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オスカー受賞作レビュー③「アナザー・ラウンド」 「酒」をテーマに国際映画賞受賞の絶妙な異色作

どうも。

では、オスカー受賞作レビュー、続けます。今回はこれです。

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デンマーク映画「アナザー・ラウンド」。これはデンマークの映画ですね。日本でもおなじみの、ハリウッドにも進出して人気ですね。マッツ・ミケルセンの主演です。この映画は、今はもう外国語映画賞とは言わないんですね。国際映画賞を受賞しています。はたして、どんな映画なんでしょうか。

早速あらすじから見てみましょう。

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主人公マーティン(マッツ・ミケルセン)はコペンハーゲンで高校の歴史の教師をして生計を立てていました。学校は生意気な生徒ばかりで、同じ日常が続いて退屈。加えて家庭内にも問題を抱えていました。

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それは同じ学校の別の教師たち、トミー、ピーター、ニコライも同様でした。そんな彼らでしたが、4人で食事した時、「アルコールの血中濃度0・05までなら、すごく快適でむしろ仕事にもいいらしいぞ」という話になります。

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「そうだ。これから酒飲んで仕事しようぜ」。教師たちの反乱がはじまりますが、これが意外や意外にも功を奏します。

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マーティンの歴史の授業は饒舌となり、意外な歴史事実で生徒を驚かせたりしているうちに、生徒たちも彼に興味を持つようにまでなります。

教師たちは各自で当初はうまくいきかかります。ただ、血中濃度0・05を守ることは簡単なことではなく・・。

・・と、ここまでにしておきましょう。

この映画ですけど

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このデンマークのトマス・ヴィンテルベアが監督した映画です。ヴィンテルベアは、かのラース・フォン・トリアーと同じ映画グループ「ドグマ95」出身で、これまで「セレブレーション」を皮切りに、数多くの話題作を作ってきた人です。この映画で彼はついに初のオスカーの監督賞ノミネートを実現させています。

そして、彼の監督でマッツの主役といえば

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彼が、園児の女の子にわいせつ行為を働いた嘘を子供自身につかれたことでひどい目にあう姿を描いた「偽りなき者」が非常に有名です。マッツの名声を高める理由のひとつになった代表作ですね。

この「偽りなき者」を覚えていらっしゃる方なら、このヴィンテルベアの映画が、このあらすじからだけで感じとられる「明るい、コメディな感じ」とは縁遠い感じがするの、わかると思うんですけど

中身、全然コメディっぽく見えません!

それどころか

話そのものは、相当世知辛い!

このことを見る前に覚悟しておいた方がいいと思います。

そりゃ、そうですよね。だって、ドグマですよ。ラース・フォン・トリアーですよ。明るいだけで終わる話であるわけがありません。とりわけ、酒への溺れが進んでから後の展開はむしろかなり落ち込まされます。

 ただ、それだからこそ、いいんですよね。ただ、暗いだけでも決して終わらない。そこにはすごく人間の性善説的なところがしっかりあるというか、希望がある。そこのところがラース・フォン・トリアーと決定的に違うというか。「えっ、トリアーにも希望がある」ですか?すみません、それは僕には全く解釈できないものですので(笑)。ヴィンテルベアのこの映画の場合は、そういう深読みをしなくても十分にそれが人生肯定を行っているのがしっかりわかりますよ。

その象徴とも言えるのが

もう、すでにネット上でかなり出回って話題になりまくってます。マッツ自身のこの華麗なダンスですね。これに、この映画が全てが凝縮されているといって過言じゃないんですが、マッツの踊りが、これ、本当に見事なんですよ!これ、映画史に残る名シーンとして語り注がれると思います。元体操の選手だったんですよね、彼。その特技が生かされた最高の演技です。

あと、「酒の科学的なデータ」を題材に、こうした映画を作るという異色な観点がこれ、すばらしいですね。「そんな着眼点からも映画、作ること可能なんだ」と、僕はこの点に一番感心しました。こういうことがもっとできていけば、ハリウッドも続編やリメイクに頼らず、オリジナルの脚本がもっと書けていくだろうに、とも思いました。

そうしたら、よせばいいのに

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ハリウッド・リメイクの話が進んでいて、レオがマッツの役、狙ってるんですって。う〜ん、レオが役者として悪いわけがないんですけど、なんかこの映画をハリウッドがやっちゃうと、コメディとして大げさにおもしろおかしくしすぎちゃって自滅しないか心配なんですよね。

たとえばウィル・フェレル、ポール・ラッド、セス・ローゲン。いずれも大好きな役者ですけど、彼らあたりを脇役でリメイク作っちゃうとドタバタしてただおかしいだけで終わりかねないものになってしまうというか。この映画でヴィンテルベアが描き出した、人生の微妙な陰影。これがハリウッドに表現できるか。そこがすごく気になるんですけどね。

・・ということで、この映画、僕もかなりおすすめですが、日本公開、9月なんですって?ちょっと待たせすぎですね、それは・・。




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