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全オリジナル・アルバム From ワースト To ベスト(第29回) ジョニ・ミッチェル その1 19-11位

どうも。

今日は、早いもので3ヶ月ぶりなんですね。テイラー・スウィフト以来、やってないですからね。FromワーストToベスト。これをやりたいと思います。

今回のテーマはですね、もう、これはうれしい。前々から「やりたい」と思っていても、なかなかきっかけがなくてやれなかった人です。

この人です!

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女性シンガーソングライターの最高峰。そんな風に呼んでもいいんじゃないかと思います。ジョニ・ミッチェル。彼女の全19枚のアルバムを、2回に分けてランク付けをしたいと思います。

 彼女がつい先日からSNSで公式アカウント持ってうごきはじめて、10月30日からは未発表音源のアーカイヴ・シリーズがリリースされはじめます。と、いうわけで、振り返るには今が一番ちょうどいいかと思われます。

では、早速19位、ワーストから見てみましょう!


19.Dog Eat Dog (1985 US #63 UK#57)

ワースト1位は、「Dog Eat Dog」。1985年、彼女にとって一番不遇な時期の作品ですね。この頃、エイティーズの時代というのは、70sに生身のサウンドで勝負していたタイプのアーティストには非常にきつい時期でして、リズムがとにかくギッタンバッタンと非常にうるさい頃でした。このアルバムで彼女は、まさにそういうサウンドにトライしているんですけど、これが残念なまでに似合ってなくてですね。トーマス・ドルビーをプロデュースに呼んだりもして、そういうサウンドでそれなりに進んだ感じにしたかったのかとも思われますが、それも功を奏さず。レコード会社をゲフィンに移籍して2作目だったんですけど、プレッシャーもあったのかな。

18.Both Sides Now (2000 US#66 UK#50)

18位は「Both Sides Now」。これは2000年にリリースされた、ジャズのスタンダードのカバー・アルバムで、流麗でかつゴージャスなオーケストラをバックに、彼女が歌う、という趣のものです。70年代にはジャズの実験作も多くリリースしたジョニでしたが、ここではそういう気鋭の感じは出さずにむしろコンサバな人が喜ぶ感じが出てますね。ときおり、タイトル曲をはじめとした自身のオリジナルのセルフ・カバーもあったりはするんですけどね。

17.Mingus (1979 US#17 UK#24)

17位は「Mingus」。これはタイトルの通り、50年代のモダン・ジャズの巨人、ベースプレイヤーのチャールズ・ミンガスとジョニの共作アルバムです。ミンガスの曲にジョニが歌詞をつけて歌う、というコンビネーションで作られているのですが、いくらミンガスだろうと、参加ミュージシャンが豪華だろうと、ジョニのジャズ路線の最後を締めくくるアルバムであろうと、曲そのものが退屈で、どこに新しさがあるのかも凡人にはわからない、というか、世のほとんどが凡人にしかなれないような作品では、さすがに説得力は薄いか。ちょっとジョニ自身、わかりやすさの部分で脱線しすぎていたところもあったので、この結果も仕方なかったのかもしれません。

16.Chalk Mark In A Rain Storm (1988 US#45 UK#26)

16位は「レインストームとチョークの痕」。この邦題を覚えているほどに、当時、割と露出のあった作品です。チャートの成績も久々に上向いた作品でしたしね。その理由となったのは、このアルバムが彼女の書作の中でもかなり聴きやすく、ピーター・ゲイブリエルやカーズのベンジャミン・オールとのデュエットが収められたり、エンタメ色が強かったからですね。MVもここからは積極的に作られたし。ただ、これの前作ほどではないにせよ、サウンドのポップの味付けは強いし、ジョニ自身、無理してポップにしてるのかなあと思わせる意味では、得じゃないアルバムですね。

15.Song To A Seagull (1967 US#189)

