2025年の洋楽シーン展望②ヒップホップはドーチーのビッグ・イヤーに!
どうも。
では2025年の洋楽シーン展望、第2弾行きましょう。今度はヒップホップ。
ここのシーンは2020年以降は本当に苦しかったですね。エモ・ラップのブームが過ぎ、トラップが飽きられ、それ系のアーティストが以前ほど売れなくなってる。さらに2024年はPディディやリル・ダークの、シャバに出てこれないタイプのムショ入り。6月から9月くらいまではビルボードのアルバム・チャートのトップ10にヒップホップ勢のランクインがなかった週が続発するくらいセールスも落ち込んだ。2023年には2018年の比較で40~60%ほどセールスも落ち込んでましたからね。
10、11月とタイラー・ザ・クリエイター、ケンドリック・ラマーと、シーンのビッグ2がニュー・アルバムを出してくれたおかげでなんとかなりましたけど、逆にいえば、切り札を出されたことで、今年の最初の方は良くても、この後が厳しいな、誰か出てこないと苦しいなと思ってみてました。
しかし、なんとかなるものです。この人がその状況を救ってくれそうです。それが
ドーチー!!
この曲が今、Spotifyのチャート急上昇中でトップ50入りしたばかりです。個人的なことをいうと、昨日、一昨日とドライブで旅行してたんですけど、この曲が妻、息子、娘に爆発的にウケまして、「ああ、今のドーチーのブレイク現象は本物だ」と確信しましたね。親子二世代でここまで満場一致でウケたこと、なかったですからね。
妻はインディ・ロック、息子のトムは今年中学でその年の割にかなりのヒップホップ・ファン、娘はサブリナとかチャーリで小2で流行り洋楽聴き始めるとか、そういう感じなんですけど、このリスナー層にウケたわけですからね。
彼女に関しては
この「Alligator Bites Never Heal」というミックステープが去年出まして。これ、リリース当初、ビルボードで110位台で終わっていたくらい、大きな宣伝もされず、一部のヒップホップ・ファンだけに聴かれて埋もれそうだったんですよね。
ドーチーは1998年生まれのフロリダのラッパーです。彼女は元々は聖歌隊で歌ってた人だったらいしんですけど、趣味で作っていたラップがすごく友人の評判が良かったので曲を作り始めtiktokやyoutubeで発表してたら評判が良く、それでケンドリックやSZAで有名なマネージメント・エージェンシーのトップドーグとの契約に至りました。
2023年にコダック・ブラックのこの曲のフィーチャリングで一応ビルボードのトップ100に入り、これではじめて知った人もそれなりにいたようですね。ただ、このときのイメージだとむしろシンガーだったんじゃないかな。かなりうまいですよね、歌。
僕は去年の9月、この曲でドーチー知りました。ケイティのこの曲含むアルバムは、去年のワースト・アルバムとしてかなりいろんな所で酷評されてましたけど、そういう作品にこういう貴重なものが隠れていたりするからわかりません。懐かしのハウス・アンセム、クリスタル・ウォーターズの「ジプシー・ウーマン」を元にしたラッブを披露したドーチーはこの辺りから「注目すべきすごいラッパー」と言われるようになり、それで僕も先ほどのミックステープを聴いたわけです。
そのミックステープ聴いたときに、彼女の隙のない正確なライミング・スキルと、コミカルでさえあるストーリー展開、そしてオールドスクール風味が濃厚なトラック聞いて気に入って「なんだ、隠れたところに今年のベスト・ヒップホップ・アルバムがあるじゃないか」と思って、当初、年間ベストの23位くらいにこのアルバム、選ぼうとしてたんです。
そうしてたら
ちょうど年間ベスト選んでいた最中に、この二つのパフォーマンスがありまして。このパフォーマンスの絵的なカッコ良さが方々で絶賛されたんですね。すごく一つ一つのファッション、コーディネイトが詳細に考えられていたというか。長いブレイズでバック・ヴォーカルのシンガー二人とつながってる感じとか、オール・ガールズ・バンドとか。見てるだけでおしゃれで楽しいというか。これに引かれて、年間ベストの順位も18位まであがりました。トップ10も考えたんですけど、アルバムが出るまで待つことにあえてして。
そしてこの辺りからですよ。ビリー・アイリッシュやパラモアのヘイリー・ウイリアムズ、SZA、さらにはエル・ファニングから「今、一番のお気に入り」とのコメントが溢れだしたのは。
これで噂が一気に広がり、ストリームのチャートに入ってくるようになって、さっきのDenial Is A Riverとか
この曲も今、一緒にチャート上がってきてますね。
これでAlligator Bites Never Healもアルバム・チャート上がってきてます。これでだいぶ話題は作れるはずですが、本人曰く「2025年以内にアルバムは出る」とのことなので、さらなる爆発が期待されます。
これ、タイミング的にも最高なんですよ。ちょうどシーンが、ケンドリックとタイラーという、「本来オルタナティブに訴えるところがメインストリームでも超大物になってしまった」タイプの二人がシーンの生き残った主役になったことが印象付けられたあとですからね。彼女がそこに続くべき存在として見られるのは明らかなんですよ。
女性ラッパーもニッキ・ミナージュ以降、活発に出てはいます。ただ、ガーディBがいつまでたっても人前でラップしない、ドージャ・キャットが力はあるのにポップラッパーのイメージが払拭できない、メガン・ザ・スタリオンやグローリラがじつりょくはあるもののトラックに恵まれない状況が続くなか、自分をどう見せたらアートでクールに聴かせられるか、ドーチーはすごくそれを熟知してる感じがするんですよね。まさに、ローリン・ヒルやミッシー・エリオットを引き合いに出すことが許される存在、それがついに出た感じがするんですよね。
これで20年代以降、なかなかシーンを支える上玉が出てなかったアメリカのヒップホップ、なんとかなりそうな気がしてきました。
そんなアメリカのヒップホップ・シーンですが、ドーチー以外はどっちに転ぶかまだわかりません。
トラップでいうなら、大物プレイボーイ・カルティガがアルバム出すか出さないかは大きいでしょう。昨年末にリル・ウージ・ヴァートのアルバムが大コケして、年始のリル・ベイビーのアルバムも反応がかなり微妙でシーンさらに苦しい中、彼が出ると出ないのでは大違いですけどね。
それか、オルタナティブな勢力の台頭があるのか。ティーゾ・タッチダウンやリル・ヨッテイはタイラーのツアーでもフックアップされてて、ちょっと軍団っぽい感じにもなってますけど。「Chromakopia」の参加メンツがそれを強めた印象ありましたからね。
あるいは、年始に早速ヒット中のG3 Geloみたいに彗星のように現れるニュースターに期待なのか。彼は兄弟二人が有名なバスケ選手らしいのですが、このTweakerという曲は良いと思います。
そんな感じでしょうか。