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The1975とアークティック・モンキーズ。UKロック二大巨頭がアルバムを交互に出したことで思い出す(はず)2022年10月

どうも。

この2週間というもの、UKロックファンの方々にとってはひとつの祭りでしたね。

何と言っても

The1975とアークティック・モンキーズ。今のUKロックの、もう二大巨頭だとあえて言い切っちゃっていいと思いますよ。1週間おきにニュー・アルバムをリリースしたわけですからね。

 僕は以前にフリーペーパー、雑誌の編集もやってたわけですけど、その体験でも、ここまででかいバッティングは過去に経験なかったですね。だって、表紙に是が非でも据えたいタイプのアーティストが同タイミングで出るわけですからね。僕のやってたものは表表紙、裏表紙制をとってましたけど、これ、どっち表かって、簡単に考えられない次元ですからね。もし、僕がまだ雑誌やってたら、思い切り悩んだはずですよ、これは(笑)。

ではまず


The 1975のBeing Funny In A Foreign Languageから語ることにしましょう。

まず、最初に思うこととしては、「思ったより早く戻ってきたな」ということですね。この前が、もうほぼ同時進行的に2枚の超大作作ったわけじゃないですか。あれが出たのが2018年と2020年。労力考えたらもう少し休むかなとも思ったんですけど、まあ、曲がするすると出てくるというのは、それ自体、とても素晴らしいことだと思います。

 今回のアルバムは、前2作のようなアルバムとしてのトータル・バランスをあえて狙わず、ある曲だけをまとめて世に出した感じですね。彼らって通常、70〜80分の大作作りがちなんですけど、今回は43分。このバンドのこれまでの作品から考えると、43分であったとしてもEPみたいなもんですよ(笑)。そういう、肩の力の抜け方がまず印象的でしたよね。

そして、そこから

https://www.youtube.com/watch?v=87nG3LuabUs

この4枚の先行シングルを発表していましたね。最初に出た「Part Of The Band」がかなり変則的ないわゆる「ポスト・フォーク」的な曲だったので、そういう路線になるかと思いきや「Happiness」は彼らがデビューのときからよくあるファンキーな80sポップ路線で、「Im In Love With You」は2部作のときの「Its Not Living (If Its Not With You)」とか「If Youre Too Shy(Let Me Know)」の系譜のシティ・ポップ、そして「All I Need To Hear」hがソウル・バラード・・と言う流れですね。これらの異なるバラエティの曲が揃ったことで、それをパッと出しちゃう感じで今回は来たというか。

アルバムが出ても、ちょっと90s風のヤッピー・テイスト、あのイージー・リスニング風のピアノがそうなんですけど、「Oh Caroline」、それから、1984年のMTVみたいというか、ケニー・ロギンスみたいというか「Looking For Somebody(To Love)」も人気ありますね。

 彼らの場合、キャッチーなつかみのあるシングル向きの楽曲が量産できるタイプのバンドなので、こんな風に立て続けに出す機会があって僕はいいんじゃないかと思いますけどね。

僕はこのアルバムの終盤を飾る、このU2のバラードをシューゲーズしたみたいな「About You」という曲が大好きですけどね。この曲にニック・ケイヴ&ザ・バッドシーズのウォーレン・エリスが絡むという、技巧的に凝ったこともやってたりします。

 今回に関しては、僕はこれでいいと思ってます。批評の中には、「アルバムとしてのまとまりやコンセプトがない」みたいなものも読みましたけど、だからと言って、毎回毎回、前2作みたいな、スタジオ内で格闘して長大なトータルなアルバムを作る、なんてやり方をずっとやってたら精神的に疲弊するとも思いますからね。一回、こういう力の抜けたガス抜き的なアルバム、必要だと思いますね。それがゆえに「聴きやすい」と判断して聴く人だって間違いなくいると思いますからね。

 それが「Part Of The Band」的なものでも、「All I Need To Hear」的なものでも別に良いと思うんですけど、自ら編み出した新しいアイデアをアルバム1枚に発展させたいと思うなら、それは気が熟した頃にやればいいわけですからね。

 こういうアルバムですけど、イギリスとオーストラリアでレッチリ抑えて1位ですよ!いくらレッチリが今年2枚目のアルバム・リリースだったとはいえ、あのビッグネームを抑えて英、豪と1位になったわけですからね。これはすごく大きなニュースだと思います。

それにくわえて

日本のチャートでトップ10前後に入れるようになった!

