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悪夢のような「ウッドストック99」のドキュメンタリーと「Is This It?」20周年の相関性について考えてみた

どうも。

 今しがた、これを見てました。

HBO Maxで放送されていますドキュメンタリー「ウッドストック99」。これを見たわけです。

 これ、洋楽のロックに多少なりとも興味のある方は、1999年8月に行われたこのフェスが史上最悪のロック・フェスと呼ばれていることを知っているのではないかと思います。僕もその悪評を当時から聞いててゾッとしていて忌み嫌い続けて20余年という感じなんですが、今回、これで詳細をチェックしながら見てみたんですけど

 想像以上に本当にひどかった!!

 
なにがひどかったか、時系列で簡単に追っかけてみますね。

初日

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ステージで前説を行った女優ロージー・ペレスに「胸を見せろ」とセクハラ・コール

2日目

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リンプ・ビズキットが「日頃の不満をぶつけるように、すべてを壊せ!」と聴衆を煽り、会場の破壊行為が相次ぐ

3日目

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朝にレイプの報告が入る。

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レッチリのステージの際に、後方で複数の放火行為

 事後報告によると44人の逮捕者、8人の性犯罪被害、うち4人がレイプ。あと数百の余罪疑惑あり、とのことですが

これ

1回のフェスでの記録ですよ!!信じられます??

僕も「公開セクハラがあった」「リンプ・ビズキットがバカな煽りをした」「レッチリのときに放火があった」ことは聞いてて、その光景の写真、動画は見てるんですけど、こうして時系列に起こった順に、他の細かいこともつけてみると、もう憤りしか覚えませんね。

 このドキュメンタリー、素晴らしいのは、これがなぜ起きたかの分析がすごく巧みなんですよね。それも「時代背景」「この日の状況」、この2つに分けて非常に言い得て妙な分析をしてくれています。

まず「時代背景」に関してが

①アメリカの景気が90s後半に盛り返して気が緩んでいた
②カート・コベインがこの5年前に亡くなったことで、彼やREMのマイケル・スタイプが推し進めていたようなフェミニズム、親LGBTの進歩的なオルタナティヴ・ロックのイメージが忘れられてしまった
③音楽業界がグランジの鬱屈した気分と攻撃性の部分だけを音楽業界が誇張して「怒りと暴力の音楽」としてオルタナティヴ・ロックをマーケティングしてしまった
④そうしたロックのイメージがブリトニーやバックストリート・ボーイズなどのアイドルブームの対抗馬として煽られ、ミソジニーがひどくなった
⑤ビル・クリントン大統領のモニカ・ルインスキーとのスキャンダルがあり、女性が便利に使われるイメージが広まっていた
⑥「ファイトクラブ」「マトリックス」「アメリカン・パイ」などの映画が白人男性の性差別を助長させていたところがあった
⑦コロンバイン高校でのいじめられっ子によるテロがあった

そして、「当日の状況」が

①異常に暑かった
②会場が軍が使っていた敷地で広すぎて照り返しが強かった
③観客の女の子たちが1969、1994年の「愛と平和の祭典」のウッドストックのイメージを曲解しすぎて、無防備に裸で行動しすぎた
④60年代のウッドストックを知らず、どうでもよかった
⑤観客の多様性が少なく、白人男性が圧倒的に多かった

こうしたことが重なった結果、上に書いたような結果になってしまったわけです。

 僕はこの一件以降、とにかくリンプ・ビズキットをはじめとしたニュー・メタルが大嫌いになって、あの当時の音楽ジャーナリストでもっとも叩いた人の一人だったと思うんですけど(笑)、今、ふりかえるとですね

あのとき、これくらい、細かく分析できてたらなあ・・

 
こう思うときは今もすごくありますね。

僕の説明がうまくなかったから、説得力がなかったのかなあ。今でこそ、このウッドストック99とかニュー・メタルのイメージが日本でもだいぶネガティヴな感じで知られるようになってますけど、あの当時はそんなに知られてなくて、日本ですごく人気ありましたからね。僕の研究と語彙不足は否めなかったかなあ。

 で、これ、今振り返ると、

トランプの極右時代の兆しがすでにここに・・・


 すごく、白人優越、男性優越、マチョイズム優先な感じでしょ?これなんとなく、デモグラフ、わかるんですよ。ウッドストック99の客って、あの当時の20代前半が圧倒的なんですよね。この人たちの年齢を逆算すると、小学校のときにメタルで、この時代がこれでしょ?で、それ以降、中年になって2010年代に「ブロ・カントリー」っていう、ビールと女を主題にしたカントリー聞いてる層と一致しちゃうんですよ、これがね。中年になってトランプ支持した人も多いと思いますよ。おそらくグランジの時代も、カート・コベインとかパール・ジャム、REMの持つメッセージの部分には何にも興味を示さなかったタイプなんでしょうね。

