沢田太陽の2022年1〜3月のアルバム10選
どうも。
では、お待ちかね、恒例企画、3ヶ月に一度の沢田太陽のアルバム10選、2022年1〜3月の10枚は次のようになりました!
はい。普段から僕のブログ読んでると、恒例のアルバムがずらりと並ぶ形となりましたが(笑)、これが僕の今年最初の3ヶ月の10枚となりました。早速紹介していきましょう。
はい。まずはじめは日本のアーティストです。優河。紹介する手前で恐縮なんですが、僕、3月25日まで、この人のこと、全く知らなかったんですよね。この日の注目はもっぱら藤井風と中村佳穂の同日発売で、僕もその2枚を期待して待ってたんですね。この2枚もまあ、良いと言えば良いのですが、僕の期待値がちょっと高すぎたのか、「中村佳穂に藤井風の曲の丁寧さがあって、藤井風が中村佳穂ばりにはちきれたらいいのになあ」と思って煮え切らないでいたら、方々から「優河すごいぞ!」の声が聞こえてきたので聴いてみたら・・一気に心奪われてしまい、決まってなかった最後の1枠がこれに決まりました。いやあ、こういうUSのインディ・フォークというかアメリカーナというか、こういうサウンドをリアリティ持って表現できる日本人アーティストいるんだなあとびっくりしましたね。限りなく生身に近いむき出しの音楽表現にアンビエントの空間がサイケデリックにほのかに揺らぐ様はフリート・フォクシーズのようだし、ふわっと包み込むような優しさがありながらも真の強さを感じさせる声は昔の大貫妙子さん、今でいうならルーシー・デイカスみたいで。日本のポップ・ミュージックの縦軸で見ても、今の世界の音楽シーンの横軸で見ても両方で通用する見事な盤ですね。これほどの存在になぇこれまで気がつかなかったのか、そっちの方が不思議ですけど、ここから歴史を築いていく存在になればいいなと思います。
続いてはギャング・オブ・ユース。オーストラリアの若き国民的人気バンド。このサード・アルバムで全英チャートのトップ10にも入るほどのバンドにもなりました。僕は2017年に、彼らが本国で大ブレイクしたタイミングで、「ナショナルがU2とブルース・スプリングスティーン足したみたいな曲やってるスケールの大きなバンドがいる!」と思って興奮したのが出会いでしたね。もう、その頃からオーストラリアでは破格の扱いでしたけど、それから5年、時間はかかりましたが、その波が国の外に広がりつつあります。これ以前に僕はウォー・オン・ドラッグス、キラーズ、サム・フェンダーで「ポスト・スプイングスティーン」のネオ・ハートランド・ロックの波が来つつある、という記事を書いているのですが、その路線での本命がこのバンドだと思っています。もう、サウンドから、ストリートのリリシズムを捉えた歌詞から思い切り継承してるのですが、今回のアルバムでは自分たちらしい現在性を付与しようと、エレクトロとストリングスを強化することで発展させようと工夫してるのが見て取れましたね。さらに唯一無二の存在に成長しています。フロントマンのデヴィッド・ルアペペのカリスマ性も、魅惑の低音ヴォイス共々磨かれてます。
そして、これも特集しました。大復活のティアーズ・フォー・フィアーズ。彼らにとっての30年以上ぶりの傑作アルバム誕生です!彼らに関してはThe 1975による、彼らから影響を受けた発言などで2010年代の後半から再評価あって、「新作、出れば話題にはなるな」とは思ってたんですけど、まさかレビュー総合で80点を超えるほどの会心作を出して、英米で同時にトップ10に返り咲くほどのものになるとまでは思いもしませんでしたよ!彼らは80sの全盛時の時から、MTV経由で世界ヒットしたニュー・ウェイヴのスーパースターの中でも批評的に別格扱いで、メランコリックな詩情を持ったシンセ・ポップと、そこに止まらない、ソウル・ミュージックやビートルズなどの影響を受けた生身のソフィスティケートされたサウンドで一線を画す存在でしたけど、一方でそのイメージをまんま取り戻した、そのもう一方で現在進行形の進歩を示していた。カート・スミスが再評価に意識的で、、ローランド・オーザヴァルが彼ら自身の現在進行形に舵を切る、といった風に2人のバランスも絶妙によくてね。彼らが最後に大ヒットしたの、1989年の「Seeds Of Love」ですけど、たとえ33年が経って、年齢が還暦を超えてもカムバックが可能であることを証明したとは後続のアーティストたちにも勇気を与えると思いますね。
