70sのフォークは、この女性シンガー、キム・ジョンミが1973年に発表した「Now」と言うアルバム。これが国際的にカルト化したことが大きいですね。

ただ、韓国の場合、「第2の北朝鮮阻止」のための右翼軍事政権が存在した国ですからね。フォークはやはり軍事政権と戦った反体制のものがやはり大事です。その中心人物として、写真にもあげてるキム・ミンギやハン・デスはやはり重要です。

そして60sの頃からサーフからブリティッシュ・ビートに至る影響をエレキギターで表現してきたシン・ジュンヒョンも大事ですよね。

ただ、影響力の大きさで言うと

やはりサヌリムは重要です。韓国で初めて本格的に成功したロックバンドの大物。70年代後半から80年代前半に強い影響力持ちます。ここのフロントマンのキム・チャンワンという人は韓国のショービズの重鎮でもありまして、長寿の人気ラジオ番組を持ち、さらにたまに俳優やってます。「サイコでも大丈夫」の精神病院の院長さん、と言ったらわかる人、いらっしゃるかもしれません。

あと、チョー・ヨンピルですね。この時代の韓国の最大スター。僕も韓国のエンタメはリアルタイムでNHKが紹介してくれたことで知りました。渥美二郎が「釜山港へ帰れ」のカバーをヒットさせたので演歌(トロット)の人だと一方的に思われてるんですが、ここで選んだ7枚目のアルバム、かなりロックでニュー・ウェイヴな80s色満載のいいポップ作ですよ。

そして、サランクア・ピョンファ(愛と平和)やシインクァ・チョンジャン(詩人と村長)などもいいバンドなんですけど、80年代、軍事政権の終わり頃に重要だったバンドがこのトゥル・グックワ。時代を象徴するオピニオン・リーダー的側面が強かったようですね。誠実なフォーク・ロックのイメージですけど。

彼ら、その後も韓国の音楽番組で若い世代のKポップ・アーティストとのコラボなどで引っ張り出される映像、かなり見るんですよね。そういう意味でも影響力とリスペクトの大きさ、感じさせます。

사랑이 지나가면 / 깊은 밤을 날아서/イ・ムンセ (1987)
사랑하기 때문에/ユ・ジェハ (1987)
비리본다/ハン・ヨンエ (1988)
Oneday ll/オットンナル (1989)
김현철 Vol.1/キム・ヒョンチョル (1989)
빛과 소금/ピックア・ソグム (1990)
Myself/シン・ヘチョル (1991)
Seo Taiji & Boys/ソテジワアイドゥル (1992)
Seo Taiji & Boys ll/ソテジワアイドゥル (1993)
Gongmudohaga/イ・サンウン (1995)

ここの時代は、軍事政権が終わって、1988年のソウル・オリンピックを経て、国がこれから発展を遂げようかという頃。

まさにこの「応答せよ1988」の世界ですよ。あのドラマで聴いた曲がここでも反映されてます。ある種、「韓国の永遠の少女像」の一つになってるヒロインのトクソンが毎晩聞いてたラジオ番組のパーソナリティが、この団の最初に選んだイムンセという人。あと、番組のオープニング曲と、シーンに登場した衝撃が描かれるのが描かれるのがシン・ヘチョルという人です。日本のバンドブームとかバブルの時のJポップにそっくりなんですけどね、その曲。ちょっとビーイング系な感じというか。

この時期の韓国、日本でいうバブル期なんですけど、すごく今のシティ・ポップの原型みたいな感じのものが目立ちますね。韓国のオールタイム企画で必ず上位に入るユ・ジェハとかキム・ヒョンチョル、バンドのピックア・ソグム(The Light & The Salt)あたりはそうですね。その前のフォークの世代寄りではありますけど、デュオのオットンナルにもその要素を感じます。