 実際問題、ニュー・メタル、極右多いですしね。フレッド・ダーストはノンポリっぽいんですけど、彼が乱したステインドって一時人気あったバンドのヴォーカルだったアーロン・ルイス、今、極右カントリーの人気シンガーだし。システム・オブ・ア・ダウンとかデフトーンズみたいな硬派で売ってたバンドにも一部極右メンバーがいたりするような感じですからね。


 そんなことを思い出しているタイミングで

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7月30日にザ・ストロークスの「Is This It?」がリリース20周年を迎えました。

このアルバムがこの当時に「ロックの救世主」扱いをされたんですけど、これもその当時「なにがそんなに新しいのか?」と言われたものです。僕でさえ、当初はそんなにピンときてませんでした(苦笑)。

 たしかに「ヴェルヴェット・アンダーグラウンドとどう違うんだ」と言ってた人はいたものです。ただ、じっくり聞くと、「あんな音の分離のいいヴェルヴェッツなんてねえだろ」とか「あんなメトロノームみたいなリズム、ないだろ」とかわかるようになると独自性、わかってくるんですけど、

改めて、このウッドストック99のドキュメンタリーみると

「ああ、ロック界は毒消しを必死に求めていたんだな」


そう確信して思うようになりましたね。音楽がどう以前に「暴力的で男根主義的な、保守イメージに陥ったロック」に対し「なにが本来のロックらしさなのか」を思いださせるためのこのアルバムだった気はすごくするんですよね。

 こういうイメージね。

上のドキュメンタリーでモービー、彼も99年のウッドストックに出てたんですけど、出てたニュー・メタルのバンドを「アーミー・ベース(軍隊)・バンド」って呼んで批判してたんですけど、そういうイメージとは違う方向性を示すバンド、それが必要だったんですよね。

 これがねえ。日本でウッドストック99の惨状がちゃんと伝えられずに、それどころか当時の日本のメディア、ニュー・メタルかなり推してたから、そのニュアンスが殺されてね。アメリカではストロークスとかホワイト・ストライプス、ハイヴス、ヴァインズが出た頃に散々言われてたことなのにね。

 日本だとむしろ、「NMEがブリットポップのあとにブームにしようとしているロック」みたいなニュアンスで伝えられて、それもイギリス国内だけをみると間違いじゃないんですけど、それだけで見ると意味合いが半減なんですよね、本来は。

 この欧米のジャーナリズムのリアリティを日本に持ち込みたくて「Hard To Explain」という名前のメディアまでたちあげて10年くらい僕もやってましたけどね。最初の方はそういうジャーナリズムがあること主張しても「うそつきやがって」まで言われてましたからね。「ふざけんなよ」って感じですけどね、今からすれば(笑)。

 で、ストロークスも、このファーストのインパクトが強かったのと、2010年代のスランプと活動停滞で伸び悩んでいたんですけど

 去年の活動は素晴らしかったですね。すごく政治的になってバーニー・サンダースの大統領選のラリーに参加してたり

この曲をはじめとしてアルバム「The New Abnormal」がこの曲をはじめとしてビリー・アイリッシュに大絶賛されたのをはじめ、久しぶりに年間ベストなんかでも高い位置を占める人気作になって、ついにはグラミー賞の最優秀ロック・アルバムまで受賞してね。

 僕もこのアルバムに関しては、「Is This It?」が00年代のギターロックを規定したように、20年代にもこれからのギター・ロックへのヒントを与えた作品だったんじゃないかと思ってます。ギターの鳴り音、他のバンドでは、あれ絶対に聞かれるものではないから。

 この昨年のアルバムがあったおかげで、20周年の意味合いがだいぶ違うようになってきたなと思っていたところでした。

 そして、20年経って、ようやく彼らの位置付けもよりはっきりわかってきたんじゃないかなとも思ってます。アメリカじゃねえ、2001年の911以降はリンプなんかもかなりダメにはなったんですけど、とにかく業界がニュー・メタル好みすぎて2000sいっぱいまで引っ張りすぎましたからね。あれでアメリカにおけるロックのマッチョ礼賛イメージ、染み付いてしまったところがあるので、今のポリコレの世の中にはああいうイメージあると不利なんですよね。絶対、それで損してるとこ、あると思ってますよ。

 それが証拠に、話、ウッドストックに戻りますけど、あれ以降、国際的にフェスってニュー・メタルとかラウド・ロック締め出されたものになったでしょ?あれはウッドストック99のトラウマの名残だと思ってます。コーチェラは、あれを他山の石として研究したとかとも言われていますからね。

 で、今やアメリカのフェスだと、本当に世の中変わって、女の子と黒人が喜ぶラインナップに大きく変わってますからね。もうロックの存在がほとんどないような。それもそれでどうかと思うし、ヒップホップ入れたからってリベラルなわけではなく、つい先日のダ・ベイビーのフェスでのLGBT排斥の発言もあったりしましたしね。このバランスもゆくゆくまた変わってくるんじゃないかと思ってます。





















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