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全オリジナル・アルバム FromワーストToベスト (第50回)ザ・キュアー 14位〜1位

どうも。

では、今日はFromワーストToベスト、行きましょう。今回は記念すべき50回目。これでいくと決めてました。これです!

はい。16年ぶりのニュー・アルバム発表したばかりのザ・キュアー、行きましょう。このバンドに関してはもう過去にも何度かやりたかったんですけど、今回まで待ってよかった。ベストなタイミングでこれができます。

では早速行ってみましょう。


14.The Cure/The Cure (2004 UK#8 US#7)

14位、ワースト1は2004年のアルバム「The Cure」。これはどちらかというと、「今聞いてみたら、やっぱ、そんなに良くないよねえ」という感じかな。出た時の印象はむしろ良いくらいだったんですよ。これ、プロデュースがラウドロック〜エモ畑のロス・ロビンソンで、同時にこの時にキュアーがキュレーションをやるフェスもやったりしましたから。「後続から強いリスペクトを受けてるぞ」感を強く出した売方してました。だからチャート上の数字はいいでしょ?だけどこれ、長く聴ける曲が少ないんですよね。あの当時は「スリップノットやアット・ザ・ドライヴ・インを手がける人がやってもキュアーはキュアー」なんて言われ方をしてましたけど、やっぱ微妙に音の質感違うというか、「キュアーのギター・サウンド、そんなにヒリヒリしてなくていい」というか、質感が妙に乾きすぎてるんですよね。やっぱキュアーってウェットな暗さで勝負のバンドだし。あと、なんだかんだで音の骨格そのもののマッチョな骨太さも他と比較して聞くと感じられてそれも違和感なんですよね。ロバート・スミス自身、気に入ってないアルバムと名指ししてますが、やっぱ感触的に何かが違うのだと思います。

13.Wild Mood Swings (1996 UK#9 US#12)

13位、ワースト2は「World Mood Swings」。このとき覚えてますけど、この前作までの勢いだと世界的なトップバンドだったのに、4年リリースの間隔空いてる間に人気急にストーンと落ちた感じになってしまいました。その間にアメリカだとグランジ〜オルタナ、イギリスだとブリットポップという新しい流れが生まれてそれに飲み込まれてしまった感じもしてたんですけど、それだけではなかった気もします。ちょうど全盛期を支えてきたギタリスト「パール」ことポール・トンプソンが抜けてサウンドのバランスが狂ってしまったこと、あと前作、前々作で築いた世界観のあとにこれをどう続けていくのか、ロバートの中で明確な青写真が見えなかったのかな、と思います。その答えが「The 13th」などで聞かれたメキシコのマリアッチみたいなトロピカルなラテン・サウンドなどだとしたらそれもなんかその場しのぎ的だったというか。ひらめきそのものが弱いんですよね。ただ、不思議なもので、そうしたアルバムなのに、ドラムで新加入のジェイソン・クーパー始めギタリスト以外はここでのラインナップが現在も続いて行くことにもなります。

12.4:13 Dream (2008 UK#33 US#16)

12位は「4:13 Dream」。これが長いこと、「キュアーの現時点での最新作」と言われ続けてきたアルバムです。ただ、このアルバムの時って、なんか不思議なくらいレーベル・プッシュがなく、全然売れなかったんですよね。アメリカでこそコア・ファンが意地見せて16位まで上げてますけど本国イギリスで33位。ヘッドライナー務める大物バンドとは思えない数字です。こうした経緯もあり歴代ワースト作にもよく選ばれたりしてるのですが、実は感触そのものはそんなに悪くありません。ギタリストに、結局このアルバムだけでしたがパールが戻ってきて、いわゆる彼の在籍時での人気の時期、80s後半を彷彿とさせる「The Only One」「Sleep When I'm Dead」みたいな、いわゆる「キュアーのヒット曲」みたいなものは所々に出てきます。そんなお気に入りのフレーズが見つかるだけで多少点数も甘くしたくはある(ワースト2枚はそこも弱い)のですが、その瞬間が長続きしないというかガス欠起こしてる感じがこのアルバム、あるんですよね。アルバム通してのパワーも今ひとつないというか。この辺りのモチベーションの回復が次のアルバムの登場を大きく遅らせたことになっているような気もします。

