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実は今週、ブラジルで名盤が生まれていた! 坂本慎太郎も参加のオ・テルノに今すぐ注目!!

どうも。

昨日までブラジル音楽の名盤の紹介をしていましたけど、ちょっと急遽、この記事を書かせてください。

その最中に、今週、実はブラジルからかなりすごい名盤が生まれてたんですよ!4月23日に配信されたそのアルバムはコレです!

すごくシンプルなジャケ写ですね。「Atras/Alem」というのがタイトルですが、これを作ったのは

オ・テルノ、というバンドです。これが4枚目にあたるアルバムです。このバンド、ブラジルのフェス界隈ではかなり昔から期待されていたバンドで、僕も初期にライブ見てますが、その時はそんなに気にとまらなかったのに、前作くらいから「ちょっとヤバいんじゃない??」という空気が良い意味で出てきてバズが高まってきていました。だから僕も配信待ち構えて待ってたんですけどね。

まずはいろいろ話す前にこれから聞いてみてください!

7曲めに入っているこの曲なんですが、参加ゲストがすごい。デヴェンドラ・バンハートに、そして、坂本慎太郎ですよ!真ん中のところで出てくる日本語の詩の朗読が彼です。そういう要素でも聞く価値が高いんですけど、何がこれいいって、ストリングス・アレンジですよ!しかもただ弦楽器をイメージで被せてるだけじゃなく、音色の一つ一つに工夫がある感じというか。和音の感覚もユニークで絶妙というかね。曲のテーマでもある郷愁感もすごく出せてるでしょ。これ

フロントマンウィ務めるチム・ベルナルデスの自身によるアレンジなんですよね。それもすごいなと。

これがMVになった曲なんですけど、これもビーチボーイズの「ペット・サウンズ」を思わせるアレンジは施されているんだけど、なんか憧れだけの模倣に終わってなく、独自解釈があって、チムが自分の曲として消化して生み出そうとする感じがハッキリ伝わるしね。

これもすごくいいですね。3曲目に入っている曲なんですけど、ここではチムのファルセット・ヴォイスがフィーチャーされた、ちょっとサザン・ソウルのテイストもある仕上がりになっています。チムの場合、アレンジャーとして優れているのに加え、美声でソウルフルに歌えるところもかなりの強みです。

もともとオ・テルノって

デビューの時は「ちょっと遅れて出たロックンロール・リヴァイヴァルのバンド」みたいな感じでしたね。2012年くらいで、まだチム、大学生くらいの年齢ですね。ガレージロックにちょっっと60sマニアっぽいサイケの味付けをする、って感じのバンドでしたね。僕もこの頃にライブ見てるんですけど、その時は正直な話、さほそいんしょうに残ってません。

注目度が上がってきたのは2016年に出たサード。アルバムからですね。ここではガレージ・ロックの域を少し脱皮してきたというか、サイケ色、ソウル色をあげて、今作で全面的に聞かれるようになったストリングス・アレンジも半分弱の曲で聞かれるようになります。そういうこともあって、2017年のロラパルーザ・ブラジルで、国内の若いアーティストとしてはやや異例の、やや遅めの出番だったんですよね。この時、見ようと思って予習もしてたんですけど、なんかの都合で見れなかったんですよね。

ただ、決定的なターニング・ポイントとなったのは

2017年11月に出た、このチム初のソロ・アルバム「ヘコメサール」。ここで、今作につながるチムのストリングス・アレンジが開花するんですよね。

これは見事な曲ですね。ピアノの始まりは「Surf's Up」の頃のブライアン・ウイルソンみたいで、ファルセットを主体とした静かな立ち上がりからクライマックスでのストリングス・アレンジの美しいことね。ハープでキラキラ感なんかも生み出したりして。

このソロは、彼がそれまでおそらくは「バンドっぽくない」と思ってためていたものを出した形だったと思うんですけど、そこで開陳したものの方がはるかに才能を感じさせるものだった、という結果になりました。このソロは本当に大絶賛されまして、2017、2018年の年間ベストの上位や、音楽アワーズへのノミネートが相次ぎました。いずれも、1位はないものの、2位、もしくは3位くらいの評価でしたね。

日本でも、なんかこのあたりからちょっと紹介され始めてたみたいですね。ツイートを見てても、このアルバムで発見した人をちらほら見かけたりします。

これなんかはかなりストレートなサンバだったり。この曲なんかを聞くと、一部である「カエターノ・ヴェローゾみたい」という意見も分かります。ただ、カエターノよりはもっとストレートに60sのサンシャイン・ポップ好きですね。あとソウルフルなテイストも彼の方が濃いかなと。「ブラジルの名盤25選」でラストに紹介したロス・エルマーノスにも似てると言われるんですけど、エルマーノスでこんな凝ったアレンジの曲はないし、歌唱力はチムの方が圧倒的に上ですね。

・・ということもあり、これ、かなりのリアクションが期待できるアルバムです。

ブラジルだとですね、もうインディ・ロックの世界ではトップクラスなんですけど、インディの国内組の需要が今すごく小さいのと、なんか今のブラジル人って、新しい才能とかにシニカルになりすぎる癖があって、批評家がすごく褒めててもなんか盛り下げちゃうところがある(これ、今の欧米のインディ・ファンにも近いとこあるんですけどね)んですけど、このアルバムの場合、デヴェンドラや坂本慎太郎の件もあって国外で紹介されやすいし、そこで一定の評価も獲得できると思います。欧米逆輸入でブラジルにフィードバックのパターンになるんじゃないかな。あっ、日本でももちろんいいんですよ!今回のこの記事で気になったら是非聞いてください。

これですね、僕にとっても

2010年にブラジルに渡って以来、初めてリピートするくらいに好きになった初めてのブラジルのリアルタイムのアルバムです!!

2010年代以降もいいバンドやアーティストならいたんですよ。世界的なリリースもしているサイケバンドのブーガリンズとか、その仲間でもあるセクシーな女性ヴォーカリストのいるカルニ・ドーシ、ラウドロック系で女の子のシンガーがメチャクチャ才能あるファー・フロム・アラスカとか。でも、どれも「いいね」と思って1回は聞くんだけど、繰り返してなんども聞くほど好きにならなかった。そこはやっぱり、ソングライティングの力なんじゃないかな。ただパッと聴きでいいと思えるだけじゃなく、しっかり芯のある良さというかね。その意味でもオ・テルノ、チム・ベルナルデス、本物なんだと思いますね。








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