続いてはUKロックの若いとこ、行きましょう。まずはヤードアクト。いわゆるポストパンク・スタイルのロックで、そのせいでサウス・ロンドン勢として括られがちですが、中部のリーズの出身です。彼らですが、去年のうちから2022年の注目株として高い期待を集めていましたが、それに応える見事なデビュー・アルバムだったと思います。いわゆるパンキッシュなファンク・スタイルではあるんですけど、グルーヴそのものはカクカクはしてなく、むしろふくよかな本格的ファンク。イメージとしてはトーキング・ヘッズ、ハッピー・マンデーズ、さらに70sのローリング・ストーンズを彷彿させるものがあります。さらにフロントマン、ジェイムス・スミスのトーキング・スタイルのヴォーカルを聴いているとUKラップの先駆のザ・ストリーツを思わせたりで。実際にライブで見てみると、もっと感じが違うんじゃないか。これまで見えてない可能性を秘めてるんじゃないかと思わせるところが頼もしいです。
続いてはブラック・カントリー・ニュー・ロード。昨年からわずか1年のブランクで早くもリリースされたサウス・ロンドン・シーンの期待の星です。彼らの場合、どちらかというとポストパンクよりポストロックの混沌としたイメージの持ち主で、サウンド的には本来僕が好まないタイプだったりもしたんですけど、こういう音楽性に似合わない大学の軽音部みたいな爽やか男女のバンド構成が面白いなと思ったのと、シーンの中で伸び代一番ありそうだなと思ったので気になってたんですね。そしたら案の定、予感が当たって、このアルバムで彼ら、前作であまり力を入れなかった「曲」に焦点を当て、時にはシンガーソングライター的に聞かせる展開までしてね。それでいて彼ららしいジャズ的なフリー・フォームも保たれていて。「このアンサンブルは今後のロックに影響及ぼしうるなあ」と思ってたんですが、その矢先にフロントマンのアイザック・ウッドが衝撃の脱退。彼らはこのまま活動を続けていくと主張してますが、せっかくシーンで頭ひとつ抜けかかってた矢先。果たしてどうなるんでしょう?
続いてはウィーケンド。これも特大ヒットした前作「Afterhours」からわずか2年の間隔でのアルバム。しかも今回の方が前作より細かくコンセプトが練られていて、「架空のFM曲のプレイリスト」を想定した、一曲一曲の単体ではなく、アルバム一枚のトータルで聞かせるスタイルをとっています。これなんですけど、「これで彼の最初の集大成ができてしまうんじゃないか」と思えるくらい、これまで彼がやってきたことがぎっしり凝縮されているんですよね。インディ3部作のメランコリア、一気にスター・アーティストへ王手をかけた「Beauty Behind The Madness」の頃の大胆なポップ・アピールも「Star Boy」のエレクトロとトータルの完成度も、「Afterhours」のソフィスティケイトされた80sのレトロ・フューチャー感覚も。なんか流れ的にすごく美しいんですよね。「一旦、これでサウンドの方向性に区切りつけて、次作で全く違う方向性に出てもいいんじゃない?」と、70sのデヴィッド・ボウイみたいな展開まで彼に期待したくなってしまう。そういうオーラがあります。
続いてはミツキ。2018年に世界でも1、2位を争うほどに絶賛され、僕のその年の年間2位に選んだ「Be The Cowboy」に続く待望の新作。あのアルバムでの効果は本当に大きく、全英6位、全米5位という大躍進を遂げました。仮にも日本生まれで日本語も堪能な彼女であるにもかかわらず、日本のメディアはスポーツ選手のように好き勝手に自分たちのものにはしてくれません。まあ、「日本の誇り」なんて言われるよりはいいですが、ミツキの感じる疎外感は深めかねませんね。そのミツキですが、彼女の人気の秘訣は、その「どこにも属せない孤独感」といった、ある種、ラナ・デル・レイに近い「孤独のカリスマ」感による教官なんですが、そのテーマ性あ今回も変わってないんですが、サウンドが今回、ロウファイなシンセポップになっています。それゆえ、コアファンの間では「ブレイク前のロウファイ・ギターロックが良かった」とも言われてたりもしますが、僕は逆。むしろ、サウンド・フォーマットをガラリと変えても、メロディ、歌い回し、歌詞の世界観と、「数秒聞いただけでミツキとわかる世界観」を完全に確立してること、同じシンセポップでもコード進行、和音、展開の妙でありきたりには決して聞こえないとこも含め、「さすがだな」と感心しました。「どの方向に振ろうが、この人はやっていける」という安心感と確信を得ましたね。