11.The Top (1984 #UK10 #US180)

11位は「The Top」。1984年の作品です。これはもしかしたら、やりようによっては代表作になっていたかもしれないアルバムだと思うんですけどね。だって、これの前、彼らのキャリアにとってのターニング・ポイントとなった3枚のシングル「Let's Go To Bed」「The Walk」「The Love Cats」の3連続ヒットで、これまでになかった魅力を開眼させ、その勢いをここにつぎ込める・・・はずだったわけですからね。その3枚のシングルで大活躍したロル・トルハーストをドラマーからキーボードに転身させたこと自体は正解だったと思います。ただ、その期待された「進化」「変身」があまり効果的に発揮されずに終わってしまった印象があるんですよね、このアルバム。その一つの理由としては、ロバートがこの当時、スージー&ザ・バンシーズの技ギタリストと掛け持ちしてて、このアルバムに気持ち的に上手く集中し損ねたことが大きかったのかもしれません。ただ、その中で「The Caterpiller」のファンキーなアコースティック路線は今後に道開いた気もしますが。


10.Faith (1981 UK#14 US#193)

10位は「Faith」。1981年発表のサード・アルバムですね。このアルバムの時はちょうど典型的なポストパンク・サウンドの頃で、この前のアルバム同様、ジョイ・ディヴィジョンだったりスージー&ザ・バンシーズ、ヤング・マーブル・ジャイアンツなど、彼らより少しだけ先に出たバンドの後を追う感じのポスト・パンクの大きな勢力の中の良質なバンド、という感じがしますね。キュアーというくくりでなく、そういうムーヴメントの中で出てきたバンドとして良いというか、仮に彼らの成長がここで止まっていたならば、そうしたタイプのバンドとしても十分歴史に残るだけの1枚だとは思います。「Primary」とかそうした視点で聞けば立派なポストパンク・アンセムですからね。ただ、それだとこの前作の方が良いのと、他のアルバムが立派すぎるためにこの位置になった、という感じですかね。

9.Bloodflowers (2000 UK#14 US#16)

9位は2000年のアルバム「Bloodflowers」。これはキュアー・ファンの一部で「隠れ名盤」だったり「過小評価作」としてあげる人、結構多いんですよね。無理もありません。これ、ワースト2に選んだ前作の大コケの後の一般人気落ちた後に発表され、しかも本人たちの意向でシングル切らずMV作らずだったのであんまり目立ったプロモーションがなかったんですよね。僕自身、出たばかりの当初はスルーしてましたから。ただ、徐々に評判耳にするようになって聞いてみて目からウロコ、みたいになったのを覚えてます。このアルバムで彼らは前2作で感じられたキラキラした装飾部分をそぎ落として、ソリッドなギター・アンサンブルとアコースティックでストイックにダークサイドに攻めた作風に回帰してます。グランジ世代を通過した後のポルノグラフィみたいなところがあって。そして1曲1曲が長い。1曲め6分の2曲め11分!高い集中力を持って没入した強い緊迫感の中アルバムが進んでいく様はなかなかの圧巻です。彼らはアメリカだとオルタナ、エモ、ニュー・メタル系のバンドにも影響力強いんですけど、これは特にそっち方面の訴求力強いのでは。この次作のプロデュースがロス・ロビンソンに繋がるのもなんかわかるんですよね。ちなみにここでの制作布陣が新作につながっています。

8.Three Imaginary Boys (1979 UK#44)

