全オリジナル・アルバム FromワーストToベスト(第25回) オジー・オズボーン/ブラック・サバス(在籍時のみ) その2 10位から1位
どうも。
では、昨日の続き行きましょう。
全オリジナル・アルバム、FromワーストToベスト、今回はブラック・サバスを含むオジー・オズボーンの全キャリア、これをやっています。昨日は21位から11位までをやりましたが、今日はいよいよトップ10です。
まず、10位から見てみましょう。
10.Bark At The Door/Ozzy Osbourne (1983 UK#24 US#19)
10位は1983年発表の「Bark At The Moon」、「月に吠える」。ランディ・ローズを失った後の作品だけにどうするか注目されたオジーですが、自身のプロフェッショナリズムを徹底する形で答えを出しましたね。今でもステージでの人気曲となっているタイトル曲は「これぞオジー!」な、見事なホラー系メタルですしね。それと同時にバラードあり、そしてここではじめてオジー特有のジョン・レノン趣味を出してきた「So Tired」までバラエティに富んでいるところも見どころです。タイトル曲でのプレイをはじめ、ここでのジェイクEリーはかなりいい仕事をしたと思います。持続すればよかったんですけどね。
9.Ordinary Man/Ozzy Osbourne (2020)
そして9位に最新作「Ordinary Man」ですが、これ、この順位に入ったようにですね、かなりの力作です。このアルバムは、「キャリア50年で初のしらふになったオジーが、70年を超えてしまった自分の人生を振り返る」といった非常に内生的な”終活”とも言えるアルバムです。プロデュースのアンドリュー・ワットとルイ・ベルはポスト・マローンのプロデューサーなんですけど、それでトラップに走ったわけではなく、彼らに「メタルでお約束になりすぎた手法をあえてはずさせる」やり方にしてますね。バンドにはスラッシュやダフ・マッケイガンというガンズ&ローゼズ組を入れ、ザック・ワイルドはアウト。なのでギターはオカズの少ないシンプルなリフで、曲の盛り上がりもサビであえて音を抜いてみたり、スローから急にパンク調になったりと、1曲1曲かなり考えて作られてます。中でも聞きものは、バラードナンバーのタイトル曲で、オーケストラのみならず、かのエルトン・ジョンとデュエットですよ!70過ぎた、全く違う音楽性同士で天下を取ったイギリスの天才同士が共に円熟を迎えた今、仲良く歌う光景は渋すぎてグッときます。
8.13/Black Sabbath (2013 UK#1 US#1)
8位はブラック・サバスの、これがラスト・アルバムにもなりました「13」。これは、メンバーが70近い年令になる中で実現した奇跡の再結成でしたね。1996年に再結成ツアーして以来、期待されてはポシャって来た企画なので「もうダメか」の見方も強かったですからね。サバスがオジー込でアルバムを作るのは35年ぶりなんですけど、やっぱりいざ集まってみると、昔みたいに即座に「これぞブラック・サバス!」なアルバムをすぐに作れてしまうから不思議です。これ、基本が「メタル、グランジのオリジネーター」としてのサバスがいかんなく発揮されたアルバムですね。サバスの1〜3枚めの一番良い時期を思わせる曲でほとんどが構成され、たまに別の時期の要素が入る、という感じですね。オジーが離れ、歴代のシンガーがかわるうちの、特異の硬質のヘヴィ・ギターリフを失ってきたトニー・アイオミでしたが、ここでは見事に復活してます。誤解されがちですけど、サバスはもともと、最期まで在籍したアイオミではなく、オジーがメンバー募集かけて作ったバンドですからね。彼自身が他のメンバーをどう動かすかにかかっているわけですから、そこはさすがオジーです。ビル・ウォードが不参加なのがさみしいところですが、そこをレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンのブラッド・ウィルクがウォードの手数の代わりに、安定感のある重量感でカバーしているのも聞きどころです。
7.Vol.4/Black Sabbath (1972 UK#8 US#13)
