
年間ベストアルバム2020を振り返る(2) 英米で「ロックが復活」ってホント?
どうも。
今回も、「年間ベスト2020を振り返る」と題して、僕が今年を振り返る際に気づいたことなどをお話することにしましょう。
第2回のテーマはズバリ
「英米でロックが復活した」ってホント?
これで行こうかと思います。
これ、こんな風に言っても「ピンとこない」人の方がほとんどなんじゃないかな。世間一般の人が、「ロックが一般に流行っていた」と思えるような環境にあったわけじゃないから。
が!
「ある側面」から判断するに、イギリスでも、アメリカでも、ロックの復活を裏付けるデータなら生まれてきている!
そして、実はこれは事実です!そして、片方の方は、このブログでもすでにテーマとしてあげていることでもあります。
まず、テーマその1は
どうしてイギリスでのロックの人気は落ちないのか
これについて話していきましょう。
この件に関しては以前も
8月に書いたこの記事で書いています。7月以降、若いUKアーティストのアルバム・チャートで好記録が続出したんですよ。スポーツ・チームの2位にはじまり、フォンテーンズD.C2位、クリーパー5位、グラス・アニマルズ2位、デクラン・マッケンナ2位、シー・ガールズ3位、アイドルズ1位、ビーバドゥービー5位、そしてヤングブラッド1位ですからね。若いバンドたちでここまでUKアルバム・チャートのアクションが良かったのって、2010年代以降ではじめてなんじゃないです?
どうして、こうしたことが起こったのか。それは、
支えるメディアの存在
これがあるからです。
こうしたイギリスのインディのロックバンドにとって最大の見方、それは
ラジオ局!
これがまず、非常に大きいのです。
まずはイギリス国内の最大局BBC1。ここの最大人気の帯番組、DJアニー・マックの番組で、UKロック、非常に強いんです。この番組が、新作解禁第1号になることはイギリスではきわめて多いんですけど、ロックバンドがこぞってこの枠、狙ってくるんですよ。これがある限り、まずイギリスでのロックの地位、落ちないと思います。
さらに
BBCの中でもBBC6が、きわめて「批評家受けの良い音楽」に特化したステーションなんですね。ここはなにもロックだけをかける局ではないんですが、インディ・ロック比率はきわめて高い。だからここでもロックが地位を失うことがない。
それからさらに
民放でRadio Xというのがあるんですけど、ここが出てきたのも大きいと言われてますね。その昔、90年代のブリットポップの時代に「XFM」というのがあって人気結構あったんですけど、一回落ちぶれたあと、2015年にデジタルラジオとして「Radio X」に改名して復活したんですね。これが好評みたいですね。
ここが年間ベスト・アルバムのリスト出してるんですけど
ここの元記事クリックすればわかるんですけど、もう、すっごいロックでしょ?まさに上で目覚ましいチャート・アクション示したものから。ストロークス、キラーズ、グリーン・デイあたりまで入ってて。完全に「ロック・フェス対応」の局です。
放送でこれだけ押してくれるメディアがあると、文化としてはかなり安定はするんですけど、最近はここに加えて
雑誌メディア
この存在も見逃せません。
ここがですね、完全に世代交代の様相を見せてます。昔だったらイギリスの音楽雑誌って言ったら、イメージとしてはNMEやQだったんですが、今、イギリスでロック押してて勢いあるって言ったら
DORKとDIY。この2誌の存在が非常に大きいですね。この2誌は、本当に最近の若い熱心な音楽リスナーの気持ちに特化したタイプの雑誌ですね。すごい熱いものを感じます。特にDORKの方がより若いロックファン気質が強いかな。DIYはもうちょっとジャンル広いし、カルチャー寄りでもあるし。ただ、どっちもニューカマー紹介が早いんですよ。僕がイギリスの若いバンド知る時、たいがい、このふたつか、前回紹介したThe Line Of Best Fitか、ですからね。NMEは雑誌が廃刊してもウェブ・メディアで続いてはいるんですけど、もう、見ててこの2誌のちょっとダサい後追いっぽくなってますね。
そして、DORKもDIYも何を強烈に押してたかといえば
やっぱTHE 1975なんですよね。イギリスのロック・メディアって、2010年代に入って出版不況で頭打ちになって、それがUKロックの冬の時代とも重なって苦しい状況となっていたんですけど、1975と新世代メディアとともに新しい時代に入りはじめだしたかな、という感じはします。
こうやってみると、イギリスもロック、なかなか盛り上がっているように見えますよね。
が!
それがなかなか、一般に伝わらないのは
Spotifyにつながるヒットがない!
