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沢田太陽の2024年間ベストアルバム 30〜21位

どうも。

では、年間ベストアルバム、今度は30位から21位行きましょう。このようになっています!



はい。では、早速30位から行きましょう。

30.Cowboy Carter/Beyoncé

30位はビヨンセ。これ、面白いもので、僕、このアルバムが出てすぐに「年間ベストで30位くらいのアルバム」と適当に言ってたんですけど、いざ選んでみたら本当にそのくらいの好みになったので迷わずこの順位にしました。これ、一部でやんや言う人いたわりに良くできてると思うんですよ。歴史に敬意を払うのが好きなビヨンセらしく、西部劇風の伝承物語風の要素を盛り込んだり、ロックがカントリーから派生した際のテキサスのラジオのスキット入れたり、黒人のカントリーの先人のリスペクトを取り込んだり、そこに現在的な要素をかき混ぜて表現して。前作で顕著だった自身のヴォーカルの多重録音を完全にサウンドのアイデンティティとしてマスターしてるのもプラスです。ただ、そうでありながらも、やはりこれはビヨンセというアーティストにとっては「課外授業」というかオフビート企画にしか見えないんですよね。メタルバンドの出すアコースティック・アルバムみたいなものというか。だとしたら、それ相応の評価をすべきだし、それが彼女の決定的代表作である前3作に並ぶとも思わない。そこはハッキリさせておくべきだとは思います。実際彼女だって、これ、出したら出しっぱなしでツアーもしないし、カントリーでの露出とか共演とかしてないでしょ?それで「カントリーとして認めろ」では、金持ちの転校生みたいで感じがよくないのは否定は出来ないかな。

29.The Past Is Still Alive/Hurray For The Riff Raff

29位はハレイ・フォー・ザ・リフラフ。知らない方も多いとは思いますが、僕、この人のアルバム、7年ぶりに入れます。結構前からのお気に入りの人なんです。彼女、本名をアリンダ・セガーラといって、ブロンクス育ちのプエルトリカンなんですね。でも、なぜかカントリーやフォークに魅せられ南部にわたってカントリーシンガーとして10数年前にデビュー。その頃はかなり濃いブルーグラスやってたりしてたんですけど、2017年は彼女なりの問題意識があったかブロンクスに戻って今度はかなりルー・リードあたりを意識したような正統派のインディ・ギターロックやって、それがすごくかっこよかったんで注目したんですよね。その次がエレクトロに手を出してこれがあんまり面白くなかったんですけど、今度は初心にかえってテンガロンハットかぶってカントリーやってます。ビヨンセが先のアルバム出した3月頃、なぜかインディ女子やカントリーでもケイシー・マスグレイブスがトラディショナルなフォークの作品出したりと、ちょっとしたカントリー・ブームが起きたんですけど、内容というより、もっとも本来のカントリー、フォークの観点で一番よかったのが彼女のアルバムでした。なのでビヨンセのひとつ上に入れた次第です。でも、この人、毎回クオリティ高いのに全然知名度上がらないで可愛そう。絶対名前のせいだと思うんですよね。本名に改名しないかな。

28.Small Changes/Michael Kiwanuka

28位はマイケル・キワヌーカ。僕は彼のことは2016年にセカンド・アルバムを出した時からのかなりのファンです。その時、ダークで空間的な広がりのある彼の世界観に圧倒され、「黒人版ピンク・フロイド」と呼び、その年の雑誌用の年間ベストのトップ10にも選んだものです。その次のアルバムは
2020年に出て、そこでは一転してかなりファンキーでブルージーなロックを展開。僕のその年のこのnoteのトップ10に入れただけでなく、その翌年のマーキュリー・プライズにも選ばれていました。それからさらに4年後に今作の発表となったわけです。今回の4枚目は、2枚目と3枚目のいいとこ取りした感じですね。フロイド的なダークでアトモスフェリックなところが戻りつつ、前作でのもっとまっすぐなシンガーソングライター的な部分とが合わさった感じで。新しさこそないものの、彼の作品としては安定してると思います。ただ、問題があるとすればリリース・タイミングでしょうか。シーンで他に同じような人がいない孤高の存在である人が4年に1度しかアルバムを出さず、しかも今回はリリースが枯れ、メディアが年間ベストをそれまでに出た作品から決めようかとする11月末。ちょっと自分のアピールが下手で、それで損してると思います。とはいえ、来年3月に遂に見れる彼のライブは楽しみですが。

