ユーミンに次ぐ、ストリーミングでの全アルバム・リスニング達成の邦楽アーティストがラルクになった件
どうも。
年間ベストの前に閑話休題。残るはトップ10だけなんですが、日本時間の日曜ですね。
その前に、閑話休題で、こういう話題でも。実は先日、僕の非常に数少ない、「邦楽アーティストの全アルバム・リスニング達成アーティスト」の2号目が出ました!第1号は去年の秋ですね
このリンクの先で読めます。ユーミンですね。38枚。あのとき、2週間くらいひたすらユーミンだけを聴くという、人生でこれまでやったことのない体験をしまして、これが、すごく楽しかったんですよ!そのむかし、ベスト盤聞いたときの印象が良かったので、やれそうな気がして、実際にやってみたら音楽的な発見は多いは、彼女の音楽的変遷もわかるはで目からうろこなことが多かったんですよね。
なので、早く2号目を誰かほしいなあ、と思ってたんですけど、1年がすぎてしまいました。いやあ、なかなか現れないものです。ひとつは僕が解禁されたことに気が付きそこねたアーティストもいたりしたこともあったんですが、それ以上に
日本でのようには、ブラジルは解禁されない!
ここがデカイんですよね。これは前にも話しましたけど、キャリアすべてのアルバムがブラジルでの解禁で揃うアーティストが少ないんですよ。例えば最近だと、Spitz、Buck-Tick、そしてジュリーが解禁に日本ではなって、このあたりでトライしたかったんですよね。ところが、Spitzは2000年代のみ、Buck-Tickは2000sがゴッソリなし、ジュリーは音届かずの状況で全く聞けません。
そこで、「じゃあ、トライしようか」と聞いてみたのが
ラルク・アン・シエル
だったわけなんですけど、これが
すっごく楽しかったんですよ!!
いや〜、ユーミンのときと感触がすごく似てますね。「僕、こんなに相性良かったんだ!」という新鮮な驚きがあって。
経緯もユーミンのときとなんか似てます。リアルタイムのとき、90sの半ばから後半ですけど、もう、NHKでディレクターの仕事してましたけど、僕は当時から音楽的にクセがある人だとの認知がありまして(笑)、もう完全に「インディ/オルタナの人」って見られ方してたんですね。自分でも、そうだと思ってたし。だから、誰もまさか、僕がV系とかラルク聴くとは思ってなかったんでしょう。いろんなサンプル盤いただきましたけど、ラルク渡されたことは一度もなかったですからね。
僕も自分のやってた番組では「V系は別の方の番組で」ということでやらない方針取ってたんですけど、たまに巷で聞こえてくるもので「これ、いいじゃない」と思うものがあって。それが大概、BUCK-TICKかラルク、そしてたまにLuna Seaでした。しかもラルクに関しては、一番最初に聞いた曲が渋谷系っぽい曲で、「ああ、こういうのやる人なんだ」と思った矢先、「Lies & Truth」みたいなコッテコテなV系の曲が売れたので、「あらら」と思ってたんですけど、「虹」以降に出るシングルは「いい曲多いなあ」と漠然と思ってました。
で、僕がNHKやめてフリーになったとき、2000年に1回だけ、ラルク関係の仕事をもらったことがあったんですね。それがB-Passって雑誌で「ラルクのベスト盤のレヴュー書きませんか?」というものだったんですよね。最初「?」だったんですけど、その編集の女性の方が、まあ、「企業内なので、そういう人事もあらあな」って感じの本来マニアックな音楽の趣味の人だからなんか意味があるんだろうと思ってはいたんっですけど、そこで受けた注が「普段、洋楽のアルバムのレヴュー書くときみたいな言葉使ってレヴューしてください」というものだったんですね。それで「なるほど」と思い、きいたことのなかった初期の曲とか聞いたときに「なんだ、思い切りキュアーとザ・スミスじゃないか」と思って、それが後の方になるとグランジっぽくなるじゃないですか。だから、今、書いたことをそのままそこに書いたんですね。そしたら、なんか後で聞いた話、「メンバーが読みたいというので、通常1冊の配本のところ、メンバーの数だけ雑誌を送った」という話を聞いてます。
「ああ、なんだ。やっぱり、音楽的な人たちだったんだ」とはそのエピソードのときに思ったんですね。というのは、当時のラルクって、音楽のこと、あまり公に語ってないイメージだったので。そこのところは、BUCk-TICKの今井寿とかLuna SeaのSUGIZOとかとは全く違うイメージでしたね。あの人達は音楽へのマニアぶりを語ることで、差別化はかってるようなとこ、ありましたけど、ラルクは、少なくとも当時、それをやってるイメージ、なかったんですよ。なので、なんかハッキリしないじゃないですか。で、やがて、僕が邦楽の仕事をやめて洋楽一本に絞って、そのうちHard To Explainやって、ブラジル行って・・・って感じだったから、ラルクとはそれっきりでしたね。
