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30数年振りの傑作! ティアーズ・フォー・フィアーズの奇跡的カムバックに注目!
どうも。
ウクライナ情勢、気になるところではもちろんあるし、僕も情報を常にチェックしている状況です。そちらで僕がどうしても語りたいことが出て来ればそちらの話もしますが、それまではエンタメの話を通常どうり続けます。
今週、世界の音楽で最もホットな音楽の話題といえば、僕はやっぱりこれだと思います。
ティアーズ・フォー・フィアーズ!
「えっ?」。そう思われる方もいらっしゃるかもしれません。無理もありません。
こういう風貌で覚えていらっしゃる方のほうがほとんどだと思うので。これが実に30数年前の風貌ではあるんですけどね。
そう。ティアーズ・フォー・フィアーズといえば、30年以上前の1980年代のスーパースターですよ!
この2曲の全米ナンバーワン・ソング「Everybody Wants To Rule The World」「Shout」。この2曲をはじめとして、彼らは1985年
セカンド・アルバム「Songs From The Big Chair」、これで全世界を一世風靡しました。
あるいは
もう少し年齢が下の人には、1989年にこれも世界的に大ヒットした「Sowing The Seeds Of Love」。これで覚えている人もいるでしょう。
彼らは80年代のイギリスのニュー・ウェイヴのムーヴメントが生んだ、最高のポップ・デュオで、批評的な評価も非常に高かったものです。それこそ、僕が昨年に特集したデュラン・デュランとは比べ物にならないくらい高かったのは事実です。僕はTFF、大好きでしたけど、本音言えばデュランのほうがもっと好きだったので(笑)、「ちくしょう、羨ましいな」という目で見てました。そんな僕でも
先のシングルに加えて「Head Over Heels」「Mothers Talk」が大好きでね。彼らって、いわゆるシンセ・ポップのサウンドではありながらも、あくまでも基本がバンド・サウンドで、メランコリックな繊細さと、R&Bの影響を感じさせるソフィスティケイトされたポップ・センスも同時に持っていたというか。あの当時のイギリスのニュー・ウェイヴ・バンドの要素を一番バランスよく持っていたんですよね。ある意味、代表格になるのも納得だったんです。
が!
1990年代に入るや、忽然と消えたんです!
その理由は、ローランド・オザーバルとカート・スミスの2人が仲違いしてカートが脱退。ローランドのソロ・プロジェクトとなってしまったからです。
ただ、これは痛手でした。サード・アルバムの「Seeds Of Love」も、ほとんどローランドのソロの趣で、物によってはカートでなく女性シンガーとのデュエットもやったり、サウンドも脱ニューウェイヴでブルー・アイド・ソウル的な1枚でしたしね。
それをやりすぎたと感じたか、93年の4枚目のアルバム「Elemental」は若干、以前のサウンドに戻したんですけど、これが当たらず。さらに95年発表の「Raoul And The King Of Spain」が民族音楽に走った、ちょっと自己満足的なコンセプト・アルバムで、これまで全英トップ5以下を記録したことのなかった彼らのアルバムで全英最高41位という惨敗に終わってしまうんですね。これで完全に活動が暗礁に乗り上げます。
21世紀に入り、ローランドとカートは仲直りして再びTFFとしての活動を再開。2005年にはアルバム「Everybody Loves A Happy Ending」を出します。ただ、感覚がなかなか現役感が戻らず、時代に微妙に合わない音になってしまったというか。これも全英45位、全米46位と苦戦します。
その後、彼らはアルバムを出さず、ツアー・アクトとして、ツアーやフェス出演に明け暮れる毎日を過ごしていました。
が!
その間、徐々に再評価は進んでいました!
