安易なポップ化に反旗か?!ロックの反動が目立つ2023年のフェス
どうも。
今日はちょっとフェスの話でもしましょうか。
つい先日発表されましたね。
やっぱ、一番人気なんじゃないかな。イギリスの「グラスト」こと、グラストンベリー・フェスティバルのラインナップが発表されました。
今年、グラスト、「ロックっぽい」って評判なんですよね。まあ、アークティックとガンズがヘッドライナーってのがわかりやすいんですけど、ロイヤル・ブラッド、マネスキン、マニックス、ラナ・デル・レイ、マギー・ロジャース、ワイズ・ブラッド、チャーチズ、ウォー・オン・ドラッグス・・。実際、よく見るとかなり多様化してはいるんですけど、それでもロック、インディでこれだけ名前があるんでアピールにはなってますよね。一部で、本来イギリスのフェスで一番ロックっぽいはずのレディング・フェスティバルよりロックだ、との声まであがってます。
今年はイギリスのフェスに関しては、グラストに限らず、実はロックっぽいものが多いんですよ。
ちょっと前までだったら名前聞かなかったようなケンドール・コーリング、Y Not、トラムライン、こういったフェスが軒並みかなりロックっぽいんですよね。
しかもカサビアン、ブロッサムズ、コーティーナーズと、イギリス国内で内弁慶的に強いバンドが多く出てますね。見ていて、イギリスのバンド文化の層の厚さがわかります。結構、世代が多岐にわたってますけど、ロックにはとことんこだわった感じです。
この傾向、実はイギリスだけでもないんですよ。
このスペインの3大フェスでもそれは同様です。一番多様な路線のプリマヴェーラ・サウンドでもブラーにデペッシュ・モードに加えゴーストにマネスキンにターンスタイル、かねてからロック色濃いマッドクールではレッチリ、リアム、1975、QOTSA、ブラック・キーズ、ビルバオBBKではアークティクにフローレンス、アイドルズ、ドライ・クリーニングですよ。
またフランスのロック・アン・セーヌでもビリー・アイリッシュ、フローレンス、プラシーボ、ストロークス、ターンスタイル、ヤーヤーヤーズ、Wet Leg。
ベルギーのロック・ヴェルフター。ここが一番すごいかな。レッチリ、ミューズ、アークティックがヘッドライナーでサム・フェンダー、1975、Wet Leg、QOTSA、ガブリエルズほか、まだまだたくさんですからね。
そして日本でも
フジロックでもサマーソニックでも同様のことが言えます。フジはストロークスにフー・ファイターズがヘッドライナー。初日なんてストロークス、ヤーヤーヤーズ、アイドルズが1日で観れるロックンロール・デイです。サマーソニックはブラー、リアムにFOB、エヴァネッセンスで中堅きて、インヘイラー、ホリー・ハンバーストーン、ノーヴァ・ツインズ、ガブリエルズ、スナッツの若手。バランスのすごくいいです。
これ、近年、パンデミックははさみますけど、ここ5年くらいで一番ロック色濃いんじゃないですか?ちょっとここまで濃いのは、だいぶ記憶をさかのぼりますね。
というのも、ここ数年、フェスはもっぱらロック離れをしようと躍起でしたからね。
今年のこれなんて、もうその典型中の典型でしたよ。
このコーチェラですよ。バッドバニーに、ブラックピンク。別に単体で嫌いじゃないですよ。バッドバニーは昨年の年間ベスト・アルバムでもトップ10入れたし。だけど必ずしもフェスで見たいわけではないんですよね。ブルピンも。フェスでは「フェスで見たいもの」を見たいですから。
それにもう、今年のコーチェラはロックのアクトを細かい字から探すの結構大変で。ちょっと、これまでの歴史考えたら極端なまでにロック少ないんですよね。
こういうブッキング、他にも影響を及ぼしてるものがありまして
このニューヨークのガバナーズ・ボールなんて、リゾとケンドリックのヘッドライナーはともかく、2日目、客埋まるのか?って思いたくなるくらい、メンツそのものが弱いですよね。
一番評判悪いの、このパリのロラパルーザですね。ここもヘッドライナーから下の弱さ、層の薄さが半端ない。ここもロック、ほぼゼロですね。
あと、ストレイ・キッズ、人気はあるものの、国際フェスのヘッドライナー、明らかに時期尚早だと思いますよ。
ロラはベルリンも評判悪かったですね。ヨーロッパの窓口が脆弱なんだと思います。
ここ数年、フェスに、これまで絡んできてなかったような芸能界が押し寄せてくるようになりました。彼らは女性や黒人アーティストを多く抱えているのを、ポリコレを理由にして迫ってきています。「なぜフェスは、こんなに女性や黒人に対して閉鎖的なんだ」と。そういうのは、たとえば、「これまでフェスに行ったことのなかった人たち」には、すごく訴えたと思います。
が!
