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全オリジナル・アルバム FromワーストToベスト (第44回)ローリング・ストーンズ その1 25位〜11位

どうも。

今日と明日は久しぶりにFromワーストToベスト、行きましょう。

今回のネタはこれです!

はい。これまでのこの企画の中でももっともビッグな類に入ります、ローリング・ストーンズ、行きましょう。

 なぜ今回ストーンズなのかというと、今日26日でミック・ジャガーが遂に80歳となるからです。ロックンロールの象徴のように呼ばれた彼も遂にこの年齢を迎える日が来たわけです。これはさすがに祝わないわけにはいかないですね。僕が彼のことを知ったのは彼が38歳の時。このころからロックの長老のごとく言われてたんですけど、当時まだ小学6年生だった僕が今やその当時のミックを大きく上回る年齢になりました。その当時、そんな年齢のロックファンなんていませんでしたけど、ファンの年齢層もあの当時、高くて30代なかばくらいだったのが今や70代まで拡張。そしてミックは80代でも現役のロックンローラー、そんな時代になってしまいました。

 今回は、そのストーンズのアルバム、彼らがよくやってるようにアメリカ版の基準に合わせましょう。その25枚でランキングをカウントダウンします。

 では、早速、ワースト、25位から行きましょう。

25.Dirty Work (1986 UK#4 US#4)
 
 ワースト1、25位は「Dirty Work」。これはストーンズの歴史知っている方なら妥当だと思います。ミックがソロを通じて当時はやりのエイティーズ・サウンドに溺れ、キースと喧嘩。解散が当時、深刻に心配されてました。ディスコグラフィでこれだけ音が浮いでるんですよねえ。まあ、ストーンズだけじゃなく、当時、60〜70年代のロックの大物がこぞって落ち込んだわなというか、調子を狂わせることになったものでもあるですけどねえ。まあ、これ一作でその傾向が終わってよかったです。

24.Goats Head Soup (1973 UK#1 US#1)

ワースト2、24位は1973年の「山羊の頭のスープ」。このアルバムは「悲しみのアンジー」も入ってて、ストーンズとしてはイメージの良い70年代の作品でもあるから「けしからん」と思われる方もいるかもしれません。ただ、その前の4作が誰が選んでもストーンズ最大の黄金期なのに、それから突然大スランプに陥ったように、急に「ひらめき」が落ちてるんですよねえ。ストーンズの場合、基本がリフ主体のロックンロールを変わらずやってるバンドなんですが、こういうサウンドの場合、リフがパッと覚えられるものでなかったり、グルーヴのノリが悪いとそれが作品に端的に出やすいんだなということをこのアルバムを聴いて改めて感じました。理屈とか理論じゃなく、感覚の部分での「カン」のセンスってロックで大事なんですよね。

23.Emotional Rescue (1980 UK#1 US#1)

ワースト3位、23位は「Emotional Rescue」。このアルバムは全編ファルセットの、僕がストーンズのことを最初に知ったタイトル曲や、ファンクの「Dance」と、所々、変化球的な曲に面白い曲があって、それらの曲ゆえに多様性があって面白く一見聞こえるアルバムなんですが、その反面、彼らのアルバムのメインとなるべき肝心なロックンロールの曲にさえがないんですよね。「ストレートが走らず変化球だけが良い」みたいな、ちょっといびつなアルバムですね。

22.December's Children (1965 US#4)

22位は「December's Children 」。これはイギリスではリリースされていない、アメリカのみの編集盤です。ここにはアメリカ盤用にシングル曲を足したためにイギリス盤の「Out Of Our Heads」に入ってたのに漏れてしまった4曲を中心に、イギリスではシングルのみに終わった「Get Off Of my Cloud」や、さらにはライブのテイクまで入れたごちゃ混ぜのアルバムで、構成そのものができてません。本来ならカウントすべきじゃなかったんだと思いますが、一応ルールなので。彼らとしては良い時期の作品ではあるので、それでもワースト3にはなりませんでした。

21.It's Only Rock'n Roll (1974 UK#2 US#1)

21位は1974年の「It's Only Rock'n Roll」。これは頭の3曲、「If You Can't Rock Me」「Ain't Too Proud To Beg」「It's Only Rock'n Roll」までの時点なら「おおっ、傑作か!」と思わせるロックンロールが続くんですけど、やはり前作「山羊の頭のスープ」からのスランプ引きずってるのか、途中からガス欠したみたいにキレがなくなるんですよね。異色のミドルテンポの「Time Waits For No One」など隠れ名曲もあるにはあるんですけど、歴代でも最も地味なB面に冴えがないのが響いた気がします。