これも大きいですよね。ビルボード・ジャパンで10位、オリコンで12位!久々じゃないですか。洋楽のロックバンドで、日本でここまで安定した人気に支えられているバンドも。やっぱ、サマーソニックで着実に育てられてきた効果ですよね。あと、シティ・ポップブームと、80s洋楽ファンの新旧の後押しがダブルであったのもラッキーだったと思います。

 その点でいうと、欧米圏よりも日本なんですよね。1975、イギリスではずっと1位で、アメリカでも今作もトップ10狙えそうなくらい売れてるようなんですが、ヨーロッパの非英語圏での人気がまだなんですよね。それは彼らが影響元として使う80sのソフィスティ・ポップがインディ・ロックのそれまでのルールと馴染んでいない人たちには理解が難しいみたいなんですよね。日本だと、エイティーズにプリファブ・スプラウトとかアズテック・カメラみたいなバンドを愛聴し研究する土壌みたいのがあったからすんなりいったところもあるんですけど、その土壌がない国、実は南米もそうなんですけど、1975の理解、まだ苦しんでるようです。早く、それらの地域でのアピールが欲しいなあと、個人的には思います。

続きまして

アークティック・モンキーズ通算7枚目のアルバム「The Car」行きましょう。


最初、先行がこの2曲で、いろんな人見ましたけど、「期待半分、不安半分」だったとは思います。それは

正直なところ、人気が出たとはいいにくかった2018年の前作「Tranquility Base Hotel & Casino」の延長的な路線だったから。

 そこに加えて彼らの場合

4年の不在のうち、ネット上でカリスマになってたんですよね。この「505」「I Wanna Be Yours」がSpotifyのグローバル・チャートでともに50位以内に入るヒットを記録します。それは現在まで続いてます。

さらに

2013年のアルバム「AM」が空前のロングヒットとなっていました。特にイギリスがすごいことになっています。9年前のアルバムというのに、ここのところずっと全英チャートのトップ10に入ってますからね!

 こうしたことからもアークティックには「AM」のような、ヘヴィでゴシックなロックンロールが求められていたわけです。日本だといまだにガレージ・ロックリバイバルの2006年のデビュー当時の頃の姿が求められがtちなんですが、欧米圏だと「AM」が決定的なブレイクアルバムです。それはブラジルでもそうでして、リリースされた年とか翌年とか、「R U Mine」「Do I Wanna Know」「Whyd You call Me When Youre High」「Snap Out Of It」が絵年かかり続けてましたから。実際、あれがロックでの最後の大ヒット・アルバムになって久しかった。それだからこそ、待望論が強かったのはたしかだったんです。

 で、僕自身は2018年の前作そのものも好きだったし、今回の先行シングルも、とりわけ「Body Paint」なんてすごく気に入ってたんですけど、解禁されて聞いたアルバム

ズバリ、大傑作だったと思います!


 いやあ、今回、なにがすごいかって、ここ近年のロックにおいて、他ではまず耳にすることのない、唯一無二の独自の新しいサウンドが流れていたから!

 これ、いうならばですね

この4枚の融合みたいなものですね。フランク・シナトラの「In The Wee Small Hours」(1954)、スコット・ウォーカーの「Scott 4」(1969)、ジョン・レノンの「ジョンの魂」(1970)、そしてディアンジェロの「Voodoo」(2000)、このあたりの融合ですね。

 つまりこんな感じです。アレックス・ターナーとしては、大人のディープな夜の世界のようなものをフランク・シナトラみたいに渋く歌いたいところを、シナトラの歪んだフォロワーだったスコット・ウォーカーのようなアヴァンギャルドなストリングス・アレンジや、ディアンジェロ、スライ・ストーンでもいいとも思うんですが、ねっとりかつスカスカしたソウルフルな間、そして後期ビートルズやソロ初期のジョン・レノンのようなドラムの溜めた間やコード進行で歌いたかったのかなと。少なくとも、これ、僕にはそう聞こえちゃいましたね。

 この融合感覚って、すごいと思うんですよね。かなりの音楽マニアでないといきつかない領域ですけど、これを自己満足にならずに現在の音として通用させているのがすごいですよね。アレックスがストリングスのアレンジ、どのあたりまでできるのか、謎ですけど、かなり自分からイニシアチブとらないとなかなかあの不協的でさえある響きって出てこないと思うし、あれにすごくエッジがあるんですよね。そこに加えて

ギターのジェイミー・クックが今回大活躍なんですよ!これまでの彼から聞いたことのないようなワウペダルによるファンキーかつサイケデリックな表現が聞けます。「AM」のときのようなハードなリフこそ弾いてはいないんですけど、ここ一番での攻撃的な歪みから、ブルージーな泣きまで、絶妙のタイミングで仕掛けてくるんですよね。

 彼がギターでかなり前のめりの攻めたグルーヴを聞かせるので、サウンドがただ単にムーディに陥ってしまうことを絶妙に避け、ボトムの部分での力強さが加わっているんですよね。いうなればこれ「攻めた癒し」とでもいうものですね。このあたりの感覚は、昨今のシティ・ポップ・ブームに対しての彼らなりのロックなアンサーととることも可能だと思います。

 ということもあり、今回のアークティック、ファンからのリクエストどおりの展開でこそないものの、僕の知る限り満足度が非常に高くなっていますね。

 それはやっぱり、前作の時点でまだ完成されていなかった表現がしっかり形になって出て、その独自性と完成度の高さに唸らざるをえなくなったからだと思いますね。

とにかく近年で、ここまで推敲され、完成されたロック表現はないですね。後続に強く影響を与える理想的なクリエイティヴィティだと思います。

 望むらくは、このアルバムも長く愛されて欲しいんですけどね。

 いずれにせよ、The 1975とアークティックの2組が、UKのみならず、現在のロック全般にまで理想的な模範を示した、かなり貴重な2週間だったように思いますね。






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