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全オリジナル・アルバム. FromワーストToベスト(第49回)コールドプレイ. 10~1位
どうも。
今回は恒例企画、FromワーストToベスト、行きましょう。今回でもう49回目なんですね。50回目は実はもう決めてて、そこから逆算して49回目を決めた経緯もあるんですけど、今回、これです!
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はい。通算10枚目のアルバムをリリースしたばかりのコールドプレイ。彼らの10枚のアルバムをランキングにしてみました。いい時期も、そうでない時期も、かなり振り幅の大きいタイプの彼らではあるんですが果たしてどうなってますでしょうか。早速10位から行きましょう。
10.Music Of The Sphere (2021 UK#1 US #4)
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まず、ワースト10位ですが、前作にあたります「Music Of The Sphere」ですね。もう、これは個人的に 「がっかり」以外の言葉が出てこずに聴いてて落ち込みましたね。宇宙を連想させるような1曲目のイントロそのものからしてもうクリシェ中のクリシェだし、そこから続けて鳴らされる音は、もうすでに「インディ・ロック・バンド」としての機能を完全に停止。ロックでさえもなく、大衆ポップバンドになってしまいましたよね。しかも共演相手がセレーナ・ゴメスにBTS。初期の彼らが好きなUKロックのリスナーなら反射的に避けそうな名前だし、実際、セレーナとクリス・マーティンのデュエット聴いてると「アラジン?」って感じで、90年代のディズニーの映画のバラードみたいな感じさえしましたね。バンタンに関しては僕は彼らは好きなのですが、ここでの「My Universe」に関してはエド・シーランとの共演曲よりはマシだったものの、この時期のバンタンのアヴェレージ切る程度にはキレがないし、コールドプレイのこれまでの実績考えて「それでいいの?」と思わせるものでした。批評的には散々だったはずなんですが、グラミー賞の最優秀アルバムになぜかノミネートされてしまったりツアーでものすごく稼いだりで、このイメージが肯定されてしまったのが個人的にはかなり不安です。
9.Moon Music (2024)
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ワースト2が「Moon Music」。4日に出たばかりの新作ですね。コールドプレイって、2010年代以降は「ポップに振り切った作品」の後は「本来のインディ・バンドとしての引き締めた作品」を交互に出してきた印象があって、そのローテで言うならば今回は後者に当たる番だったので、それで今回、僕、期待したんですよ。アルバムの1曲めはアンビエント寄りの硬派なエレクトロのジョン・ホプキンスとの共演だったし、滑り出しは「やはり、そちらの路線か」と期待させたんですよね。ところがシングルにもなった「Feels Like I'm Falling In Love」にキレがなく、「ほら、センスいいだろ」というところをアピールしたかったはずの「We Pray」が大ハズレ。リトル・シムズとバーナ・ボーイっていう、UKヒップホップのクイーンとアフロビーツのキングが入って、なんでライオン・キングみたいな曲にしかならないのか。せっかくアルバムをよく見せるための切り札切ってきたのに、彼らに対しても台無し。これでガクッときて、この先もキレなし。「本気モードでこれだと本当に苦しいな」とも思いましたが、よく見たら2作連続マックス・マーティンにアリアナ・グランデ・チームのイリヤまで。もう違うバンドだと思うしかないのかな。
8.A Head Full Of Dreams (2015 UK#1 US#2)
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8位は「A Head Full Of Dreams」。これは10年代のコールドプレイではヒットした記憶があるんじゃないかな。これのファースト・シングルの「Adveture Of A Lifetime」って巷ですごく良くかかりましたからね。ダンサブルなアップテンポ調の曲では、これが屈指に有名なのかな。あとは「Hymn For The Weekend」ね。ビヨンセがシークレットで参加した、アヴィーチーも参加した曲。これもなんかソウルフルでカッコ良くなるんじゃなくて、低年齢層向けに覚えやすい曲になっただけというか。そういう年齢層には届きやすくなったということなんだと思うし、おそらくこのあたりからリスナー層ガラッと変わったんじゃないかな。ここらからのファンの方には、その後のコールドプレイ、違和感ないかとは思われます。ただ、もう、このあたりからはイマジン・ドラゴンズがライバル・バンドという感じで、レコード会社と市場のニーズに合わせて、EDM(この時期なのでとりわけ)やヒップホップという、ヤングキッズに人気なものの需要に応えていくロックをやることで、低年齢層のロック離れを食い止める役割をしたのかな。セオリー自体の聞こえは悪くないんですけど、それに伴う音をどう受け止めるか、なのだと思います。
7.Everyday Life (2019 UK#1 US#7)
