Variety のオールタイム映画ベスト100のリストがオススメできる8つの理由
どうも。
今日はこういう話をしましょう。
アメリカの映画業界誌の老舗「ヴァライエティ」が最新の映画オールタイムを発表しましたが、これがすごくいいんですよ!
こんな感じです。
1.サイコ(1960 アルフレッド・ヒッチコック)
2.オズの魔法使い(1939 ヴィクター・フレミング)
3.ゴッドファーザー(1972 フランシス・フォード・コッポラ)
4.市民ケーン(1941 オーソン・ウェルズ)
5.パルプ・フィクション(1994 クエンティン・タランティーノ)
6.7人の侍(1954 黒澤明)
7.2001年宇宙の旅(1968 スタンリー・キューブリック)
8.素晴らしき哉、人生(1946 フランク・キャプラ)
9.イブの総て(1950 ジョセフLマンキビッツ)
10.プライベート・ライアン(1998 スティーヴン・スピルバーグ)
11.雨に唄えば(1952 スタンリー・ドーネン)
12.グッドフェローズ(1990 マーティン・スコセッシ)
13.ゲームの規則(1939 ジャン・ルノワール)
14.ドゥ・ザ・ライト・シング(1989 スパイク・リー)
15.サンライズ(1927 フレデリック・ムルナウ)
16.カサブランカ(1943 マイケル・カーティス)
17.ナッシュヴィル(1975 ロバート・アルトマン)
18.ペルソナ(1966 イングマール・ベルイマン)
19.ゴッドファーザーPart 2(1974 フランシス・フォード・コッポラ)
20.ブルー・ベルベット(1986 デヴィッド・リンチ)
21.風と共に去りぬ(1939 ヴィクター・フレミング)
22.チャイナタウン(1974 ロマン・ポランスキー)
23.アパートの鍵貸します(1960 ビリー・ワイルダー)
24.東京物語(1953 小津安二郎)
25.赤ちゃん教育(1938 ハワード・ホークス)
26.大人は判ってくれない(1959 フランソワ・トリュフォー)
27.俺たちに明日はない(1967 アーサー・ペン)
28.街の灯(1931 チャーリー・チャップリン)
29.深夜の告白(1944 ビリー・ワイルダー)
30.スター・ウォーズ帝国の逆襲(1980 アーヴィン・カーシュナー)
31.ネットワーク(1976 シドニー・ルメット)
32.めまい(1958 アルフレッド・ヒッチコック)
33.81/2(1963 フェデリコ・フェリーニ)
34.駅馬車(1939 ジョン・フォード)
35.羊たちの沈黙(1991 ジョナサン・デミ)
36.波止場(1954 エリア・カザン)
37.アニー・ホール(1977 ウディ・アレン)
38.アラビアのロレンス(1962 デヴィッド・リーン)
39.お熱いのがお好き(1959 ビリー・ワイルダー)
40.ファーゴ(1996 ジョエル&イーサン・コーエン)
41.ワイルド・バンチ(1969 サム・ペキンパー)
42.ムーンライト(2016 バリー・ジェンキンス)
43.ショアー(1985)
44.情事(1960 ミケランジェロ・アントニオーニ)
45.タイタニック(1997 ジェイムス・キャメロン)
46.汚名(1946 アルフレッド・ヒッチコック)
47.ミーン・ストリート(1973 マーティン・スコセッシ)
48.ピアノ・レッスン(1993 ジェーン・カンピオン)
49.悪魔のいけにえ(1974 トビー・フーパー)
50.勝手にしやがれ(1960 ジャン・リュック・ゴダール)
51.地獄の黙示録(1979 フランシス・フォード・コッポラ)
52.キートン将軍(1926 バスター・キートン)
53.花様年華(2001 ウォン・カーワイ)