ただ、この時代で最大のゲームチェンジャーといえば

やはり、ソテジワアイドゥル、英語表記でソテジ&ボーイズですね。

彼らはよく「Kポップの元祖」的な言われ方をします。確かにR&Bを歌って踊るボーイバンドということではそうでしょう。ただ、彼らがやった功績はそれ以上ですね。だって彼らは、韓国の音楽にニュージャック・スウィングやヒップホップの要素をストリートっぽさを去勢しない形で取り入れたパイオニアですからね。国民の持つダンス・グルーヴの意識そのものを変えたというか。さらにそこにミクスチャー・ロックの要素までをも取り込んで、ロックとして聞いても爽快な激しさまでをも表現した。曲によってはメタルですしね。あの90年代前半という時代の音楽的自由さをここまで体現できた例も珍しいし、それをまだ発展途上だった韓国のシーンでやりきったのが驚きですね。

Noizegarden/Noizegarden (1996)
We Hate All Kinds Of Violence/H.O.T. (1997)
Deli Spice/Deli Spice (1997)
하수연가/Crying Nut (2001)
All You Need Is Love/Jaurim (2004)
Garion/Garion (2004)
Baby Love/Humming Urban Stereo (2007)
Separation Anxiety/Nell (2007)
Most Ordinary Existence/Sister's Barbershop (2008)
Mirotic/東方神起 (2008)

この時代の韓国は、すごくこの頃の洋楽のそれと動きが近くなってますね。グランジ(Noizegarden)あり、ポップパンク(Crying Nut)あり、ブリットポップ(Deli Spicem,NELL)あり、ガールズ・インディ・ポップ(Jaurim)あり、渋谷系(Humming Urban Stereo)あり、ヒップホップ(Garion)ありで。

僕もリアルタイムで音楽聞いてて、韓国から入ってくるものってこっち方面のものが多かったんですよね。だから、「ああ、韓国も日本と似た路線行き始めてるんだな」と感じてましたからね、あの当時は。

むしろ、その当時にKポップはまだ発展途上の感じでしたね。H.O.T.あたりはソテジっぽいストリート感とメッセージ性引きずってて面白かったし、SESなんかはTLC意識しててアメリカっぽさ狙ってた感じはしたんですけど、それを日本に持ってくると理解されない。そんな感じでしたね。

そこで2000sにBoaと東方神起を日本に住ませて、そこで日本流を目指すんじゃなくて、日本にいながらアメリカのR&Bやボーイバンドっぽいことを追求することで日本でオルタナティヴなアイドル文化を築き始めた。途中くらいからですかね、やっぱ「韓国のアイドルの方が質が高い」みたいな声も聞こえるようになりましたからね。

で、

東方神起の「Mirotic」、これ割と国際的なKポップ史でも言及されるんですけど、ここら辺りを分岐点にする評論、多いですね。ここからKポップのトラックがティンバランドっぽいエレクトロ・ファンクっぽくなって、いわゆるバックストリート・ボーイズやインシンクみたいな、スウェーデンのソングライターによるダンスポップみたいな感じでは全くなくなりましたからね。

Oh!/少女時代 (2010)
Pink Tape/f(x) (2013)
The Anecdote/ E Sens (2015)
Odd/SHINee (2015)
Exodus/EXO (2015)
The Most Beautiful Moment In Life/BTS (2015)
Palette/IU (2017)
23/Hyukoh (2017)
Team Baby/The Black Skirts (2017)
Legend/Jannabi (2019)

で、2010年代に切り替わるくらいのKポップの勢い、すごかったですよね。

ちょうど時期も時期だったんですよね。欧米で、たった今、僕が言及したようなBSB以降のボーイバンドのカルチャーなんて完全に終わっっていたし、ブラック・ミュージックの業界でもヒップホップばかりで、踊ったり歌い上げたりする人がいなくなったでしょ?

