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全オリジナル・アルバム FromワーストToベスト(第43回) メタリカ 13〜1位

どうも。

今週、音楽ネタ4つやりましたけど、ラストは久々にやります。3カ月ぶりかな。FromワーストToベスト。

今回のお題は、この人たちです!

はい。ニュー・アルバムが出たばかりですね。メタリカ。彼らの13枚のアルバムからワーストからベストを僕なりに決めていきたいと思います。

僕はメタラーではないので、メタル関連、何回かやってますけど、やるときはいつも緊張しますけどね。

では、早速ワーストからいきましょう。

13.Lulu/Lou Reed & Metallica (2011 US#36 UK#36)

ワースト1位は「Lulu」。ルー・リードとの共演作となった2011年作です。これはメタリカ・ファンのあいだでは非常に忌み嫌う人が多いですよね。「音楽史上のワースト」くらいに言う人も僕は知ってます。それに対して「異なるジャンルに対して敬意と理解がなくてナンセンス」と、そういう態度を嫌う人も同様に知ってます。ただなあ。これ、「異種格闘技の有意義性」を強く唱えるほどの作品とも思えないのも事実なんですよねえ。マッシュアップとも言えない、2つの全く違うレコードをずれて再生してるみたいな、妙な居心地の悪さがあって。レジェンダリーな組み合わせであるとは思うんですけど、ケミストリーが働いているとは残念ながら思いません。

12.Death Magnetic(2008 US#1 UK#1)

ワースト2位は2008年の「Death Magnetic」。これは違和感ある人、いらっしゃるかもしれません。「リリース当初、評判良かったじゃないか」と言って。ただ、欧米圏ではこのアルバム、ファンのウケはかなり良くないです。その理由にリック・ルービンのプロダクションがあげられてて、「あんなひ弱なドラム・サウンドなんてメタリカじゃない」という意見もかなり見てます。ルービンの場合、一切の装飾削ってむき出しにするサウンドなので批評家的には抜群にウケるんですけど、それが通用しない場合があるようですね。ただ、僕の場合は、サウンド・プロダクションそのものよりも、引き締まってかっこよさげに聞こえるサウンドの背後で鳴らされてる曲そのものが、このアルバム、すごく弱いんですよね。曲にフックがないというか。覚えられませんもん。このアルバムのツアーが終わった後、ここからの曲がライブで披露されないのも、そういうことなのかなと勘ぐりたくなります。

11.Load(1996 US#1 UK#1)

ワースト3位は「Load」。これは内容そのものがどうというより、あの当時の僕のがっかり感が反映されてますね。リリース当時、あの「ブラック・アルバム」の次のアルバムということで、「メタリカがスラッシュ、さらにメタルをも超える」みたいな感じで売り出して、本人たちも髪を切ってファッション変えて、U2の「アクトン・ベイビー」意識したアーティスト写真撮影したりして、「おお、そこまでオルタナに踏み切ったのか!」と思わせてたら、単に「ブラック・アルバム」をポップ化させたみたいなアルバムでちょっとズルッと来てしまったというか。バンド・アンサンブルから離れた何かでもやるのかと思いきや。それどころか、ミクスチャーとかインダストリアルとかに行ったわけでもないし。本人たち的には、「何かを超えた存在」に見られたかったのかな。これまでがうまい具合に枠超えて成長できてた人たちだったので。ただ、活路を見だしたのはそうしたところではなかったようですね。

10.Hardwired…To Self-Destruct(2016 US#1 UK#1)

ここからはトップ10なので、ジャケ写つきです。10位は前作の「Hardwired…Self=Destruct」。これは、時間こそかかってしまいましたが、結局のところ、これまでのキャリアで培ったものを内包しながら初期に戻った感じですね。この人たちは、やっぱり「曲」と、「かっこいい展開力」のバンドだと思うんですけど、キャッチーなフレーズとダイナミックさが戻ってきたのは良いことだと思いましたね。このとき、ちょうどロラパルーザでブラジルきたときライブ見ましたけど、過去の代表曲とのハマリも良かったですからね、ここからの曲。ただ、展開に関しては勢い余ってすごく長くなって、それでいて2枚組サイズなので聴くのすごく疲れちゃうんですけどね。ただ、バンドの状態は上向いてるのは確かな気がしましたね。

