オスカー受賞作レビュー①「隔たる世界の二人」 BLMの年を象徴する、黒人の潜在的な恐怖
どうも。
今日から3回に分けて、オスカー受賞作のレビューいきます。
まず最初はこれです!
短編映画賞を受賞した「隔たる世界の二人」、これいきましょう。これはネットフリックスで見ることができる作品です。
ストーリーはこんな感じです。
主人公のカーターはグラフィック・デザイナー。知り合ったばかりの女の子ペリの家で目覚め、気分良く出かけるはず・・・でした。
外でタバコを吸っていると、そこに厳しい顔をした白人の警察官がやってきて、カーターが持っていた札束を指して窃盗をした疑いをふっかけます。
カーターがそれを否定すると白人警官は彼に襲いかかりはがいじめにして地面に叩きつけます。押さえつけられて「息ができない・・」とつぶやき気を失いそうなところで
カーターは悪夢から目が覚めます。
それから、来る日も来る日も、夢の中で同じ白人警官が現れてはカーターを殺す日々が続きます。
あまりに続くので、カーターはその悩みをペリに打ち明けます。ただ、その甲斐もなく悪夢は99回続きました。
それが100回目になった時、カーターは夢の中でその白人警官との対話を求めますが・・。
・・・と、ここまでにしておきましょう。
これはですね。
昨年起こった、かのジョージ・フロイド事件を背景にしながらそれを
「朝、何度目覚めても同じ日が続く」ことを描いた、もうアメリカでは誰でも知ってる大定番コメディ「Groundhog Day」、邦題「恋はデジャブ」のフォーマットにあてはめたものです。
この形式にあてはめることによって、黒人にとって「ああ、また毎日同じ日が続くよ・・」との苦悩を描くものですが、それを受け続けることが彼らにとってどれくらい苦痛で恐怖を伴うものなのか、それが説得力持って描かれています。
これ、同じことが続くだけにとどまらず、最後に言ったように黒人なりに解決を求めようとはするんだけど、その結果が・・・というところまで含めて描かれているのが興味深いですね。
彼らがこう言いたくなる気持ちもわかるなあと思うのは
2015年の、かの伝説のヒップホップ・グループ、NWAの伝記映画「ストレイト・アウタ・コンプトン」で、彼らがレコーディング・スタジオから出てきた瞬間に警察に睨まれ、床に倒されたシーンを思い出させますね。子の体験をもとに、彼らは代表曲「Fuck The Police」を作るわけでもありますけど。この場面が起こったのが1988年。そこから30年以上流れても起こっていることは同じなわけですからね。
30分ほどの映画ですが、BLMの起こったその年に、急いでうまいことよく作れたなと思います。ダニエル・カルーヤが助演男優賞を受賞した「Judas And The Black Messiah」や、チャドウィック・ボーズマンが主演男優賞を取り逃がした「マー・レイニーのブラックボトム」と合わせて、黒人への人種差別について考える意味で見て欲しい作品です。
なお、この主演のカーターですが
ラッパーのジョーイ・バッダスです。こんな演技が上手い人だとは思いませんでしたね。これを機に、映画出演、今後かなり増えるんじゃないかと思います。