遂に全米シングルチャート制覇! グラス・アニマルズの成し遂げた5つの意義
どうも。
いやあ、これは本当に嬉しい!
グラス・アニマルズ、ビルボードのシングル・チャート、制覇ですよ!!
この「Heat Waves」が全米1位のシングルになったわけですけどね。これに先立つこと数週間前、この曲、Spotifyのグローバル・チャートでも1位になっていたので、「もしかしたら全米チャートも1位、行けるかな」の希望も湧いていたわけですけど、それが見事に達成されたわけです。
僕もこれは昨年の3月頃だったかな、先にオーストラリアで1位になってたんですよ。そこから気にし始めてて。この1年というもの僕が「#GlassAnimals」というハッシュタグを立てたのはこれが10記事目なんですよ!いかに言及し続けていたかがお分かりにくなるかと思います。
というのもですね、僕がここまでこの曲にこだわってきたのは、このヒットに、時代を左右する大きな意義がかかっていると思うから。今回は、その「Heat Wavesのヒットの意義」、これについて書いていこうかと思っています。
①「こういう良質な曲が大ヒットしてもいいんだ!」という勇気
僕、この「Heat Waves」聞いて思い出してる曲があるんですよ。これ、「曲調が似てる」とか、そういう意味ではありません。「シーンに与えるインパクト」、これが似ているという意味です。
ズバリ、この曲です。
はい。スピッツの「ロビンソン」。1995年のスピッツのブレイクスルーのきっかけとなった名曲ですけどね。「Heat Waves」聴いてると、これヒットしたときのこと、思い出すんですよね。
「ロビンソン」も「Heat Waves」も決して斬新でも、革新的でもないんですよ。ただ、その当時にヒットチャートの上位にある曲の中で、明らかに他と違っていい意味で浮いてたんです。イメージとしては「インディっぽい音楽」です。
「ロビンソン」がヒットしたときに、「ああ、こういうのヒットするの、ありなんだ!」と目から鱗が落ちたというか。これと同じことが「Heat Waves」に言えるんですよね。
どっちも、その直前のシーンの2年前くらいのチャートの上位がまあ、画一的でひどかった。スピッツ出てくる前のチャートの上位って、ビーイングとTKの独占で、ドラマとCMのタイアップばっかりでしたからね。ものすごく「ヒットの法則」みたいなものがガチガチに固められてた時で、チャートに希望がなかったんです。
これ、少し前のSpotifyも同じだったんですよ。どこの国も、トラップ、エモ・ラップのトラックの真似した曲が流行ってね。もう、同じビートの氾濫ですよ。アメリカだけじゃなく、英語喋らないヨーロッパでも南米でも。「アメリカの流行りの翻訳ヴァージョンじゃねえか」みたいなトラップばっかり。日本、あんまりトラップ流行らなかったようなので他の国よりむしろ評価が高くて驚いてるんですけど、欧米圏ではかなり飽きてる人、実際多いんですよね。
そのタイミングで27年前の日本にはスピッツが出てきて、今の世界にはグラス・アニマルズが出てきて、もしかしたらあしきトレンドの循環を食い止めるかもしれない。そういうことを希望させてる意味で、すごく似ています。
②連鎖反応で「ロック台頭」を思わせる
ここもすごく似てるんですよね。
その、「シーン、流行り曲、変わるかも」と思わせる予兆が、すでにその1年前から始まっていた。ここもなぜか偶然ながら見てるんですよね。
スピッツの1年前の1994年に何が流行ったかというと
多くの人が「ミスチル、スピッツ」と、対のようにイメージを思い浮かべるようになったミスチルのヒットがこの歳にありました。それから、90年代初頭からの渋谷系カルチャーが1994年に大衆的マックスに達しまして、この「今夜はブギーバッグ」を皮切りにオザケンが時の人にもなったわけです。
去年、オリヴィア・ロドリゴとマネスキンが、何の前触れもなく得大ヒットしたでしょ?これ、去年に何度となくこのブログで行ってきましたけど、これに「Heat Waves」にヒットが重なったことで、「どうやらロックの復活、本当なのかもしれない」と思わせるものになりつつあるんですよね。
で、95年の日本に話戻すとジュディマリとかイエモン売れて、翌96年くらいからはもっとコアなところでミッシェル・ガン・エレファントとかサニーデイ・サービスとかフィッシュマンズがカルチャーの顔になって、そうなってるうちにフジロックとかフェスが始まったでしょ?