7位はブラック・サバスの4枚目「Vol.4」。これはサバスが、初期3枚のヘヴィ・リフ路線をさらに深めつつも、同時に実験も始めだした冒険作ですね。彼らにとって本格的なバラードで、2000年代にオジー自身が愛娘のケリーとデュエットしてヒットした「Changes」が目立つアルバムにはなっていますが、不穏なギターのカッティングによる効果音「FX」から、これまでの彼らの中でもスケールの大きさでは屈指の名曲「Supernaught」、それからヘヴィ・リフ路線での名曲「Snowblind」と、やはりその「硬軟」のコントラストの非常に美しいアルバムです。同時にこれはギーザー・バトラーの詩人としての才能が強く生きた作品でもあり、この頃はもうもっぱら彼らが浸りきっていたドラッグの隠語(Snowblindがまさにそれ!)が頻発された、禁断の絵巻となっています。ギーザー、生きてた時代が違ったら、ラッパーに向いてたんじゃないかとも思いますね。
6.Sabotage/Black Sabbath (1975 UK#7 US#28)
6位は「Sabotage」。サバスの6枚目のアルバムですね。これは、4枚目のアルバムから進めていた「ヘヴィ&拡張」路線のマックスですね。ハード&ヘヴィの路線では「Hole In The Sky」に「Symptom Of The Universe」は、アイオミのこれまでのギターが「重厚」とはまた違う、目の粗いアグレッションを示して、その後の「メタル」の可能性を広げているようにも思うのですが、アナログで言うB面の「Supertzar」でのグレゴリオ聖歌風のコーラス導入や「Am I Going Insane」でのシンセなどは、プログレ的な彼らの音楽的発展の中ではもうこれ、ある種のマックスだった気がします。これでやりきった感があったんでしょうね。この後にオジーは脱退を考えるようになり、ときはパンクの時代が到来。この路線もこれで終わり、「オジーのサバス」は終わりに近づきます。
5.No More Tears/Ozzy Osbourne (1991 UK#17 US#7)
これはオジー・ソロの中でも屈指の傑作ですね。「No More Tears」。このアルバムは、一度オジーが出した「引退」に伴うアルバムで、それにより、かなり精神的に気合の入った一作になってましたね。制作陣的には前作から迎えたザック・ワイルドと、歌詞面でのギーザーと条件は揃っていたのですが、それを見事に活かしきりました。とりわけ、ザックの成長がこのアルバムでは目覚ましいですね。今聞いても、オジーの中でも屈指の人気曲でもあるタイトル曲の持つカタルシスはすごい。ギーザーのプレイの中でも最も印象に残るベースのイントロの時点で掴むんですけど、オジーのヴォーカルとのコール&レスポンスで弾かれるザックの返答リフのうねりがとにかくかっこいい。加えて、オジーの大好きな中期ビートルズ・フレーズも出てくるでしょ。あの曲の充実だけでかなり持っていきます。加えてオジー・バラードの最高傑作のひとつの「Mama I'm Coming Home」に「I Dont Wanna Change The World」があるわけでしょ。これだけ代表曲があれば十分です。同時に、いまあげた2曲は、オジーの内省面を探る上でも、もっと語られていい曲だと思います。ギーザーがオカルト・イメージの演出に長けてるなら、オジーは人間面での本音の表現、非常に上手い人なので。
4.Black Sabbath/Black Sabbath (1970 UK#8 US#23)
4位はブラック・サバスの記念すべきデビュー・アルバムですね。1970年2月の13日の金曜日にこの世に生まれてます。つまり、この2月で50周年。ブラジルの大手新聞では「メタルが生まれて半世紀」ということで、紙面まるまる一面使った特集記事まで出ていました。その形容も「ごもっとも」という感じで、この曲の冒頭、まさに「Black Sabbath」と名付けられたナンバーは、これまで生まれてきたどんなヘヴィなサイケデリック・ロックよりも気味が悪い、心の不穏をいまだに掻き立てるような恐ろしい一曲ですからね。あれは確実にポピュラー・ミュージック・シーンにおける転換点のうちのひとつだと僕も思います。このアルバムはとにかくサイドAですね。自分自身でもまだサウンドを確立していなくて、それゆえに前身バンドのなごりと思われるブルーズ・ロック・テイストや、元がジャズ出身のビル・ウォードの、強いタメから乱れ打たれるフィルの嵐とか、そういう元からの手癖がありながら、「The Wizzard」「Behind The Wall Of Sleep」「NIB」と、自身のシグネチャー・サウンドを求めて奮闘する様が強く感じられます。それが結実するのが、まさにこのランキングの最上位のアルバムたちです。
3.Blizzard Of Oz/Ozzy Osbourne (1980 UK#7 US#21)