9.72 Seasons (2023)

そして最新作の「72 Seasons」がここにきました。先行シングルからモーターヘッドみたいな感じだったので、そこでちょっと期待はしてたんですが、曲のわかりやすさと小気味よさが前作よりさらにあるのは良いと思いました。ただ、ラーズ・ウルリッヒがインタビューで語ってた、「このアルバムから試してることがある」というのが何なのかまでは、ちょっと僕はわからなかったかな。あと、リック・ルービンとやったときに、従来のサウンドいじったときの反応が強すぎてそれでやりにくくなったのかなとは思うんですけど、プロデュース的にもう少し工夫があってもいいのかなとは思います。そうしないと、「これを出すだけのために7年も時間、かかっちゃうわけ?」というファンの物足りなさは解消しないとも思うので。この路線ならもう少し早いペースが必要かな。

8.Reload (1997 US#1 UK#4)

8位は「Reload」。いわば「Load」とは双子の関係ですが、僕はこっちの方が好きなんですよね。こっちの方が、この人たちらしいメタルが割り切った感じであるというか。オープニング・ナンバーの「Fuel」での「give fuel,give fire」のジェイムス・ヘットフィールドのつかみのダミ声シャウトとか、ものすごくキャッチーでかっこいいですし、やっぱライブでも映えるじゃないですか。そこもそうなんですけど、ジェイムスがいい味出してるんですよね、このアルバム。「Unforgiven II」が顕著ですけど、バラードすごくうまくなって。初期の声量がなかった頃と比べるとそこは格段の違いで、低音生かしたカントリー風味の歌い方なんて、昨今のコンテンポラリー・カントリーにかなり影響与えてるんじゃないかと思いますからね。あいだにニッケルバック挟んで、今、流行りのモーガン・ウォレンとかルーク・コームズとか聞いたら違和感ないですからね。

7.Garage Inc (1998 US#2 UK#29)

7位はカバー集ですね。「ガレージ・インク」。これは1987年に、これにも本編とは別扱いで収録されてる最初のカバーEPがあって、あれ、当時、「メタリカの入り口になった」という人も僕の世代いますけど、あれが好評だったので、10年後に拡大してやったのが本作です。僕、メタリカに限ったことじゃなくて、アーティストが自分のルーツ開陳したみたいな企画はだいたいすきなんですよね。。その人らしさがにじみ出るじゃないですか。メタリカの場合はすごくわかりやすくて、NWOBHMと、バッジーとかブルー・アイスター・カルトみたいなメインストリームからちょっと外れた70sのハードロック、そして、これはジェイムスですけど、ボブ・シーガーとかレーナード・スキナードみたいな、カントリーともつながるハートランド系、サザン系のロックですね。これ、「Reload」と2年連続で出てるんですけど、今改めてジェイムスに注目した観点で聞いてみると、「やっぱ今のカントリー・ルーツ、ここなのか?」と思いたくなるんですよね。さらにニック・ケイヴの「Loverman」のカバーも入ってるんですけど、彼もジョニー・キャッシュを敬愛してる人ですからつながるんですよね。あと、ボーナス・ディスクで入ってるモーターヘッドのライブ・カバー集も生き生きしてて微笑ましくて好きですね。

6.St.Anger (2003 US#1 UK#3)

6位は「St.Anger」。僕が彼らに関して残念なことは、このアルバムの評判がファン、そして当人たちに悪いことですね。たしかに、このアルバムのドキュメンタリーでも明かされたように、本作製作時の精神状況の悪さは思い出したくないものだろうし、それを知ってしまったファンも支持したくはないと思います。ただ、ここでのヒリヒリするようなケイオティックな、はりつめたパフォーマンスの数々は今でも聞き流しは決してできない、ものすごい密度の緊張感が張りつめてます。RATMやシステム・オブ・ア・ダウン、アット・ザ・ドライヴ・インみたいな、聴く側に緊張感を強いるタイプのシリアスで硬派なオルタナティヴなラウド・ロックってあったから、それに近い感じで僕はコンテンポラリーなものを感じたし、「こっちの方がLoadよりよっぽどオルタナっぽいじゃん」と思ったくらいでしたけど、悪い思い出には変えられないのかな。たしかに、もしこっちに進んでたら、もしかしたらもうメタリカというバンドの存在そのものがなかった気もしますけどね。