で、ビルボードを今見てると、今週3位のゲイルって女の子、あれも一応ロックにカウントなので、ロックのヒット続いていることになってる。そして先だって書いた記事ですけど、ミツキとかビッグ・シーフとかコアなインディ層のカリスマがチャート実績を急速に高めてきた。そして、パンデミック開けこれからフェスが増えるでしょ?なんか不思議な偶然じゃありません(笑)?
③「アーティスト人気ヒット」でない、楽曲の勝利でのヒット
あと「Heat Waves」のヒットの偉大なところは、アーティスト人気に頼ったヒットではなかった、ということです。
特にSpotifyの時代に面白くなかったのは、これまでの既存アーティストが勝ち組で勝ち続ける感じがあったことです。彼らがリリースタイミングでMVのある曲を出したりすると、その時のストリーミングの多さで勝っちゃうみたいな、そんな感じ。それって、ヒットがもう、あらかじめ最初から決められてるみたいで面白くなかったです。
そこを「Heat Waves」は知名度のないところから、時間をかけて100位圏外からじわじわ上がっての、本物のヒットだった。そういうことを実感しやすいのが、ヒットチャートを盛り上げることに最も貢献するタイプのキッズなんですよね。「あれ、この曲、これまで知らなかったけど、こういう曲、どうやってチェックしたらいいんだろう」と、自分の音楽の情報網のつかみ方を変えるきっかけになりやすいんです。それができる意味ですごくデカいんですよね。
この曲、調べてみたら、ロックではコールドプレイとBTSのコラボ以来のヒットなので、そんなに久々感はなかったりもするんですけど、そのコールドプレイっていうのも、既得権益で1位取ったようなものじゃないですか。しかもBTSの力まで借りて。そういうヒットじゃなかったことがとても大事です。
④UKロックのバンドの、全米シングルチャートでの可能性
あと、先ほども言ったように、これ、コールドプレイ以来のUKロックの1位の曲ですが、21世紀全体で見ても、コールドプレイの「Viva La Vida」とBTSとの共演曲以外で1位、ありません!
それ考えたら、貴重なんですよ。だって、オアシス、ブラー、レディオヘッド、ストーン・ローゼズでさえ、全米シングル1位なんてこと、やったことないんですから!
この曲、オアシスの「Wonderwall」が8位まで上がってますが、ブリットポップ以降のUKロックのシングル・ヒット曲って、せいぜいそんなものです。
アルバムだとレディオヘッドもMUSEも1位になってます。アメリカでビッグになるのにシングル・ヒットは必ずしもいらないんですけど、しかし、その上にシングルヒットもあるのならば、鬼に金棒ではあります。
ただ、アメリカがイギリスのヒットを避けているのか、と問われれば、それはよくわかりません。だって、アデルやエド・シーラン、デュア・リパ、ハリー・スタイルズなら、シングル・ヒット、出てるわけですから。
その中で「ロックに最も近かった形でのヒット」ってハリーの2年前の全米ナンバーワンのこれだったりするのかもしれません。
ただ、なんとなくですけど、UKロッカーの全米シングル・チャートへの復帰、近づいてるんじゃないかと思ってますけどね。選択肢の問題で、たまたま選ばれてないだけなような気がするので。
https://www.youtube.com/watch?v=aGSKrC7dGcY
UKロックも、グランジのブームの前まで、アメリカでもシングル・ヒット少なくなかったんですよ。EMFの「Unbelievable」、これが91年に1位になったのが最後じゃないかな。キュアートかでペッシュ・モードも1位にこそなってないもののシングルでトップ10があるから、未だにアメリカでカリスマ的にビッグなわけですからね。
https://www.youtube.com/watch?v=uPudE8nDog0
僕の子供時分で言えば、80s前半のMTV時代には、イギリスのバンドがアメリカで1位になっても普通でしたからね。ああいう時代がアメリカに戻ってこないものかと願ってます。
⑤ロックのアメリカのチャート攻略曲のヒントが生まれた
そして「Heat Waves」のヒットで、「どういう曲がアメリカのチャート、攻略できるのか」のヒントも見えたような気がしましたね。
実は、このグラス・アニマルズ、今回のヒットの前から、アメリカ攻略にすごく長けていたんです!