54.マッド・マックス2(1981 ジョージ・ミラー)
55.大地の歌(1955 サタジット・レイ)
56.ローズマリーの赤ちゃん(1968 ロマン・ポランスキー)
57.ブロークバック・マウンテン(2005 アン・リー)
58.ET(1982 スティーヴン・スピルバーグ)
59.冬の旅(1985 アニエス・ヴァルダ)
60.ムーラン・ルージュ(2000 バズ・ラーマン)
61.裁かるるジャンヌ(1928 カール・セオドル・ドライヤー )
62.バッド・チューニング(1993 リチャード・リンクレイター)
63.バンビ(1942 クライド・ジェロミニほか)
64.キャリー(1976 ブライアン・デパルマ)
65.抵抗(1956 ロベール・ブレッソン)
66.自転車泥棒(1949 ヴィットリーオ・デシーカ)
67.キング・コング(1933 メリアンCクーパー)
68.美しき仕事(1999 クレール・ドゥニ)
69.それでも夜は明ける(2013 スティーブ・マックイーン)
70.ベスト・フレンド・ウェディング(1997 PJホーガン)
71.奇跡の海(1996 ラース・フォン・トリアー)
72.イントレランス(1916 DWグリフィス)
73.となりのトトロ(1988 宮崎駿)
74.ブギーナイツ(1997 ポール・トーマス・アンダーソン)
75.パリ、夜は眠らない。(1990 ジェニー・リヴィングストン)
76.ツリー・オブ・ライフ(2011 テレンス・マリック)
77.007/ゴールドフィンガー(1964 ガイ・ハミルトン)
78.ジャンヌ・ディエルマン(1975 シャンタル・アケルマン)
79.Waiting For Guffman (1996 クリストファー・ゲスト)
80.ピショット(1980 エクトル・バベンコ)
81.ダークナイト(2008 クリストファー・ノーラン)
82.パラサイト(2019 ポン・ジュノ)
83.クレイマー、クレイマー(1979 ロバート・ベントン)
84.パンズ・ラビリンス(2007 ギジェルモ・デル・トロ)
85.ナチュラル・ボーン・キラー(1994 オリバー・ストーン)
86.クローズアップ(1990 アッバス・キアロスタミ)
87.サウンド・オブ・ミュージック(1965 ロバート・ワイズ)
88.マルコムX(1992 スパイク・リー)
89.昼顔(1970 ルイス・ブニュエル)
90.シャイニング(1980 スタンリー・キューブリック)
91.ある結婚の風景(1974 イングマール・ベルイマン)
92.ピンク・フラミンゴ(1972 ジョン・ウォーターズ)
93.サムライ(1967 ジャン・ピエール・メルヴィル)
94.ブライズメイズ(2011 ポール・ファイグ)
95.トイ・ストーリー(1995)
96.ハード・デイズ・ナイト(1964 リチャード・レスター)
97.エイリアン(1979 リドリー・スコット)
98.神経衰弱ギリギリの女たち(1988 ペドロ・アルモドバル)
99.12人の怒れる男(1958 シドニー・ルメット)
100.卒業(1967 マイク・ニコルズ)
こんな感じですけどね。
どういいのか。ちょっっとここで語っていこうと思います。
①アメリカ・メディアのオールタイムでは珍しいくらい、外国映画にしっかり配慮している
僕としては、ここが一番嬉しかったですね。
アメリカのメディアの主催する映画オールタイムだと、どうしてもハリウッド、アメリカの作品に偏る傾向があったんですよね。ハリウッドの歴史を知り上ではそれでも悪くはないんですけど、でもなんか、それだと真実味にかけてしまうというか、物足りなさを感じていたんですよね。
それが、ここでは、非英語圏の国がこんな感じです!