5.Kill Em All (1983 US#66)

5位はデビュー作の「Kill Em All」。もう、歴史的に見ても、これがメガフォースからリリースされて、いち早くビルボードのチャートに入ったところから、スラッシュ・メタル始まってますよね。しかも、それが83年。メタルって、82年までは圧倒的にNWOBHMがあったイギリスが舞台だったのに、それが83年から一気にアメリカから変わっていくんですよね。それ、ハードコア・パンクもそうか。82年にディスチャージ出てから後はイギリスではブームとしてはあまり聞こえてこなくなり、アメリカではマイナー・スレットとかバッド・ブレインズ、ブラック・フラッグとかですからね。そういう意味で、時代の変わり目にこれがあって、それがエクストリームな激しいロックの旗頭になったところは否めないかな。また今聴くと、演奏そのものが青臭く、まだ技量も足りない、ジェイムスなんて満足に歌えてもないから、すごくパンク的な初期衝動がさらに説得力持つんですよね。メタルファンだとそこが物足りないのかもしれませんが、パンク的な見方すると、これ、すごくかっこいいんですよね。ここから先の5枚は全部歴史的な傑作だと思いますけど、その嚆矢を切ったのは間違い無くこれですね。

4.And Justice For All (1988 US#6 UK#4)

4位は「And Justice For All」。4枚目ですね。実は僕の世代だと、コアなメタル・ファンじゃない人がメタリカ聴き始めたアルバムがこれですね。これではじめて全米トップ10に入りましたから。ボン・ジョヴィやガンズが先に全米トップ10入って、これも入ってきたから気になって聞いてみた、という人は多かったような気がします。僕も学校で一番の親友がスラッシュ・メタルに狂ってたので、「いいよ、聴かさなくたって(笑)」と断ってましたけど、名前とか曲はちょくちょく聴かされてたので気になってて、それでここからちゃんと聞いたものでした。最初に聞いたインパクトは「激しいと聞いてた割に聴きやすいな」というのと「曲展開がプログレみたいなんだな」ということで割とすんなり入れて愛聴したんですよね。少ししたら「ジョニーは戦場に行った」の怖いシーンでおなじみの名曲「One」もヒットしたから硬派な社会派イメージも持たれて。その意味で僕の世代にはすごく刺すんですよ。ただ、大きすぎる前後のアルバムに挟まっちゃったこと、本人たちがあまりライブで披露しないこともあって、経年で存在が小さくなってる印象が、どこかありますよね、このアルバム。3枚目から5枚目に行くのに重要な架け橋だと思うのですが、ゆえに「過渡期」に見えるのかな。

3.Ride The Lightning (1984 US#48 UK#87)

トップ3行きます。3位は「Ride the Lightning」。いわゆる「スラッシュ・メタルとしてのメタリカ」ではこれをベストに挙げる人も多い作品ですよね。ライブでもいまだに「For Whom The Bell Tolls」「Creeping Death」「Fade To Black」やったりしますからね。ここでは、デビューのときからかなり力量と重量感が加わり、さらに曲の静寂、緩急がつけられるようになったことで、聞き応えがぐっと上がってますよね。このあたりから、僕も音そのものではないですけど、名前はちらりと耳にするようになってたし、近い頃にスレイヤーやアンスラックスもインディでアルバム出し始めたりもしてたので、シーンとして芽を吹き出し始めた瞬間をとらえたものでもあるのかな、という気もしてます。スラッシュのシーンって、どのバンドもそうなんですけど、他のシーンと違って、「最初に金字塔作って、後で消えた」という人たちより圧倒的に「だんだん熟して大物になっていった」というバンドの方が多い、珍しいものだと思ってるんですけど、その中では「最初期の金字塔」なのかな、という感じでとらえられるものかな、と思って見てます。