というのはですね
この曲の入ってるファースト・アルバム「Zaba」、これがイギリスで92位と惨敗だったのに、アメリカでトップ200(177位)に入ってたんですよ!アメリカのトップ200なんて、イギリスで1位になってでも達成難しいというのにですよ。この当時の彼ら、時代的な問題ですかね、MGMTとかフォスター・ザ・ピープルのフォロワーみたいな感じだったんですけど
そうしてたら
2016年のこのセカンドアルバム「How To Be A human Being」、これがイギリスで23位まで鹿上がってなかったのに、アメリカで20位に入ったんですね!
この時に僕、すごく驚いてたんですよ。これが2020年まで続く、インディ・バンドの新規の全米トップ40入りなしに突入する前の最後のアルバムでした。
これは名曲ですね。「Life Itself」。この曲に代表されるように
「この上に乗ってラップやってもおかしくないな」という感じのトラックに、かなり意識的にトライしてるんですよね。ほとんどの曲がサンプリングにできそうな雰囲気で。僕、思うに、これでヒップホップのファンもかなり取り込めていたのではないか、という気がするんですよね。前作のファンタジックなポップ感覚も割とヒップホップ聴く人の受け、いいみたい(てイム・インパーラとかすごく人気だし)なんですけど、そこにパーカッシヴな要素、強めたわけですからね。
で、それから次に出たのが
この「Dreamland」。2020年の夏の終わりに出てますけど、これに「Heat Waves」入ってます。これ、リリース時に全英2位、全米7位のヒットになってますけど、このアルバムで
https://www.youtube.com/watch?v=R_7HqeukRrI
この「Tokyo Drifting」ではデンゼル・カリーと共演しています。これもそうなんですけど、ものすごく自然なんですよね。エド・シーラン
が’ラッパーとのコラボ作、前に出してましたけど、あれより断然かっこいいですね。
このように彼ら、エレクトロとヒップホップに対応したポップソング書けるの、強みなんですよね。これでティーンのオーディエンス、うまく刺したんじゃないかと思います。あと、思ったのは、フィッシュマンズの「男たちの別れ」をネットで検索して聞いた欧米人、こういう人たちのことかな、とも思ってたりもしてます。
ただ、これ、今後のアメリカ・シーンにおける、幅広いリスナー層取り込める路線の先駆的存在になれるような気はしています。
そういう旨さが評価されているのか
最近、フロントマンのデイヴ・ベイリーの名前もよく耳にするようになりました。このバンドの曲は基本、全部、彼が書いています。
その彼ですが
https://www.youtube.com/watch?v=L62LtChAwww
フローレンス&ザ・マシーンのこの出たばかりのニュー・シングル「King」の共作者でもあります。これ、かなり大胆に良い曲なのでアルバムも期待大なんですが、すごく良い仕事してると思いますよ。
まあ、グラス・アニマルズ、こういう人たちなんですが、今後にすごく期待した方が良いと思いますよ。