そのタイミングがKポップが独自性もつのに都合がすごく良かったんですよね。ボーイバンド、ガールバンドというのが「ヴォーカルとラップとダンスによる総合芸術の場」みたいになって、サウンド的にも刺激的に実験できる場になりました。

やはりそこでSHINeeやEXOみたいにティンバランドの発展系みたいなサウンドに乗せてヴォーカル・スキルを思い切り高めるタイプとか、少女時代とかf(X)みたいにサウンドの変化球的な面白さで勝負する人たちとか、2NE1とかBLACKPINKみたいにヒップホップ色強めのガールズ・グループも出てきたり。そんな中で、

ヴォーカル、ラップ、ダンスの高水準さとバランス感覚で抜きんでたのがBTSだったのかな、と言う感じがしますね。とりわけ2010年代半ばくらいまでの、世界の人がKポップというジャンルの特異な成長の仕方を遂げていることに気がつき始めたタイミングではそうした実力がアピールしやすかったところもあったかもしれません。

この時代は韓国音楽そのものが完全に「イコールKポップ」みたいになってましたけど、その一方で

ヒョゴとかジャンナビみたいなバンドも輩出していて、決してKポップだけでは終わらせてはいないんですよね。それがこの国のシーンの一筋縄ではいかない面白さでもあります。


Every Letter I Sent You/ペク・イエリン (2019)
Map Of The Soul:7/BTS (2020)
The Album/BLACKPINK (2020)
Minisode1:Blue Hour/TXT (2020)
Nonadaptation/Se So Neon (2020)
To See The Next Part Of The Dream/Parannoul (2021)
January Never Dies/Balming Tiger (2023)
Get Up/NewJeans (2023)
Power Andre 99/Silica Gel (2023)
Right Place, Wrong Person/RM (2024)

ここはもう

バンタンとブルピンの国際的な無双があまりにもすごかったですね。だって、ただ単に「韓国の音楽を世界に紹介する」という次元で終わってなかったですから。もう、欧米の音楽シーンの中心に自ら入り込んで、欧米のファンのことを考えて、直接語りかける音楽にまで発展していたわけですからね。

バンタンならやはり、世界に広がったアーミーたちの意見を積極的に受け入れることで、稀に見るフェミニズムに応えられる音楽的な表現を獲得できたというか、従来の男性のロールモデル像を変えるくらいのところまで行きましたからね。歌、ラップ、ダンスの総合技術を持ったグループが行き着く先としては究極的なとこまで行ったんじゃないかな。それがあっての世界5大音楽市場でのアルバム1位であり、アジア人初のビルボード・シングルの1位だと思います。

あとブルピンは、アジア人として、国籍関係なく世界の女の子たちのオピニオン・リーダー、ファッション・リーダーにまで至ったわけですからね。その圧倒的なカリスマ性への支持ゆえにコーチェラのヘッドライナーも可能になったと思いますからね。

この2つの未曾有の成功があって以降、ビルボードのアルバム・チャートもコリアン・インヴェージョンというか、もう無数のボーイバンド、ガールバンドの名前を目にするようになりました。ただ、バンタン、ブルピンの域に行くのには至難の技だし、音楽的な画一化も目立ち始めて厳しいなと思えることも増えてはきてるんですけどね。

そこんところを、ちょっとロック色の濃いTXTだったり、ドラムンベースや2ステップのリバイバルにまで着目させたNewJeansとかがその突破口を見出していくのかどうかですよね。

その一方で、インディ・ロックやヒップホップで表現が注目される人たちが出てきてますね。パランノウルやSe So Neonみたいなコリアン・シューゲイザーとか、パク・イェリンみたいにR&Bとインディロックを自在に行き来するシンガーとか、サイケデリックなジャム感覚のあるSilica Gelみたいなバンドとか、オルタナティヴなヒップホップ表現の出きるBalming Tigerとか、むしろKポップよりこういうものの方が面白くなってきつつあるんですけど、その矢先に

バンタンのリーダー、RMが出してきた最新アルバムは、まさにそんな今の韓国音楽の行方が一つにまとまったような作品だったように思います。従来のKポップ的な表現が行き詰まりを見せつつあり、世界的なポップ・マーケットでHYBEを取り仕切るスクーター・ブラウンの目指す音楽ビジネスモデルも凡庸な中で、ヒップホップとして、また同じアジア人の先鋭的な表現者として何ができるか。そうしたものがここでは垣間見れます。

今回のプレイリストはこちらから聞けます。










 

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