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沢田太陽の2021年間ベストアルバム 40-31位

どうも。

では、沢田太陽の2021年間ベスト・アルバム、引き続いていきましょう。今回は40位から31位。以下のようになりました。


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はい。では早速、40位からいきましょう。

40.Any Shape You Take/Indigo De Souza

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40位はインディゴ・デ・ソウザ。彼女はノース・キャロライナ州の女性インディロッカーで、これが2枚目のアルバムになります。黒人と白人のミックスなんですが、彼女、お父さんがブラジル人でボサノバのギタリストなんですってね。たしかに「デ・ソウザ」という名前、ブラジルだと「田中さん」くらい多い名前です。彼女、面白いのは、黒人やブラジルという血筋があるんですけど、そういうものがあまり反映されているわけでなく、音楽そのものはスマッシング・パンプキンズとかダイナソーJrみたいな90sのインディ・ギター・ロックを思わせるメロディックなギター・ロックということですね。そういうロックとして単純によくできてます。ただ、血筋的なことを音として見出したくなるようなミステリアスな雰囲気を彼女自身が放っているのが今日的にはこれ、武器になりますよね。そういうところですごく現代的な感じがします。ただ、その分、偏見でカテゴライズされにくくなるので、そのあたりを今後どうしていくかにかかっているような気がします。


39.Ignorance/The Weather Station

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39位はザ・ウェザー・ステーション。これはカナダの女性シンガーソングライター、タマラ・リンデマンという人のソロ・プロジェクトです。本国ではもう2作ほど前から高く注目されてた人のようなんですけど、今回のアルバムからアメリカでファット・ポッサムが配給に絡むようになって、一躍注目が集まり、リリース時に大絶賛されたこともあり、イギリスでは61位まであがるヒットになりました。彼女はこの前作が、ものすごく70s半ばのジョニ・ミッチェルの完コピ状態のアルバム作ってたんですけど、今回のはフリートウッド・マックのクリスティン・マクヴィーを彷彿とさせる、ほんんのりソウルフルなソフィスティ・ポップを聞かせてくれていますね。立体的にタイトなリズムを刻むスネアの音なんてミック・フリートウッドそっくりですしね。でも、こうしたレジェンダリーな女性アーティストのDNAをもちながらも、彼女独自のスモーキーで儚げな歌声で自分のものにうまく九州咀嚼し、そこに彼女なりのエコロジーのメッセージをそえ、唯一無二のものに転化できてるのが見事です。今後にも注目ですね。

38.Montero/Lil Nas X

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38位はリル・ナズX。今年のポップ・ミュージック界の立役者だし、本当に失礼ながら、ここまでやるなんて思っていませんでした。2019年に「Old Town Road」で出てきたときは「一発屋臭の強いラッキーなポップ・ラップ」の雰囲気だったんですが、今やもう「Montero」「Industry Baby」「That's What I Want」とシングル・ヒットも連発ですからね。なにが良いって、「聴く人をエンターテインさせようという類まれなサービス精神」ですね。ラップ/ヴォーカル・スタイル自体はここ3、4年くらいのトラップ、エモ・ラップのフロウの域こそ出ないんですけど、最近のそのテのラッパーが勢い同じようなトラックで没個性化してる中で、スパニッシュ・ギターからホーンから印象的なフックを抜き取って、決めヴォーカルでわかりやすくキメる、ポップ・ソングとしての構成のうまさが巧みですね。で、アルバムになると、「That's What I Want 」で聞かせたロック調の曲もすごく多くて、ヒップホップからでさえも自由になってて。フィーチャリングもエルトン・ジョン、メガン・ザ・スタリオン、ドージャ・キャットと、ゲイラッパーらしくマッチョ度ゼロを貫き通しているし。本当にワン・アンド・オンリーになりつつありますね。見逃さない方が良いと思います。

