英米でデビュー曲が初登場ナンバーワン! オリヴィア・ロドリゴは従来のアイドル像をどう打ち破っているか。
どうも。
この1週間近くは、この人の研究を行っていました。
はい、現在、デビュー曲「Driver's License」がアメリカ、イギリス、そして世界のいたるところでナンバーワンを獲得していますオリヴィア・ロドリゴです。
もう、彼女に関しては情報が少なくてですね。困りました。彼女のこの曲に関してはですね。Tik
Tik Tok上で話題沸騰なんですよ。Tik Tokって、かなり芝居掛かったリップシンクする用途でも人気なんですけど、この曲の一節「Guess You Didnt Mean That You Wrote In That Song About Me, Cause You Said Forver Now I Drove Alone Past Your Street (あの曲であなたが歌ったのは私のことじゃなかったのかな。「君は永遠だ」って言ってくれたのに。今、私は(取りたての免許の自動車で)あなたの家を通り過ぎたところよ 」というところで力一杯絶唱する真似をするのが流行っているようですよ。
これはいわゆる、免許を取りたて、ちょうど今のオリヴィアと同じ17歳(2003年生まれ。ビリー・アイリッシュよりさらに2歳下!)くらいの女の子が、失恋後にひとりで車に乗りながら、浮気して去った元カレを思う、という曲です。「これが、女の子たちの共感を得たのだろう」という見方もあります。
が!
たかだか、それだけの情報量だけで、英米でいきなり初登場で世界的に流行ったりするわけがない!
そう思って、今回、いろいろ調べたんですよね。
まず、前提として覚えておかなければならないことがあります。彼女は、全くはじめての歌手デビュー、というわけではありません。なにせ彼女は
2019年に、ディズニー・プラスと、あと、アメリカではABCでも放送されていたんですってね、「High School Musical」のTVシリーズのヒロインとして人気が出ていた子です。これは、気をつけないといけないのは、かの2000年代にディズニー映画で大ヒットした「ハイスクール・ミュージカル」のリメイクではありません。だから、オリヴィアの役は、ヴァネッサ・ハジェンズが演じてたガブリエラをやったわけではありません。このシリーズは、「学校のプロジェクトで『ハイスクール・ミュージカル』をやることになった高校生たちの本番までの軌跡を追ったコメディ」で、オリヴィアはガブリエラ役を射止めたニニという女の子の役で、ザック・エフロンの演じたトロイ役を得た、かつての元カレでもある優柔不断な少年リッキーとの、なかなか噛み合わない恋愛と青春を描いたものです。
これ、幸いにして
僕の家がたまたまディズニー・プラスに加入したばかりだったから、第1シーズンの10話、全部見たんですよ!ちょうど51歳になろうとしていたタイミングで、僕は家族にも内緒でひとりでこれを見てたわけです(笑)。
でも、これ、なかなか面白いんですよ。話の展開が「The Office」とか「モダン・ファミリー」みたいな、擬似ドキュメンタリー(モキュメンタリー)スタイルで。あと、本家よりもコメディ要素がきわめて強く、ミュージカルでクサくなってしまうのを、最終エピソードの前、近くまで極力抑えていたりもして。荒唐無稽化されすぎないよう、脚本もかなり気を使ってる感じでしたね。
で、これを見ていてわかったことがあったので、それについて書いていきましょう。
①従来のディズニー・アイドルとは大分勝手が違うようだ
ディズニー・アイドルからビルボードの1位にあがるまで人気が出たアイドルといえば、1999年のブリトニー・スピアーズや2002年のヒラリー・ダフを思い出します。まずは、やはり、そこからの比較をしましたが、オリヴィア、ディズニー・チャンネルに出るのはこれがはじめてではありませんでした。
彼女はその前、2016年から19年まで続いていたコメディで日本でも放送されていた「やりすぎ配信!ビザードバーク」の準主役だったんです。ここで彼女は中国系のヒロイン、メガネをかけたフランキーって女の子のシャイな感じのベスト・フレンド、ペイジ役を演じてるんですね。顔はもちろんかわいいわけですが、「ちょっとナードなユーチューバー」というのが、ここでの彼女の役どころでした。
