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映画「ウェスト・サイド・ストーリー」感想 元に忠実でも、現在に意味を持たせることは可能!

どうも。

年末は映画ばかり見てるんですけど、今日はこれです!

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「ウェスト・サイド・ストーリー」。スティーヴン・スピルバーグが手がける、1961年のオスカーの作品賞に輝く、ミュージカル史上に残る、いわずとしれた傑作ですね。

日本では2月のようですが、僕もこれ、数週間前に見て、気分的に日本の公開まで待てないので、今、レビューやろうと思います。

では、あらすじ・・・の必要はありません。なぜなら、これ

話としては、ほとんどオリジナルと同じだから!


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これ、スピルバーグ、すごいのは、この色味ですよね。もちろん60年前と全く同じ映像にはならないわけですけど、色、光の当て方、くすみ、ほとんど一緒なんですよね、これ。まず、これに驚きましたね。

 オリジナルへの敬意の払い方から、まず気合いかなり入ってます。この時代の空気感の完全再生へのこだわり。こういうディテールに凝れるあたりはさすがにスピルバーグです。いろんなジャンルを、このこだわりで乗り切ってきてるような、そんな気さえ改めてしましたね。

 話の筋は同じで

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白人の少年たちによる不良集団ジェッツと

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プエルトリコの不良少年団シャークスとの抗争劇です。

その最中を

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元はジェッツのメンバーでありながらも喧嘩とは一歩距離を起きていたトニー(アンセル・エルゴート)と

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シャークスのリーダー、ベルナルドの妹のマリア(レイチェル・ゼグラー)が恋に落ちるという物語です。

そこに、

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 マリアとトニーの恋の行方を見つめ、同時に歌とダンスで大活躍するベルナルドのカノジョ、アニータ(アリアナ・デボーズ)という組み合わせです。これも全く構図としては同じなんですが、

ディテールがすごく現代的になってます。


まず、何そうなっているのか。ひとつは「言葉」です。

1961年版だと、シャークスやマリアの一家の言葉が、「スペイン語訛りの英語」だったんですね。それが今回は、かなりスペイン語が頻繁に混ざってます。このへんがかなりリアルなんですよね。だって本来、シャークスのメンバー間なり、家族の会話で英語話す必要ないわけじゃないですか。その辺の不自然さが今回、思い切りリアルになってます。

そしてさらに言えば、映画を観る観客にもスペイン語を字幕なしで理解するよう求められます。だから、一瞬何を言ってるのかわからなくなる瞬間があって。これ、スピルバーグによると、「そろそろアメリカ人はスペイン語もわからなくちゃダメだ」という信念のもとにこれやったんですって。そうすることによって、移民の現実、受け入れる側の不理解を鑑賞体験からわからそうとする姿勢、これは興味深いものがありました。

 そして、二つ目は、「歌とダンスのタイミング」。これが微妙に変わってます。オリジナルの方は、ちょっと過剰に歌と踊りが入りすぎるとこがあって、「このシリアスな場面で歌が入ってしまうことによって、なんか緊張感が切れちゃうんだよなあ」と思える瞬間があるんですけど、2021年ヴァージョンはそこのところ考えられていて、シリアスな部分での歌がオリジナルより少なくなってるんですね。ミュージカルの悪癖が微調整されてます。

 あと3つ目。これが一番大切なんですが、かなりポリコレ的な意味が強まっています。さきほどのスペイン語の問題もそうなんですけど、シャークスに対してのジェッツの移民ヘイトや、女性に対しての性犯罪への警鐘、こうしたものが、オリジナルだと少しぼやかされていたんですけど、これがはっきりとわかる演出になっています。60年前も、このミュージカル、そうしたメッセージがあったと思うんですけど、今ひとつ強調されてなかったから、「青春ミュージカルの定番」みたいな扱いになっちゃってましたけど、これ、社会問題の縮図なんですよね。そしてそれが、60年を経た今でも、悲しいかな、普遍的に通じてしまうものにもなっていて。決して昔話的に響かなかったのも、今回のこのヴァージョンのすばらしいところです。

そして、前作も今作も

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アニータが素晴らしい!

60年前でも、今回のでも、不思議なことに主人公たち食っちゃってるのがアニータなんですよね。元のヴァージョンでアニータを演じたリタ・モレノはこのときの演技でオスカー助演女優賞を受賞してるんですけど、今回、アニータを演じているアリアナ・デボーズも、前哨戦の女優女優賞で今、他の女優さんをリードしている状況です。これはかなり由緒あるポジションになってますね。

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そして今回、そのリタ・モレノが、トニーがつとめるドラッグストアの店長で出てるんですよね。この役は60年前もあった役なんですけど、そのときはおじさんがやってたので、このあたりは微妙に社会の変化を逆手にとって、うまいこと、この役に収めた感じですね。

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そして今回は、ジェッツのリーダー、リフを演じたマイク・ファイストの注目度が非常に高くなってますね。オリジナルだと、シャークスのリーダーのベルナルド役だったジョージ・チャキリスがすごく人気者になって、オスカーの助演男優賞もとってたりしたんですが、今回はベルナルド役の人にそんなに存在感がなく、リフの方が人気もかなり出てますね。

それから

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マリア役のレイチェル・ゼグラーも評価高いですね。オスカーの主演女優のノミネート、行けるのではないかという声もちらほら聞きます。

 ただ、これ、かの名女優ナタリー・ウッドが演じてた役ですからね。ナタリーって言ったら、子供のときから天才子役で、これの前にすでにジョン・ウェインとの「捜索者」、ジェイムス・ディーンとの「理由なき反抗」で当ててたような人です。今回、改めてオリジナル見返しても、やっぱかなりうまいんですよね。だから、比較されるにはかなりハードルの高い伝説が相手なんで、そこには正直及んでないとは思ってるんですけど、ただ、将来性を僕も感じたのはたしかでしたね。

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その中でアンセル・エルゴートも頑張ってはいたんですけどね。まあ、7年前の、ファンをお持ち帰りしてしまった際のファンの女の子の扱いがかなりずさんだったようで、ちょっと苦しんでますね。訴訟には発展してなさそうですけど、「同意があった、なかった」の話になっていて、行為自体を本人も認めてるところは厳しいかな。ちょっと試練のタイミングでこれがきちゃって、それが低い興行にもつながったようですけど、彼自身も健闘はしてたと思います。

まあ、でも、それもこれも

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スピルバーグですよね。やっぱり、作品を見る目、素材の活かし方、細かい部分でのきめ細かさ、さすがですね。これまで作風的な部分でタイプではないからフェイバリットの監督にこそ個人的になったことはないんですけど、やっぱり尊敬すべき、頭のいい映画人だと思いますね。さすがだなと感嘆しました。

・・といったところですね。日本公開、楽しみにしていいと思いますよ。





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