日本3
韓国1
中国1
イラン1
インド1
フランス11
イタリア3
スウェーデン2
デンマーク1
スペイン1
メキシコ1
ブラジル1
このように、非英語圏がこれだけ入ってます。合計して、全体の4分の1ほど入ってます。人によってはもっとほしいかたもいらっしゃるかとは思いますが、映画の製作、流通の規模を考えたら、この比率で僕はおかしくないと思います。
ほとんどが世界的巨匠への配慮ゆえだと思うんですけど、妥当な判断だと思います。日本だと黒澤、小津、宮崎、韓国はポン・ジュノ、中国ウォン・カーワイ、インドはサタジット・レイ、イランはアッバス・キアロスタミ、フランスがジャン・ルノワール、トリュフォー、ゴダールはじめ後述する女性監督たち、イタリアがフェリーニ、デシーカ、アントニオーニ、スウェーデンがベルイマン、スペインがあるモドバル、メキシコがデルトロ、ブラジルというかむしろアルゼンチンなんですがバベンコ。良いと思います。
②ここ最近の映画を偏重しすぎず、逃しもせず
ここも好きですね。
imdbとか、イギリスの映画雑誌のエンパイアあたりのオールタイムもよく参照にされてるんですけど、過剰にクリストファー・ノーランとスーパーヒーロー映画が多すぎるんですよね。子供に近い若い人とか、映画をたまにしか見ない人にはそれでいいのかもしれませんが、ある程度、自分から能動的にブロックバスター作品以外の映画を欲するような人には、やはりそれでは物足りないのは事実です。そのあたりの作品が冷静に厳選されています。
かといって、別に最近の映画を無視しているわけではありません。ノーランもちゃんと入ってるし、90年代以降の作品も多いですよ。90年代以降で全体の4分の1にあたる26本。映画史そのものの長さが100年とちょいなので、妥当な本数だと思います。
③ホラーの名作やフランチャイズ映画も無視せず
あと、意外にもホラーにしっかり枠があるんですよね。1位がヒッチコックということもあるのか、ややサスペンスが多かったりするんですよね。
通常のオールタイムだと、ヒッチコック作品か「羊たちの沈黙」くらいでとまるところが、ここでは「悪魔のいけにえ(テキサス・チェインソー・マサカー)」とか「ローズマリーの赤ちゃん」「キャリー」とか入ってるんですよね。
あと、フランチャイズ映画も軽視してません。スター・ウォーズも007も、DCも、エイリアンもしっかり入ってます。
④重複作品エントリーの顔ぶれが面白い
あと、作品が複数入ってる監督、ビッグ・ネームならそれも十分ありえることなんですけど、この顔ぶれが面白いです。
3本 アルフレッド・ヒッチコック
ビリー・ワイルダー
フランシス・フォード・コッポラ
2本 スティーヴン・スピルバーグ
マーティン・スコセッシ
イングマール・ベルイマン
スパイク・リー
ヴィクター・フレミング
ロマン・ポランスキー
スタンリー・キューブリック
フレミングとコッポラは、どちらかというと監督本人というより、「外せない作品」があるので入った感じがするんですけど、ベルイマン、ポランスキー、ルメット、スパイク・リーが2本あるのはすごく興味深かったですね。「渋い!」というか。
あと、今、改めて、ヒッチコックとワイルダーに3本割くあたりも。
④超クラシック(1910〜30年代)にも配慮
それから、物凄い古い作品、時代にして1910〜30年代が多いのも個人的にツボでしたね。この時代も10本は割いてましたからね。
特に嬉しいのは「サンライズ」「キートン将軍」「キングコング」ですね。「サンライズ」は本当に普遍的な、良心に問いかけるタイプの名作。キートンはこめでぃではありません、人類最初のアクション・スターです!キングコングものちのすべての特撮の元祖ですからね。当時は特に技術がないなか、創造性で技術をひねりだしているわけですから、そこに人間の知恵の力を感じてどうしても愛さずにはいられないですね。「オズの魔法使い」もしかりです。
あと、チャップリンとハワード・ホークスが漏れてないのはうれしかったですね。
ただ、DWグリフィスは、映画の父ではあるんですが、レイシストなのがなあ・・・。
⑤黒人映画に配慮
この点も好きですね。
ハリウッドは1980年代まで、人気作に黒人の役者さんを見ることがきわめて少なかったものなのですが、それを配慮してか、4本が選ばれてます。スパイク・リーで2作品と「それでも夜は明ける」「ムーンライト」。全部大好きです。リーはオールタイム・クラスで好きな監督だし、他の2本は2010年代で5本選べと言われたら個人的にも確実に入る作品です。
ただ、欲を言うなら、スパイク・リーを1本、黒人俳優の先駆者であるシドニー・ポワチエに差し替えて欲しかったなあ。「夜の大捜査線」あたりで。僕の裏読みなんですけど、多分、シドニーかデンゼル・ワシントン(マルコムX)かで迷った末のチョイスなのではないかと思います。