番組のオープニングからして、これですからね。
それに比べると、「ハイスクール・ミュージカル」でのオリヴィアはだいぶ垢抜けはしてるんですけど、クラスの中の地味な子という設定は似たようなもので、クラスの中心にいるよりは、ベストフレンドの女の子と一緒にいるのが楽しいタイプです。ここでも、この黒人の女の子、コートニーと常に行動をともにしてますからね。
もともと、ディズニーのヒロイン・タイプって、チア・リーダーの仕切り屋みたいなのが悪役で、ヒロインの女の子はちょっとシャイで控えめ、というのは定番ではあります。ヒラリーの出てた「リジー&リジー」もコメディって、どっちかというとそのタイプでしたからね。でも、オリヴィアの演じる役柄は、その中でも特に内向性が強く、ちょっとナードな感じもあったりして。
オリヴィア、血筋がフィリピンで「ハイスクール・ミュージカル」でもその血筋に関して割とわかりやすく見せてるんですけど、アメリカ社会の中でアジア系の女の子って、これ偏見もあるんですけど、恥ずかしがり屋のナードに描かれ気味なんですね。そこでヒロインまでつかんだというのは、ダイバーシティの世の中が生んだ産物でもあります。そこも、ブロンド白人の女の子のブリトニーやヒラリーと違うところです。ヴァネッサ・ハジェンズやセレーナ・ゴメスはラテン系ですけど、それよりもさらにアメリカでは人種的にマイノリティですからね。
②これまでのアイドルでは異色の歌い方
そして2番目なんですが、「歌い方」。これが従来のティーン・アイドルと決定的に違う。これがなかったら、僕は彼女には注目してなかったんじゃないかと思います。
これはこの子が画期的というよりは、「時代が呼んだ産物」な気がしますが、歌い方が全く(従来の意味での)アイドルじゃないんですよ。これ、すごいなあ、と思ってですね。
彼女の歌い方というのは、すごくブレスを多用した、声の出し入れと抑揚をつけたタイプの歌い方をします。この歌い方をするシンガーとして思いつくのは、たとえばアデルとかビリー・アイリッシュだったりします。
それはやみくもにハイノートを力一杯歌い上げるタイプ(R&Bタイプ。デミ・ロヴァートとかも)でも、少し前に流行ったネイザル・ヴォイス(低めの鼻声。リアーナとか、彼女のフォロワーですね。ホールジー、アレッシア・カラとか)でもない。どっちかというと、インディかじったタイプの人がする歌い方です。
「でも、それにしても、この歌い方、誰かにすごく似てるんだよなあ」と思って、「誰だろう」と数日前に考えていました。そしてその例が誰か、思いつきました。
この人です!
そう。「1,2,3,4」のビッグヒットで知られるカナダのインディ・フォークシンガー、ファイストの歌い方にすごく似てるんですよね。
実際にオリヴィアがファイスト聞いてたかどうかとかはわかりません。でも、この歌い方に、これまで歌ってきてる曲がフォークっぽいスタイルの曲が目立つため、やはり近さは否定できないかなと思います。
それもそのはず
オリヴィアは熱烈なスウィフティー
彼女からテイラー・スウィフトへの愛は、すごく語られるところです。音楽的には彼女の影響強そうです。同時に好きなアーティストがLordeというから、なおさらです。テイラーがLordeやHAIMに接近して話題を呼んだのが2014年くらいのときですね。その頃、オリヴィアは11歳ですから、影響元としてちょうどよくそこがぶつかったことは十分に考えられます。
彼女の歌う曲の中に、これまでのアイドルにありがちなダンス・ポップとかR&Bの匂いが全くと言っていいほどないんですよね。このポイントはすごく気になるところだろ思いましたね。
③曲は本当に自分で書いてそうだ
そして、このポイントが、僕にとっては大きかったですね。それはオリヴィア自身が実際に曲を書いていることです。
アイドルに限らず、昨今の女性アーティストというのは、ソングライティングに加わってると言っても、大抵が共作です。しかもそれが芸能界くさいとこにいる人であればあるほど、「ソングライター、何人いるんだよ?」のツッコミ入れたくなるほどです(笑)。
が!
