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静かに世界を席巻中!「サッドガール・インディ」とは何なのか?

どうも。

来週の半ばから、今年の年間ベストアルバムの発表をする予定ですが、その前に三本ほど、今年気になった音楽傾向の話をしようかと思います。

まずひとつが、これですね。

サッド・ガール・インディ!


これについて話そうかと思います。

つい先日行ったばかりのプリマヴェーラ・サウンド・サンパウロ。これは僕にとって、かなり久しぶりに体験する、生のリアリティで音楽シーンの趨勢の推移を体験した瞬間でしたね。その意味で、かなり嬉しい衝撃でもありました。

それはやっぱり

ミツキフィービー・ブリッジャーズのライブを体験して、すさまじく熱い観客のリアクションを体験したからですね。

 いやあ、あれびっくりしましたよ。まだ、世間一般のイメージで、この2人ってそこまででかいイメージってないじゃないですか。「知る人ぞ知る」的なイメージで。ところが、僕が見たライブでのオーディエンスの反応、僕がその次の週に見たキラーズのスタジアム・ライブを上回る熱狂ぶりだったんですよね。実績の長さの違いはあるとはいえ、瞬間風速的な右肩上がりの状況では、この2人、今、世界的にそうとうなものなんだなと感じましたね。

だって

ブラジルで最大部数の新聞で「フィービーとミツキがロックの新時代を見せた」って記事が本当に出てしまったくらいなんだから。僕による誇張などでは全くありません。あの場にいた人なら、それ感じて全く不思議ではありません。

 ただ、この2人がこうなる状況を、これを見る直前くらいからかな、僕は知りまして。それがサッド・ガールズのムーヴメントについて知ったことだったんですけどね。

 このブーム、どういうことかといいますと

現在、Spotifyのプレイリストの中に「サッド・インディ」のプレイリストが大きいもので2つあってですね、どちらもリスナーが100万人前後いるんですよ。どうやらそこでフィービーもミツキも女王扱いされていたようなんですよね。二人してSpotifyのマンスリー・リスナーが1000万人近くとすごく多いんですけど、その人数を増やしていたのは、こういうプレイリストの存在だったみたいです。

 「サッド・ガールズ」、まあいわば暗い心情歌う女性アーティストのことですけど、なにもそれはフィービーやミツキ以前にも

ラナ・デル・レイやビリー・アイリッシュだっているし、

僕の20代だった90年代にもフィオナ・アップルとかマジー・スターみたいなダークなカリスマならいたわけで、「それを今さら?」とかとは思わないではありません。

 これの定義なんですけど、意味的にはもちろんビリーとかラナとかそのルーツとかも含んでいるようなんですが、それ以上に、今のシーンで増えてるインディの女の子を指すようですね。それを意味する際に、「悲しいこと歌ってる人、多くない?」なところから、この名称になってるっぽいんですよね。

例としてあげられているのが

クレイロとガール・イン・レッドも、もうこの路線の代表的な大鉄板ですね。ふたりともストリーミング数すごく多いんですが、サッド系の人気だったようです。

https://www.youtube.com/watch?v=2ZfcZEIo6Bw

このあたりも、その例で名前が上がりますね。アーロなんかはR&Bといわれるよりインディ・ロックに近いと思ってましたが、歌詞の内容まで含んでこっちに入れる方が適切だと僕も思います。

 でも、この感覚、すごくよくわかるんですよね。なんか80年代ロックの時の状況を思い出させるものがあって。

 たとえば80sの頃に、スミスとかキュアーとかデペッシュ・モード聞いてた人って、「世の中にはメタルとか、もっと流行ってる明るいロックがあるってのに、なんだってそんな暗くて地味なの聞いてるんだ?」みたいなからかいあったし聴いてる人もそれを自虐的に言ってたりしたものですけど、今の女の子にしても「もっと明るくて聴きやすい女性ポップスター、たくさんいるだろうに、なんだってバンドやってる地味な女の子なんて聞くの?」みたいな感覚だと思うんですよね。

 いうなれば、ラナとかビリーとかで可視化した「私は他の人とは違う特別なものを聴いてる」感覚が、すごく拡大した感じというか。それがサッド系の女の子の需要を高めてるんじゃないかな、という気がしてます。

 で、こういうタイプの音楽聴いてる人の方が、音楽リスナーとしての寿命も長いし、名盤扱いも受けやすいんですよね、これが。

 だってこれを仮に、サッドガールじゃなく、サッドボーイに置き換えたらわかりやすいじゃないですか。

https://www.youtube.com/watch?v=Q4AkDt_JRqk

 ね(笑)?

ロックって、アッパーな音楽としての一般イメージがありつつも、心に重くのしかかるダークでシリアスなこと歌う人の方が歴史的にも残りやすいというかね。

 それを女性側で体現する人が、これまでわかりにくかったということだったんだと思います。それがようやくわかりやすく見つかったのが今なのかなと。

 で、このサッドガール・プレイリスト見ると面白くてですね。時代とか、さらにいえば女の子であることに限っっているわけでもなくて

コクトー・ツインズの再評価もこのあたりの支持に支えられている面があるし

シガレッツ・アフター・セックスが今、口コミですごく人気になりつつある状況も、こうした需要に支えられているところがあると思います。男のバンドではあるんですけど、この系のプレイリストで選曲が目立つんですよね。

 これ、もしかしたら

ケイト・ブッシュのこの曲の「ストレンジャー・シングス」を介してのリバイバル大ヒットも、そのあたりの計算も含めたものだったんじゃないかと。これを愛聴する女の子、マックスがまさに等身大のサッドガールだったわけじゃないですか。それをエイティーズにあてはめたら、まんまこれになったというか。

 そういう感じで、これ系のプレイリストでいろいろ発見してみると面白いと思いますよ。

 では最後に、この系で次に大きくなるのではないかと僕が睨んでいるもので。

 エセル・ケインという、アメリカの南部から生まれたトランスジェンダーのシンガーがいるんですけど、これがそれこそ口コミですごくじわじわ人気拡大中で。ネット上で彼女のアルバムを今年のベストに挙げる人もめだちます。完全なるどインディの流通だったんですけど、プレイリストだったり、メディアが取り上げたりする機会が増えてて。曲もすごくメジャー感、スケール感が大きくて期待できますよ。






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