「椿の花咲く頃」 韓国のドラマ賞を独占した、心に染みる一作
どうも。
ここ最近はこれを見てました。
この「椿の花咲く頃」という、これもKドラマですね。実はこのドラマが、韓国のドラマの最大賞、ペクサン・アワードで「愛の不時着」や「梨泰院ウラス」に圧勝したことで話題になった作品です。
今は便利な世の中で、「なんだ。そんなの見たすぎるじゃないか」と思ったら、ちゃんとネットフリックスに入ってます。これ、元は「韓国のNHK」ことKBSで昨年の夏に放送されていたドラマのようですが、どんな話かというと。
話はおそらくソウル郊外あたりのオンサンという架空の街に、小さな子供を連れたシングル・マザー、トンペクが引っ越してバー「カメリア」を始めるところからはじまります。このトンペク、すごく存在がフワフワしてて掴みどころのないキャラクターに加えて、シングルマザーということから、下町風情が強くの頃この町では当初気味悪がられていました。そしてトンペク自体にも暗い過去があり、本人自身も気の弱く、強く物が言えないタイプでした。
そこに
トンペクにひと目会ってからというものべた惚れしたヨンシクという青年が登場します。生粋のオンサン育ちの警察官の彼は、甲高い大声で常に喋り、テンションがメチャクチャ高いヤツですが、ひときわ情に厚く優しいことからみんなから愛されます。ただ、そんな彼には
トンペクの7歳の子供の野球少年、ピルグがちょっとした障害になっていました。途中まで彼は、自分の父親がどこか遠くに住んでいると思いこんでいたからです。その彼の実の父親というのは
なんと韓国プロ野球会のスーパースター、ハン・ジョンリョル。野球の才能は抜群なものの、スターらしい派手な生き方を貫き、インスタグラマーのチャラい女性と結婚した彼でしたが、浮気でトンペクを振ってしまったことを後悔し続けた矢先、トンペクに偶然再開し、そのときにピルグが自分の息子であることを知ってしまいます。結婚生活に倦怠期を感じていたことと、息子への強い情が湧いたことで、ピルグをなんとか自分のものにしようとします。
ドラマはそこに
カメリアに夜な夜なやってきては、トンペクにセクハラを働いていた「カメリア」の土地主のギュテに、彼の奥さんでカメリアの管理をするキレ者の奥さんのジャヨン。
カメリアの従業員で、暗い生い立ちを持ち、犯罪行為も働いてしまうヒャンミ。
トンペクが7歳のときに孤児院に預けたまま失踪しながら、急に彼女の前に姿を表し、カメリアの従業員となった母
さらにオンサンの商店街のおばさんたちのリーダー格で、人一倍厳しさと優しさを持つヨンシクの母、そして近所のおばさんたち。この人達を中心に話が展開されます。
そして、忘れてはいけない。この人間ドラマの背後に、トンペクの命を狙う連続殺人犯を追うサスペンスが同時に展開します。
・・と言ったところです。
このドラマですが
さきほども言ったように、ペクサン・アワードのドラマ部門で大賞を受賞した作品です。それだけじゃなく
主演のハン・チャヌルは主演男優賞。
助演のオ・ジュンセが助演男優賞を受賞しています。彼は本当にうまい役者で、こないだも話した放送始まったばかりの「サイコでも大丈夫」ではさらに濃厚な知的障害者の演技をしています。
これ、僕の感想ですが
すごくよくできてると思います。
バランスがすごくいいんですよね。純愛ドラマと、Kドラマでおなじみの親子や隣人愛、そしてサスペンスのバランス。特に主演のふたり、トンペク演じたコン・ヒョジンと、ヨンシク演じたハン・チャヌル。どっちもちょっとキャラが変化球なのが良かったですね。どっちもすごく庶民的なんですけど、少女趣味の残るフワフワ感と気の弱さ、優しさから、大きな声ひとつも出せない感じだったトンペクが、ややもするとウザいくらいにやかましいヨンシクのポジティヴすぎるパワーで自信を掴む。このバランスが絶妙でかつ、ケミストリーがあるんですよね。
あと、脇の固めもうまくて
このトンペクの生き別れのお母さん。これ演じたの、あの「パラサイト」のお手伝いさんなんですけど、この人がもう、うまくて!なぜ、トンペクを捨てなければならなかったのか。その、あまりにも壮絶な、断腸の思いにならざるを得なかった悲劇と、その罪悪感と、捨てられない愛情の板挟みで苦悩する演技。これが特に後半に効いてくるんですよ。やっぱり、名女優のことだけはあるなあと思いましたね。
あと
このピルグくんが激ウマなんですよ。泣く演技なんて、10歳以下の子供のレベルじゃないですね。妙にリアルかつ、セリフの吐き出し方が本当にうまい。彼、見てるだけでかなり引き込まれます。
あと、隣人愛ですね。これ、「愛の不時着」でもそうだったんですけど、「いったん受け入れたら、どこまでも応援する」という隣人の優しさはここでも顕著です。で、両方の主婦友チームを率いているのが、「不時着」でペクサンの助演女優賞を受賞したキム・ソニョだったりするのもミソです。
・・と、内容に関してはもちろん文句なんて付けようのない作品なのです
が!
それと同時に
この作品では、今回の国外でのKドラマブームは起こせなかっただろうなあ・・・
とおもったのもまた事実なんですよねえ。
たとえば「梨泰院クラス」には、もとがウェブ・コミックだったという新しさがあった。その新鮮さは、イソのようなすごく新しいタイプの女性キャラの創造にも寄与していたと思います。
「愛の不時着」の方は、主演の2人、ソン・イェジンとヒュンビンの2人が、もうすでに国際的にも有名なスターだったじゃないですか。そのふたりが、国際的にも気になられている北朝鮮を舞台に展開したラヴ・ロマンス、という意味でも、韓国以外の人にもすごく入っていきやすい設定だった。
それに比べると、この「椿の花咲く頃」は、韓国人のマインドに訴えるものは強いんですけど、ちょっと国の内側を向いた作品で、外へのアピールが弱いかなと。だから、韓国国内ではたしかに愛される作品だとは思うんですけど、これだと外では「見つけた人は好きになってもらえるだろうけど・・」という感じにはどうしてもなってしまうかな。
だから、
「梨泰院」「不時着」のふたつを通しで見た人にはオススメ
ってとこですね。
そういう人にとっては、さらにKドラマへの愛を深めるポテンシャルを持った作品だとは思います。ただ、その2つを見ないでいきなりこっちから見ると「渋くて良いね」な感じになってしまうかもしれません。
でも、いいんですけどね。なんか作りが映画っぽい感じでもあるので、2時間10分くらいにまとめれば、いい映画になったかもしれません。