3位はオジーのソロ第1弾アルバムの「ブリザード・オブ・オズ」ですけど、ソロのオジーの最高傑作というだけでなく、これは80年代初頭にメタルが台頭しはじめた頃を代表する傑作ですね。それはそうでしょう。だって、サバスを追い出され、マネージャーの娘だったシャロンとタッグを組んで再スタートを決めたモチベーションの高いオジーに、天才ギタリストのランディ・ローズの出現。その彼と組んだことによって、痛快なロックンロールの「I Dont Know」「Crazy Train」、クラシカルなホラー・メタル・クラシックとしての「Mr Crowley」に「Revelation」。そして、「この曲でうちの子が自殺した」との言いがかりで長年の裁判沙汰にも巻き込まれた「Suicide Solution」。これだけ代表曲があれば、もう、これ以上、詳しい説明の必要もないでしょう。この当時の、鳥の頭を食いちぎったオジーのパフォーマンスによる「メタル界きってのホラー・キャラ」として再生したオジーに加え、硬質なハードリフをスピード感たっぷりに弾くと同時に、流麗なクラシック・ミュージックのテイストも同時に出せるランディの唯一無二の才能。これが悲劇的な飛行機の墜落により、わずか2年ほどしか続かなかったのは非常に惜しまれますが、それゆえに伝説にもなっているアルバムでもあります。
2.Master Of Reality/Black Sabbath (1971 UK#5 US#8)
2位はサバスのサード・アルバム「Master Of Reality」。これはグランジ・ブームのときに再評価がもっとも進んだアルバムとして知られています。ここでのギター、たしかに重量感もあるんですけど、ただ思いだけじゃなくて、硬質でひび割れた感じが微妙に同時期のハードロック・バンドとの質感が違うんですよね。彼らの初期のアルバムの中ではビル・ウォードのドラムの手数も抑えられてて、とりわけリフに特化した作品ではあるんですけど、そのリフの鳴りもこのアルバムはどこか不思議なものがあります。そうした音質の質感だけじゃなく、このアルバムはメロディやリフ、リリックと「曲」そのものがとにかくレベル高いですね。ヒップホップのサンプリングにもよく使われる冒頭ナンバーでマリファナのことを歌った「Sweet Leaf」をはじめ、畳み掛けるヘヴィ・リフが印象的なグランジの直接的ルーツとも言える「After Forever」、前奏のクラシック・ギターから劇的な展開へ至る「Children Of The Grave」、そしてサバスのシグネチャー・リフの定番でもある「Lord Of This World」に「Into The Void」。言及した最後の2曲は、ちょっと酩酊したスロウなテンポ感も絶妙な気味悪さを示していてそこも最高です。70sハードロックの文句なしの古典です。
1.Paranoid/Black Sabbath (1970 UK#1 US#12)
そして1位はやはりこれでしょう。1970年の2ndアルバムの「パラノイド」。これはもう、世間一般のどこでも流れている永遠のハードロック・アンセムのタイトル曲と「アイアンマン」の2曲でほぼ1位決定なところがあるんですが、そこに加えて、メタル史上初の反戦ソングである「War Pigs」に、モジュレーター(でいいのかな)を使ったサイケデリックなギター・バラードの「Planet Caravan」、ワウ・ペダルのサイケデリックな効果を使った酩酊ホラー・グルーヴの「Electric Funeral」、3rdのグランジ・オリジネーター路線にもつながるヘヴィ・リフの「Hand Of Doom」、そしてギーザーの変則的ベースリフが決めての「Fairies Wear Boots」。このアルバムはオジーのカリスマ性に加え、リフ・マスターのアイオミ、ギーザーの詩人としてのヴァーサタイルな才能、そしてそして、ジョン・ボーナムに勝るとも劣らない天才ドラマーぶりを発揮したビル・ウォードの、ためてためてつんおめったところから連打されるドラミング。とりわけ「War pigs」のドラムなんてロック史上最高にかっこいいもののひとつなんですが、こうした4人の才能が高純度でぶつかりあった意味でも、これ、間違いなく最高傑作です。このアルバムのレベルならレッド・ツェッペリンやザ・フーの最盛期にさえ負けていない4ピースだとさえ思います。メタルに興味がない人でも、これと「Master Of Reality」に関しては普遍、かつ不朽の名作なのでぜひ一度は聞いていただきたいものです。
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