37.Inside/Bo Burnham

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37位はボー・バーナム。もしかしたら、インディ・ロックだったり、近頃のピッチフォーク系リスナー的な音楽の追い方してる人はこれ、見逃してる可能性大ですね。これ、英米でしっかりトップ10入って絶賛もされてるんですよ。このボーなんですけど、元はコメディアンで、イケメンで演技力もあるので、僕が以前絶賛した映画「プロミシング・ヤング・ウーマン」でキャリー・マリガンの相手役をした俳優でもあります。これは、そんな彼がネットフリックスで公開した映画規模のスペシャル・プログラム、その名も「」Inside」のサントラです。これはパンデミックで悶々とした生活を送る、30歳になるコメディアンが、自分の境遇に忸怩たるコンプレックスを抱き、早熟に出世したインターネット長者を羨む振り(本当はそんなこと微塵も思ってない)をしながら、自嘲と社会風刺をしながら成長を目指すもので、すごく大人気になりました。この内容を自ら歌詞にし、シンセポップにしてボー自身が歌うんですけど、この完成度がめちゃくちゃ高くて本職も顔負けなんですよね。こんなエンターテイメントできるの、チャイルディッシュ・ガンビーノことドナルド・グローヴァーくらいですよ。もう、今のうちから気にしておいた方が良い存在だと思います。

36.Black To The Future/Sons Of Kemet

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36位はサンズ・オブ・ケメット。ロンドンを拠点としたアフロ・ジャズ・バンドです。彼らの存在は前作「Your Queen Is A Reptile」が絶賛されたことで注目され、その流れで今作が出たんですけど、またも高い評価を受け、ジャズでは珍しい全英54位のヒットと、商業的成功にもつながっています。彼らの特徴は、ジャズにファンクにアフリカン・テイストのサウンドを混ぜ、そこに黒人の社会問題を訴えたポエトリー・リーディングやラップを乗せたものですね。それは70sのラップの先駆の詩人ギル・スコット・ヘロンのようであり、それはこのバンドの今の所属が60sに前衛ジャズ専門レーベルとして知られ、復活を遂げたインパルスであることからも納得がいきます。今作も前作と基本線の作りが似てるのでそこまで大きな衝撃がなくはあるんですけど、それでも高い完成度だし、アメリカのヒップホップ界がせっかくBLMも盛り上がってる状況の中で人種問題に社会的、歴史的、文学的になかなか積極的に切り込んでいかない中、こうしたことを海を隔てた黒人たちがすることに強い意義を感じますね。

35.Long Lost/Lord Huron

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35位はロード・ヒューロン。日本では聞き馴染みない名前かもしれませんが、アメリカだとそこそこ大きなバンドです。このバンドは2010s前半にインディ・フォークがマムフォード&サンズを筆頭にして当たった時に後続で出てきたバンドだったんですが、クリエイティヴィティが発揮されはじめたのはブームが去った最近でして、2018年に出た前作、全米トップ10入ってて、僕の年間でも39位に選んだりしていました。その前作もデイヴ・フリッドマンを起用して、ちょっとロック的なエッジが強いサイケデリックな好アルバムだったんですけど、セルフ・プロデュースになった今作では、フリート・フォクシーズとザ・コーラルの路線の中間とでもいうべき、よりディープな60sサイケに接近して、フォーキーかつガレージな非常に趣味の良いサイケデリック・サウンドを展開しています。イメージで言うなら、それこそアーサー・リーのラヴとか60s後半のザ・バーズを思わせるような感じです。今名前あげたところって研究、考察、再評価も深まってきてますし、タイミング的にもすごくマニア好みの音ですよ。

34.For The First Time/Black Country,New Road

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34位はブラック・カントリー、ニュー・ロード。いわゆる「サウス・ロンドン・ポスト・パンク」、今年ヒップでしたけど、この年間ベストでも、ここらあたりから出てきますよ。このBCNRに関しては、最初聞いた時、「キング・クルールを、ポストパンクというよりポストロックで分解、再構築したみたいな音楽だな」と思ってとっつきにくさを感じ、「シンガーは雰囲気あって初期のニック・ケイヴみたいなんだけど、曲がまだしっかり書けてないかな」とも思ったんですけど、バンドのルックス見て考え変えました。だって、男4女3の、大学の軽音部みたいな風貌で、しかもルックス、すごくいいんだもん!「これ、ポストロック史上初のアイドル・バンドかよ!」って思いましたからね。こんなマニアックなサウンドがこんなに若いリスナーに熱心に支持される理由に、こういうシンパシー抱きやすいポップな要因、絶対あると思ったんですよね。これで僕もだいぶ親近感わきましたね。そうしてたら、来年の2月には次の新作でるんですけど、曲、すごくわかりやすくよくなってきてるんですよね。これはむしろ来年に期待ということで、今年はあえてこのくらいの順位にしておきます。

