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映画「エミリア・ペレス」感想〜騒動以前に、問題なのは・・・
どうも。
今日もオスカー候補の映画レビュー、行きましょう。これです。
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「エミリア・ペレス」、ご存知の方もいらっしゃるかとは思いますが、今年のオスカーで最多13部門でノミネートされています。となれば、本来ならば大本命・・・のはずなんですけど、その後にトラブルが発生。ダメージを受けている最中です。今回はその話もします。
どんな映画なのでしょうか。あらすじから行きましょう。
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舞台はメキシコ。才能がありながら満たされない思いを抱えていた弁護士リタ(ゾーイ・ザルダナ)の元にあるクライアントが現れます。
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それはマニタスと言う名の、麻薬業界のドンでした。彼はリタに「性転換をして真っ当な女性としていきたい」という相談をリタに持ちかけます。
リタはバンコクやテルアビブと掛け合い、彼の性転換の手術の手続きを行い、成功させます。
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それから4年後、リタのもとにある女性が現れます。それこそ、性転換した後のマニタス、エミリア・ペレス(カルラ・・ソフィア・ガスコン)でした。
エミリアの問題は、彼女が性転換手術をしていた間に、ギャングから身を守るために海外逃亡させていた妻や子供たちと再会することでしたが
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そこで妻ジェシー(セレーナ・ゴメス)と、子供たちと、自身がマニタスの遠い親戚だと偽って会うことになります。
エミリアはリタとともに、麻薬取引の被害にあった家族のために、命を失った犠牲者の遺族に対し遺体を見つけ出すビジネスを始めますが
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その一方でジェシーが危険な男と関係を持ち・・・
・・と、ここまでにしておきましょう。
これですね、
話としては、独創的でしょ?
しかもこれ
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部分的ではあるんですけど、ミュージカルとしても進むんです。特にゾーイ・ザルダナはミュージカルの才能があるなんてことが知られていたわけではなかったから、ここでの演技絶賛され、オスカーの助演女優の有力候補にまでなっているんです。
ここまでの話を聞くと、「オスカー13部門ノミネートもわかる」・・となりやすいです。実際、これがカンヌ映画祭に出展された際、審査員特別賞と女性キャスト全員に主演女優賞も渡されました。そうなったらもう、オスカーで本命になっていてもおかしくない・・・はずでした。
が!
一般公開後にとんでもない落とし穴が待っていました!
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これがエミリア・ペレスの公開後のロットン・トマトーズでのスコアなんですけど、このユーザースコア、見てください。24%と大酷評なんですよ!オスカーで13部門もノミネートされている映画がですよ!批評家評価も74%と、80%超えてて当たり前のオスカー・ノミネート作の中では異例なまでに低いです。
なぜ、そうなったか。一つはまず
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監督のジャック・オーディアール、この人、フランスの大物監督ですけど、彼によるメキシコの描き方がすごく偏見に満ちてひどく移ったんですよね。これ、国が違う人が監督する場合、気にしなきゃいけないことなんですけど、外国人が対象の国を「犯罪大国」のように描く場合、行き過ぎないように気をつけないといけないのに、そこが甘くなってしまった。
これに対してメキシコ系の人が猛抗議したんですけど、オーディアール自身も「メキシコに関してあまりリサーチしてなかった」と認めたことでさらに悪化しました。
これ、非常に重要な問題でして、例えば韓国とか中国の監督が日本のヤクザを興味本位で描いたら発狂する人、いるでしょう?あるいは日本人の監督が中国とか韓国を同じように描いたら?そう言うとわかりやすいかと思います。
そこに加えて
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主演のカルラ・ソフィア・ガスコン、彼女が以前に問題発言を連発していたことが判明したんですね。
彼女はトランスジェンダーで初のオスカー・ノミネートでせっかくポジティヴなイメージを持たれていた矢先だったのに、それを次々と打ち壊したんですね。その例を言うと
「女と黒人はキッチンに引っ込んでろ」
「娘の学校に髪を隠した人が増えた。来年、英語じゃなくてアラビア語を習いそう」
「ヒトラーがユダヤ人をどうしようが勝手」
これに加えてオスカー的には2022年のオスカーの助演男優賞が黒人のダニエル・カルーヤ、助演女優賞がユン・ヨジュンが受賞した際
「オスカーも黒人と韓国人祭りになってしまった」
これらのツイートが判明したことで、オスカーはカルラのSNSでのフォローを外し、本作はオスカーのキャンペーンからカルラを外すことになりました。
これ、ブラジルでも「Im Still Here」が今年3部門ノミネートされて、すべてでこの映画にかぶっていたから、もう反感がめちゃ強くて。しかもカルラ、「Im Still Here」から主演女優にノミネートされたフェルナンダ・トーレスに対して「彼女のスタッフがネットで私へのネガキャンを煽っている」と言う虚報を言ったことがさらに追い討ちをかけて。
なので南米圏でこの映画、けちょんけちょんなんですよね。
ただ!
そういう逆風が仮になかったとしても、僕がこの映画をそこまで好きになっていたとは思わないんですよね。
だって、見てこれを思い出しちゃったから。
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「オール・アバウト・マイ・マザー」をはじめとした、スペインの巨匠ペドロ・アルモドバルの諸作ですね。まさに性転換なんてアルモドバルの好きなネタじゃないですか。それでスペイン語の映画なら、なおさら。
だから思ったんですよ。もしエミリア・ペレス、あえて言っちゃいますけど、ごときの映画でオスカー13部門もノミネートされるんだったら、アルモドバルの映画、3作ぐらいはオスカー作品賞、受賞してなきゃおかしいです。
それくらいの「もどき」映画だと思ったし、アルモドバルと比べちゃったから完成度低いなと思いましたね。それに加えて、あのヘイトまみれのスキャンダルでしょ?アルモドバルにはそういうものは無縁です。逆にすごく愛があります。
・・ということで、僕はこの映画、「面白いと思う人」が出てもおかしくはないとは思うんですけど、個人的にはノー・サンキューでした。
これで今、作品賞で争うライバルがこないだレビューした「アノーラ」でしょ?「陽の当たらない人たちへの愛」の時点で比較になりません。
でもなあ、せっかくオーディアールっていい監督だと思ってたのになあ。「真夜中のピアニスト」とか好きだっただけに、なんか残念なんですけどね。