続いて、このバンドも大躍進遂げましたね。ビッグ・シーフ。ギャング・オブ・ユース、ミツキ、そして彼らと、2018年までには注目していた逸材が順調に評価もセールスもあげてるのは嬉しいものです。ビッグ・シーフに関してはバンド、そしてエイドリアン・レンカーのソロと、毎年のようにリリースがあっては絶賛され続け、アメリカーナ・サウンドによるアメリカの伝承音楽の深化と、レディオヘッドのような実験的精神性の両方を兼ね備えた、現在音楽シーン全体を見回してもトップクラスの実力を持つバンドです。そのことは2019年に出た2枚のアルバム「UFOF」「Two Hands」でも証明されていましたけど、今回は2枚組のヴォリュームでほとばしるソングライティングを思い存分吐き出してます。作風としては、「Two Hands」で見せたルーツ・ミュージック色を、「UFOF」での近未来的でサイケデリックな味付けを隠し味で使った感じなんですが、追随を許してないですね。これを女性フロントのバンドでやれてるところも、過去に聞き覚えのない感覚でかなり新鮮です。ここまでの作品作って、これまで全米100位入りした作品がない、という由々しき事態もあったんですけど、今作でようやく全英15位、全米31位と、本来の実力に見合う結果も伴ってきています。もう、ここからは2020年代のロックシーンを牽引するカリスマですよ。
そして宇多田ヒカルの「BADモード」です。前も特集記事で書いたように、人生で初めてハマった彼女のアルバムがいきなり、洋楽がメインの3か月ベストにエントリーしてしまったわけです。今回の紹介順、必ずしも「カウントダウン」を意味するわけではなく、あくまで紹介しやすい順番で書いてはいるんですけど、ただ、それでもこのアルバムは今回のアルバムの中でかなり上位の方ですよ。これを入れることに関しては気に入った時から決めてました。今回、ミツキ含め、日本人女性三人なんだよな。すごいすごい。理由はやっぱり、彼女が今の世界の音楽シーンで最も熱い女性のインディ・ポップに実力で仲間入りしたことへの喜びですよね。しかも、誰の真似でもない、彼女らしい感性で。それでいてAGクック、そして現在のエレクトロの最高峰のフローティング・ポインツに本気で仕事させて、何の違和感もなくそれをモノにしてしまうんですから。「Fantome」以降、あくまで曲の骨格をメインにしてそこからアレンジを施す感じになって曲に立体感出て急成長してますけど、それの最高峰ですね。年間ベストでもこれ、かなり上位に入ってくることになると思います。
そしてそして、やっぱりラストはこれしかないですね。ロザリア!源泉に厳選を経て選んだハイレベルな10枚の中でさえも、これはダントツでしたね。特集ですでに熱弁を振るったように、これほどジャンルをひとっとびに横断した作品もない。レゲトンとジャズがいきなり前衛的にくっついたり、ストレートなヒップホップだったり、ラテンのバラード、R&B、ロック、さらには彼女の本来の持ち味の正調フラメンコ。これらの歌を歌わせてもラップ(これがやたらうまい!)させても全く違和感なく、すべて彼女唯一無二のパワフルなハイトーン・ヴォイスでまとめきってしまう強引な説得力。そして音楽だけじゃなく、「テリヤキ」「ヘンタイ」と、いったいどこで覚えたのかわからない日本語を巻き散らすだけでなく、母国語スペイン語のリリックでも聞き馴染みのない言葉でリリックの可能性の拡大を求めてしまう。そんな彼女のパワーの前にウィーケンド、ファレル・ウイリアムス、ジェイムス・ブレイクといった錚々たるメンツが添え物のようにタジタジになってるのを聞くのも痛快です。スペイン語の作品にして世界各国のチャートの50位以内に入ったことだけですでにかなりの快挙ではあるんですが、この怪作を足がかりに次あたりで世界制覇、狙って欲しいですね。
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