20.Bridges To Babylon (1997 UK#6 US#3)

 20位は1997年発表の「Bridges To Babylon」。これの前作の「Voodoo Lounge」でストーンズはまた次の時代に向けてのロックンロールを進めたと僕は解釈してるんですけど、プロデューサーのドン・ウォズの極力生音重視のプロデューシングはすごくかっこいいんですけど、このアルバムではミックの「Dirty Work」からの悪い癖が出たというか、自分がソロでやってるタイプの楽曲をストーンズでやってしまった感じですね。それが「Anybody Seen My Baby」「Saint Of Me」とシングルにも表れてますけど。曲そのものは経年でダサくなったりせず他のバンドであれば十分カッコよくはあるんですがストーンズ基準では違和感ありますね。キースのヴォーカルで3曲埋めてますが、そういうバランスの取り方でもないだろうという気はします。

19.Steel Wheels (1989 UK#2 US#3)

19位は「Steel Wheels」。このアルバムは「Dirty Work」での解散危機からミックとキースが仲直りし、ストーンズらしさに回帰し、久方ぶりのワールド・ツアー、さらについに実現した日本公演もあって、とりわけ日本のファンには思い入れのあるアルバムですね。あの頃の日本、ちょっとしたストーンズ・ブームがあったものです。そういうことで思い入れある人が多いのは知ってはいるんですけど、客観的にこの位置かなあ。出たときに僕も買ってよく聞いたんですけど、早いうちに飽きてあんまり印象残ってないんですよね。記憶に残ってるのは「Almost Hear You Sigh」とか、キースの「Slipping Away」とかバラードなんですよね。この2曲は今でも大好きなんですが、肝心のロックンロール曲がインパクト弱いんですよね。

18.Their Satanic Majesties Request (1967 UK#3 US#2)

18位は1967年の「サタニック・マジェスティ」。これはストーンズ・ファンの中でも最も賛否両論あるアルバムですね。当時のサマー・オブ・ラヴのサイケデリックに耽溺しすぎて「こんなのストーンズじゃない」という人と、「この実験精神こそを評価するべきだろうが」というべき人と。僕は根本的にサイケデリック・ポップ、とりわけイギリスのサイケデリック・ポップは好物なので後者側に立ちたいところだし、「She's A Rainbow」はもちろん「Citadel」とか個人的に好きな曲もあるんですけど、ただ観念的にサイケにこだわりすぎたか、ミニマリズムに溺れすぎて自己中心的になりすぎて戻ってこれなくなる瞬間があるというか。これは確かにストーンズには期待しないかな。これでブライアン・ジョーンズの影響力がさらに後退したのは確かですね。

17.Blue&Lonesome (2016 UK#1 US#4)

17位は「Blue&Lonesome」。2016年発表の、目下のところ最新作です。これ出た時、「ストーンズが何10年も出してなかった傑作を出した」とユーフォリア状態になったんですけど、ごめんなさい。僕はそこまで評価してないです。ブルース・カバー、させたらかっこいいことは確かなんですが、リズム&ブルースのカバーバンドだった初期の彼らの方がパンキッシュでキレがあるし、何と言ってもオリジナル曲でないのが僕は引っかかります。まあ、それだけ彼らに、余計な曲をやらずにブルージーで切れ味するどいロックンロールをやってほしいというファンの要望だと捉えたいですけどね。レコーディング中だとされる新作がそういう内容ならすごく評価したいです。

16.The Rolling Stones,Now! (1965 US#5)

16位は1964年のサード・アルバムですね、「Now!」。まだリズム&ブルースのカバー・バンドだったストーンズの最初の3枚のアルバムでは最も渋い内容の、ブルージーなアルバムですね。代表曲が「Little Red Rooster」くらいしかなく、最初の2枚のアルバムで見せていたキースのハード・エッジなギターがやや抑えめで、根がガレージ、パンクな僕には多少物足らないところは正直あるんですけど、それでもあの時代のアルバム出せてたアーティストの中では最高のロックンロールをプレイできてたことは間違いないです。さっきの「Blue&Lonesome」との比較でも、このあたりがいいかなと。

15.A Bigger Bang (2005 UK#2 US#3)