27.Cartoon Darkness/Amyl & The Sniffers 

27位はアミル&ザ・スニッファーズ。70sのグラマー・スターを彷彿とさせるトーキング調ヴォーカルのエイミー・テイラー擁するスニッファーズは2019年のデビュー当時から僕のお気に入りのバンド。ここまでの3枚のアルバム、すべてこの年間ベストに入れてきています。オーストラリアはメルボルンという、出身地からして思い切りAC/DCな彼らには後継者バンドとしての期待値がかねてより高く、このアルバムでは本国で2位というだけでなく、イギリスやドイツでもトップ10入り。少なくともヨーロッパ圏では、このままいくとヘッドライナー狙えるくらいの位置には来ていると思います。ただ、実は僕的にはこのアルバムの順位は厳しくつけた結果なんですよね。一定のレベルの作品でこそあったものの、僕の期待値には届かなかった。僕としてはあわよくばトップ10入るくらいのものを求めていたから。よりビッグなバンドを目指して洗練されていくのは予想がつくことではあるんですけど、その割には楽曲完成度がまだ十分でなく、それと引き換えにモーターヘッドのように獰猛だったスピード感とエッジ薄れてしまっている。その意味でちょっと複雑なんですよ。僕の年間ベストで本当のお気に入りラインは25位以上と公言もしてるんですけど、せめてそこに乗って欲しかった。期待かけてる貴重なロックンロール・バンドゆえにあえて言っておきます。

26.You Won't Go Before You're Supposed To/Knocked Loose
 

26位はノックト・ルース。ケンタッキー州に拠点を置くハードコア・バンドですけど、今日、ある程度ヒットしているバンド(全米チャートで23位!)の中では一番過激にハードなサウンドだと思います。どうもニュー・メタル以降のラウドロックって、音の激しさの強度でそんなに進化したようには聞こえてなかったとこがあったんですけど、これは久々にグッと来るというか新しいというか、そういう強度を感じましたね。鋼鉄をぶん投げられる感じというか、ダウン・チューニングのすごく重たいリフにインダストリアル的な強い音の歪み。でも、そうでありながら全体が重い訳では決してなく、ハードコア・パンク本来の軽さと俊敏なキレもある。久々に「曲の展開」とかでなしに音の激しさにこだわった、本来あるべきようなラウドな音塊聞いたな、しかもそれでいて曲が崩れずにちゃんと聞かせられているもの効いたな、という感じでしたね。このテのサウンドに明るいとはいえない僕ですが、これは新鮮さを感じましたね。そんな彼らがアメリカの地上波のトークショーの音楽ゲストでポッピーと曲のパフォーマンスしてたんですけど、「これ、放送乗せちゃって大丈夫なの?」なスリルを久びざに感じた一瞬でもありました。


25.Model/Wallows
 

25位はワロウズ。毎年言ってますけど、僕にとってこの折り返しポイントの25位は非常に大事で、ここから上に入るとマジなお気に入りゾーンに入るんですけど、ここに滑りこんできたのがワロウズですね。「俳優のディラン・ミネットがやってるアイドル的インディロック・バンド」的な見られ方をされがちでなかなか本格的には見られないバンドですけど、チャート実績は確実に上がってきてて本国の全米で28位、イギリスでも38位とトップ40圏内突入。フェスにもかなり引っ張りだこと、見逃せないバンドになりつつあります。僕も以前から「悪くないし、スター性もあっていいじゃない」と寛容な立場をとっていたんですけど、今回のこのアルバムをよく聞いて、ちょっと本気で評価してみたくなりましたね。彼らってサウンド的にはストロークスとかフェニックスの思いっきりフォロワーであり、それ以上ではないと言われてしまえばそれまでかもしれません。ただ、このアルバムでの彼らの曲、たとえばシングルヒットした「Calling After Me」みたいな曲、これを近年の、ストロークスはともかく、フェニックスが書いてるかと言えばそれはすごく微妙だし、その意味でかなり良心的なクオリティを提示してきているとも思ってるんですよね。見よう見まねで習作積み重ねているうちに本家をいつのまにか迫ってくるかのような、そういう熱意と努力の跡を彼らの曲からは感じます。この感じで成長していけばもしかして化けるんじゃないか。そんな期待をも感じてしまいます。

24.Submarine/The Marías

24位はザ・マリアズ。ロサンゼルス拠点のバンドですが、ヴォーカルのマリア・ザラトーヤがプエルトリコ系家系の出身で、英語とスペイン語の両方で歌っていたことからラテン・コミュニティからの人気でかねてから知られていたバンドです。僕も彼らはバッド・バニーのアルバムでのコラボから知りましたのでね。そうしたかともあり、インディ・バンドとしてそれがかなりの後押しとなり、このテのバンドでは異例の成功。アルバムは全米トップ20に入り、さらにシングルの「No One Noticed」はこの数ヵ月ずっと、SpotifyUSのデイリー・チャートのトップ50に長く居座る大ヒット中です。サウンド的には典型的なドリーム・ポップで目新しさこそ特にありません。しかし、そういうサウンドになれていない人に新鮮に聞かせる強い説得力には非凡なものがあるし、一度聞くとなかなか忘れない、シャボン玉みたいな繊細で触るとすぐに壊れてしまいそうな舌足らずのウィスパーはやはり最大の武器です。スウェーデンにスティーナ・ノルデスタムという伝説的な女性シンガーがいるんですけど、彼女の声にすごいそっくりなんですよね。そういう意味では、もうここ何年も水面下で密かなブームになり続けているこのジャンルを一般認知させそうな可能性も秘めています。その意味ですごく応援したい気になってるんですよね。そして、ヒットが出て自信がつくことによってさらに成長する人もいる。そういうのに賭けてみたいというかね。