33.Screen Violence/CHVRCHES

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33位はCHVRCHES。2013年という年はHAIMやLordeが登場し、イギリスからThe 1975とウルフ・アリスが出てきた年です。その後、ロックで売れる人が枯渇状態で続いたので、この2013年という年の存在がなかったと思うとぞっとするのですが、このCHVRCHESもそんな「花の2013年組」のひとつです。セカンド・アルバムまでに英米でトップ10に入って順風満帆だったんですけど、そんな彼らも2018年の前作「Love Is Dead」で、妙に大衆に媚びたポップ路線に行ってしまいました。「編集点作ってサビで盛り上がる」みたいな、「どこのアイドル?」みたいな曲調になって僕も本当にがっかりしたものです。さすがにこれは当人たちも反省したのか、今回のアルバムは従来のシンセポップに戻りました。そして、それだけでは飽きたらなかったようで、ニュー・オーダー的なバンド・サウンド色も濃くなり、さらにはキュアーのロバート・スミスとの共演まで果たしてしまいました。後ろの年長の男性2人的にはこっちの路線の方が自然だろうし、ローレンにしてみても元来かなり熱唱型なのでこっちの方が相性いいと思います。一作迷ったものの、軌道修正にうまく成功した一作だと思います。

32.An Evening With/Silk Sonic

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32位はシルク・ソニック。今年のビッグ・ヒットのひとつですね。かのブルーノ・マーズがアンダーソン・パクと組んだユニットですが、好評で大成功してるので、サイド・プロジェクトの域を超えましたね。これはブルーノには願っても無い展開だったでしょう。こと、ハスキーな声で踏ん張って高いキーを渾身に振り絞る歌唱法は10年前のデビュー時から定評あったし、僕も「Nothing On You」の頃から好きでした。すぐに人気者にはなるものの、これまで歌う曲が音楽的に今一つ面白みに欠けるから批評向きではなかった。だけど「Uptown Funk」「24K Magic」でも顕著なように80sファンクの造詣始め古い音楽には熱心で詳しい。その特性をなんとか生かしたい時にアンダーソン・パクがうまく出てきて、とことんマニアックな、1974年頃のソウル・ミュージックまんまな世界観を作ってしまいました。でも、これ、「まんま」と言っても、トム・ベル風のフィリー・ソウルにせよ、ニューオーリンズ・ファンクにせよ、細部のスピーカーでの響かせ方に至るまでの完全再現ですからね。生半可じゃありません。あと、このサウンドにすることでブルーノの歌唱力が当時であっても抜群であったこと、古いサウンドにあってパクのラップとレゲエ双方の影響感じるあの当時にはなかった歌い方が絶妙にフックになってるのも光ってます。

31.Still Over It/Summer Walker

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そして31位はサマー・ウォーカーのセカンド・アルバム。2019年の秋にデビューした時から、女性R&Bの久々の大物みたいに言われてましたけど、あの頃はまだどこか曲の表現にもどかしさを感じてもうひとつ乗り切れなかったんですけど、今回のアルバム、彼女の飛躍作になっただけでなく、R&B/ヒップホップのゲームチェンジャーになりうる傑作だと思います。トラップのビートを使ってはいるんですけど、そこから発展して、90sの頃の、とりわけRケリーあたりに顕著だったダウンテンポに接近して、あの当時の華やかでセクシーだった90sのR&Bへの回帰を強烈に誘ってますね。また、同じ頃にヒットしている先ほどのシルク・ソニック同様、「ヴォーカル」そのものの再評価も促してるようにも感じます。やはり、ここ5年、10年くらい、あまりにもヒップホップ過多で、メロディ歌うにせよ「ラップ調」みたいなものがあまりにも多く、歌、メロディ共々生きないパターンがちょっと目立ってましたからね。そうした流れを変えれそうな力がこのアルバムにはあるように思います。



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