オリヴィアの曲、共作者が少ない!
これにまず「ん?」となったんですね。
それどころか、
「ハイ・スクール・ミュージカル」内で頻繁に歌われたこの「All I Want」、彼女の完全なる自作曲です!
これなんて、黙って聞いてたら普通にインディ・フォークの曲ですよ。実はこの曲が「Driver's License」の前にプレ・デビューの感じでリリースされて、すでにチャート・インしてたんですね。しかも、イギリスのチャートだと、2020年1月にエントリー、今から1年前にすでにこれ、多少ヒットしてたんですね。
これはちょうど、「ハイスクール・ミュージカル」がヒットした直後。だから思うに、子供たちの間では、こうしたことがすでに話題だったんではないかと思います。
実際、インスタやTik Tokでの彼女のアカウント見ると、アコースティック・ギター持ってこうやって歌う場面が多いんですよ。
こうやってピアノのときもあるしね。これらがどういう曲なのかははっきりとはしないんですけど、自作曲っぽいです。いずれにせよ言えることは、彼女が根っからの音楽人だということでしょうね。
「Driver's License」にせよ、関わったの、彼女ともうひとりだけです。
しかも、その関わった人といいうのが
このダン・ニグロという人です。彼は
インディ・バンド、アズ・トール・アズ・ライオンズと言うバンドのヴォーカルだった人です。僕、このバンド覚えてたので「へえ」という感じでした。彼はスカイ・フェレイラとか、カーリー・レイ・ジェプセンといった、インディ畑で大歓迎されたアイドル的なタイプのアーティストのアルバムでも楽曲提供してるので、そのあたりで白羽の矢がたったのだと思われます。
これからオリヴィア、たくさん曲を出してくると思われますが、彼の曲も多く絡むと思われます。
・・・と言う風にオリヴィア・ロドリゴ、かなり本格的なアーティスト的な雰囲気がすごくあり、なんか特別な本物感を感じさせます。tik tokでのヒットだとか親近感だとか、そういうこともあるのでしょうが、この魅力でわかりやすく引っ張れてるのではないかな、しかも子供達が無意識のうちに、というのが僕の推論です。
ただ、彼女がディズニー・アイドルであることにも変わりはありません。それは
ディズニーの先輩アイドル女優のサブリナ・カーペンターが「Driver's License」へのアンサー・ソングかと言われる「Skin」を出してこれが話題です。
というのは
オリヴィアが、「ハイスクール・ミュージカル」での相手役リッキーを演じた俳優ジョシュア・バセットとつきあっていたところをサブリナが横取りした疑惑があるんですね。それを思わせる歌詞が「Driver's License」の中に出てくる「あなたふがデートした、すごく年上のブロンドの女の子」というのがサブリナなのではないか、ということになったためです。
これに対してサブリナは「あなたは私のもの」と歌いきってるため、そういう憶測が出てしまったわけですけど、まあ、そんなヒットから2週間しかたってないのに、そんな曲を急遽出せるとも思えないので偶然だとは思うんですけどね。ちなみにこの曲はなあ・・・。まあ、いかにもなディズニー・アイドルの曲ですけど。
ちなみにサブリナも
ネットフリックス映画「Work It」で主演してるくらい、人気ですよ。
まあ、こうした下世話な対立をファンが煽ってしまうところがいかにも「テイラー・スウィフトのフォロワー」的感じで微笑ましくもあるんですけどね。
いずれにせよ、オリヴィア、今後楽しみです。