女性や黒人の、メインストリームのセレブなポップというものが果たしてフェス本来の目的に沿うものなのか。
この問題が、如何ともし難く大きくあるんです。
なぜなら、本来、音楽フェスというのは
①シングル・チャートのカウントダウンを見てるだけではわからないアーティストを探しに行く場だ
そもそも、そういう空間ですよ、フェスって。これは日本のフェスを体験してるとわかりやすいと思いますが。フェスにジャニーズとかエイベックスとか、出てなかったでしょ?それがなんでなのか。
これは欧米だってもともとがそうです。そもそも、アイドルとかダンス・ポップとか、芸能界のど真ん中との結びつきの強い音楽はフェスでは敬遠されてた。
そこを、フェス文化自体が後乗りだったアメリカが無言のお約束を壊してしまった。これでフェス本来のあり方が相当変わってしまったんですよね。
②原則として「生でのパフォーマンス」こそを重視する場
ここはさらに大事という、それこそ、ヒットチャートの上位ではなかなかきくことのできなくなったような、生身の音楽をリアルに体験しに行く。フェスというのはそういう場であったわけで。
残念ながら、ダンス系、アイドル系のポップ・ミュージックというのは、もう、こういう音楽がメインストリームになって40年近く経ちますが、なかなかうまく、「フェスに出ても違和感ない形で表現すること」がなかなかできないんですよね。
あと、こっちだって、言われなくったって、女性や黒人をヘッドライナーにしたり増やしたりしたいんですよ。だけど、その場合、フェスに合うタイプのそういうアーティストを優先させたいんですよね。やはりそれは、自分で曲を作って、自分で演奏する自作自演のタイプがまずは優先されないと。というのは譲り難くありますね。
あと、そこに加えて
③ポップな人気者のファンは、本当にフェスの他の出演者の音楽を聴くのか?
ここも問題ですね。
日本でもあったでしょ?メガ人気の邦楽アーティストがフェスに出た際、「地蔵」の問題が。ブルピンとかバッドバニーが出演する際の心配、そこもありますね。僕はロックとしてあくまで応援したいと願ってるハリー・スタイルズにせよ、去年のコーチェラでこの地蔵問題みたいなものは起こらなかったのか、心配は一応してますからね。
また、ヘッドライナーだけじゃないですね。たとえばヒップホップのコアなリスナー、Kポップのリスナーがフェスでいろんなタイプの音楽を受容しようとするか。2010年代後半より、この手のフェスでヒップホップがやや後退した背景にもそれあるんじゃないかと見ていてですね。2000s前半にニュー・メタルでその問題起こって、やっぱり分化しましたからね。ヒップホップも最近、独自にフェス増えてるから、そっちに流れてるような気がするんですけどね。
あと、アメリカで、インディ・ロックのアーティストを主体に、大型フェスから撤退して自分たちの別のイベントを組む動きも、アメリカではすでに起こり始めています。
個人的に一番注目してるのは、この「Reset」という新タイプのフェスですね。これはボーイジーニアス、LCDサウンドシステム、スティーヴ・レイシーの3組が、それぞれに自分のオープニング出演者組んで3日間のミニフェスを合同ツアー形式で行う、というもの。このやり方、ロラパルーザの90年代のそもそものオリジナルに近いやり方として注目されてます。
また、ウィーザーがスプーンやモデスト・マウスやフューチャー・アイランドら、計7組のバンドと合同で全米ツアーを行う、新しい形も見え始めています。
こういうのを見てると、大きな声での反論こそ目立ってはいませんです他が、やはり「フェスのポップ化」に対しての反発や抵抗はアーティスト側にやフェス運営者側にもあったんだろうなとは思います。