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7位は「Everyday Life」。2019年の前々作になりますね。この前作「A Head Full Of Dreams」はヒットはしましたけど、本人たち的に後ろめたさがたまっていたのか、このアルバムでは初期のメランコリックで叙情的なインディ・ギターポップの作風に立ち返っています。これの頃にはもうサブスクで解禁になったばかりの状態で聴けるようになっていた頃ですが、これが出たばかりの当時、最初は割と印象良かったことを覚えています。しかし問題は、ただ「印象がいい」だけで、「これを猛烈にリピートしたい」と思わせる曲がなかった。スタイルそのものは初期に近いのかもしれないけど、肝心な中身がそうではなかった。このアルバム、奮発して2枚組ヴォリュームで曲を繰り出してるんですけど、その多さゆえにかえって聞きにくく効率も悪い。どんなに良いナイフを持っていたにしても研がないと錆び付いてしまうように、彼らもどんなに良いスタイルを以前に持っていたとしても、普段からそういうの作ってないといざという時に本領発揮できないんですよね。今回聴き直してみて改めてそう感じましたね。
6.Mylo Xyloto (2011 UK#1 US#1)
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6位は「Mylo Xyloto」。2011年に発表した5枚目のアルバムでしたけど、ここがもう、このバンドにとっては大きな分岐点でしたよね。のちにまでつながる大胆なポップ化。それがここから始まります。もう、1曲目のテンポ上げた、これまでにない陽キャラ見せたようなタイトル曲からして違和感あったし、大ヒット曲の「Paradise」でのファルセットの「パラー、パラー」とか「オオオオ」というくだりはいくら何でもこれまでの自分たちのバラードの大仰なパロディすぎるぞと思ったり、さらにリアーナとの共演となった「Princess Of China」もちょっとポイントが見えなかったり。クリス、00年代にジェイZやカニエと共演してそれなりにヒップホップの方面での自信をつかんだのかもしれないんですが、なんかそこのところが勘違いの始まりだったような気がしてます。そう考えると、このアルバムこそがのちの諸悪の根源と考えることも可能なんですが、ただ、この時点でその後がそこまで悪くなるとまでは考えなかったのも事実です。そこはやはり、よくない方向性なりにまだ曲の強い時期でもあったし、また軌道修正し直せばなんとかなるのではとも思いましたからね。実際、「Charlie Brown」あたりは、まだ彼らにアーケイド・ファイアへの憧憬が感じられたりする良い曲でしたからね。
5.X&Y (2005 UK#1 US#1)
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5位は「X&Y」。2005年発表のサード・アルバムですね。この時はもう、彼らに対しての世界的な期待値がマックスの時ですね。この前作が売り上げ的にも批評的にも本当に良かったし、まだ「ロック界の未来を支えてくれ」という期待も大げさでなくかけられてましたね。ただ、本人たち的にはこの当時持ってたアイデアがその期待に追いつき切っていない感じは正直なところありましたね。このアルバムは特にセカンドからの進展がなかった、どちらかというと延長線上というのに近い作品でしたからね。それは「Speed Of Sound」が「Clocks」、「Fix You」が「Scientist」といった前作からのヒットチューンに感触が近かったことでも現れています。でも、だからと言ってそれが決して悪いわけではなく、そのあたりの曲、しっかり彼らの代表曲にできているわけだし、新しいことこそしなかったものの、ソングライティング的な好調さは伺えましたね。僕的にはこのアルバムはジョニー・バックランドの憂いのあるギタープレイが好きで「White Shadows」のリフ、「Talk」のソロ、そしてコールドプレイで屈指にギターロックの「Low」でのプレイが好きなんですよね。こういうところがもう少し評価されてたらもう少しロック的な評価されてたような気もします。
4.Ghost Stories (2014 UK#1 US#1)
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4位は「Ghost Stories」。これは2014年発表の6枚目のアルバムですね。よく、彼らを語る際に「Mylo Xyloto以降が・・」という言われ方はされがちなんですけど、僕は少し違って、このアルバムまでは評価してます。これ、イメージ的に誤解されてますけど、いいアルバムですよ。やはりというかこの前作「Mylo Xyloto」に関しては彼ら本人的にも思うところあったような気がしますね。一転して、すごく内にこもった内省的でダークな作品に転じましたからね。サウンド的にも初めてエレクトロ、というかIDMを使った個室的なサウンドに行き着きましたからね。彼らの場合、エレクトロを使ったところでレディオヘッドみたいに革新的で進歩的な使い方はできないので、どうしても心地よさ優先的な聴き方にはなるんですけど、趣味のいいアンビエント作だと思うし、とりわけ先行シングルになった「Magic」に関しては、彼らでリピートするくらいに好きな最後の曲ですよね。聴き進めていっても軸があってブレないし、統一感もある。文句なし・・・と思いきや、それは最後から2曲めで壮大にどっちらけるという(汗)。言わずとしれた、当時、EDMのときの人だったアヴィーチーとの「A Sky Full Of Stars」。これでガクッとひっくり返るんですよね〜。この1曲のためにこのアルバムは過小評価を続けています。しかもEDMがまだ世界で一番売れてる音楽の時期でしたからね。あれですごくチャラくさく見え始めて、せっかくアルバム良かったのにそこは考慮されず、大衆イメージの方が一方的につきすぎて、本人たちも戻ってこれなくなった、というのはあるかもしれません。