⑥女性映画やLGBTへの配慮
ここもいいと思います。
ジェーン・カンピオンが入ったのは、去年の「パワー・オブ・ザ・ドッグ」でのカムバックによる再評価でしょうね。
それに加えて、アニエス・バルダ、シャンタール・アケルマン、クレール・ドゥニといったフランスの女性監督が入ってますね。素晴らしいと思います。
あと、「ブライズメイズ」も女性コメディの大傑作ですからね。これも2010年代の10本指に入る重要作だと僕も認識してます。
欲を言うなら、キャサリン・ビグロウも入れて欲しかったなあ。オスカーで初の女性での監督賞受賞者なんだし。「ゼロ・ダーク・サーティ」、絶対過小評価されてると思います。グレタ・ガーウィッグはもう少しッマツベキですかね。
あとLGBT作品として「ブロークバック・マウンテン」、それから伝説のドキュメンタリーで最近オールタイムで見かけるようになってきた「パリ、夜は眠らない」が入ってるのも興味深いです。パリは僕も未見なんですけど、youtubeにあるので、年末に見ようと思ってます。
⑦カルト作も、嫌味にならない程度に入ってる
この「パリ、夜は眠らない」もそうですけど、いわゆるカルト作がここにいくつか入ってますね。「ショアー」とか「ジャンヌ・ディエルマン」とか「Waiting For Guffman」とか。ガフマンはモダン・コメディのクラシックで、ここから最近エミーを独占した「Schits Creek」とかも出てるのでカルトに重要です。
僕は、これらの作品のランクインのさせ方がいいと思います。そんなに高くない程度に入ってる感じが。
これの少し前に出たサイト&サウンドのオールタイムだと、ジャンヌ・ディエルマンが1位なんですよ。素晴らしい意味のある映画なのは認めます。ただ、「映画をこれから熱心に掘り下げたい」タイプの人には難しすぎて進められないし、映画マニアの人にとってもそんなに簡単に見れるわけではない作品です。そういうものを1位にするなんて行為は、物凄いカッコつけにしか見えないんですよね。ロック初心者にロックを勧めるときにビートルズじゃなくカンを勧めるようなものです。そういう過度なスノビズムは僕は個人的に大嫌いです。
そうではなく、「あくまでも100作のひとつ」として「大事なことは間違いないから」という感じなのに良心を感じます。
⑧役者の代表作に配慮
それから、こういうオールタイムって「監督」を配慮しすぎて「役者の代表作」の視点が欠けがちなんですけど、ここも意識が感じられます。
先ほど指摘したデンゼル・ワシントンもそうなんですけど、「クレイマー、クレイマー」入ったのはメリル・ストリープへの配慮だと思うんですよね。あと、「イヴの総て」はベティ・デイヴィスで「赤ちゃん教育」はハワード・ホークスもだけど、キャサリン・ヘップバーンのポイントもあるはずです。
だとしたら、コーエン兄弟の作品は「ファーゴ」より「ビッグ・リボウスキー」がよくはあったんですけどね。ジェフ・ブリッジズもほしいですね。あと、ハンフリー・ボガードをノワールで1本欲しかったですね。
・・・と、これだけ条件揃ってたら、良いと思いません?
が!
そんな僕にも「ん?」と不思議に思うポイントもあるので、そこを指摘したいと思います。
①ベスト・フレンド・ウェディング?
これはびっくりしましたね。ジュリア・ロバーツのロマンティック・コメディの人気作。これ、「嫌だ」とか、そういうのではなく、「そんなにすごい映画なんだっけ?」という感じで、内容あんまりよく覚えてないんですよね。なにが決め手になったのか、年末にチェックしようかと思ってます。
それから
②ナチュラル・ボーン・キラーズなんて入れるんだったら
なんで「ナチュラル・ボーン・キラーズ」なんて入ったんでしょうね。オリヴァー・ストーンがタランティーノの作品をグチャグチャにした悪名高き作品を。
これ入れるんだったら、デヴィッド・フィンチャーの「ファイトクラブ」の方が適切ですよ。はるかに意味のある作品だったと思います。
③このあたりは「初心者向け」にはなりえないか・・・。
僕個人的にはですね、たとえばダグラス・サーク、ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー、ハル・アシュビー、ジョン・ヒューズあたりは入れて欲しかったところなんですけど、「100作で紹介するには、まだちょっとマニアック」ということなのかな。
いずれにせよ、すごく見るの楽しめると思いますよ、このリスト。
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