2.Metallica (1991 US#1 UK#1)

そして2位に1991年の「ブラック・アルバム」。このアルバム、スラッシュ好きの人に違和感を抱く人が多く、中には「駄作」だとか「ポップ作だ」みたいに言う人までいます。だけど、仮にも全世界で1000万枚、アメリカでのチャートインで500週も超えるようなモンスター的アルバムです。それはとても「ボウイにおけるレッツ・ダンス」の立ち位置などでは全くありえないし、時代の顔としても伝説としてもしっかり残るアルバムだと僕は解釈してます。これ、人によっては「最後のメタル・ヒット・アルバム」とか「この次からメタリカはグランジ。オルタナに行った」みたいな言い方する人もいるんですが、僕は「この時点で彼らはグランジの影響下に強くある」という解釈です。実際、アリス・イン・チェインズやサウンドガーデンあたりの影響は本人たちの口から語られてるわけですし、AICなんて1990年にニルヴァーナより一歩先に一般的にヒットまでしてましたからね。十分意識してたと思うし、それがたまたまニルヴァーナの「Nevermind」よりほんの数ヶ月先にメタル側からヒットさせてしまっただけのことでしょう。その意味で、当時の彼らの時代の先読みは正しかったということなんだと思います。今聞いても「Enter Sandman」はまだメタルっぽいんですけど「Sad But True」「Unforgiven」あたりはグランジのバンドがやっても違和感ないと追いますしね。むしろニュー・メタルの時代以降のポスト・グランジ系のバンドにはグランジそのものよりブラック・アルバムの影響を僕は感じてましたからね。もしかしてポスト・グランジの印象の悪さから、本作の印象落ちてたりしないのかな、とさえも思ってます。あと、先に言ったジェイムスのカントリーっぽさの先駆けとでもいうべき大人気曲でもあります「Nothing Else Matter」が入ってる作品でもありますね。

1.Master Of Puppets (1986 US#29 UK#41)

そして、やっぱり1位はこれですよね。「Master Of Puppets」。これはもう、どのメタリカ・ファンの観点からも、絶対「最重要作」として外さないアルバムなので1位でしょう。熱烈なスラッシュ・ファンであれ、「ブラック・アルバム」から後のファンであれ、このアルバムを逃すというのはまず考えられないですからね。このアルバムは時期的に考えて「シーンの盛り上がりの絶頂期の頂点」であり、「その枠からはみ出ていくギリギリのライン」の均衡の上に成り立った作品だと思います。同じ年にメガデスの「Peace Sells But Whos Buying」、スレイヤーの「Reign In Blood」という金字塔的名盤も出てて、そこと並べて語るべき作品としてまず大きいんですけど、プレイの圧倒的な正確無比さを誇るメガデス、スピードとドラマーの手数ならダントツのスレイヤーに比べて、良くも悪くも演奏に適当さが残って決してテクニカルではないはずのメタリカ(僕も何度かのライブ体験で「上手いってわけじゃ決してないんだな」と思ってました)がなぜその中で頂点に立てるのか、といえば、やっぱり曲なんですよね。サビの部門でのここぞというときの決めフレーズ(「マスタッ!マスタッ!」とか「サーネ、テリア〜」とか)のうまさや、「Battery」のイントロなんて顕著ですけど楽曲のドラマ演出の巧さ、あとジェイムスの物語調の語り聞かせるヴォーカルですよね。これらがすごくしっかりしてるから、カーク・ハメットのソロやラーズのスネアの連打に甘さがあったりしても高い曲の完成度の前にそんなに気にならなくなって、そのつんのめり具合が逆に愛嬌ある味になって伝わるというかね。ジミー・ペイジとか、ジョー・ペリーのソロが適当なのにかっこいいというのも曲がいいからなんですけど、それと似た効果、あるのかなと思ってます。あと、時代背景的には、メタルが華やかで大衆的な人気がでてきた背後に、次の「シリアスで本当に攻撃的な音楽」がその水面下で進んでいたことの象徴になりうるものだったのかな、とも思いますね。





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