8位は「Three Imaginary Boys」。1979年3月リリースのデビュー・アルバムです。よく混同されがちなんですけど、デビュー曲の「Kiliing An Arab」だとか今日まで大人気の最初の代表曲「Boys Don't Cry」などが入っているのはこのアルバムではありません。それはこの翌年に出たアメリカ向けの編集盤の「Boys Don't Cry」。こちらはそれらのシングルが抜かれた状態でのイギリスでの1枚目です。出た時期を考えても、まだこのころはパンク・ロック・ムーヴメントの残り火がある頃で、それが徐々にポストパンクに向けて変わりかかろうとしている時。この当時にまだギリギリ10代だったロバートにドラマーのロル・トルハースト始め他のメンバーも20歳そこそこ。ロックンロールで猪突猛進することもできない、本当にDIYではじめたつたない演奏で、ズンッタ、ズンッタと意図したのかしていないのかわからないぐにゃぐにゃなグルーヴ。他のメンバーよりは幾分マシなロバートのギターも後の安定感とグレードの高さからすればかわいいもの。だけど「10: 15 Saturday Night」を始めとして、このころからキャッチーな曲の掴みには原石の輝きが当時からあるんですよね。それこそ前述のシングル曲入ってたらもう少しランク上だったくらい、何も修練されていない頃から将来を約束するような天賦の才がここにはあります。


7.Seventeen Seconds (1980 UK#20 US#186)

7位は「Seventeen Seconds」。1980年、10代の原石で始まったキュアーの歴史に早くも道が開けだした時期の作品ですね。このアルバムで彼らは初めて全英トップ20に名をつらねることができ、所属レーベルFictionの対策も効いてか、イギリスでブレイク仕切る前にアメリカでも200位入りし初期のコアファン・ベースを作ってます。また、このアルバムから今日もベースを務めるサイモン・ガラップが参加。ロバート、ロル、サイモンと、初期のキュアーを礎を作る三本柱が揃い踏みます。そうした彼らにとって記念すべきアルバムだったが故か、ここからはライブの定番曲がすごく多く、これまでで最もライブでプレーされている「A Forest」を始め「Play For Today」「M」「At Night」と、定番曲が目立ちます。このころのキュアーは初期のロウファイなギター・サウンドから、この前年に衝撃のデビューを飾ったジョイ・ディヴィジョンの影響を感じさせる、ミニマルかつ機械的なビートと、単音主体のベースラインで、ダークな緊迫感溢れるポストパンク・サウンドを継承発展させている過程にありますね。この時期のUKポストパンク史に残る代表作だと思います。


6.Wish/The Cure (UK#1 US#2)

6位は「Wish」。彼らの商業的なピークにあった時期ですね。意外ですけど、これが新作出るまで唯一の全英1位アルバム。さらにアメリカでも2位・・と、なんでこのビッグなグレードが日本に伝わってなかったのか、それが本当に惜しまれるところです。まあ、このチャート・アクションそのものは、この前作がもたらしたもので、評価的にもそっちの方がどうしても高くはなってしまいますが、これはこれで熱心な支持者も少なくなく人気アルバムです。このアルバムでは結成当初からのメンバーだったロルが残念ながら抜けてしまったのですが、その代わりにギターでペリー・バモンテが参加。ここでロバート、パール、ペリーのトリプルギター編成になって、ギター・サウンドに立体的なスケール感と厚みが出ました。未だにこのトリプルを高く評価する声はよく耳にしますね。楽曲的にもまさにそのダイナミックさが象徴されたステージでの大定番「From The Edge Of The Deep Green Sea」をはじめ、得意のアルペジオの美しい先行シングルにもなった「High」、そして「明るいキュアー」としては一番人気なんじゃないかな、「Friday I'm In Love」など、代表曲も多いです。なので人によってはもっと上位のアルバムだとは思うんですけど、僕自身は、ちょっと曲によってコネクトしない曲があってスイッチが入ったり入らなかったりするのでここですが、客観的には見事な完成度のアルバムだと思います。


5.Kiss Me Kiss Me Kiss Me (1987 UK#6 US#35)