そういうこともあり、ラルクのことが脳裏に浮かばない日々が続いてたんですけど、今回、Spotifyでラルクが解禁になった、となったときに、僕のツイッターのタイムラインが騷しかったんですよ!それも普段、かなりマニアな洋楽のインディとかヒップホップの話しかしないような人たちが、僕が昔、ラルクのベスト盤聴いたときと全く同じ反応をしているんですよね。それを見て、面白くなって、「よし、じゃあ、ラルク、聴くか!」ってなったわけです。
そうしたら、事態がすっかり変わってて、もうメンバー、音楽のこと、かなり積極的に語るようになってたんですね!で、しかも、彼らって、3人が1学年上、1人は同級生なので、「ああ、わかる、わかる!」なルーツなんですよね。特にhydeですね。彼の「デュラン・デュランとデヴィッド・シルヴィアンが好きで、ニュー・ロマの終わり頃にメタル流行ってて」という感じ。それって、僕が北九州の中高の時代に、クラスに1人か2人いた洋楽ファンの友達みたいな発言なわけですよ(笑)。そこに、やがて日本のバンドブームも加わるから、「ああ、世代感、まるわかりだな」と思ってですね。こうやって事前に、ラルクのwiki読んで聴いたのが功を奏したところはかなりあります。
で、ユーミンのときみたいに、「時期的傾向」がわかって面白かったので、今回もそれを僕が感じたままに話そうかと思います。あくまで僕の感想なので、一般論と違ってたら、そのときはごめんなさい。
①ゴス/ニュー・ウェイヴ期
これは思い切り、最初の2枚ですね。「Dune 」と「Tierra」。このときはもう、思い切りファンタジックというか、それこそキュアー、ザ・スミス、あと、ときおり初期のU2のエッジ風のギターの刻みが入る感じですね。当時は93、94年なので、アメリカでは思いきりオルタナだし、イギリスでもブリット・ポップ前夜。もう、ゴスメイクとファッションでこういうことしてる人は欧米の主流からはだいぶいなくなってた頃ではありましたね。
この時期が長く続かたかったのは、そういう時代背景があったからだと思います。ただ、キュアーやザ・スミス、ジョイ・ディヴィジョンやニュー・オーダーといった、ニュー・ウェイヴのダークな四天王がタイムレスなレジェンドとして受け継がれるようになった今、逆にこの時期の曲が今かっこよく聞こえるのは確かです!ネット上でやたらきこえてきたのは、この頃の再評価でしたからね。
加えて、「この頃から、こんなにやりたいこと、明確にはっきりしてたんだ!」ということに驚きましたね。もう、楽曲的な完成度はこの時点でずいぶん高いなと思いましたからね。しかも、ちゃんと、この当時から洋楽っぽく聞こえてた。そのセンスもびっくりしましたね。日本って、80sのバンドブームのときからV系みたいな髪型とファッションしてる人って、多かったんですけど、BOOWYとかPARSONSのあんまり良くない影響受けちゃって、歌謡曲化する人たち、少なくなかったんですね。だから、「ゴスメイク=ド邦楽」のイメージもあって、それでV系嫌いなとこも否めなかったんですけど、ラルクの場合は、そういうタイプとは全く違ってたんだなと改めて思ったものでした。
あと、世代の話して、「ニュー・ウェイヴとメタル両方聞いた」ってのは、たしかに僕の世代なんですよね。ラルクもkenがかなりのメタル少年で、tetsuyaがニュー・ウェイヴ、hydeはどっちでもいける、というバランスだったようですけど、曲を担当する3人のバランスがこうで、もめずにやってこれたのが結果的に良かったのかな、という感じですね。
②試行錯誤期
これが3枚目と、4枚目のときですね。基本は①のときがルーツ(大ヒットした「flower」はまんまスミスの「Ask」みたいだし)なんですけど、曲によってハードになったり、展開によってはネオアコとか、スタイル・カウンシルとか、それの影響受けた渋谷系みたいな曲が混ざってたり。僕が最初に聴いたラルクの曲も今回、「夏の憂鬱」だったことが、今回判明しました。
僕が推測するに、この頃は多分、音楽的に成長したいという気持ちと、それをどこに持っていくかでいろいろ試したかったんでしょうね。そこで、こういう渋谷系みたいなのもやったのではないかなと。
そうかと思ったら、「good morning HIDE」みたいな英語詞のちょっとハードな曲もあったりして。このあたりが割と、その後の路線につながっていく感じかな、とは思いましたけどね。英語詞はその後も時折出てきますけど、その頃から海外志向はあったのかな、という感じがするのと、「ゴスでハードな感じ」というとMUSEとかプラシーボみたいなバンド、思い当たるんですけど、ラルクって、それより微妙に早かったんだな、とも思いましたね。
③グランジ/オルタナ期
