沢田太陽の「非英語圏名作アルバム100選」2021年版 (後)1986〜2020年の50枚
どうも。
では、昨日の続き、いきましょう。「非英語圏の名作アルバム」。今日は後半の50枚。1986年から現在にかけて。東西冷戦が終わり、ひっぷほっぷやオルタナティヴ・ロックの影響が世界にも及び、西欧、南米、東欧だけじゃなく、アジアやアフリカからも刺激的な音楽が出始める。そんな時代の50枚。
こんな感じです。
Falco 3/Falco (1986 Austria)
The No Comprendo/Les Rita Mitsouko (1986 France)
Dois/Legião Urbana(1986 Brazil)
After Chabón/Sumo (1987 Argentina)
Gruppa Krovi/Kino(1988 Russia)
Puta’s Fever/Mano Negra(1989 France)
Set/Youssou N’dour(1990 Senegal)
Senderos De Traición/Héroes Del Silencio(1990 Spain)
Peluson Of Milk/Luis Alberto Spinetta (1991 Argentina)
Tata Kazika/Kult(1993 Poland)
Seo Taiji And Boys II/Seo Taiji And Boys(1993 South Korea)
Kauf Mich!/Die Toten Hosen(1993 Germany)
Re/Café Tacuba(1994 Mexico)
In A Bar, Under The Sea/dEUS(1995 Belgium)
Fuzao/Faye Wong(1996 China)
El Dorado/Aterciopelados(1996 Colombia)
First Band On The Moon/The Cardigans (1996 Sweden)
L'École Du Micro D’Argent/IAM (1997 France)
Afrociberdelia/Chico Science & Nação Zumbi (1997 Brazil)
Hai Paura Del Buio?/Afterhours(1997 Italy)
Homogenic/Björk (1997 Iceland)
1,2,3 Soleils/Rachid Taha (1998 Algeria)
Agæotis byrjun/Sigur Rós (1999 Iceland)
Zemfira/Zemfira(1999 Russia)
O Monstro Precisa De Amigos/Ornatos Violeta (1999 Portugal)
Veni Vidi Vicious/The Hives(2000 Sweden)
Discovery/Daft Punk(2001 France)
Melody AM/Röyksopp (2001 Norway)
Mutter/Rammstein(2002 Germany)
Tocotronic/Tocotronic(2002 Germany)
Ventura/Los Hermanos(2003 Brazil)
Barrio Fino/Daddy Yankee (2005 Puerto Rico)
Memo Rex Commander Y El Corazón Atómico De La Via Lactea/Zoé
Le Dimensioni Del Mio Caos/Caparezza(2008 Italy)
Los De Atrás Vienen Conmigo/Calle 13(2008 Puerto Rico)
Por Lo Menos Hoy/No Te Va Gustar (2010 Uruguay)
Body Talk/Robyn (2010 Sweden)
Darmaduman/Duman(2013 Turkey)
Chaleur Humaine/Christine And The Queens(2014 France)
Hasta La Raíz/Natalia Lafourcade(2015 Mexico)
Meliora/Ghost(2015 Sweden)