5位は「Kiss Me Kiss Me Kiss Me」。1987年のブレイクスルー・アルバムですね。当時の実感としては、ここで知名度が一気に上がった気がしてます。前作のときは85年にUKでかなり注目の存在になったんですが、その翌86年にベスト盤リリース。その時に「Boys Don't Cry」の再ヒットがあったりして話題性が引き続いた後にこれが続きました。とりわけ、このアルバムが大きかったのは先行シングルの「Just Like Heaven」の成功で、これが全米シングル・チャートでトップ40入り。それでアルバムもアメリカでロングヒットになるなどしてブレイクのための足場が固まることになります。このアルバムはポップに多彩化したキュアーが、まさに「Just Like Heaven」「Why Can't I Be You」「Hot Hot Hot」といったそうした路線を踏襲するキラー・チューンを生み出しながらもアルバムでは全18曲2枚組の大スケール。加えて5分を超える長尺曲も少なくなく、収録分数は74分。彼らの次に向けての進化の始まりを見せました。さらにこの時のツアーから今日でもおなじみ、キーボードにロジャー・オドネルを加え、アンサンブルをさらに強化していくことになっていきます。

4.Pornography (1982 UK#8 US#133)

4位は「Pornography」。1982年5月発表の4枚目の作品にして、初期の集大成として名高いですよね。これはロバート、ロル、サイモンのトリオ編成のキュアーでの最高傑作であり、この時代のポストパンクで不可欠な作品だと思います。なんでそう言えるのかというと、これの前までポストパンク・シーンの一群の存在ではあったもののまだそこまで強いオリジナリティを発揮してはいなかった。しかし、このアルバムでは、ギターは低いチューニングでとことん低くて重く、ドラムのビートも強いリバーブやデジタルのグルーヴを駆使したりして飛躍的に幅を増すと同時に、聞いてて上がってくる不安指数も、ジョイ・ディヴィジョンの「Unknown Pleasures」に引けを取らないカリスマティックなダークさが黒光りするようになってカルト的な評価を集めることになります。ここでのドス黒さこそがいわゆる彼らにルックス通りのゴシックな暗さを求める人には一番たまらない世界観であり、それゆえにその界隈ではこれ神格化されているのだと思います。ただ、この作品はドラッグにまみれて作られた苦しいものでもあり、全英8位とこれまでで最高の成績を収めながらもツアー終了後にサイモンが脱退。バンドはロバートとロルの2人になり、これまでとガラッと違った展開からキュアーが次の次元へと進むことにもなったわけです。

3.Songs Of A Lost World (2024 UK#1)

そして最新作の「Songs Of A Lost World」は第3位となります。いやあ、素晴らしいアルバムです。前作から16年ぶりとなりますが、多くの人がご存知のようにその間、何もしていなかったわけではなく、何度もワールドツアーを行っていました。しかもライブの時間はいずれも30曲以上、3時間以上の濃密なもの。これによりロバート・スミス、サイモン・ガラップ、ロジャー・オドネル、ジェイソン・クーパー、そして2012年から加入の、90sのデヴィッド・ボウイのクリエイティヴ・パートナーでもあったリーヴス・ガブレルズをギタリストに迎えた布陣で鉄壁のパフォーマンスを固めて行きました。そうやって前作で垣間見られた倦怠期を克服し、近年にここで聞かれる新曲群をセットリストに加えていき、そしてそれが揃ったところでの今回の新作となりました。ここに揃った楽曲は8曲。しかし収録時間は49分と、1曲平均で6分台と言う長尺なもの。似たような作りだったのが2000年の「Bloodflowers」だったのですが、そのアルバムを手がけたポール・コーケットを共同プロデューサーに迎えています。ただ、ここで構築された世界はそのアルバムとはガラリと違っています。展開されているのはシューゲイザーやドリームポップのリバイバルに呼応した、浮遊感とし神秘性のある魅惑的な空間の広がり。近年のライブでもショー・オープナーとして起用されていた「Alone」からアルバムは始まります。アンサンブルの緻密な構築性に耳を奪われがちですが同時にロバートの紡ぐメロディに久々に厳選された冴えが戻り、曲と曲とのつながりやバランスのとれた流れも完璧。時には00sに見せたハードな表現の痕跡なども通過しながらファンタジックな世界観は続いたまま、新たなキュアー・アンセムに仲間入りが確実なドラマティックな大曲「Endsong」で大団円。長い歴史を誇るキュアー史上でもアルバムのyトータル性ではトップクラスであるばかりでなく、今日、ロックバンドの生パフォーマンスでここまでの緊迫感、整合感、パノラマ感をアピールできる作品もそうはありません。彼ら自身のみならず、ロックシーンに対しても何かを投げかけている円熟の傑作です。