そして98年、ドラマーがyukihiroに変わったあたりから、2005年くらいまでですね、かなりグランジ/オルタナ色が強くなりましたね。ひとつはドラマーが手数の多い人に変わって、曲がタイトになりやすくなったのと、kenのギターの音色がかなりグランジ寄りになったことが大きいと思います。この路線の移行は大きかったでしょうね。国際的な音楽の流れにはすごくハマるようにはなったわけですからね。
この頃、好きなのは僕はギターですね。この頃って、アメリカだとポスト・グランジって言って、コンプレッサーで音の壁みたいに厚くする感じが主流だったんですけど、kenの場合、グランジ本来のザクザクした質感を強く残したものにしてあったので古くなりにくいというか。1曲、パクリ疑惑が浮上したこともあってダイナソーJrのJマスキスとの比較もありますけど、僕はむしろパール・ジャムの3枚目から5枚目くらいの時期に近い質感だなと思います。マイク・マクレディのプレイに近いかな。
あと、特に2000年代って、マリリン・マンソンとかKORN、ちょっと遅れてリンキン・パークの影響とかあって、ゴスがニュー・メタルと結びつきやすい時期で、ラルク自身も「Real」ってアルバムでそこを模索してる感じもあったりもしたんですが、不思議とそっちには行かなかったとこも僕的には嬉しかったかな。そこを逆に「Neo Universe」みたいなキュートなエレポップでキメちゃったとこも、それを無意識に後押ししたかもしれません。
④円熟期
これが、2007年から現在までですね。ここだとメンバーも40代に突入しますけど、なんか、ポップで円熟した感じになってますね。ギターの音がきれいになって、ストリングスが豪華になる感じ。イメージで言うと、後期U2,コールドプレイあたりの2000sのアダルトなアリーナ・ロックに、シンフォニック・メタル合わせたみたいな感じですね。まあ、時流で考えれば、それも間違いだとは思わないんですけど、そこはちょっと僕の好みではないかな。ときおりエレクトロ色の強い曲やってたりもしますけど、そっち活かしたほうが僕は好みですね。突然、ジャズのクリスマス・ソングやって、それがすごく良かったりする意外性とかは好きですけどね。あと、hydeが並行してやりはじめたVAMPSが思いっきりブリング・ミー・ザ・ホライズンみたいなので、機能分けてるとこもあるのかもしれないですが。
というかんじですね。
アルバムに軽く順位もつけてみました。カウントダウンで、僕ならこんな感じかな。
12.Ark(1999)
11.Butterfly (2011)
10.Kiss(2007)
9.Heavenly (1995)
8.Real (2000)
7.Dune(1993)
6.True (1996)
5.Awake (2005)
4.Smile (2004)
3.Tierra (1994)
2.Heart (1998)
1.Ray (1999)
こんな感じですかね。あくまでも個人の趣味ではあるし、短期間でえらんではいるのですが。
嫌いなアルバムはないです。「これはちょっと手応え薄いな」というのは、3枚くらいあるのと、2枚同時リリースのときの「Ark」が「Ray」と比べると、ロックとJ Popくらいのクオリティの差があるのが、ちょっと「それ、意図的にやってない?」という感じがして好きじゃない、というのはありますけどね。とはいえ、その最下位にしたアルバムでさえ、好きな曲はあるし、最近の2枚も路線としては共感はしないけど、内容が悪いわけではないですからね。
いい時期はやっぱり、yukihiro加入後にシングルのヒットが立て続いて現象になった頃でしょうえ。ときの勢いがありますから。そこに、最近なら、時間の経過による再評価があるので、初期のニュー・ウェイヴ見直しというのが加わる感じでしょうかね。
・・・と、12枚もアルバムを聞いて、いろいろと長々と考えたことがこういうことでした。
だけど、あらためてストリーミングっていいなと思ったのは、「聴いたことないけど、一念発起して聴くか!」となったときにすぐに対応してくれるし、その結果、こんなにいろいろなことを考えることも促してくれる。
やっぱり僕は、ストリーミングって、音楽の幅を広げたり、新しい発見をするのに良いメディアだな、と改めて思いますね。
それにしても、僕の邦楽のストリーミングで全アルバム聴いたアーティストが、最初がユーミンで、次がラルクって、自分でも全く考えもしなかった意外な展開なんですけどね(笑)。3番目、誰になるんだろう。早速、サザンが今日解禁されて、ブラジルでも無事に聞けることがさっきわかったんですけど、サザンは・・・多分、やらないかなあ・・・。初期はちょっと聴いてみたいとは思ってるんですけど、ちょっと接点が見出しにくいところがあるので難しいかなと思ってます。すでにいくつか候補は見つけてはいるので、多分、割と僕が全アルバム聴いても意外じゃない感じの人が今度は続くような気はしてるんですけどね。