Clashes/Brodka(2016 Poland)
Melhor Do Que Parece/O Terno (2016 Brazil)
Puberty 2/Mitski (2016 Japan/US)
Cold/mess/Prateek Kuhad (2018 India)
El Mal Quere/Rosalía(2018 Spain)
African Giant/Burna Boy (2019/Nigeria)
Safeboys/Safeplanet (2019 Thailand)
Map Of The Soul : 7/BTS (2020 South Corea)
Rina Sawayama/Rina Sawayama (2020 Japan/UK)
はい。こんな感じですけどね。
まず一発目は、これ、たぶん、ラップの曲でもっとも最初に現象的に全世界ヒットした曲なんじゃないかな。ファルコの「Rock Me Amadeus」。それ以前にもラップのヒットはあったんですけど、リアルタイムの記憶だと、ラップでここまで世界的に売れた曲、ないんですよ。当時体験してる人なら同じ印象だと思います。
これ、ちょうど新しい幕開け飾るには良い曲だと思います。ファルコはこの前にも「デア・コミッサー(秘密警察)」と言う曲をアメリカでカバーヒットされてます。間違いなくヨーロピアン・ラップの先駆です。
そして、この当時、ニュー・ウェイヴのシーンが割と世界的にシンクロしてましてですね、「ブラジルのモリッシー」「アルゼンチンの江戸アケミ」「ソ連のイアン・カーティス」みたいなアーティストが生まれてるんですよね。ものすごいポストパンク感、強いんです。で、彼ら、レジアォン・ウルバーナのヘナート・フッソ、スモー(上の小錦のジャケ写のヤツです)のルカ・プロダン、キノーのヴィクトル・ツォイ。揃いも揃って早くにこの世を去って、それでそれぞれの国で伝説化しています。
あと、80sの後半から90sの前半にかけて、これ、世界的な傾向なんですけど、ミクスチャー感覚がすごく人気なんですよね。フランスのマノ・ネグラ、メキシコのカフェ・タクーヴァ、韓国のソテジ、ブラジルのシコ・サイエンス。全部、表現の仕方は違うんですけど、ヒップホップ、ファンク、パンク、メタル、フォークといった音楽要素を自分たちの国の固有の音楽と結びつけていて。70s前半のプログレが世界的にロックをやる人たちに勇気を与えたところがあるんですが、ミクスチャーもその感覚、どうやらありますね、これは。あと、ソテジが果敢にヒップホップとダンスに前のめりに挑んだことが、その後のKポップの隆盛につながったと僕は見てます。
あと90sになると、パンクやニュー・ウェイヴの時代に「やる気さえあればなんだってできる」とばかりに音楽表現をしはじめたような女性たちが、より個性的で自由な、それこそオルタナティヴな表現をするようになった時代でもあります。中国のフェイ・ウォンしかり、コロンビアのオルタナ・クイーン、アテルシオペラードスのアンドレア・エヴェチェリア、そしてアイスランドのビヨーク。いずれも強烈な、真似できない個性を持ったアイコンです。
あと、どの世界も、「80sにアンダーグラウンドだったものが90sに逆転でメインストリームになった」ようなバンドが人気を獲得した時代です。ポーランドのKULT、ドイツのディー・トーテン・ホーゼンはまさにそうした逆転現象から、その国のカリスマになったバンドです。KULTはニック・ケイヴっぽさがありますね。トーテン・ホーゼンは、かのグリーン・デイを前座にしていた、ドイツでは本当に人気のパンクバンドです。
また、ベルギーのdEUS、イタリアのアフターアワーズ、ポルトガルのオルナトス・ヴィオレタあたりを聞くと、この時代のオルタナティヴ・ロックの世界的浸透が本当によくわかります。
あと、フランスのダフト・パンク、ノルウェーのロイクソップのように、エレクトロをインディ・ロック、さらに一般大衆にまで、クールさを保ちながらキャッチーに広げた存在も見逃せないところですよね。
あとロックが2000s以降、ラウドとインディではっきり分かれるようになったんですが、ラウドの側がニュー・メタルのブームがしぼんじゃったあと、その後を牽引してるのって、たとえばドイツのラムシュタインとかスウェーデンのゴースト、今回選べなかったけど最新作ヒット中のフランスのゴジラといった、非アメリカの勢力であることは特筆すべきことだと思いますね。