15位は2005年発表の「A Bigger Bang」。現時点でオリジナル・アルバムとしてはこれがラストですね。これ、僕好きなんですよ。ドン・ウォズ体制移行で一番肩の力の抜けた自然なロックンロール・アルバムという感じで。飛び抜けたシングル候補こそないんだけど、全体的に大きな穴がなくうまくまとまってもいて。出た時のレビューも良かったし。これと同じ時期にポール・マッカートニーの「Chaos And Creation In The Backyard」という、これも振り返ったらいいアルバムが出てるんですけど、その後の両者のツアーでのキレとライブでの状況考えても、どちらも評価して良い作品だったような気がしてますね。

14.Out Of Our Heads (1965 UK#2 US#1)

14位は「Out Of Our Head」。これはちょっと低いと思われる方もいらっしゃるかもしれません。何と言っても「The Last Time」そして「Satisfaction」と、オリジナルのヒットを出し始めた当時のストーンズの重要な2大ヒットが入ってるわけですからね。でも、これはこの当時のUK盤、US盤の違いに翻弄された1枚と言えるかと思います。UK盤はこの2大ヒットがない、どちらかというと従来通りのリズム&ブルースのカバー・アルバムの延長で、US盤にこの2曲が入ってます。こういう構成ゆえにUS盤はこの2曲と他の収録曲の落差が激しくてバランスが悪いんですよね。ここでのカバー曲は、この当時のアメリカでのはやりのソウル・ミュジージックが多めになっていて、これらがもう、あまりエレキギターを必要としない音楽にもなっていて、「ストーンズもここらでオリジナルに踏み切るのも時の流れかな」と思わせるところは興味深くはあるんですけどね。

13.Black And Blue (1976 UK#2 US#1)

13位は1976年発表の「Black And Blue」。ミック・テイラーが抜けた体制で作ったアルバムですね。これまで彼の功績大きかったので痛手ではあったはずなんですが、まだこの時は3曲の参加ながらロン・ウッドがいい働きしてまして、「Cherry O Baby」「Hey Negrita」という、新風となった2曲のレゲエナンバーに貢献しています。これプラス、大胆なファンクナンバーの「Hot Stuff」も入れてまして、ストーンズが久々にコンテンポラリーなブラック・ミュージックの要素をわかりやすく仕込んだ作品になりましたね。先行シングルとなった「Fool To Cry」もカーティス・メイフィールドのスローバラードみたいだし。その前2作でちょっとくすぶっていたストーンズの次への突破口になった気がします。

12.Tattoo You (1981 UK#2 US#1)

12位は「Tattoo You」、「刺青の男」ですね。このアルバムは「Start Me Up」という、ストーンズ史上でも屈指にヒットした曲があることから当時全米でも7週1位になってるし、日本も含めどこでも人気だったんですけど、これ、瓢箪から駒、というかこれ本来ならヒットあまり期待できないはずの「未発表曲集」だったんですよね。そういうアルバムでも、集めた曲とアレンジが巧みだったら結果論的にヒットしてしまうことを証明したのが今作です。これ、やっぱストーンズでロックンロールがかっこいいと人気出てしまうというアルバムの典型ですね。「Hang Fire」「Little T&A」「Neighbors」あたりは完全にニューウェイヴ世代のロックンロールとして軽快にタイプできてるし、そうかと思えば名バラードの「友を待つ」、ブルーズの「Black Limousin」と渋い脇役的な曲もうまくはまってて。ロック史の歴代でもあまりないタイプの偶然ですね。

11.England's Newest Hit Makers (1964 US#11)

そして11位に、記念すべきファースト・アルバムが入りました。先にも言いましたけど、今回、ストーンズのアルバムを一から聞き直して改めて感じたのは、「オリジナルを作り出した頃」じゃなくて、もう初期のカバー主体のバンドだった頃から、音楽性、アンサンブル、音色センスに関しては完成されてたんだなと思ったことですね。「ビートルズと比べて、まだ全然完成されていなかった」なんて言い方はおかしいですよ。同時期のビートルズより既に攻めのロックンロールでは上だし、あの当時のロンドンのブルース、ソウル、ジャズをベースにしたタイプのバンドのパフォーマンス力としても圧倒的だったと思います。特にそれを感じたのはキースのエレキギターのセンスで、チャック・ベリー、バディ・ホリーのクリケッツ、マディ・ウォーターズの曲を選んで、その歪みと鋭角性をさらに強めたプレイしてる時点で、既にバンドの未来誘ってたんだなと思いましたね。









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