3.Viva La Vida Or Death And All His friends (2008 UK#1 UK#1)
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3位は「Viva la Vida」。もう、ここら先はど定番ばかりですけどね。これはやはり力作というか、00年代後半のロックを代表する作品だと思います。これはやはり、この前作「X&Y」がそのさらに前作の延長みたいな感じになってしまったことで、もっと先に進みたい欲が出た作品だったのではないかと思うんですよね。プロデューサーにブライアン・イーノ据えたのもその意欲だと思うんですけど、それ以上にマーカス・ドラヴスですよね。あの当時、ロック界で最も飛ぶ鳥落とす勢いだったアーケイド・ファイア手がけた。この頃の彼らのアーケイド・ファイアへのライバル意識はかなり明白で、衣装とか気を使ったことなかったのに、そろいの楽隊風のコスチューム着たりして。アルバム自体もバロックポップ風のスケール感で迫ってて、祝祭感に溢れるコンセプトもまさにそうで。その意味で、その後の彼らの代名詞的存在となったタイトル曲はこの時の彼らの象徴でしたよね。ただ、そうでありつつ、ちょっとピーター・ゲイブリエルを思い出させるこれまで以上にヘヴィなメランコリックさを表した「Violet Hill」、そして、初期の頃からの彼らの絶妙な隠し味となっていたエコー&ザ・バニーメン的なダークさがにじみ出た「Lost!」など、タイトル曲との対比となる出色の曲の存在も光ります。
2.A Rush Of Blood To The head (2002 UK#1 US#5)
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そして2位ですが「A Rush Of Blood To The Head」。セカンドアルバムのこちらを2位にしたいと思います。国際的に見ればこれが出世作で、グラミー賞の主要部門も受賞した1作なのでこれが1位でも別に良かったんですけどね。デビューの時と比べて飛躍的に曲の幅も生まれたのは確かですしね。特にクリスの鍵盤類の使い方のバリエーションと、ジョニー・バックランドのギター・フレージングの効果的な際立たせ方、さらにリズム隊の強化で、前作ではそこまで聞かれなかった音の立体的構築も巧みになってるし。シングルヒットした「In My Place」「Clocks」「The Scientist」だけでなく、その周りを固める「God Put A Smile Upon Your Face」「Daylight」「Green Eyes」「Amsterdam」あたりの渋めに抑えた曲の完成度の高さがアルバムを引き締めるんですよね。とりわけ脇役に当たる曲で見せる格調高いセンスの良さ。これこそが、その後の彼らからは残念ながら失われてしまったものでもあります。ピアノとかアコギで内省表現した時の聞かせる説得力。これは今聴いても引き込まれますからね。この当時に彼らが比較対象としてあげられていたバンドで思い出すのはU2やレディオヘッド、シガーロスといったところで、その中で彼らは一番見かけでは華がないけど、でも、大衆的な近づきやすさは一番あった。すでにそうした先天的なポップの才能があったわけですから、そのままで良かったんじゃないかなとは思うんですけどね。
1.Parachutes (2000 UK#1 US#51)
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そして1位は「Parachutes」。デビュー作ですね。最近、名盤選などを見てるとセカンドで選ぶ人も少なくないようですが、いや、こっちでいいでしょう。文句なしの名盤なので。何がいいか。のちに彼らがどんなに音楽的に成長して表現力が上がり、ステージでのスケール感が上がろうが、ここでしかなってない輝きのようなものがここにはまぎれもなくあるので。例えば「Sparks」。ここで聞かれるニック・ドレイクのセカンド・アルバムのような美しき静寂とほのかな煌びやかさに秘めた静かなパッション。ああいう、カルトなシンガーソングライターの名盤でしか耳にすることのできない至高の瞬間。あれは他のどのアルバムにもないものです。これ、密かな人気曲で10億ストリーム超えの伝説曲になってるのもポイント高いです。これに引っ張られるように、アルバム内で比較的地味な、とりわけ後半のフォークの曲がすごく冴えてるんですよね、このアルバム。ピアノ・バラードの「Trouble」での緊迫感も然り。あと、前半に顕著なギターロックでのエコー&ザ・バニーメンからの影響ですね。クリスの声の、後に引く深い低音の響き。これがジョニー・バックランドのメランコリックなリフと相まって固有の優美さと憂いを表現してるんですけど、これが後にU2だU2だとやたら言われるんですけど、ちょっと回転数上げたバニーメンですね。「Dont Panic」「Shiver」「Spies」の頭からの3連発聞くと未だにそう思うんですけどね。そしてそこに決定的なアリーナ・アンセムの「Yellow」あるわけでしょ?コンビネーション的にも申し分ありません。この当時、「レディオヘッドの静の部分の後継者」とかヴァーヴとかトラヴィスとかとも比較されたりしたんですけど、「叙情」というだけではどこか収まらない高度なソングライティング技術と表現力を感じたんですよね。ヴァーヴは気持ち近いんですけど、リチャード・アシュクロフトほどの歌唱力こそはないものの、彼よりは格段にバラエティにも富んでますしね。。その才能がその後の四半世紀で効果的に生かされたかはわからないですが、桁違いのバンドになったことは事実だと思います。