その最初の契機が2002年の映画「ドニー・ダーコ」で使われた、ファースト・アルバム「The Hurting」の中の、イギリスでの大ヒット曲「Mad World」が、シンガーソングライターのマイケル・アンドリュースのカバーの形で歌われ、認知度を上げるんですね。
この影響で、TFF、しばらくの間は思い出される際にこれが使われていたものです。
ただ、TFFへの注目度が急激に上がったのは、実はこの5年くらいです。
まずはこれが大きかったですね。ウィーケンドの2016年のシングル「Secrets」。ここでTFFの、これまたファースト・アルバムからのヒット・シングル「Pale Shelter」。これがサンプリングされて話題になりました。
そしてさらに
The 1975がこれに続きます。2016年のセカンド・アルバム「I Like It When You Sleep, For You Are So Beautiful Yet So Unaware Of It」、これが世界的に大ヒットするわけですが、これまでのイギリスのインディ・ロックバンドがやってこなかった、80sリバイバルでも、主に中期以降の、いわゆるシティ・ポップ・リバイバルともシンクロする、UKソウル、ブルー・アイド・ソウルとも当時呼ばれてました、「ソフィスティ・ポップ」へのアプローチを試みたんですけど、そこで彼らが影響元としてティアーズ・フォー・フィアーズの名前を、ブルー・ナイルらと並んであげたんですよね。
これなんか割と特徴わかりやすいと思いますが、こういう感じで1975のファンにTFF、知られるようになりまして
https://www.nme.com/news/music/tears-for-fears-the-1975-2053237
これにカート・スミスが反応し、「ありがとう。うちの娘がThe 1975の大ファンで、彼らを通じて僕の音楽を尊敬してくれるようになってね」と発言します。
で、これはカートの娘だけに限ったことではなくてですね
https://www.mybackpages-jmx.com/80s-album-best-100-analysis-3674
去年、ツイッター上で行われた洋邦両方を混ぜて行われた80年代オールタイム企画でも、「Songs From The Big Chair」、35位に入ったんですよ。この手の企画で、しかも投票者若かったのに、このアルバムがこんな上位に入ったということは、やはりこれも1975効果で、かなり若い子にTFF聴かれたということだと思います。それが証拠にブルー・ナイルも18位でしたからね。再発見が進んでいた、と取れると思います。
そして、そのタイミングで
17年ぶりのアルバム「Tipping Point」が出る、と聞いて、「バッチリのタイミングじゃん!」と思ったんですね。
それで、上がってくる新曲がことごとくよくてですね。
このあたりの、80sのTFFサウンドを今のフィルターに通したみたいな曲も良かったんですけど、やはり
この「Break The Man」ですよ!
これはカート・スミスが書いた曲なんですけど、もうリバイバルを思い切り意識した「これぞTFFでしかない!」という1曲ですね。
だいたい、歌の始まりに「ジャ〜ン!」って「Pale Shelter」そのまんまのギターのストローク入れて、Aメロの裏に「ピ〜ロ〜リ〜ロ〜」とメランコリックなシンセ入れて、サビのタイミングでリンドラム(シンセドラム)入れるなんて、もう、モロじゃないですか(笑)。
で、アルバム、これが4曲目に入ってるんですけど、アルバムの流れもスゴックよくてですね。最初が静かに始まって、徐々に徐々に、TFFの黄金期のサウンドに近いものがジワジワっと出てきて
最後のこの「Stay」の「Songs From The Big Chair」のラスト・ナンバーの「Listen」を彷彿させる、陰鬱さと静寂を織り交ぜた悩ましげな恍惚と共に締めるパターンを彷彿として、これもニヤリでした。
全体、ローランドが主体で「成熟したTFF」を披露するんですけど、そこに時折カートが「黄金期をまんま彷彿のTFF」を混ぜてきて、そのケミストリーが絶妙です!
そんなこともあり、このアルバム
https://www.albumoftheyear.org/album/423078-tears-for-fears-the-tipping-point.php
なんと、各媒体のレビュー総合で80点を軒並み超えてます!すごいことですよ、これ!80点超えるって、年間ベスト・アルバムの上位に入るアーティスト並みのレベルですからね。それを、ややもすると、懐メロ扱いされかねないアーティストがいきなり記録したわけですから。
その効果もあり
なんと、このアルバム、もしかしたら今度の全英チャートで初登場1位になるかもしれないんですよ!少なくとも、現時点では1位です。正式発表、金曜なんですけど、果たして逃げ切れるか。
いやあ、これって
去年の10月にデュラン・デュランのアルバム「Future Past」が全英3位を始め、全世界で7カ国でトップ10に入って驚かれたんですけど、それに引き続く、80sのMTVアイコンのカムバック現象ですよ。
デュランのこのアルバムも、「ウェディング・アルバム以来の傑作」なんて言われて、それ計算すると「28年ぶりの傑作」って意味でしたけど、TFFの場合、それこそ「Songs From The Big Chair」以来の出来なので37年ぶりの傑作ということですよ!「いや、Seeds Of Love以来だよ」という声も、僕は認めませんけど(笑)あるので、そこで10歩譲っても33年ぶりですよ。いや〜、そんなカムバック、なかなかないですって!
ローランドもカートも、2人とも現在60歳。今の世の中、そういう年齢からでも堂々復活、可能なんですよ。そう考えると、なんか夢ありますよね。パッと見は、ちょっと「玉手箱?」な感じはありつつ、声も、デュランのサイモン・ル・ボンほど、まだ大きな聴衆で揉まれてないだけ加齢が目立つ(というか、サイモンのヴォーカルをこんな風に上手な例で褒める日が来るとは思わなかった、笑)んですけど、このカムバックで感覚、さらに若くなってくると思うので、期待したいところです。
先週、日本でも「ベストヒットUSA」、出たんでしょ?そこで「懐かしい」と思われた方もいるとは思うんですけど、「懐かしい」で終わらせないでください。「現役の一線級のアーティスト」として、旬な存在ですから!
この続きは今度の全英チャートで書きたいと思いますが、1位になってるといいな。