これが記念すべき、ジョニのデビュー・アルバムです。初期から注目度の高い彼女ですが、その中でこのアルバムの立ち位置が微妙に地味なのは、彼女自身が、この時点では、まだのちにつながる個性を確立していないためですね。ソングライティングは、カナダだからなのかよくはわからないんですけど、ブリティッシュやアイリッシュ・トラッドを思わせるウェットな楽曲スタイルで、ジョニもほぼ全編でファルセットで歌っているんですけど、この時点の感じだと、まだジョーン・バエズ・フォロワーの域を出てなかったかな、という感じです。これはこれでよくできてるとは思うのですが、彼女を野地から知ると、やや物足りなさは残る作品ではあります。

14.Taming The Tiger (1998 US#75 UK#57)

続いては1998年のアルバム「Taming The Tiger」。これはしばらくフォークに回帰していたジョニが久々にアヴァンなテイストを出したアルバムです。とりわけ、当時のオルタナティヴ・ロックにかなり感化されたからなのか、いつになく、というかキャリアで初めて、ディストーション・ギターが鳴り響いている作品でもあって、そこの点でかなり新鮮です。ただ、ここでせっかくいいアイディアが出てきたのに、それを楽曲としてまとめるのがうまくなかったアルバムでもあります。この成果はひと世代ほど、先送りで出てくることになります。

13.Don Juan's Reckless Daughter (1977 US#25 UK#20)

13位は「ドンファンのじゃじゃ馬娘」。実は、この作品をどう評価できるかでジョニの見方がだいたい決まるところが昔からあります。これが絶賛できる人なら、もうジャズ期のジョニにベッタリだし、全く受け付けない人はフォークのジョニはでしょう。僕はどっちかというと後者に近いタイプですが、でも、ジャズ期もこのくらいまでこんがらなければ好きです。このアルバム、なにがよくなかったかといえば、「ジャズも、フォークも、アフリカ音楽も、全部いっしょくたにやろうとしすぎ」たことですね。それが曲によって分かれてるとかならまだしも、一曲の中で複雑に絡んだりして、あっちいったりこっちいったりするものだから「え??」となっちゃうんですよね。それでも「Dreamland」みたいなキャッチーなアフリカン・ビートの曲は生き生きしてるし。それはそれで愛おしくもあり。いっそのこと、ポール・サイモンの「グレイスランド」を10年先取ってアフリカ音楽に特化した作品作るくらいの方がよかったのかもしれないですね。

12.Wild Things Run Fast (1982 US#25 UK#32)

12位は「Wild Things Run Fast」。1982年の作品。実は僕はこれが最初に知ったジョニの作品です。このとき実は郷里の福岡にもコンサートで来ててですね、発売日がジャーニーとロキシー・ミュージックと同じ日だったのを覚えてます。このアルバムですが、70sまでのジャズ路線を一旦やめてポップに回帰した作品ですね。ジョニにしては、これまでになくロック色の強い曲調が並び、ジョニもそれを意識してか、かなりアッパーに歌い上げる曲も少なくないです。ダンナさんのラリー・クラインとの最初のコンビ作品なのでウキウキしたところがあったかもしれません。このわかりやすいアルバムが「ドンファン〜」や「ミンガス」の代わりに出ていたら、商業的にはもしかしたらもう少し売れてるアーティストになっていたかもしれない。そう思えてしまうので「ドンファン」より上にしてしまうんですよねえ。

11.Travelogue (2002)

そして、惜しくもトップ10入りを逃した11位は「Travelogue」。このアルバムは18位の「Both Sides Now」同様にオーケストラによるカバー・アルバムなんですけど、このアルバム、面白いのは、カバーしたのが、ジョニにとって過小評価されてきたアルバムの収録曲からの、いわゆるディープ・カッツというか、「隠れ名曲」を集めたものなんですね。ちょうど、このトップ10懸崖になったアルバムからの曲の収録が多く、「今改めてブラッシュアップすることで、報われなかった曲たちを成仏」しているようで、すごく興味深いです。このアルバムから、裏ベストをプレイリストに作ったりするのもいいと思います。

では、明日はいよいよトップ10、行きます!




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