23.Born In The Wild/Tems 

23位はテムズ。ナイジェリアを拠点に置く女性シンガーですね。アフリカからは2020年代になってアフロビーツが台頭してることもあって一人は必ず入れたくはあるんですが、今年は彼女ですし、まだアフロビーツが完全にうまく表現しきっていないアルバムという領域の中では歴代でも上質のものの一つですね。なんかアフロビーツのアーティストのアルバム、アメリカのR&B/ヒップホップ業界の真似ごとする傾向があるんですよね。プロデューサーたくさんつぎこんでフィーチャリングに有名なシンガーやラッパーつけて。アシャケなんて一昨年、そういうのとは離れたアフリカ的なやり方に徹したアルバム出してたのに今年出したアルバムではこの呪縛から逃れられなかったし、Tylaも「Water」は良かったけどあとは普通のR&Bとあまりに変わらずゲスト攻勢もかけてて肩透かしで。そこ行くとテムズはあくまで自分で曲もプロデュースもやり、ゲストもアシャケとJコールだけに絞り、「アフリカのシャーデー」な雰囲気濃厚にアフリカっぽさにこだわりながら、洗練された優雅なソウル・フィーリングに徹していたのに多いに好感持てましたね。アフリカにおける孤高のカリスマになれる逸材だと強く感じましたね。こういう姿勢でもしっかり「Je Je」みたいなシングル・ヒットも出せてるし大したものです。


22.The Great American Bar Scene/Zach Bryan

22位はザック・ブライアン。この3年のカントリー・ブームの立役者でもある彼。その間、大量曲収録のアルバムに単発のシングルにかなりの数出してきていますけど、この年間ベストでも3年連続でランクインしてきています。ただ、一昨年の「American Heartbreak」聞いた時から、彼の場合はカントリーと言ってもカントリーのギョーカイに染まっていない独立派で、カントリーというより古のロックからの影響が強い人なのは明白だったし、だからこそ「ロックと思って聞いてほしい!」とずっと言ってきてました。今作はそんな彼の作品の中でも、これまで以上にハートランド・ロック色、つまりスプリングスティーンとかトム・ペティみたいな感じのやつですけど、そういう色合いを一層濃くしてきましたね。また、グラミー賞への賞争いも一切しない宣言してるんですけど、それも「カントリー」のカテゴリーで勝ちたくないからかなと勝手に思ってたりします。実際、この1年で彼は、それ以前から「俺のヒーロー」と公言してたキングス・オブ・レオンとの出会いに成功し、来年アメリカでスタジアム・ショー一緒にやることにもなってるし、ローリング・ストーン誌で夢にまで見た「ボス」ことスプリングスティーン御大とのサシでの対談企画も実現もしたりして、もう、やらんとしてること、ほとんどロックです。本当にそう思ってみなさんに聞いていただきたいです。彼も20sにおけるロック復興の大事な立役者と見ているのでね。


21.No Name/Jack White
 

21位はジャック・ホワイト。2010年代って申し訳ないですが、ロック、良くなかった時代だと思っているのですが、その一因作った人に彼がいますね。やはり、ホワイト・ストライプス解散してからのソロが正直な話、良くなかった。印象に残らない作品ばかりで、その結果、彼が00年代に圧倒的に強かった年間ベストのシーズンに話題にならず作品も売れず、という悪循環が続いてたと思うんですね。それが証拠に、僕が2017年に年間ベストの企画はじめてこれまで一作も彼のソロ、入ってきてませんでした。ただ、今回はもう開き直って、ストライプス時代を彷彿させるロックンロールを全快にして戻ってきましたね。それでいいんですよ!ソロになってから、どこか考えすぎてるようなもどかしいアレンジになって、彼の以前の良さであった腕っぷしの強い唯我独尊のギタープレイとか、溢れんばかりの才能が無軌道にケイオテイックのまま出てくるみたいな瞬間が聞かれなかった。あれは本当に00年代に奇跡的なマジカルな瞬間を何度も見てきた僕には物足りないし悲しかった。でも、ここでそれをやめ、10sに全盛を迎えたアーティストが次々と壁にぶつかる中、生き生きと復活を遂げつつあるのが頼もしいです。やはり、こういう瞬間こそを大事にしたいし、ここから彼の再生が始まることを期待したいものです。





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