ロック勢にとって、これが本当に痛いんですよね。
Spotifyで世界の若者がシェアしたくなるような曲が出ない限り、ロックで人気が出たところでアルバムの発売週のチャート・アクションだけにしかつながらないんですよね。そこが今、一番痛いところです。
では、対してアメリカの方はどうでしょうか?
もう、アメリカのロック事情に関しては、去年の今頃、けちょんけちょんに酷評しました。
この記事で僕は、「アメリカのロック系ラジオが、ロック・ファンの現状認識もしないで、売れないメジャー・レーベルのお抱えアーティストをごり押ししようとするから全くヒットにつながらない」ということを書きました。日本の音楽ファン、フェス・ファンになじみのあるインディ・ロックのバンドなんて曲、かけやしませんからね。
アメリカの場合、悲しいかな、ロックの場合、ラジオの影響力がいまだに悪しき例で強くてですね
アメリカも今、デジタル・レディオの時代なんですが、ロックだと「ALTネーション」というグループが強くて、いわゆるUKチャートとか批評家受けがいい。僕らがよく知っているインディロックはなんと「アダルト・オルタナティヴ局」(なんだ、そりゃあ!)として「sirius XMU」というグループに収められています。シェアは、もう悲しいかな、圧倒的にALTなんですよね。
ALTはデジタル・ラジオだけでなく、全国にチェーンで系列のラジオ局をもっているんですが、去年までのヒットは散々たるものでした。ここで流行っても、一般にはなんにも流行りはしない・・・
・・・だったのですが!
今年、ものすごいヒット実績を出して、業界内の地位、上がってます!
「えっ、そんなロックのヒットなんてあったっけ?」と思うでしょ?僕もそう思いましたから(笑)。ところが、ヒットが出てるんですよ。
それは、こういう曲です。いずれも、ロック系のラジオのオンエアで決まる、ビルボードのロック・チャート(Hot Rock&Alternative Songs)で1位になっています。
ええっ!
まあ、これはちょっとわかるけど・・。
・・・まあ、たしかにインディ・フォークで組んだ曲なんですが・・・
ええええええええええええええ!!!!!!!!!!!!!
・・・って、なんかケイオスですごいでしょ(笑)。どの曲もSpotifyで、そりゃ人気の曲でしたけど、「ロック」として、これらがかかってるって・・。
しかも「Mood」って全米シングル・チャートで1位で、最新のでも2位かな。この曲がですね、16週連続でロック・チャートで1位なんですよ(笑)。
いやあ、ものすごいテコ入れやっちゃいましたねえ。
これ、僕、思うにですね、ALTの方針が「少しでもロックに近いものを入れて来い!」という方針になったんだと思います。そうじゃないと、こんなメチャクチャなことにはなりませんよ(笑)。
たしかに、去年、ビリーが現象的に売れた時に、アメリカのロック界、アピールうまくできなかったのはたしかなんです。「Bad Guy」、あれだけ一般に売れたのに、ロック系のラジオ・チャートでの最高位は2位。全く一般に売れなかった曲に1位を阻まれていたんですよね。
そういうのが多分、「もったいない」「惜しい」ということになったんじゃないかと思います。
あと、エモ・ラップを駆け出しているのは,僕、これは
ポスティの次のアルバムのための準備なんじゃないかと思います。多分、ビリーとかポスティみたいな層を取り込みたい意思が強いんじゃないかな。
あと、タイミングよくテイラーがインディ・ロックの人たちと組んだから、ロック局で紹介しやすくなったのも大きいですね。彼女が今後、どポップに戻らない限り、ここを主戦場としてくれるなら、アメリカのロック系ラジオ局にはおいしい話です。
あと、どうやら
今週のロック・チャート見てたら、マイリーとかクレイロが上位に入っていてですね。どうやら、かなり女性アーティストに門戸を開く予定のようです!
他のことはともかく(笑)、この女性支持は大賛成です!ただでさえ、これまでのアメリカのロック局って、メタル中心の男根主義が悪しき影響を及ぼしてましたからね。これが2000年代いっぱいまで影響を持って。その体質をガラりと変える意味はメチャクチャあるし、今のロックやってる人の男女比考えても妥当です。
もう、こうやってビーバドゥービーに手を伸ばして、ALT系の番組で押そうとする環境まで整えているようでもいますしね。
まあ、アメリカ、やり方はメチャクチャですけど、このやり方でこれまで鎮火していたロックのイメージが上がるのであれば、しばらくは僕はこれでもいいと思います。
ただ、このやり方、どこかで絶対破綻は出ると思うので(笑)、そのときに、それこそ「アダルト・オルタナティヴ」かなにか知りませんが、イギリスあたりで流行ってそうなタイプのロックがちゃんとはやるようになればいいなと思います。