2.Head On The Door (1985 UK#7 US#59)

そして2位が「Head On The Door」。1985年発表。ザ・キュアーと言うバンドがロックシーンにとって不可欠なバンドであることを示した非常に重要な一作です。このアルバム、まず何が大事か。それは今日までロック・ファンがいわゆる「クラシック」「アンセム」として頭の中に刻んでいるキュアーのシグネチャー・サウンドがここで完成していることです。それを作るチャンスは1983年のシングル3分作の後を受けた前作「The Top」でできそうだったんですが、それがうまくいかず。しかしここで、ロバート、キーボードにシフト・チェンジしたロル、復帰したサイモン、前作から参加のパール、そしてボリス・ウィリアムスをドラマーに据えた布陣をしっかり固めたことでシングル3部作でのポップな実験性を拡張した世界観が出来上がりました。前作での「The Caterpiller」のファンキーなアコースティック・リフを発展させた今日でも不可欠なアンセム「In Between Days」を始め、ハンドクラップの生身の高揚感を使いながらシングル3部作でのグルーヴを発展させた「Close To Me」、バンシーズとのツアーを経て名ギタリストとしても見られるようになっていたロバートのフレージングの光る「Push」、ドラマティックなスケール感で聞かせる「A Night Like This」。これらの要素はこの後のキュアーには不可欠なものとなっていきます。彼らがこの傑作を発表したちょうど同じ頃にはザ・スミス、ニュー・オーダー、デペッシュ・モードといったいずれもダークなカリスマバンドたちがキャリアのピークに近い状態で傑作を出していた頃。これがイギリスにおけるロックを華やかだった第2次ブリティッシュ・インベーションから大逆転させることにもなります。


1.Disintegration (1989 UK#3 US#12)

そして1位はやはりというか「Disintegration」。ザ・キュアーというバンドを語る際に誰もが名作、最高傑作として名前を挙げる盤です。僕、リアルタイムで大学入る頃だったんですけど勢い凄く覚えてます。多くの人がここからの「Love Song」が全米シングルで2位まで上がったことを語りたがりますが、僕はその前にイギリスで先行シングルの「Lullabye」がいきなり5位で初登場した時に「これはもう天下取ったな」という感じがしたし、「Love Song」がそのダメを押した感じでしたね。皆がこのアルバムを礼賛する背景にはこの「上り詰めた感」がかなり作用しているかとは思います。また、これだけでなくファンタジックな「Pictures Of You」や力強い哀愁のギターロックの「Fascination Street」とキラー・チューンのオン・パレードであることも十分な理由にはなります。しかし、このアルバムの真の魅力はそこではありません。それよりもむしろ、そうした代表曲満載の作品でありながらも決してシングル集ではなく、アルバム・トータルの魅力でこそ語るべきスケールの大きな作品だからです。今回の「Songs Of A Lost World」は1曲あたりの演奏時間の長い大曲で構成されたアルバムですが、そのスタイルが大いに愛されている背景には、このアルバムのそれを思い出させるところがあるからです。今回のアルバムはシューゲイザー、ドリームポップ的な手法をもとに浮遊感あふれる空間的構築を行った作品ですが、ここではロジャー・オドネルの奏でるウェットなキーボードの響きの広がりが全体を覆い包む効果を発揮しそれを背景として各メンバーがそれぞれに細かいスケッチを刻み込んでいくような作りです。「Plain Song」「Prayers For Rain」「The Same Deep Water As You」そしてタイトル曲の「Disintegration」。これらの大曲とキラーチューンが有機的に交わりあって極上のダーク・スペクタクルが生まれているわけです。

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