そしてインディはどこも文化系のロウファイなセンス勝負のバンドが増えますね。ドイツのトコトロニック、メキシコのZOE、ブラジルのロス・エルマーノスやオ・テルノ。テルノのチム・ベルナルデスは昨年のフリート・フォクシーズのアルバムに参加してましたよね。
そしてヨーロッパ圏では90s末からはどこの国もその国固有のヒップホップ・シーンができていますね。早かったのはフランスですね。90s半ばに「憎しみ」というフランス青春映画の傑作があるんですけど、あの時点ですでにフランスの若い人のあいだでかなりヒップホップが浸透してる様が見えたんですけど、その初期フレンチ・ラップの立役者のIAM、言葉がわからなくてもきわめて入りやすい”イタリアのエミネム”ことカパレッツァをここでは紹介しています。ただ、今日に至るまで国を代表するラッパー、どこの目白押しで、これはそのうち研究対象にしたいほどですね。
そして、今やインディ・ロックも、男性のバンドが弱い今、より音楽的自由度の高いアーティストたちが凌駕する活躍を見せてますけど、そこに非英語圏の国の女性たちもたくさん加わってきて、ヒットチャートに顔を見せることも珍しくなくなってきていますね。スウェーデンのRobyn、フランスのクリスティーン&ザ・クイーンズ、スペインのモダン・フラメンコの女王ロザリーア。いずれも英語圏の国で高いリスペクトを受けていますね。
そして、ダディ・ヤンキーが火をつけたレゲトンのアーティストがプエルトリコやコロンビア、そしてナイジェリアのバーナ・ボーイをはじめアフリカのアーティストたちが最近ではアメリカやイギリスのチャートでR&B/ヒップホップの新勢力としてチャートに加わるようになってますよね。アメリカのR&Bに対して刺激を与える存在になってほしいですね。
あと、言うまでもなくBTSですね。前回2018年のときは、僕がまだ彼らの良さに気付き切ってなかった時期だったので見送ったんですけど、もう十分、批評的に評価していい文句なしの存在ですね。今のご時世、ヴォーカル、ラップ、ダンスのコンビネーションでここまで上質のエンターテイメント届けてるアーティストなんて、世界のどこ探しても他に誰もいませんからね。
そして、アジアからもバンド、やっと選びましたよ!アジアにバンド、かなりいるんですけど、どうも日本のバンドと比べて弱いなあと思ってなかなか僕のめがねに叶う人たちがいなかったんですが、タイ、レベル、高くなってますね!シティ・ポップ系の人たちもいいんですけど、僕はこの国のドリームポップ系の人たちのほうが希望あると思います。すごくセンスがいい。特にセーフプラネットというバンドは、シティポップとドリームポップの両方をつなぐ感じでいいですね。
あと、これまで謎だったインドからも選びました。それまでこの国って「ボリウッドのサントラしか売れないのか」ってくらい、売れてるものが謎だったんですけど、ようやくここにきてそれに関係ないシンガーとかバンドがくれはじめてきてるようです。このプラテーク・クハドは中でもかなり人気かつ批評評価も高く、かのバラック・オバマ氏もお気に入りということで知名度を上げてますね。
そしてラストは日本人、いきましょう。ミツキとリナ・サワヤマ。2人ともに日本で音楽活動をはじめてなく、英語で活動してる人たちなのでどうしても邦楽的と結びつかないために邦楽オールタイムにはどうしても入りにくいタイプです。ただ、2人ともに世界では日本人のアイデンティティとしっかり結びつけて語られ、そしてその才能を絶賛されている二人です。今回のこの100選に日本人として選ぶなら、この2人しかいないなと思っていれました。で、彼女たちを選んでシメたことで、すごくきれいに収まった感じがして、僕自身もすごくうれしかったですね。
・・と、そんな感じになりました。
これですね。
こんな風にSpotifyにプレイリストも作ってみたので是非聞いてみてください。もしかしたら配信の契約の関係上、聴けない曲があるかもしれませんが、それはご了承ください。
そして改めて
僕が今回の企画作るもととなったPeterさんの「非英語圏オールタイムベストアルバム」も集計が終わったと本人から聞いています。こちらの集計結果もたのしみにしててくださいね。
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